今、MMは夜の黒曜中で、息を潜めていた。傍らにあったクラリネットを、ぎゅっと握る。  
照らし出す月明かり。種類なんて知らないけれど、よく聞く野鳥の鳴き声。  
全てが不気味な要素をかもし出す。  
 
話を辿れば、MMはちょっとした用事で真夜中、黒曜中に忍び込んだ。  
だが、用事を済ましたところで、足音が聞こえてきたのだ。こつ・・、こつ・・、こつ・・・。  
その足音はどんどんと、自分の方へ近づいてくる。  
誰かなんて見当も付かないが、一つだけ確実なのは、見つけられると面倒になるという事。  
足音は止まる気配を見せず、ただひたすら鳴り響いた。  
MMは、早くどっかに行っちゃいなさいよ・・!と、足音が遠ざかって行くのを祈った。が、その願いは天に届かなかったらしい。  
ぴたりと、足音がMMが潜む教室の前で止まった。  
がらっ! ドアが開き、近くでうずくまっていた彼女は前につんのめる。  
 
「きゃあっ!」  
MMは、本能的に体勢を立て直した。その時、足音の持ち主を確認する。  
金色の髪を目元まで伸ばし、不敵な笑みを浮かべながら自分の元に歩み寄る、青年。(少年のほうが、近いかもしれない。)  
 
なんなのよ、こいつ!  
心の中で悪態をつくMMだが、ふと金髪の上で輝く銀色に目が行く。  
たっ・・・、高そうなティアラ・・。思わずMMが見とれているその間に、青年は彼女の元へ近づいてきた。  
 
「お前、何やってんの。こんな所で、こんな夜中に。」  
意識をティアラから青年に戻せたMMも、口を開く。  
「あんたこそ何やってるの!」  
「オレは用事があって来ただけ〜。」  
「黒曜中なんかに、なんの用事があって来たのよ!?」  
へっ?青年は、唖然とした表情を浮かべた。目元が見えないのに、その表情はとてもわかりやすい。  
「ここって、黒曜中?並盛中じゃなくて?」  
うなづいてみせれば、彼はししっ、と特徴的な笑い方をした。(骸ちゃんほどじゃないけどね。)  
「せっかく暇つぶしに来たのになあ〜。まあいっか。だって、オレ王子だもん。」  
どうやら、この青年は並盛中に行くつもりで、黒曜中に来てしまったらしい。でも、そんな理由で納得できるわけない。  
・・・のだけれど。MMは、青年の口から発せられた、ある言葉に釘付けになってしまい、そんな事はどうでもよくなった。  
 
「お・・、王子っ!?」  
うししっ、とまた特徴的な笑みを浮かべた彼は、得意げに言う。  
「そう、オレ王子。ベルフェゴール。」  
「ベルフェゴール?」  
「オレの名前!みんなベルって呼ぶけどね。」  
 
王子という事は、やっぱりお金持ちなんだろう。ベルフェゴールなんて名前の王子、聞いた事ないけれど・・・、  
とりあえず、気に入られておいてもいいだろうと思った。  
「私はMM。あんた、本当に王子なの?」  
「王子の言う事疑う気?」  
自信満々なベルの態度に、MMは食いついていった。  
 
それからは、MMの質問攻め。どこの王子かとか、王子が何でこんな所にいるのかなど、色々な事を、MMはベルに聞いた。  
ベルは、自分がヴァリアーの暗殺者だとわからないように、適当にはぐらかしながらも、MMとの会話を楽しんでいた。  
本当は、こんな生意気な女すぐ切り刻んでるはずなんだけれど。何故だろう、その気になれない。  
自分に対し、憧れの眼をむける彼女に、気をよくした。それだけだと、自分で勝手に思い込んだベルは、  
ふっと、いい事を考えついた。  
 
ベルは、まだ質問攻めをやめようとしないMMの唇に、自分の唇を重ねる。  
軽い挨拶のようなキスだった。  
MMは唖然として、ベルの瞳を前髪越しに見つめる。けれど、そのベルから出た言葉に、また唖然とする事になった。  
 
オレに抱かれてみない?  
 
からかう様に笑ったベルは、MMの顔を見つめて、話を進める。  
「オレさ、周りに女いなくて、欲求不満なんだよね〜。だから、どう?」  
MMは、ベルを、真意を探るかのように見つめる。そして、身を乗り出し、行動でYES・NOを表した。  
ベルの唇に、先ほどと同じように、唇を合わせ、口の中に自らの舌を進入させていく。そして、ベルの舌と絡ませて、  
水音を響かせながら、キスを続けた。  
「んっ・・・・・・。」  
息が続かなくなると、MMはベルから離れ、口元をほころばせ、小悪魔のような笑顔を見せる。  
「私を満足させられるかしら、王子様?」  
「うわ、生意気なお姫様。」  
お互いに笑いあい、今度はどちらともなく、キスをした。  
 
ベルは、MMの胸を服の上からなぞりながら、器用に片手でその服を脱がしていく。  
MMは、処女ではない。けれど、それは久しぶりの行為であり、お互いが興奮しているのが、よくわかる。  
黒と赤の魅了的なブラジャーを外せば、MMの美しい胸元があらわとなった。ベルはそれを、舌先で弄り、甘く噛む。  
それは、もどかしくも甘い快感となって、MMの身体を蝕んだ。  
「あっ、・・・・んん・・・!」  
そのプライドの高さからか、声を噛み殺すMMが、ベルの欲望を掻き立てる。  
 
