「ああもう、どうやったらこんなふうにコブ結びできるのよ」
ビアンキはランボの上に跨ったまま帯と格闘している。
浴衣の裾から覗く太ももが、ランボの脚を両側から拘束する。
(…ヤベ…どーしよ…。ちょっと、ホントにやばいんですけど、ビアンキさん)
「解けた」
企むように笑うと、もうこれだけ肌蹴ているのだから、今更
帯があったってなくたって意味なさそうなランボの浴衣を、そのままシーツにした。
ビアンキの指が、ランボのわき腹をなぞって上下したり、
鎖骨にかかる熱い息だとか、足の間に差し込まれたビアンキの左足が、
ぎこちなくランボのものに触れるそのもどかしさだとか、
そんな状態にランボは全部素直に反応して、
さっきから、まるで自分のものとは思えない情けない声しか出せないでいる。
「可愛いわよ、バカ牛」
「…ビアンキさん 、僕で遊んで…る?」
「遊んではいないけど、楽しんでるわ」
窓から漏れる月の光で、ビアンキの頬が青色に染まってる。
それは人間ではないように美しく、人形みたいに綺麗だった。
---こんな人が、僕を相手しているなんて、
やっぱ遊んでるだけなんじゃないか。
卑屈になって、僕は、ふがいなくも悲しくなってしまった。
「嫌なの?」
ビアンキは、ランボの態度を見て、身体を起こすと、そっとランボの頬に触れる。
「ちが、そうじゃなくて、なんでもない!…です」
「…?」
「…ビアンキさん が、綺麗だなって思っただけ」
「…言うようになったわね」
アンタは成長したわよ。
と、耳元でビアンキの声がした。
ダイレクトに、ランボの脳に訴えるみたいに。
「毎日大人の男になっていっているわ」
「 …本当に?」
「そうよ。…だから、そんなに気後れする必要ないわ」
---いつも、ロメオという昔の恋人と比べられて、
僕の事なんて見れてくれていないと思っていた。
けど、そんなこと言われたらさ、もう止まんないよ。
「ビアンキさん …!!」
やばい、本当に、この人のことが好きだ。
「ビアンキさん 、いきなり挿れたら…怒る?」
「急いでるの?」
「とりあえず今挿れなきゃやばいカンジです…」
「…いいわ、私は平気よ」
多分少し触っただけですぐ達してしまいそうなランボは、
カッコ悪いと思いながらも、すぐにビアンキの中に入りたかった。
「アンタを苛めてたら、私も濡れてしまったから」
挑むように笑われて、ランボの理性は吹き飛んだ。
無理矢理ビアンキの浴衣を引き落とす。
ランボと違って、綺麗に結わえていたその帯は、ランボが横に引くとすんなり解けた。
一枚布は、ストンと畳に螺旋を作って落ちた。
釣られて浴衣も、その上に波紋のように、落ちて。
月が今度はビアンキの身体を青白く発光させる。
薄い体を引き寄せると、ランボの胸に柔らかい感触が当たって、
もうそれだけで、ランボの心拍数は限界値を刻み続ける。
高そうなビアンキの下着を強引に落とす。
「濡れた」というビアンキの表現は正しかった。
触れたランボの指と、下着が時折触れるビアンキの太ももに銀の反射を引き起こす。
現れたビアンキの下身に、ゴクリと生唾を飲む。
「…バカ牛、そんな凝視しないでくれる?」
「あ、ごめんなさい!あ、あの、僕…!!」
「ふふ」
ビアンキが、ランボの下着に指を何本か引っ掛けて、一気に引きおろす。
ゴムの部分に引っかかったランボ自身が、反動で一気に下腹部を叩くように戻ってきて、
ビタン!という音を立てて腹を打った、その衝撃でランボは一気に恥ずかしくなった。
「…バカ牛…」
「…え、な、何ですか…」
「・・・・・・・・・・・・」
(な、なんなんだ!?この状況で黙るなよ、頼むから!!)
「私、無理」
「へ?」
「アンタの、大きすぎるわ」
「…は?」
「そんなに大きいの入る訳ないじゃない、無理よ。絶対無理」
………は?
ビアンキが、無表情で後ずさりしていく。
浴衣を引っかき集めながら。
「…ビアンキさん」
「…何」
「挿れさせて」
「嫌」
「ごめん、僕、もう、無理です」
ビアンキの足首をつかんで引き寄せる。
ビアンキのアソコが一瞬サブリミナルみたいに視界に飛び込んで見えて、
以前リボーンや獄寺にお酒の席で、童貞なことをからかわれ、
「どんな女も穴三つ」と教わったことが頭を一瞬掠めた。
(…いくら僕だって挿れる場所ぐらい知ってるっつーの!)
「…ちょっと、やめなさい」
「ビアンキさん、キッツ…」
「私のがキツイんじゃなくてアンタのが大きいのよ」
「…ん、入らない…」
「…普通そのサイズのはもっと濡らさないといけないわ」
「知らないですよ、初めてなんだし」
「…この状況で開き直らないでよ、バカ牛」
「こんな時までバカ牛って言わないでください!それに大きさのことも関係ないですよ!」
「だって大きいものは大きいじゃないの、バカ」
「誰と比べて言ってんのかなって、また不安になるでしょう…!」
---…普通、こういう会話はこういう最中にするもんなんだろうか。
ここがリボーンやボンゴレ10代目の部屋と離れてて本当に良かった。
「ビアンキさん、ちょっとだけ、我慢できます?」
「…え?」
先だけ突っ込んだままビアンキをくるりと振り向かせると、
後ろから胸を両手で包む。
「あ…ん…ッ…!」
「…うわ、ビアンキさん、声、かわい…」
---感じてる?
