アジトの廊下の反対側からコロネロが向かってくるのが目に入り、ラルは足を止めた。
彼の方でもこちらに気付いて、気まずそうな表情で立ち止まる。
双方で見つめ合った後、先に目を逸らし歩き出したのはラルだった。何か言いたそうにしているコロネロの横を無言で通りすぎる。
背後で彼のため息が聞こえ胸が痛んだが、振り返ることはできなかった。
ある部屋の前で立ち止まりドアをノックする。わずかの間を置いて顔を出したのはリボーンだった。
「また来たのか」
「…………」
黙って部屋に足を踏み入れそのまま寝室へ進むラルの背にリボーンは呼び掛ける。
「コロネロとは相変わらずか」
「……ああ」
あの凌辱の日から二週間が過ぎていたがコロネロとは口を利いていない。
ラルにはリボーンとのこと全てを隠して付き合う狡さも、打ち明ける勇気もなかった。
そうして一人寂しさで眠れない夜を幾度も過ごしている時リボーンが誘いをかけてきた。
彼は強制はしなかった。誘いに乗ったのはラルの意志だ。心の隙間を埋めるために束の間の快楽を得ようとしたのだ。
よりによって自分を襲った男に慰めを求めるなんて愚かだとは分かっているが、寂しさに疲れたラルにはリボーンの手にすがるしかなかった。
今も一刻も早くすれ違った際のコロネロの表情を忘れさせてほしくて、服を床に脱ぎ捨てていく。
「そう色気もなくポンポン脱がれると面白くねーな」
「つべこべ言うな。どうせやることは一緒だろう」
寝ろ、とベッドを指すと命令すんなとぼやきつつリボーンはベッドに横になる。
ラルはリボーンに反対向きで跨がるとチャックを下ろした。まだ反応していないペニスを口に含みピチャピチャと音を立てて舐め上げる。
リボーンも顔の前に晒されたラルの秘所に舌を這わし始めた。
「ふぁっ……。あふ……」
口内は男根に塞がれた状態でラルはくぐもった悲鳴を漏らした。
リボーンの舌がぬるぬると陰唇を舐め上げ、敏感な突起に歯を立てる。更に指をアナルに侵入させ刺激されてラルは身悶えした。
「口止まってんぞ。サボんな」
小さな子供を叱るようにペシンと尻を叩かれる。羞恥に顔を火照らせながらもラルは懸命に奉仕を続けた。
口全体を使って吸ったり舌先で先端を刺激したりするうちに肉棒は大きく勃ち上がっていく。
「もういいぞ」
どうやら合格点をもらえたらしい。口を離すと唾液と先走りが混じり合ってつ……と糸を引いた。
体の向きを変えてリボーンと向かい合う。子宮が疼いて、早く中に挿入されたくて仕方がない。
そんなラルにリボーンは思ってもいない言葉を投げてよこした。
「自分で入れろ」
「な!?」
「できねーのか?」
「くっ……」
拒絶したくとも体の熱は抑え切れない。ラルは観念してリボーンのペニスに自分の秘所を押し当てゆっくり腰を降ろした。
「ん、あぁ――!」
自分の体重でズブズブと沈めていく。最後まで呑み込んだ時にはラルの息はすっかり上がっていた。
それでもリボーンは寝そべったまま身動きせずにただラルを見つめている。気持ち良くなりたければ自分で動けということなのだ。
ラルは仕方なくそろそろと腰を上げ、先端ギリギリまで引き抜くと再び奥まで挿入した。
繋がった部分から脳まで電流が走ったように痺れる感覚に、最初は恐る恐る動いていたラルも次第に積極的に腰を振った。
「あ…! やぁ……!」
髪を振り乱し大きな乳房を揺らしながら欠けた物を埋めるため必死で快楽を追い求める彼女はこの上なく淫らだった。
涙や汗がリボーンの体に降りかかったが、リボーンは気にする風もなくラルの痴態を楽しんでいる。
部屋の中はこの上なく濃厚で淫靡な空気に満たされていた――。
「リボーンの奴、いねーのかコラ」
何度ノックしても開かないドアを睨んでコロネロは呟く。ラルのことをリボーンに相談しようと来ていたのだ
本当はもっと前から考えていたのだがあの悪友のこと。相談しようものならここぞとばかりにからかってくるに決まっている。
そう思うと気が進まなくて今まで来なかったのだが、今日のラルの態度を見る限り誰かの力を借りるよりなかった。
だがせっかく決心して来たのにリボーンは留守らしい。
(リボーン本当にいないのか? 居留守じゃねーだろうなコラ)
確認のためドアノブに手を掛けるとそれはあっさりと回った。部屋の中を覗くとがらんとして人気がない。
(やっぱ留守か。でも鍵開けっ放しなんてアイツにしちゃ無用心だな)
リボーンが戻ってくるまで留守番を兼ねて中で待とうかとコロネロは部屋に入った。
「あっ……」
「ん?」
女の声が微かに聞こえた気がしてコロネロは辺りを見渡した。目に入ったのは一枚のドアだ。
リボーンの部屋の造りは自分のと同じだからここは寝室のはずだ。そこから女の声がするということは――。
「とんだ所に来ちまったみたいだな」
いくらノックしても気付かなかったわけだ。リボーンは誰かとお楽しみの最中なのだ。
そうと分かれば長居は無用。相談はまた後にしようと踵を返したコロネロだったが、不意にその足が止まった。
「やぁっ……、リボーン……」
女の声がさっきより鮮明に聞こえた。その声に聞き覚えがあった。コロネロが一番よく知る彼女の――。
「…………」
心臓の鼓動が早まる。コロネロは足音を忍ばせてドアに近づいた。
このドアを開ければ今自分が抱いている疑惑は明らかになる。だが、もし自分の想像する光景がこのドアの向こうにあったとしたら。
汗の浮いた掌でノブを掴む。
どうかオレの間違いであってくれ。
コロネロは天に祈る思いでドアをそっと開いた。
(終)