◇◇◇  
その日、ランボの10年バーズカの誤爆により、24歳の沢田綱吉は10年前の世界に来ていた。  
本来ならば五分経てば元いた世界に帰れるはずなのだが、どうやらお約束の故障、らしい。  
学校の時計を見ると、現在の時刻は午後四時前だが、綱吉のいた時刻から三時間以上は差があった。  
10年前の自分はすでに学校を出ていて補習をサボろうとしていたらしく、そこは校門前だった。  
スーツ姿の人間が学校の周りをうろちょろしていたらこの時代の雲雀さんに喧嘩でも売られるかもしれない。  
厄介なことになる前にこの場を離れようと、綱吉は目の前で騒いでいるランボを抱えた。  
確かこの時代の自分は常に獄寺や山本と一緒にいたと思うのだが、その日は珍しく綱吉一人だった。  
「そういえばこの時代…」  
14歳の京子ちゃんがいるはずである。ドン・ボンゴレとなった今や、過去に来なくては自由に歩き回れない身である。せっかくだからちょっと遊んで帰ろうかと綱吉は怪しく笑みを浮かべた。  
◇◇◇  
 
四時を過ぎた頃、京子はすでに下校して家の近くまできていた。  
今日もごく普通の、特にいつもと変わらない一日が終わろうとしていた時、急に腕を掴まれて京子は振り返った。  
そこには黒のスーツを着た青年がいた。兄ぐらいの背丈だが、随分若い男だ。  
誰かに似ているような顔立ちをしているが、知らない人に変わりないので京子は首を傾げた。  
「あの…?」  
「…思ってたより小さいね。京子ちゃん」  
「え?」  
「悪いけど、ちょっと付き合って」  
そう言うと、男は無理矢理京子の腕を引っ張った。京子は一瞬戸惑い、危険だ、と感じたのだがもう遅かった。  
男に手を引かれるまま、普段人が来ないような狭い裏路地に京子は連れ込まれた。  
京子は何度か声をかけたのだが、男は何も返さずに京子を壁に押さえ付ける。  
男は自分の知っている人間に似ているのだが、そんな訳はないと京子は自分に言い聞かせた。男は力も強い。  
「あの…誰…ですか…?」  
京子は恐る恐る尋ねたが彼は答えない。  
「14歳ってことは初めてか」  
「あの…」  
「じゃあちょっと痛くしちゃうかな…」  
「!」  
男の手が突然太股を触り、スカートの中に入ってきた。下着越しに下半身を触られて、京子は身体びくんと震えた。  
 
「やっ…あっの…っや、やめて…」  
京子の顔に朱が走る。その様子に、彼はまた笑った。  
「いっやっ…」  
両手で男の肩を精一杯押して抵抗するが、年上の男の身体は、京子の細い腕ではびくともしなかった。  
下着を優しく撫でられて、少しずつ身体の力が抜けていくのがわかる。  
男の人に…それも知らない人間に、そんなところを触られるなんて京子は恥ずかしくて堪らなかった。  
「…あっ…やっ」  
触れていただけだったのが、今度は下着の中にゆっくり冷たい指先が通っていく。  
京子の敏感な突起に二つの指が止まり、男は突起を摘んだ。  
「やっ…!」  
「初めてならやっぱりここかな」  
「っ!」  
初めての強い刺激に、京子はガクガク脚を震わせた。この人…ツナ君に似てる…。  
下半身から伸びていく快感に呼吸が乱れた。慣れたように京子の突起を弄ぶ男の笑みが、京子の瞳に焼き付く。  
やめて…ツナ君みたいに…笑わないでっ…  
「うっああっ…」  
男の冷たい手とは対照的に、京子の下半身は熱くなっていく。男は身体を引き寄せて、強引に京子の口を塞いだ。  
抵抗していた京子の両腕は男にとってなんの意味もなしていなかった。京子の口内に男の舌が入って中を掻き乱す。  
悲しみと苦しさから、京子は男の肩を必死で叩いた。唇が離れても、舌が中で触れ合う。  
お兄ちゃん…花…ツナ君…っ助けて…誰かっ…  
「…ふあっ…」  
漸く解放されると、一本の唾液が京子と男の唇を繋げた。とろけるように熱い、京子のファーストキスだった。  
京子の視界が涙で滲む。また下半身に走る刺激に、京子は混乱した。もうやだ…やだよぉ…っ  
「やめっ…やめてっ下さっ…」  
「京子ちゃん…可愛い…」  
 
