誰にも邪魔されないように鍵のかかった部屋の中、ベッドはコロネロの体の動きにあわせて軋んでいた。
「……っ……はぁっ……!」
「……んっ!……ぁ」
愛の言葉を囁くでもなく、二人はただ欲のままに体をぶつけてゆく。
「…………っ!!」
先に絶頂を迎えたのはコロネロだった。
ラルの中に白濁とした液を放ったあと、先程まで本能が全てを支配していた頭の中に、理性がじょじょに戻ってくる。
一旦結合を解いたあとに、思う。
(…………まだラルを満足させてねぇぞコラ)
先に一人でイってしまったことに少し「負けた」ような感情を覚えつつ、さっきからずっとあえぐか荒い息を吐くだけだったラルの体をじっと見てみた。
鬼教官である彼女の目に浮かぶ涙。
なかば無理矢理押し倒したときにベッドサイドにぶつけたと思われる腕の新しい痣。
秘所から流れでる血が混じった白濁した液。
もちろん避妊はしていない。
―――もしかしてラルにものすげぇ無理させてんじゃねぇのかコラ!?
もしかしても何もその通りである。
「え……えーと……」
おろおろし始めたコロネロに対し、ラルは無反応だ。ただ目の端には相変わらずの涙がある。
「……や、やっぱやめるかコラ!!」
自分で押し倒しておいて無責任極まりない台詞を吐いたあと、ラルからの強烈なビンタに備えて体を固くする。
コロネロだって今の自分の行動がいかにアレかぐらいは分かっていた。
だが、お互い初めてなゆえか、どうすればいいのか分からないのである。
だがいつまで経ってもビンタも蹴りも銃撃も飛んでこなかった。
代わりに、抱きしめられた。
「…………は?」
思わず自分でもまぬけだと思えるような声が出た。
ラルはコロネロの背中に腕をまわし、ひきしまった胸板に顔を埋めている。
爪をたてるでもなくただ背中に弱々しくしがみつき、口からはいつもの口喧嘩のような罵り文句も聞こえなかった。
ただ、仮にこの部屋に誰か他の人間がいたとしても、それでもコロネロにしか聞こえないような小さな声でラルは言った。
「…………やだぁ……」