スカートを脱がし、ベルは細い脚に次々と吸い付いた。花と例えたくなるような、紅い跡が残る。  
すうっとベルは、MMの未だ隠された秘部に、下着の上から、吸い付くようにキスをし、すぐ放す。  
「ああっ!んふっ・・・、・・・!」  
 
くすぶっていた箇所を、いきなり触れられ、快感から声をあげてしまったMMは、自分の口を押さえて、表情を歪める。  
服を全て脱がされているのに、下着だけは手付かず。いっそ全部脱がされた方が、羞恥心は無くなるだろう。  
「声あげてもいいんだぜ?」  
「だ、誰が・・・、」  
MMの紅潮した頬は、ベルの瞳にとても美しく映る。その頬に、ちゅっと口付けをした。  
その唇を口までずらしていき、何度目かのキスを交わす。  
 
その状態のままで、ベルは薄らと湿り始めた、MMの秘部を弄りはじめる。けれどそれは、まだ下着の上からだった。  
唇を噛みながら、必死にその刺激に耐えていたMM。その反応が愉快に思えて、ベルは指に強弱をつけながら、刺激を与え続けた。  
ベルの指が、下着の上から自分の芽にふれた時、  
MMは、ついに、ベルが与える甘い快楽と、自身のプライドに負け、口を開いた。  
「直接、・・・さわってよ・・。」  
ベルは恥ずかしさに目をふせた彼女の耳に、口元を寄せてささやいた。  
「りょーかい!」  
ベルはMMの下着を脱がすと、申し訳程度にしか生えていない、浅い毛の茂みに指を絡ませながら、  
口で、露わになったそこを、優しく刺激する。さっきとは比べようのない感覚が、MMを襲った。  
そこはもう、十分に濡れている。  
(何よ、私がやられっぱなしじゃない!)  
自分の秘部を見たMMは、屈辱に顔を歪ませる。そして、快感に痺れる身体を無理矢理起こし、  
ベルを押さえつけた。  
 
 
「っ・・、何やってんの、MM。」  
「私もやってあげるって事!感謝しなさいよね。」  
ベルを机の上に座らせ、MMは、床の上に膝たちになった。  
彼の性器は、もうすでに立ち上がっていて、ズボンの中で苦しそうに存在を示している。  
MMは、ジッパーを下げ、それを外気に触れさせる。そして、口にくわえた。  
 
くちゅくちゅといやらしい水音が響く。先走りの汁が、MMの口に流れ込んだ。それでも、彼女は、  
フェラをやめようとせず、べルの性器を舌で器用に転がす。  
ベルが、快楽という名の苦痛で、余裕を無くしていく様子を見るのは、とても面白かった。  
「どう、気持ち良いでしょ?」  
「・・・ん。」  
するとMMは、口だけではなく、手も駆使するようになった。右手で前立腺をおされながら、さっとしごかれる。  
ベルは、しばしの間、快感に酔った。  
だが、MMが口と舌の動きを早めると、ベルもさすがに焦ったようで、彼女を止めた。  
彼女は、舌から上目遣いでベルを見つめ、酷く煽情的な顔で、首をかしげる。  
「そうよね、早く挿れたいわよね?」  
くすりと笑みを浮かべる。ベルは、少し悔しそうな顔をしながらも、うなづいた。  
幾度となく男と身体を重ねてきたMMにとって、男の心理は手に取るようにわかる。  
(私より先に、イクわけにはいかないのよね〜。)  
心の中でもう一つ、笑みを浮かべておいた。  
 
ベルは、MMを自分の膝の上に乗せ、下から彼女のそこを貫き始めた。  
お互いが、お互いの表情を見れる体位。二人とも、相手の余裕をなくした表情に、興奮を覚えた。  
「あっ・・・、やっ、ふっ、ベルっ!!」  
「っ・・、MM・・。」  
MMは、腰を揺らし、ベルは下から突き上げる。  
快感を共通し、一心同体になっているような、心地よさ。身体はわずかに震え始め、絶頂へと向かっていった。  
ベルは、一層強く、腰を突き上げる。そこが、丁度彼女に性感帯だったらしく、MMは、身体を大きく震わせ、  
のけぞらせた。  
 
「あっ、ああああああああん!」  
MMは、ついに絶頂をむかえ、ぐったりとベルに身体を預ける。  
目の前が真っ白になり、それでいて真っ黒になる、不思議な感覚。  
ほぼ同時に、ベルのMMを抱く腕の力が強まり、  
やがて彼も果てた。  
お互いの体液が混ざり合い、熱さでとろけそうだ。二人はしばらくその余韻に浸り、MMはそのまま眠ってしまった。  
 
それから、日もたったある朝。  
MMは、楽しげにステップまで踏んで、待ち合わせ場所に向かっている。  
事後、MMが目を覚ますと、身体はきれいにぬぐわれ、服も着せられて、教室に寝かされていた。  
一瞬、全て夢かと思った。けれど、それが現実だと思い出させてくれたのは、  
教室の黒板に書かれたメッセージと、わずかに残る、彼の体温だった。  
 
あさって、朝九時に、黒曜中!!!  
王子待たしたらどうなるかわかってるよね?  
 
「バッグ、洋服、なんでも買い放題〜♪」  
たった今作った、リズムのおかしい滅茶苦茶な歌を歌いながら、  
歩みを早めたMM。  
その脳裏に浮かんでいたのは、バッグや洋服などではなくて、ベルの顔だった。  
 
END  
 
 
 

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