男はまた京子の唇を奪い、下半身を弄る。支配するように身体に伝わっていく快楽。  
その快感が、知らない男によって生み出され、それに感じてしまっている京子は自分を呪った。  
その時、男の力が一瞬弱まったのを感じて、京子は咄嗟に逃げようと身体を捻り、  
男の腕をすり抜けて駆け出した。怖かった。地面を蹴る脚が震えてるのがわかる。  
男が後を追ってくるのが聞こえて、京子は必死で走った。裏路地を抜ければ人がいるはず。  
早く誰かに助けてもらわなきゃ…  
「きゃっ」  
その時、京子は急に飛び出してきた猫を蹴りそうになって、その場に躓いてしまった。  
目の前にした地面は汚かった。地面に膝をついた京子は、起き上がろうと腕に力を込める。  
「大丈夫? 京子ちゃん」  
不意に背中をついた声にさっと血の気がひいた。  
慌てて立ち上がると、今度は後ろから手が伸びてギュッと抱き締められる。男がまた笑った気がした。  
「逃げちゃダメ」  
男は京子の耳元でそう囁いてから、彼女の耳に舌を忍ばせた。  
抱き締められた腕がそっと京子の身体をいやらしく愛撫して、片手が胸の膨らみを包み、もう一方が下半身に伸びる。  
「やっ…やだっ…んっ…」  
身体を引くが、男の手は難なく京子の下着の中へ入った。下着はしっとりと濡れていた。  
「いやぁっ…ぁんっ」  
男は京子の頬に舌を這わせた。愛液の出てくる蕾に男の指先があてがわれて、京子はまた大きく反応した。  
「んんんんっっ…!」  
男の指が京子の中に入った。熱くなった膣壁の間を愛撫されているにもかかわらず、  
もう一方の男の腕を京子はギュッとした。もう立っていられないほど脚が震え続けている。  
しがみつかなければ自分を保てない気がした。男の指がまた無理矢理狭い京子の中に押し進んでくる。  
男の手を伝って、雫となって京子の愛液が脚へ、地面へと静かに落ちていく。  
 
