ふ、と。
ラル・ミルチは自分の腰にあてられた骨ばった何かを感じた。
「おい、腰。」
「あ?」
「あ?じゃないだろ。気安く触るな。」
ラルは低い声で呟くと、リボーンの革靴を思い切り踏んだ。
リボーンは痛がる様子もなく、ニカッと屈託のない笑顔を見せた。
「つれねえな、生理か?」
「黙れ。」
「はは、」
悪ィ、の一言もない。
彼はいつもそうだ。
ラルは奴にとってそれが当然であると、諦めていた。
周りに常に女性がいることも、何百という愛人がいることも。当然である、と諦めていた。
「ラル、」
その時、ラルは酷く機嫌が悪かった。
というのも、リボーンが同盟ファミリーの女性幹部にもてはやされているのを見てしまったからなのだが。
「おい、ラル。」
「うるさいな、用も無いのに話しかけ…!」
一瞬で、目の前が真っ暗になる。
ラルは頭が混乱した。
ようやく整理がついたころには、リボーンがラルの口内を舌でまさぐっていた。
まるで慰めるように、なだめるように。
「…ん、」
「何だ?」
「や、あっ…」
「キスぐらいでそんなに気持ちいいのか。」
「…ち、がう!」
「離せ…っ」
ラルは頬を紅潮させ、リボーンの肩を弱々しく叩いた。
「何だ、可愛いな。お前らしくもない。」
「うるさい!お前が、気色悪いことをするから…っ」
「そのくせに、毎回抵抗しないのは誰だ?」
「…」
「キスじゃない。お前の飲んだワインの味が、気になっただけだ。」
吸いつくように、ラルの唇にキスをする。
何度も、何度も。
リボーンの舌は、唇から首元へと降りていく。
【完】