裸で水浴びをするラルを目撃して、獄寺は顔を赤くして硬直した。  
ラルの睫毛が伏せられ、涙が頬を流れる。  
さっきまで不遜な態度を取っていた時と全く違う彼女。  
強い女の弱さを垣間見て獄寺は不思議な気持ちになった。  
 
突然ラルが振り返った。  
バッチリ目が合う。  
「う゛っ」  
今更隠れるわけにもいかず獄寺は慌てた。  
おまけに振り返ったおかげで恥部まで見えてしまっている。  
 
ますます焦る獄寺に対しラルは  
「ガキが」  
と呆れたように呟くだけだ。  
覗いていたことを怒りもしないし裸体を隠そうともしないで堂々としている。  
涙はもう消えていた。  
 
(そういうお前は何歳だよ!?)  
ツッコミを入れたいのを獄寺は抑えた。  
ラルが湖から上がってくる。  
豊かな胸と引き締まった腰のラインが美しい。  
みずみずしい肌は水滴を弾き、太陽の光を浴びて輝いている。  
 
扇情的な姿に獄寺は視線を外せなかった。  
同時にこの女は自分に見られて何とも思わないのだろうかと疑問が湧く。(ガキに見られても平気ってことか?それともオレを見くびってんのか…)  
どちらにしても面白くない。  
 
獄寺の気も知らずラルは無防備に背を向けて体を拭いている。  
ふと悪戯心が芽生え獄寺はラルを後ろから羽交い締めにした。  
水から上がったばかりの体はまだ冷たく濡れた髪が顔に当たって水滴が散った。  
「なっ!」  
不意を突かれたラルが振り解こうとする前に彼女の乳首を弾く。  
 
「あっ…」  
「そういう声も出せるんじゃねーか」  
からかうように言うとすごい目で睨まれ肘で脇腹を殴られた。  
「いてっ」  
顔をしかめたが仕返しとばかりに耳たぶを舐め上げる。  
 
「ふぁっ…。よせ…」  
意外に感じやすいようだ。  
最初はからかうだけのつもりだったが反応に気をよくした獄寺は  
耳への愛撫を続けたまま乳房を包み込むようにして揉む。  
その間もラルは暴れていたがその力は弱かった。  
 
「なぁ…」  
獄寺はラルの耳に口を寄せた。  
「さっき何で泣いてたんだ?」  
「…!そこまで見てたのか…」  
喘ぎながらラルは獄寺を振り返った。  
 
「あれは何でもない…。ただ死んだ奴のことを思い出していただけだ」  
「恋人か?」  
当てずっぽうだったがラルは複雑な表情になった。  
「…オレとあいつはそんなんじゃない」  
 
ほんの気まぐれに関係を持ったことはあるが、あいつにとって女はオレだけじゃない。  
ラルは自虐的な口調でそう語った。  
恋や愛を語るような甘い関係ではないらしい。  
 
「じゃあお前も他の男とセックスしたらいいじゃねーか」  
「あいにく相手がいない」  
「オレはどうだ?」  
 
言いながら獄寺は手を下へと移動させた。  
余分な肉などない腹を撫で太股の間へ指を潜らせる。  
ラルはピクッと体を震わせたが抵抗はしなかった。  
それが先ほどの問い掛けの答えのようだ。  
 
茂みをかき分けて秘部に触れる。  
指先でクリトリスを探り当てるとそこを執拗に刺激する。  
「んっ…」  
ラルは体を震わせて切ない吐息を漏らした。  
 
男のような言動で勝ち気な彼女を自分の手で乱していることが獄寺を興奮させていた。  
ラルを抱いた男もこの姿に欲情していたのだろうかと思う。  
 
ラルは顔に傷はあるが美しい顔立ちをしているし、スタイルは完璧だ。  
華奢なだけではなく程よく筋肉がついている点も獄寺の好みである。  
日本に来てから女を抱く機会のなかった獄寺にとって久々の相手としてラルは申し分ない。  
 
そしてそれ以上に獄寺は彼女を抱きたいと思った。  
相手へ伝えられなかった想い、失った悲しみ。  
それらに苦しむラルを癒したかった。  
 
獄寺はラルを自分に向かせると体を木の幹に預けさせた。  
膨脹した自身を取り出し腰を抱えると、濡れたそこに押し当てググッと沈めていく。  
「うっ…」  
ラルの唇から苦しげな声が漏れる。  
 
全てが収まると獄寺は尋ねた。  
「オレ達が勝てばその男も助けられるのか?」  
「…はっきりとは分からない。だがきっと」  
「そうか。安心しろ、オレは10代目とボンゴレを守る。お前の失ったものも取り返してやる」  
 
獄寺の言葉にラルの瞳が揺れ、頬を涙が伝った。  
それを隠すように獄寺の肩にしがみつく。  
獄寺はラルの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でると彼女を思いきり突き上げた。  
 
「うあっ!」  
肉がぶつかり合い、粘膜が擦れ合う。  
のどかな自然の中で似つかわしくない淫猥な音が響いた。  
 
「あぁっ…」  
ラルは髪を振り乱して快感に喘ぐ。  
目の前でたぷたぷと揺れる胸に吸い付きながら獄寺は腰を動かした。  
二人は共に絶頂へと昇りつめた。  
 
†††  
 
「また水浴びする羽目になっただろうが」  
体液にまみれた体を洗い流しながらラルは獄寺を睨んだ。  
「お前だって気持ちよかっただろ」  
「自惚れるなよガキが」  
さっきまでの激しい情事が嘘のように悪態を突き合う。  
 
元に戻ったラルに惜しいような安堵したような気持ちになる。  
もうラルと体を重ねることはないだろうという予感を抱えながら獄寺は言った。  
 
「好きなんだろ?さっき言ってた奴のこと」  
「……」  
無言だがラルの表情が肯定を表していた。  
 
「そいつが生き返ったら言ってやれよ。お前が死んでる間に迫ってくる男がいたって」  
案外ヤキモチ焼くかもしれねーぜ?  
 
獄寺の言葉にラルの表情が和らぐ。  
「ああ、いいかもしれないな」  
遠くの方から二人を探すツナの声がした。  
獄寺はそれに応えながら声の方へ走った。  
 
 
(終)  
 

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