私が座る場所はいつも骸様の前。骸様の、脚の間。  
骸様に、背中を向けて、腕を回され、背中を預ける。  
その姿勢はまるで骸様を椅子にしているようで、私はとても嫌なのだけれど、  
骸様がそうするようにと仰るから、私は今日もまた骸様の前に座る。  
 
私の後ろで笑う骸様の声はくすぐったい。  
偶に私の髪を掬う指先もくすぐったい。  
その一つ一つに深い意味はなくても、  
このくすぐったさは嫌いじゃな…――ッ!  
 
「おや。どうしたんですか、クローム。」  
 
何。なんで。どうして、骸様の手が服の中に。  
いや。骸様の意図が分からない。  
 
「取り乱してはいけませんよ、クローム。」  
「さあ、落ち着いて…。」  
 
骸様のしようとしている事は…わからない。  
本能が拒否しろと言った。  
でも、本能さえ…この声には敵わない。  
さっきまでの混乱が嘘のように、頭の中がすっと空っぽになる。  
 
「…やはり君は良い子だ。」  
 
いつもより近くで聞こえた声は、いつもよりくすぐったい。  
背中にある体温もくすぐったい。  
そして…、胸に触れている手のひらはとても、くすぐったい。  
 
今までと少し違うくすぐったさ。  
今はまだ、驚いていて余り好きにはなれないけれど、  
いつかは、このくすぐったさにも慣れて…好きになれるのだろうか。  
 
分からないまま、私は今日も骸様の前に座る。  
 
 
 
 

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