獄寺隼人は、下腹部に違和感を感じて目を覚ました。  
そして、置かれた状況に呆然とする。  
寝巻き代わりのスエットのズボンから飛び出した己の逸物を、女が奥までずっぽり咥えている。  
長い髪の、美しい女。  
 
それだけならばいいのだが。  
 
「うわあっ!?姉キ!!?」  
「あ、起きたわ」  
ビアンキはつと顔を上げて平然と言った。  
「ちょうどよかったわ。こっちも今、起きたところよ」  
そう言って、半起ちの獄寺のモノをまた咥え始めた。  
「ちょおおおおおおおおおお!まてまてまてまてええ!!」  
獄寺は状況を理解できずにとりあえず絶叫した。  
「なによ?」  
はらりと落ちた髪を耳にかきあげながら、ビアンキがまた顔を上げる。  
「どどどどー!!」  
「なにを言ってるかさっぱりわからないわよ?」  
ビアンキは眉をひそめてやや迷惑そうに言った。  
「どうして!!…いや、だから!!なんで姉キが俺のムスコを咥えてんだよ!?」  
恐怖と混乱と戦いながら、獄寺はようやく意味のある言葉を紡ぎ出すことができた。  
「覚えてないの?」  
ビアンキはまた眉をひそめた。  
 
「え……」  
 
言われて、獄寺は首をひねった。  
必死に、眠りに落ちる前の記憶をたぐりよせる。  
 
「あ……!」  
 
「思い出した?」  
ビアンキは呆れたように言って、白い指先でくにくにと獄寺のムスコを弄んだ。  
「うあっ!」  
その刺激に思わず声をあげてしまってから、獄寺は記憶を反芻した。  
 
正確には自分は眠っていたわけではない。気絶していたのだ。  
気絶の原因はもちろんこの姉である。  
しかし、いつもの原因ではなかった。  
獄寺は寝る前にオナニーをしようとしていて、突如乱入してきた姉に見つかり…  
 
そこで記憶は途切れていた。  
 
「お、俺は……俺って奴ぁ……」  
獄寺は情けなさと恥ずかしさと死にたくなった。  
ただでさえこの姉が苦手なのに、まさか一番見られてはいけない場面を見られてしまうとは。  
落ち込みMAXの弟に、ビアンキがクスリと笑った。  
「そんなに落ち込むこと?」  
「あったりめーだ!」  
「いいじゃない、別に。オナニーくらい見られたって姉弟なんだから」  
「……よかねーよ」  
獄寺はうっそうと言った。  
むしろ女きょうだいなんて、この世で一番見られたくない部類の人間なのだが。  
「私は見られると燃えるタイプよ?」  
「どんな趣味だ、変態か!」  
「ひどいわ〜姉を変態呼ばわりするなんて…」  
ビアンキはわざとらしく胸を抑えて目を伏せた。  
しかし、今更そんなしおらしい仕草にだまされる獄寺ではない。  
そもそも。  
「気絶する前の状況は思い出したけど、それでなんで姉キがフェラしてんだよ……?」  
「私だって反省してるのよ、隼人」  
ビアンキはまっすぐに獄寺の瞳を見つめて言った。  
「お楽しみの邪魔をして悪かったと…だからこうしてお詫びを」  
「そんなお詫びいらねえっ!!」  
目尻に涙をためながらに怒鳴る弟に、ビアンキは不思議そうに首をかしげた。  
「でも、私が出てったら、また一人で続きするんでしょ?」  
「そ、それは…」  
「今更おさまらないものね?」  
「い、いやそうだけど…」  
「じゃあ、やっぱりお詫びを」  
「うわああああ!」  
いそいそと弟の逸物を握り直して頬張ろうとする姉に、獄寺は今度こそ恐怖の悲鳴をあげた。  
 

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