体内時計がぐるっと一回り進みそうな光の中に入ってしまうと、
さっきまで馴染んでいた暗闇はまるで異次元だ。
でも、だからといってそれに執着するわけでもなく、
コンビニの中の人々は、せまっくるしく配置された棚と棚の間をすり抜けて、
また闇の中へ消えていく。
これじゃあ何が正しくて何が間違っているかなんて分かるはずもない。
だって私の目にはその蛍光灯の光と、鮮やかなパッケージの色に、
すっかり冒されてしまっているのだから。
「さむい〜!」
しゃがんでお菓子をぼーっと眺めていると、知っている声がしたので、
振り返ると山本君がいた。
「あ、笹川。」
「こんばんは。」
「何してんの」
「お、お菓子…おいしそうかなって…」
「かな」って何だ「かな」って。と小さく笑いながら、
山本君は私の隣に同じようにしゃがんだ。
だから私たちはカップルみたいになった。
だけどそんな私の気持ちも知らずに、
山本君はお菓子のパッケージを見ながらケラケラ笑っている。
「どうしたの?」
「や、コレ見てコレ。おまけ5種類あんだけど、4の人形あきらかにブサイクじゃねえ?!
んでさ、『この箱には4番が入っています』って書いてあんじゃん。
今これ4番しか残ってないよ。」
「あは……おもしろいね」
「だろ!?うわやっべーなこれホントに……笹川買わない?」
「えっなんで?!」
「じゃ俺買うわ。二つ買う。」
「はあ」
「んで笹川に一個あげる」
「えっ、い、い…(らないのに)」
私がどもっていると、山本君はそのギラギラしたピンクの小さな箱を二つ取って、
それから「よっし」と立ち上がった。
ズボンから垂れているチェーンがカチャカチャと鳴って、ビクッとする。
そしてふわっといい香り。
私の心臓は今すごく音を立てて血を体中に送り込んでいるけれど、
そんな気持ちは闇に潜ればまたすぐ消えてしまうだろう。
そして私は、それを悲しく思えたことを少し幸せに思うだけなのだ