「あの…ツナくん…私、どうして…」
がばりと、起き上った京子に綱吉は穏やかな表情と声色で言葉を発する。
「ごめんね、折角さっきまでしあわせな気分だっただろうにね」
「…え…?………あっ」
僅かな間綱吉の言葉を理解出来ずに思考の糸をぐちゃりと
絡ましていた京子だったかついさっきまで、
自分が眼を覚ますまで何をしていたのかを思い出し、
そしてまた恐怖に襲われる。恐らく数十分前、
自分はクラスメイトであり目の前にいる少年の親友でもある男、
山本武と肩を並べて家に着くまでの帰路を共にしていた。
それは些細な成り行きだった。偶然が偶然を生み出した成り行き。
それでもそれが偶然だろうが必然だろうが京子にとってたまらなく幸せな
出来事だっと事には変わりなかった。
すらりと高い身長、細いながらも綺麗に付いた筋肉、整った顔立ち、
清潔な香り、おおらかで穏やかで少し天然なその性格。その全てが
いつの日からか京子を惹きつけてやまないものへとなって。
ただ見ているだけでも幸せだった。だが、
ある時を境に沢田綱吉、獄寺隼人と急速に距離を縮めて行った彼と自分は
少しづつ顔を合わせる機会が増えていき、
それによって秘められていた京子の想いはさらに膨張していったのだ。
「そうだ…私…山本君と…それで…交差点で別れて…暫く一人で歩いてて…」
ずきりと、痛む頭部を押さえながら京子は塞がっていた記憶を再生させていく。
だが、それから先が全くといっていい程に思い出せないのだ。