光も音も届かない、真っ暗な水槽。  
その中で拘束されている彼の肌は冷え切り、感覚を失いかけていた。  
幻想散歩はしているものの、そこに在るのは自分の精神のみであり、肉体が機能しているわけではない。  
この窮屈な暗闇から、この不愉快なほどに軋む鎖から、何度抜け出したいと思っただろう。  
だが、今抱えている問題はそれだけではない。  
(全ての冥界を巡ったという事実が刻まれているとしても、それは所詮記憶でしかない)  
身体がどうしようもないほどに疼く。  
(僕もまだ15歳、というわけか)  
凍っているかのような皮膚とは裏腹に、下腹部が熱い。  
この感覚はあるときふと目覚めて、いつの間にか収まる。だが、暫くしないうちにまた目覚める。  
そうやって繰り返されるうちに、気づけば欲求だけが身体を支配している。  
頭のてっぺんから足の指の先までを、吐き出しようのない熱が巡回していた。  
(…………)  
何とかならないものか。  
(…クローム……)  
――そうだ。彼女がいた。  
剣で傷を付けて契約した者とは感覚を共有できない、だが彼女なら――。  
 
 
「痛っ…!」  
床に落ちていたガラスの破片で指を切ってしまった髑髏が、小さな悲鳴をあげた。  
廃墟であるここには、ガラスの破片が落ちていてもさほど不思議ではない。  
「けっ、バカな女らびょん!ちゃんと掃除しねーからそーいう事になんの!」  
「犬手伝わなかっただろ…」  
ソファに座っている犬の、ゲーム機のボタンを押す無機質な音が聞こえる。  
千種はというと、珍しく武器の手入れをしていた。  
「うるへー!とにかくさっさとバンソーコー貼ってこいこのブス!」  
「…ごめん」  
パタパタと音を響かせながら、髑髏は一応自室ということになっている部屋へと向かった。  
「犬も素直になれば」  
「んあ?なんか言った柿ピー」  
「もういい…めんどい」  
 
部屋に入った時点で、指に溜まっていた血が一滴落ちるのを髑髏は感じ取った。  
「はあ…」  
犬や千種といると、正直迷うところがある。  
彼らが求めているのは骸であって、自分ではない。前からそう思っていた。  
ろくに連絡もとれない最近では、そんな想いがどんどん広がっていく。  
(私、ここにいていいのかな)  
時々迷ってしまう。結局は、いつの間にか二人の傍にいるのだが。  
はっと我に返り、用件を思い出す。  
(そうだ絆創膏…)  
部屋の隅に置いていた小さな箱を取り出して、中を漁る。その時。  
(おやおや)  
「!」  
頭に低い声が響く。聴きなれたこの声の主は。  
(クフフ、クロームは少々ドジなところがあるようですね)  
「骸様!」  
視線が勝手に傷ついた指へと移される。骸の意思らしい。  
(傷は浅いようです、血も止まっているようですし、唾でも付けていれば直りますよ)  
「唾…」  
何となく骸らしくない答えに、髑髏は少し戸惑う。  
(ほら)  
グイッ  
「んむっ!」  
突然指が口に入ってきた。舌も、髑髏の頭とは裏腹に指をくちゅくちゅと舐めている。  
どうやら骸が自分の体に最低限憑依しているらしい。髑髏も意識を保てる程に。  
そのうち、髑髏の体は床に倒れこんだ。冷たくて硬いはずの床が、柔らかい布団のようになっている。  
「む、骸様…!」  
(クロームの指は美味しいですね)  
何を言ってるんだろう。だんだん頭が霞んでくる。  
口内を弄っていた髑髏の指は、次第に首筋をなぞって、下へと降りていった。  
手際よく制服のボタンが外されていく。  
「や…っ」  
(嫌なのですか、クローム?)  
そうは言いながらもボタンを外す手が収まる気配は一向にない。  
健気にも骸に嫌われたくない髑髏は、辱められながらも抵抗はしないことに決めた。  
 