どうなんだろ。
後ろから、ビアンキの背中にランボは胸を押し付けて、腰のあたりから回した腕で抱きしめる。
指先で胸の先端を弄ると、逃げるようにビアンキの腰が引けて、
それがまたランボの腹に密着する。
(う…すごい一体感…僕、今ビアンキさんと、繋がってるんだ)
肩越しに見下ろすビアンキの胸は、青白く発光したままで、
その綺麗さに、ランボは不安と優越感を噛み締める。
「…ビアンキさん …」
ビアンキの足の付け根に指を滑り落とすと、髪の感触とは違う質感の毛がランボの指をくすぐった。
そのまま指を中央へ移動させ、柔いそれに触れると、
ビアンキの身体は今度反るようにランボの身体から少し離れ、
二人の間に流れた冷たい空気に驚いたランボは、そのまま腰を少し浮かせた。
「あ…ッ!」
ズブ、という短い音と、何かにめり込むみたいな音。
ランボのは根元までビアンキに埋まった。
「や、ちょっと、待っ…」
「余裕…ない…!」
ランボのと ビアンキのそこは、少しの空間もない位にピッタリくっついている。
(ビアンキさんが言うとおり僕のってデカイのかな…?)
ランボはどこか遠くに残った理性でそんなことを考えながら、もっと奥を求める。
脇の下から腕を回して、両肩を握り締めるようにビアンキの逃げ場をなくし、
ランボは恥骨をビアンキの尾てい骨に押し付けるように腰を密着させると、
ランボに固定された限られたフィールドの中で、
ビアンキの身体がウサギみたいにピョンピョン跳ねる。
「っあ、ん…ね、ぇ…動いて…」
「…動く、けど、あんまり保たない…と、思います」
「…ん…」
そのまま指の腹でビアンキの柔らかい部分を擦りながら、腰を動かし始めると、
肩越しに見えるビアンキの横顔から、段々余裕が消えていく。
ビアンキのそこからは、何かを求めるみたいにどんどん溢れてきて、
ランボが引き抜く度に、くっついてくるその液体を、ランボはなんだか愛しく思えた。
「…は、」
「…ん…はぁん…っ」
---こんな声出さないはずの人が、僕の中で可愛い声を出すのが、
なんかホント、僕男に生まれてよかったって、
ビアンキさんで出会えてよかった、初めてがビアンキさんで よかった。
気持ちを噛み締める度に、余裕は加速度をつけてなくなっていく。
ランボはどんどん白くなっていく視界を、なんとかフルカラーに留めて、
飛んでイきそうなたびに、体位を変えて誤魔化す。
「…そんな技巧凝らさなくていいわよ…ッ」
「まだそんなこと言える余裕あるんですか…!」
「……あッ」
密着しすぎたそこが、どんどん酸素を奪って、
息苦しさを覚えていく。
ランボは、溶けるって、きっとこういうことなんだって思った頃、
駆け抜ける欲望が、焼ける液体になって、ランボの中を伝って行った。
「…ビアンキさん…!」
すんでのところで抜き去って、ビアンキの身体を下から上へ白に染めたその液体が、
散らばった真珠みたいだなって思った。
「いっぱい、出たわね」
滴り落ちないように、ビアンキは身体をうまいこと捩じらせた。
その姿に、その声にランボは現実に引き戻される。
「あ、ちょっと待ってください、動かないで、いいから!」
ランボは慌ててティッシュの箱を探す。
ビアンキは呆れたように微笑んで、テレビの横を指差した。
素っ裸でティッシュを取って、急いでビアンキのところへ戻ってきて、身体を拭く。
(僕ので汚れたビアンキさん、すごく色っぽい)
「…ねえ」
ビアンキはまだ熱の残った目でランボをじっと見つめる。
「…何、ですか?」
「…ううん」
ぺロリとランボの先を舐めると、そのまま咥え込んで、
わずかに残った苦い液体を舐め取っていく。
「…はっ、ビアンキさ…やめ…また、勃っちゃう…から…!」
吐き出したばかりの欲が、しっかりと体内で再び製造された頃、
ビアンキは顔を上げて言った。
「…好きよ、ランボ」
その顔は、いつもの強気で意地悪なビアンキだった。
ランボはその言葉が、自分自身に向けられている事が驚きで信じられなくて、
けれどそれの何倍も、嬉しい気持ちで溢れた。
この人が、愛しくて堪らない。
嬉し涙ってこういう時に流すものなのかな。
頬を赤く染め惚けているランボを見て、ビアンキの瞳が月みたいに綺麗な弧を描いて笑い、
「今度は私が苛める番ね」
と耳元で囁いた。
結局、敷かれた布団にたどり着くまで、ランボたちは何度も求め合った。
---僕は、今までもこれからもずっと、この人しか知らなくて構わない。
…ビアンキさんもそう思ってくれたらいいのに。
明け方、横で気持ちよさそうに眠るビアンキを眺める。
もっと、大人になりたい。この人に追いつけるように。
15歳のランボは、眠気に襲われながら、願った。