「ああっ…いやっ…やあぁんっ…」  
中にっ…入ってッ…  
自分の中で好き勝手動き回り、身体を愛撫し続ける男の下半身を背後に感じて、京子は恐怖に怯えながら喘ぎ声を抑えられずにいた。  
「あくぅっ…あんっ…」  
「京子ちゃん…すごい濡れて…」  
京子の背中に衣服越しに男の下半身が当たっていた。わざと音を立てるように中を弄られ、京子は必死で男の衣服を握り締めた。クチュクチュと激しく水音がなる。男の強引な愛撫に、頭が支配されてしまいそうになる。その時、脳裏に浮かぶ、自分を犯す人間に似た彼。  
「ツナ…君っ…」  
京子はうわ言のようにその名前を口にした。どうしてか涙が止まらなくなった。声が震えた。  
「助けて…ツナ君っ…」  
「…誰に助け求めてるの?」  
京子が助けを求めたその人間は、今彼女を犯している人間だというのに。男は笑った。  
「怖くないよ、すぐにイカせてあげるから」  
「っあぁ!」  
京子の耳を舌で舐め上げて、男はさらに京子の中をグチャグチャに掻き乱した。ガクガクする力ない脚。  
濡れた下着の中で弄られる蕾。身体を愛撫する男の腕にしがみつきながら、京子は下半身の興奮が高まっていく気がしていた。もう逃げなきゃなんて頭になかった。そんなことが敵う状態ではなかった。ただ誰かの助けを待つしかなかった。身体が、熱くて…  
「いやあっ…ぁあっ…んあっ」  
「こんなに感じちゃって…こんなに淫乱だとは思ってなかったよ」  
まさか10年前からね、と男は笑った。膣内の感じるところをしつこく愛撫され、もう立っていられない京子の身体を、男は愛撫を繰り返した腕で抱えて、京子を絶頂へと追い込んだ。爪先立ちになった京子の脚は、彼女の精液が流れ出ていた。  
「あっあっぁあっダメっ…ぁっ」  
「外なんかでイっていいの?」  
「やっあ…! ゃっ」  
「…」  
「あっぃっあぁっ…ぁあぁああっっ…!!」  
瞬間、京子の身体にこれまでにない快楽が駆け抜けた。自分の理性が抑えられないほどに下半身がヒクヒクして、震える両足を擦り合わせる。初めての絶頂に、クラクラと眩暈がした。  
京子の小さな身体を支配した快感は、彼女を絶望させるには充分な衝撃だった。男の手が京子の蕾から引き抜かれた瞬間、京子はまた初々しく反応する。男は彼女の愛液まみれになった手を舐め、それを終えると肩で呼吸する京子の耳元で囁いた。  
「…イっちゃったね京子ちゃん。こんなところで」  
「はぁ…はぁ…っ」  
「いけない子だ」  
男はぐったりとした息の荒い京子を抱き抱えてまた笑う。男は熱い舌で京子の震える唇を舐めた。  
「やっ…」  
 
男はもう一度壁に京子の背中を合わせた。崩れ落ちないように京子の身体を抱き締めてキス。  
京子は苦しさと熱で頭がぼうっとしていた。それが快楽によって目覚めさせるように刺激される。骨張った男の手が、京子の細い両肩を包んだ。突然合わせられた唇から彼の舌が絡み合う。唾液を奪うようなキスが、京子の思考をいっぱいにした。  
「はぁっ…んっぁ…んはぁ…」  
堪らず京子の口端から睡液が零れ落ちる。苦しいのに、嫌なのに、絶頂を迎えたはずの京子の下半身が疼き始める。  
どうしてか京子は自分でもわからなかった。でも確かに、京子の蕾はさっきとは比べ物にならないほど敏感に反応していた。お互いの視線がぶつかり合う。  
「並盛の制服…懐かしいね」  
男は窮屈なスーツのネクタイを人差し指で引っ張って緩める。京子の制服のリボンを解き、手際よくボタンを外す。されるがままに犯されようとしているのに、もう恐怖に震えて力が入らない。背中に回された手が、ブラのフックを外した。  
「ぁっ…」  
ブラをずりあげられ、男が露になった京子の幼い乳房に手を差し伸べると、京子の口から甘い吐息と一緒に、僅かな喘ぎ声が発せられた。男が胸の頂きにある突起に触れると、それはすでに硬くなっていた。  
京子の白い肌に咲く、二つのピンク色。同じ年頃の子よりも少し大きめの、ぷっくりと膨らんだ弾力ある胸は、体温の違う男の手にすっぽり収まった。円を描くように優しく揉むと、  
京子がまた可愛らしい反応を見せてくれる。半分悪戯のつもりでこの小さな少女を捕まえたのに、幼いながらも酷く官能的な京子の全てに、  
男は自制ができるか少し考えた。まだ未発達な、それでも綺麗な京子の身体を目の前にして、男は自分の唇を舐める。幼くも女性特有の白くて柔らかで、細い綺麗な身体が、快楽に震えて…ゾクゾクする。  
「柔らかい…」  
「っ…やっ」  
「気持ちいいよ…京子ちゃん…」  
試しに胸の突起をギュッとしたら、京子はまた敏感に身体を震わせた。他人に触られるなんて思ってもみなかったんだろう。初めての快感。力ない京子の僅かな拒絶と抵抗が、男には逆にそそった。男は突然身を屈めて、京子の乳首を口に含んだ。  
「やっやぁッ…」  
舌を使って優しく、しかし刺激的な快楽が、京子の声と蕾をまた濡らす。男の熱い口内で時に甘噛みされて、睡液が絡み付く。感じたことのない快楽。熱くびしょびしょになった蕾を、下着越しに男がもう一度触れた。  
「ああぁッ…ぁっ…やっ…」  
蕾に突然触れる手と、甘噛みされた快楽に、京子は身を捩らせた。  
「ひあぁっ…いっや…」  
気持ちぃッ…  
声に出して言ってしまいそうだった。無理矢理されてるのに、彼がして与えてくれる快楽に少しでも悦んだ自分が恥ずかしかった。赤面する京子の、今までと違う反応に、何か気付いたように男は口を離した。睡液が男の唇と乳首にべっとりと付着した。  
 
