「ねえ、君、お礼は言ったの」  
 
椅子に座った雲雀の上で揺すられながら、髑髏は彼の胸に埋めていた顔を上げた。雲雀は紅潮した頬に愛おしむように手を触れてから、そっと汗ばんだ額にかかる髪をよけてやる。耳に唇を寄せ、もう一度囁く。  
 
「一位、だったでしょ」  
「っ、言って、ない…」  
 
「礼儀がなってない子は、嫌いだよ」  
 
ごめんなさい。確かに髑髏の口はそれを伝えようと形作ったのだが、声にはならない。それなのに、律動はどんどん速まっていく。  
 
「あ…っ、言う、から」  
 
ちょっとだけ、とめて。  
やはり最後までは言えずに、最後の手段と目で訴えてみるが、雲雀は相変わらず取り合わない。髑髏自身気付いていなかった瞳にうっすらとたまっていた涙を指で掬った。  
 
「早く」  
 
嘘みたいにやさしい指なのに、それ以外は限界まで髑髏を追い詰めていく。爪先からまでも込み上げてくるような快感。それに、不機嫌になってきているような、雲雀の顔。彼にだけは、嫌われたくない。  
きらわれたく、ない。  
 
「あっ…あ、りが…」  
「聞こえない」  
「ん…あり、…あっ」  
「何言ってるのか全然わからない」  
 
言えといっておいて、決してそれを手伝わない。そんな雲雀の態度に、もう髑髏の体は限界に近かった。肩を掴んでいた手で雲雀の首に抱きついて頬をぴったりとつけた。  
 
「ありがとっ――、」  
 
 
小さくのけ反った後、くたりと力が抜けた髑髏を雲雀は腕の中におさめ、あやすように髪を撫でた。  
 
「いい子だね。よくできました」  
 
 
 
 

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