上着が脱げ落ちてしまい、下着で覆われた白い乳房が露になる。  
髑髏の両手が、下着の中を滑るようにして胸の感触を楽しんでいる。  
「っひ、ぁ…」  
部屋に響いた声が自分のものではないような気がして、羞恥で顔が熱くなった。  
精神も一部骸と共有している今では、これが快楽なのだと感覚的に覚えさせられる。  
(可愛いですよ、クローム)  
今まで何ともなかった骸の声が腰に響き、身体を麻痺させていく。  
自分の手であるはずなのに、骸に触られているように感じてしまう。  
髑髏にとって、初めて味わう快感。  
それが内側からも外側からもくるので、堪えきれない声が湿った唇から溢れてしまっていた。  
とっさに、髑髏の左手が乳首をつまむ。  
「んあぁ!」  
(おや)  
それまで黙っていた骸の声が響く。  
(ここはちょっとしたポイントのようですね)  
少し小さくなってしまったブラを上にずらして、乳首の周辺を弄るように指を動かす。  
「ぁ、ん…はあっ…」  
左手に乳首を刺激させながら、今度は右手が下へと降りてくる。  
「…!だ、だめっ!」  
最早髑髏の声は骸に届いていないらしい。  
右手はそのまま下へ移動すると、太ももの内側を触れるか触れないかの程度で刺激する。  
「あ、ああぁぁぁ…」  
(クフフ、クロームの身体はいささか敏感すぎるようです…っく)  
髑髏は何やら骸の様子がおかしいのを感じ取ったが、脳を支配されてそんな考えも消えてしまった。  
太ももに触れていた指が突然、誰にも触られたことのない秘部を布越しに掠めた。  
「ひああっ!」  
と思うと、髑髏の右手はまた太ももに戻る。  
…物足りない…  
そう思うようになってしまったのはいつ頃だっただろうか。  
「ぁあの、む、くろ…っ様…」  
立て続けに自身を襲う快楽に、言葉が途切れがちになってしまう。  
(どうかしましたか、クローム?)  
急に行為がピタッと止まる。  
「…ぁ…あの……っぅ…その…」  
(ハッキリと言ってもらわないと、僕もわかりません)  
骸が楽しんでいると、嫌でもわかってしまう。触ってもいないのに、身体が疼く。  
 
「も…ももっと……触って、下、さい………っ」  
(どこをですか?自分で触ってみなさい)  
身体を支配していた力が抜ける。それでも顔に血が昇って、真っ赤なのが自分でもよくわかる。  
精神を共有している中で、自分で自分のそれを触るというのは、骸の目の前で、それを触ることと同じだった。  
しかし羞恥心よりも、それまでに与えられた快感の方が上回ってしまっている。  
髑髏はそろそろと、己の秘部へ手を伸ばした。  
「こっここ、を…〜〜っ!」  
穴でも掘って、自分で埋まりたい。  
(よくできましたね)  
途端、また身体が支配されだした。自分で触るより、こっちの方がマシだ。  
骸も色々と限界が近いのか、さっきよりも激しい動きに髑髏はただ翻弄される。  
「あっああっ!むく、ろ様…!」  
右手は布越しに、いつの間にか下に降りていた左手は直接、髑髏の秘部を刺激する。  
既に湿っていたそこは、ぐじゅぐじゅと卑猥な水音を立たせながら乱れていた。  
布越しにくる快感と、直接触られる快感とが、髑髏の中を電気のように駆け巡る。  
身体が、熱い。  
((ほう、女性の快楽は男性のそれとはと違うようだ))  
断続的に、身体の中心から追い上げてくる快楽の波。  
それが逆に、一度は途切れた快感を増幅させてまた迫ってくる。  
そろそろ絶頂も近い。  
「骸…様、むくろ、様っ…」  
(クローム…)  
髑髏の身体がくねり出す。途端、右手がクリトリスをもろに刺激してしまった。  
それをきっかけに、絶頂はやってくる。  
「ぁあ、あ、骸様っ…ひ、あぁああ!!」  
(…っ)  
太ももをビクビクと痙攣させながら、今までとは段違いの快楽を感じた。  
髑髏は深い闇へと堕ちていくような錯覚を感じると、そのまま意識を手放した。  
 
骸はというと、荒い息を整えながら、気を失っている髑髏の身体を動かして、服を着ていた。  
まだ、下腹部が波打っている。慣れない感覚だ。  
ぐったりとしている髑髏を、寝床へと移動させておく。  
(僕の可愛いクローム、…また会いましょう)  
そのまま、骸は自分の身体へと帰っていった。  
 
Fine.  
 
 

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