「ほんとに嫌?」  
男の瞳はじっと真剣に京子を見つめた。京子は一瞬戸惑った。それを隠せなかった。何故戸惑ったのか、それさえも判らず言葉が詰まる。拒絶の一言が言えなかった。それどころか、京子は男をツナとだぶらせた。  
思わずツナ君…と呟き、京子はしまったと口を閉じる。男はそれを聞いて笑った。嫌だと言って素直に解放してくれる訳じゃないなんて予想できること。それでも、この問いに拒絶を見せることもできず、  
少しでも男を想ったのが悔しかった。ツナ君を傷つけるみたいで、それが嫌で、言葉を飲み込んでしまったことを後悔した。男にもきっと悟られただろう。  
「京子ちゃん」  
男は抵抗の消えた京子の蕾を覆う下着をずり下ろした。一度絶頂に達して、とろりと精液で溢れた秘部は、本能的に男を待っている。絶望する京子はふっと男を見上げた。諦めに似た思いで、  
男に屈した自分を憎んだ。体格も年も離れたたった一人の男に、快楽とともに沢山のものを奪われた。男はまた揶揄するような声と言葉で笑うのだろうと京子は思った。  
恥ずかしくて堪らなくて、どうしてかツナ君の顔が浮かぶ。傷つけたくない。知られたくない。涙が頬を伝った。ツナ君…  
すると、男が急に頬に手を翳して京子の涙を拭った。その手があまりにも優しくて驚いて、京子はふと、顔を上げる。男はもう、笑っていなかった。  
「京子ちゃん、ありがとう…ごめんね」  
「っ…?」  
男はベルトに手をかけて、ジッパーを下ろす。ぶつかる金属音。言葉の意味がわからず、京子は男をじっと見つめた。男とツナを重ねて、京子は確かめるようにもう一度その名を呼んだ。すると、彼は今まで見たこともないほど優しく微笑んだ。それが京子への、返事だった。  
その時、京子は取り出された男の下半身を見た。兄や父親のを小さい頃に見たことはある。  
だけど今、京子の蕾のすぐ傍でそそり立つそれは、はち切れんばかりに熱く膨張して、少女にとってはグロテスクなものに変わりなかった。恐怖が一層身体を震わせる。  
突然両膝を男に抱えられ、咄嗟に京子は両腕を男の首に絡めた。恐怖の予感。  
「っゃ…っ…ダメッ…」  
京子は泣きそうな声で男に言った。  
「大丈夫…ちょっと痛いだけだよ…」  
「やッやだッやだッやめっ…ッ!」  
熱くなった男の先端が、京子の蕾の入口に触れる。恐怖と羞恥で涙の止まらない京子に、男は額を合わせて京子を真剣なまなざしでじっと見つめた。  
「力抜いて」  
「…っ…」  
男は京子を見て、ふっと微笑んだ。  
「愛してるよ、京子ちゃん…」  
「ぁ…」  
ジュプ…  
ゆっくりと…京子の中に男の先端が挿入された。支えられた京子の身体が、少しずつ引き寄せられて男との距離を埋めていく。男が少し強引に腰を進めていくと、京子は男の首にギュッとしがみついた。  
 
