『―――は集中豪雨にみまわれており、一部地域には大雨洪水警報が―――』
「あらあら」
奈々はお昼のニュースを見ながら小さく呟いた。
テレビ画面には大雨洪水警報が出されている地域として、並盛の名前が表示されている。
まさにその通り、突発的に起きた豪雨はたちまち並盛を含んだ地域一帯を巨大な水溜まりへと変貌させていた。
屋根を打つ雨は力強く、テレビの音もろくに聞こえない。
いつもはそれ以上に騒がしいチビたちも、今日は朝からハルの家に行っている。おそらく雨が止むまで帰って来ないだろう。ビアンキも、朝から沢田家に来て、何もしないうちにビアンキを見てひっくり返った獄寺をひきずってリボーンとともにどこかに行ってしまった。
今家にいるのは、奈々とツナと―――ツナの『友人』である京子だけだ。
「京子ちゃんにお昼出すべきよねぇ……?」
そう言いつつ、体は既に台所へと向かい、三人分の昼食を用意し始めている。いつも台所に響くトントンという包丁の音は、雨音に全てかき消された。
いつもの邪魔者は消え、多少の音は雨音が全て消してくれる。ただし、下の階には母親がいる。
そんな、状況。
「京子……ちゃん……?」
そんな状況の中―――ツナは、京子にベッドの上で押し倒されていた。
ツナは仰向けに寝転がされ、ちょうど股間の上に京子がまたがっている。
好きな女の子と二人っきりでその上―――だ。既にツナの一部分に血液が集中し始め、どこぞの御曹司のように凍らされたわけでもないのに、硬くなり始めている。
しかもなぜか京子は体を小刻みに前後に動かしている。今日の京子はスカートのため、二人の局部と局部は薄い布三枚ごしに刺激を与えあっていることになる。
(いやいやいや!!)
こんな夢のような状況が現実に起こるとは。いや夢だろう。
起きたら布団が濡れてて軽く鬱になりつつ、とりあえず下を脱いで下半身裸になった瞬間に、「おはようございます十代目ぇ!!」と獄寺が飛び込んでくるのだ。三日前のように。
そのことを思い出すと少し萎えたが、刺激のおかげでまたすぐに元に戻った。どうやら現実のようだ。
リアル三次元である京子は、ツナの妄想の中でしか見たことのないような切ない顔で、頬を染めつつじっとツナを見つめている。
緊張のためか肌にはうっすらと汗をかき、少しだけ開いた口からはあえぎ声が漏れていることが推測できる。雨で聞こえないが。
体の揺れも大きくなり、刺激は更に増大する。
知っての通りツナはトランクス愛用者で、今は不覚にもズボンのチャックを閉め忘れている。
今、実質的にもう一つのツナから京子の局部を阻むものは、京子の可愛らしい下着一枚だけだった。
もう一つのツナが本格的に死ぬ気になり、そろそろ『事故で挿入→結果妊娠』という洒落にならない事件がおきそうになったとき、ようやくツナは決意した。
「京子ちゃん!!やめようこう」
いうこと、と続ける前に口が左手で塞がれ、右手で肩を押さえられ体をベッドに沈められる。
さすがあの兄の妹、というべきか、通常時のツナではかなわない力だった。
沈黙が続き、ただ雨音が部屋を支配する中、ようやく京子か口を開いた。
「…………ほ……………の」
残念ながら強い雨のせいでとぎれとぎれにしか聞こえなかった。
それを察したのか、京子は顔を更に赤らめいくらか躊躇したのち、己の中の勇気をふりしぼるように、言った。
「保守、したいの……!!」
とっぴんぱらりのぷー。