並盛中学の人気のない廊下。そこに、部活帰りの三浦ハルの姿があった。  
「ヒバリさん、土曜日でもいますかね?」  
体育館での合同練習を終えたハルは、校門前にいた風紀委員を見てもしやと思い応接室に向かっているのだ。  
ハルの予想が当たっていれば、雲雀は授業の無い日でも学校にいるだろう。ところが、応接室に近付くと誰かの叫び声が聞こえてきた。  
「す、すみません!…ぐあっ!ヒ…もうやめ…」  
声が途切れたかと思うと、次の瞬間傷だらけの風紀委員が応接室から飛び出してきた。  
「は、はひ…!?風紀委員Aさん、大丈夫ですか!?」  
ハルは慌てて倒れている男に駆け寄ったが、彼は気絶しているようだ。  
ハルは応接室の扉を開けた。  
「ヒバリさん!なにしてるんですか!?暴力はダメですっ!!」  
 
「…?ああ、君か」  
雲雀は血のついたトンファーを手に、背を向けて立っていた。  
「僕は今機嫌が悪いんだ。帰ってくれる?」  
その声は言葉通りいらだっていたが、ハルは引き下がらない。  
「いいえ!ヒバリさんが風紀委員Aさんに謝るまでは帰りません!」  
「彼は頭が悪いだけだよ」  
「はひっ?ちんぷんかんぷんです!」  
「いいから帰ってよ」  
「それはいやです!」  
雲雀はため息をついて振り返った。その顔はいつもとさして変わりなかったが、ハルは何故か恐怖を感じてたじろいだ。雲雀はハルの胸ぐらをつかむとそのままソファに押し倒した。  
「はひっ!?」  
抗議するすきも与えずに唇を重ねる。ハルが胸をどんどんと叩くのも構わず、雲雀は半ば無理やりに舌を入れた。  
その間、ハルの服はほとんど引きちぎられるように脱がされていく。  
今日はすごく乱暴だ。ハルは雲雀のことを初めて怖い、と思った。  
 
酸欠で頭がぼんやりしてきた頃、ようやく唇が離れた。  
「は……一体、なんなんですか…」  
「黙ってなよ」  
雲雀のシャツをつかんでいたハルの手をはらうと、既にあらわになっていた下着をずらして胸に触れる。  
「ひゃっ…」  
雲雀は片方を口に含み、舌で転がし始めた。もう片方は指で弄る。  
「やっ…あ、ん…」  
あいたほうの手は首筋をなぞり、その冷たい感触にハルは鳥肌がたつのを感じた。  
胸への愛撫は続く。いつもはこれくらい何でもないことのように簡単にやってのける雲雀も、今日は既に息が荒く、なんだか余裕がない。  
まるでなにかに急かされ焦っているようだった。  
 
やがて首筋にあった手が下へ下へと落ち、スカートの中へ伸びていく。  
「あっ、…んん…ゃ、ヒバリ…さんっ」  
雲雀は下着越しにハルの秘部をなぞった。ハルの体がびくんとしなる。そこは既に湿っていて、雲雀が指を動かす度に卑猥な音をたてた。ハルの顔はきっと真っ赤になっていることだろう。火照っているのが自分でもわかる。  
しかし、雲雀は一度も彼女と目をあわせなかった。…それが、ハルをどうしようもなく不安にさせた。  
「…ぁ、ひ、ふぁっ」  
雲雀は濡れて役目をはたさなくなった下着を脱がせ、自分のものを一気に突き立てた。  
「っ!い、…たぃ…あぁ…っ!!」  
ハルが逃れようとすればするほど、それは奥まで入っていく。  
雲雀が動き始めると、次第に痛みよりも快感が勝ってきて、声は甘い響きに変わった。  
 
「や、ふ…あん…っは…ぁ、ヒバリさん!」  
ハルがその名を呼んだ途端、激しく腰を打ちつけていた雲雀の動きが止まった。  
「…?ひば…」  
雲雀はハルの口を乱暴なキスで塞いだ。触れ合った唇は、焼けるようにあつい。ようやく唇が離れると、雲雀はすぐに顔を背けた。同時に、また抜き差しを繰り返す。  
「あ、ぁ、ひぁっ…や、ん!」  
押し寄せる快感に、ハルはもう達する寸前だった。雲雀も、もう限界が近いようだ。  
こっそり盗み見ると、その端正な顔は快感に歪められていた。眉をひそめ、黒曜石のような瞳を潤ませる姿は妖艶で美しい。  
しかし、ハルがその顔に見入っているのに気付いたのか、雲雀はまたしても顔を背けてしまった。そして、雲雀はハルから自身を抜き彼女の腹に白い液体を吐き出した。間を空けずにハルも限界がきた。  
「…は、ぁ」  
雲雀はハルの上にぐったりとしなだれかかる。汗で前髪が額にはりついていた。  
 
「…く、はぁ…っ、…ぁ」  
お互いに息は上がっていたが、雲雀の声には何故か違った響きがあった。まるで、小さな子供が必死で涙をこらえているような…  
そっと頬に触れると、水のようなものがハルの指をつたった。  
「ヒバリ、さん…?」  
雲雀は、泣いていた。ハルには何が彼を悲しませているのかわからなかったが、今日彼の心が乱れていた理由が、やっとわかった気がした。  
本当は安心させるようにぎゅっとしてあげたかったけれど、そうしてやるには雲雀の背中は広く、ハル自身もそれほどの力は残っていなかった。だから、変わりに柔らかく包み込むように抱きしめて、その頭を撫でた。  
 
ハルの腕のなかで、雲雀は静かに涙を流し続けた。  
 
 
end  
 

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