「やあぁっ…痛っ…っ抜い…っ…ぅあっ…ぃやッ…」  
京子の中は確かにもう頃合だったが、10歳も年上の男を中に迎えるには窮屈すぎた。  
こじ開けられた窮屈な中を進み、男の肉棒は京子の処女膜を突き破る。京子の蕾から赤い雫が伝ったが、男はさらに中へ行こうとする。京子は声にならない悲鳴をあげ、時に息をするのも忘れていた。  
「ぅあっあっあぁっっ…」  
「っきつ…」  
「痛っぃ…痛いよぉッ…」  
涙がボロボロ溢れてくる。快楽なんてなかった。痛みが全てだった。自分の中を、あの恐ろしい男性器が入ってくるだけ。性器の繋がりは男と女の繋がり。たったそれだけのことだった。  
中学生の少女の中を貫く成人した男性器は、半ば強引にも漸く京子の中に全て飲み込まれた。京子の細い身体は痛みと羞恥に震えていて、男に無理矢理広げられた中は、焼けるように熱く痛い。痛みを訴える京子は涙を男のスーツを押し付けた。  
中に…中にツナ君が入ってるッ…  
「っ…」  
男は京子の唇を塞ぎ、そのまま腰を動かした。京子の悲鳴は飲み込まれた。徐々に出し入れを繰り返して、だんだん速度を増していく。特有のいやらしい水音が耳に響いた。お互いの敏感な性器が、何度も激しく擦れ合う。その度に京子の身体が揺れる。  
「ふあぁっ…あああぁっ…ああッはあぁ…!」  
小刻みに揺れ続ける京子の身体は、最後の力を腕に込める。抱えられた膝も大きく揺れ、ローファーが片方脱げ落ちた。言葉にならない。理性など欠片だった。全部この人に委ねてしまった。  
おかしくなりそうなほど感じて、頭がいっぱいになって、この人しか見えなかった。乱れた呼吸で、京子は必死で彼の名前を繰り返した。水音と、お互いの吐息と、強い鼓動が聞こえてくる。  
男が刻む律動に合わせて、京子は揺れながら「あっあッ…」と声を鳴らす。摩擦の痛みから、愛液が溢れて快楽に変わっていく。  
 
「あッあっ…おっくッ…あたってッ…」  
「はぁ…はぁ…京子…ちゃん…」  
始めが痛みだけだったなんて嘘みたいだった。性器の結合部分は京子のスカートで殆ど見えない。  
脱ぎかけの下着が片足に通ったまま、ハイソだけになった脚を彼に抱えられ、どんどん深く京子の中を突いてくる。流れ出る愛液と、自分の中を激しく出入りする男性器。深く、奥まで…時々痛みを伴ったけれど、  
後にもたらされた快楽に京子は幸福を感じていた。快感に溺れた訳じゃない。自分を見失いそうで、京子は男の口付けに夢中になった。舌にお互いの睡液を絡めて、お互いの存在を確かめ合うように唇が重なる。  
「はあぁあッ! ツナくっ…イっちゃッ…あぁッうっ…あぁ!」  
ツナ君…  
目の前にいるのは私の知らないツナ君なの。あなたは本当に不思議な人だ。本当なら有り得ないのに、私は彼をツナ君だと信じて疑わない。夢でも見ているのかしら。まるで未来にいる彼と繋がっているみたい。彼の瞳に熱が灯されたのをじっと見ていた。…うっとりした。  
「ツナ君っ…ツナ君ッ…ぁあッあっあっあッ」  
「…っ」  
「ぁあぁああぁあッッ!!」  
身体の奥から響いてく快楽に、京子は身を小さくして男の身体にしがみついた。初めての絶頂など比にならない、熱く身体を駆け抜ける一瞬。そして同時に、身体の中に熱い何かが注がれた。まだ…出てる…  
ゆっくり彼の性器が引き抜かれると、一緒に白く濁って交ざりあった精液が落ちていった。抱えた脚を下ろして、力のない京子の身体を、男は倒れないように抱き寄せた。痙攣したように、決まった間隔で京子の身体がビクンと動く。絶頂を迎えたばかりの、少女の身体が。  
「ツナ…君…」  
京子が彼の名前を呼んだ。彼はまた笑ったけれど、京子には不思議とそれが嬉しかった。  
「ごめんね…」  
そしてそっと、綱吉は京子の額に人差し指を当てて火を灯した。さっきまでの…彼と出会ってからの記憶が浮かんでは消えていく。不思議な感覚だった。京子の空ろな瞳に、ユラユラと美しい炎が浮かぶ。  
「…さよなら。10年前の、京子ちゃん…」  
男はそう言って死ぬ気の炎を消し、京子は急に気が遠くなった。待って、と…声は出なかった。薄れゆく意識の中で京子は彼が困ったように苦笑して、軽くため息を吐いたのを聞いた。  
「この時代の京子ちゃんに欲情したなんて言ったら、リボーンから説教聞かされるだろうな…」  
京子の意識はそこで途切れてしまった。  
 
