「暑いな……」
「そうだな……」
本日三度目のラルの呟きに律儀に相槌を打ちながらコロネロは額の汗を拭いた。
アジトの一室で二人きりでくつろいでいる――というよりはヘタバっていると言った方が正しい。
「暑いからといって機械に頼るのはよくない」とラルが言い出し、クーラーを止めていたのだ。窓は開け放たれているが入ってくるのは生暖かい空気だけである。
今となってはラル自身クーラーを止めたことを後悔していたが、やっぱりつけようと言うのは意地が邪魔して口に出来ない。
コロネロはコロネロで、この程度の暑さで音を上げるのかとラルに思われたくない男のプライドで仕方なく耐えていた。
せっかく二人きりなのに甘い雰囲気とは無縁の空間だがコロネロはこんな時間が嫌いではなかった。
ラルの意地っ張りな性格も、そこが彼女の可愛い所だということも分かっている。
長い髪をかきあげたりタンクトップの胸元をパタパタと扇いだりする仕草の色っぽさに
ドキッとする瞬間も自分だけの特権だと思うと素直に嬉しい。
しかしそんなコロネロを嘲笑うかのように二人きりの部屋に来訪者が現れた。
「ちゃおっす」
二人とは長年の付き合いであるリボーンだ。彼はずっとクーラーの効いた部屋にいたのだろう。涼しい顔をしている。
「なんだお前ら、痩せ我慢でクーラー消してるのか」
「痩せ我慢じゃねーぞコラ」
「そうだ健康のためだ」
しかしバテバテの状態で言っても説得力がまるでなくリボーンはニヤニヤしながらラルに近づいた。
「じゃあアイス持って来てやったのは余計だったな。アイスは腹冷えるからな」
袋に入ったバニラのアイスキャンディーを見るとラルは瞳を輝かせた。
「せ、せっかく持ってきてくれたんだろう。もったいないからもらっておく。ちょうど腹が減ってたしな」
言い訳しながら嬉しそうに受け取る。
「オレの分はないのか?気が利かねーぞコラ」
「お前には別の土産がある」
リボーンは含み笑いをしてラルを指した。
「?」
訝しみながらコロネロはラルに目を向けた。
ラルはちょうどアイスを袋から出したところだ。長い髪を耳にかけながらアイスキャンディーを口に含む。
チュッと唇で吸い付いてから味わうようにゆっくりと舌を動かす。
アイスの形状、口の動かし方、バニラの白い雫。
それら全てがある行為を連想させコロネロは思わず唾を飲み込む。
「……アレが狙いかコラ」
悪友は何も言わずいつもの食えない笑顔を浮かべるだけだった。
ふと自分を食い入るように見つめる視線に気付いたラルは怪訝そうに眉を寄せた。
「……何をそんなに熱心に見てるんだ?」
「な、何でもねーぞ!」
「そんなにアイスが欲しいなら取って来たらどうだ。オレのはやれないぞ食いかけだし」
「……いや今はアイスはいい」
アイスを取りになど行ってこの美味しい光景を見逃すのはもったいない。
「そうか?」
釈然としないものを感じつつ再びアイスキャンディーに没頭するラル。
ただアイスを食べているだけなのにやたらいやらしい。
(あれがアイスじゃなくオレのマグナムだったら……)
と妄想するコロネロを誰も責められまい。
コロネロは隣にリボーンがいることも忘れ、アイスを自分のペニスに置き換えてその姿を目に焼き付けることにした。
***
ラルはコロネロの肉竿の先端部分を何度も出し入れしてはチュッ、チュと唇を動かす。
溢れ出る先走りを舌が追い、赤い舌を白い液が彩る。
普段は仏頂面の多いラルが今はうっとりとした表情で性器にしゃぶりついている。
時折甘い吐息が漏れるのがたまらなく色っぽい。
口を動かすのに疲れたのか一旦ラルは唇を離すとふぅっと息を吐いた。
そして今度は半分ほど口に含むと――。
ガリィッ!!
***
「うぉっ!」
甘い幻想は跡形もなく消し飛びコロネロは真っ青になって叫んだ。
驚いて振り向くラルの手には半分に噛み千切られたアイス。
アイスを自分の性器に置き換えて見ていたコロネロは、それを見て自分のモノが噛み千切られたような錯覚を覚えたのだった。
「な、なんだ!?どうしたっ!?」
慌ててラルが飛んでくる。脂汗をかきながらコロネロは首を横に振った。
「な、何でもねぇぞコラ……(まさかお前がアイス食べてるの見ながらフェラされるの想像してたなんて言えねー……)」
「なんなんだ一体……」
ラルはわけが分からず困惑の表情を浮かべているしリボーンは笑いを堪えきれず腹筋が割れた。
こうしてリボーンが持ってきたアイスキャンディーはコロネロに一時の甘い幻想とトラウマをもたらしたのだった。
おわり