―これは夢か?
レヴィ・ア・タンは今の状況を整理できずにただただ呆然としていた。
淡いピンクの照明に染め上げられた白いシーツの上に横たわる彼の上には一人の少女。
「あの…?」
眼帯に覆われていない方の瞳がレヴィを覗き込む。
「な…なななん―」
何だこれは?
何処かの部屋のベッドの上。それはいい。いや、よくないのか?
いや、やはりそんな事はどうでもいい。
大事なのは何故、彼の恋い焦がれる妖艶な少女が自分の上。
―しかも丁度、下半身の辺りに鎮座しているかだ。
「…レヴィ、さん?」
「――っっっっ?!!!」
唐突に呼ばれた事のない名前を呼ばれて、硬直する。
小首を傾げるその仕草まで挑発的で、レヴィから正常な判断能力を奪っていく。
「私…初めて、なんです」
「!!」
体中の体液が沸騰直前、いや蒸発する勢いだ。
金魚のように口をパクパクするしかないレヴィを意に介する事無く、クロームは上着を脱ぎ捨てた。
ゆっくりと焦らすようにシャツのボタンが外され、合間から照明で淡く染まった肌が覗く。
―今、レヴィは確実に追い込まれていた。
(ボボボボボス!俺はどうすれば…!)
レヴィの脳裏でXANXUSがぶはーっと満面に笑みを浮かべる。
丸で彼を祝福するかのようだ。
(い、いいんですか?ボス…)
レヴィの葛藤など知らない、さくらんぼのような少女の唇が震えるように最後の呪文を紡いだ。
「優しくしてください…」
ぷつん。
音を立ててレヴィの理性の糸が切れる。
レヴィの無骨な手がクロームの柔らかな頬を包み、そのまま彼女の唇を…。
「これから先は有料だよ」
ピタリ、とレヴィの動きが止まる。
閉じていた瞳を恐る恐る開けば目の前には甘い香りを振り撒く南国果実。
唇に触れるその感触はお世辞にも心地いいものではない。
「うわあっ!!!」
驚いて、手にしていたそれを思いっきり投げ捨てる。
床をコロコロと転がるそれを呆然と見詰める。―これは…。
「追加は一時間100万から。猫耳、うさ耳、メイドにナース、他各種オプションは別料金だよ」
世界一強欲な赤ん坊の強請りに行き場の怒りを覚えながら、レヴィは預金を引き出しに銀行へと飛び出した。
南国果実の嘲笑が聞こえた気がした。