◆◆◆  
京子を壁に寄り掛からせ、綱吉は処理を済ませてベルトを直した。ボロボロで淫らな制服姿の彼女を見下ろして、綱吉は苦笑した。困った。  
「…っ」  
刹那、何かを感じた綱吉は素早く拳銃を取り出して振り返った。しかし、どうやら相手の方が一枚上手。超直感も幸せ惚けか、コンマ数秒早く突き付けられた拳銃に、綱吉の笑みは引きつった。  
「うげ、リボーン…」  
「ちゃおっスダメツナ。随分やらかしてくれたなあ」  
「もうダメじゃないんだけど。誰かさんのお陰で」  
「女一人に情が移るマフィアのボスなんてダメダメだぞ」  
黒いスーツ姿の赤ん坊。ペットのレオンに黄色いおしゃぶり。10年前ってそうか、赤ん坊だったんだよな。いったいいつから見ていたのやら、久し振りの家庭教師と、彼のダメ呼ばわりに苦笑しつつ、綱吉は拳銃を懐にしまった。  
「悪かったよ…反省してる」  
「そんなこと言って許せるもんじゃねえぞ」  
「心配しないで。今の記憶は一時的に消したよ。何らかのショックが起きない限りは、今日のことは思い出せないはずだから…ホントはこんなつもりじゃなかったんだけど」  
「じゃあどういうつもりだったんだ?」  
「え、」  
リボーンの問いに、綱吉はバツが悪そうに目を逸らした。読心術を心得ているから聞かずともそんなこと解ってるくせに、綱吉は10年前のリボーンにさえ敵わない自分を呪った。いつになっても、この家庭教師には頭が上がらない。  
「ええ…あの…ちょっと悪戯するくらい…」  
「…」  
だってほら、10年前だよ? 本気になる訳ないじゃない。それで喜んでたらまるで俺がロリコンみたいじゃない。少女相手にいい年した人間が本気になる訳………そんな言い訳はこの家庭教師には通用しない。  
「お前の悪戯は本番までやるのか?」  
「…すみませんでした…」  
勝てる気がしないので素直に謝った。どうやらココの関係性は10年前でも変わらないらしい。  
すると、リボーンは深くため息を吐いて、「始末しとけよ」とだけ呟いてさっさと帰ってしまった。  
リボーンにしては随分意外な返事だったが、綱吉はその後ろ姿を見て苦笑した。時刻を確認すれば五時前だ。少女の服を整えて、意識の途切れた幼い少女を抱える。  
「10年後まで待っててね…」  
そう願うように呟いてから、24歳の沢田綱吉は、そっと優しく彼女に触れるだけのキスをした。  
 
END  

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