京子と山本が付き合い始めてから一ヶ月程が経った。
周囲にも受け入れられ特に障害になるようなことはなく、二人で一緒に帰ったり、休みの日には手を繋いでデートをしたりする一ヶ月だった。
進展はキスまで。人のいない公園でのことだ。
「キスしていいですか」と緊張しすぎて敬語になってしまった自分のことを山本は少し情けないと思った。
もっとも、驚いたあとくすくす笑って「いいよ」と言った京子が可愛かったので結果オーライなのだが。
なのだが。
(やっぱちょっと情けないのなー……)
日曜日、山本は初キスのことを回想して思った。
目前にあるのは笹川家である。おそらく今日家の中にいるのは京子一人だ。
今日の予定は笹川家で家デート→新しくできた喫茶店にケーキを食べにいく、と二人で予定をたてていた。
だが山本は決心していた。今日は全部家で過ごすと。そして俗に言う「初めて」を男らしく奪ってしまおうと。
女の子に笑われるくらいキスで情けなかった分をそこでとりもどす気持ちで、山本はインターフォンを押した。
「あ、おはよう山本くん。早かったね」
「お、おはよう」
いつも通りの京子に、山本はやや緊張気味に挨拶を返す。
家に入り廊下を通りリビングを抜けて階段を上る。あたりを見回したりしたがやはり誰もいない。
「……笹川兄は?」
「友達と出かけるんだって」
ほっ、と一安心する。事前に京子から「誰もいないけど、お兄ちゃんはもしかしたら家で友達と遊ぶかもしれない」と言っていたからだ。
いくら決心しても、妹思いの了平がいるときに初体験を済ます気はなかった。
そうこう考えているうちに京子の部屋についた。
ベッドがあり机がありクローゼットがあり、ところどころにぬいぐるみなどが配置されている。
「キレーに掃除されてんなー」
「汚いのってやっぱ嫌でしょ?」
「……ダメだ笹川のこと俺の部屋に呼べねぇ」
「えー、ひどーい」
言いつつ、山本の手をひいてベッドに座る。
座ってからは、他愛のない話が二人の間を行き交った。友達のことテレビ番組のこと野球のこと……。
そして話題がキスのことに移った。
「あのときの山本くんすごく可愛かったよ。顔真っ赤で」
「男は可愛いって言われてもしょんぼりするだけだぞ笹川ー」
「えー、私はアリだと思うけどな」
京子は首をかしげる。
「いや男のプライドってもんが。俺だってあんときはちょっと悔しかった……から、やり直していい?今」
「……いいよ?」
顔を向かい合わせて、唇を重ねる。
そしてそのまま―――押し倒した。
「山本くん!?」
「えーと、いや、その、えっと……体触っていい?」
「それって……胸とか?」
「あー……まあ、うん。できれば服ごしじゃなくて」
やや、沈黙。心臓がバクバクいってるのが分かった。
「……いいけど、乱暴なのはヤだよ」
「優しくします!」
そう叫んで京子の上の服をたくしあげた。
下に着ていたキャミソールごとだったので、いきなり黒いブラジャーが視界の中にとびこんでくる。
(黒!?)
白か水色かピンクだと予想していたが、黒。
予想外のことに心臓がまた高なり始める。性交渉の経験がない山本にとって黒い下着=超エロい、だった。
「どうしたの?」
「いや、笹川ってエロいなぁ……」
「や、やだ、何言ってるの」
京子の顔が赤くなる。
「いやだって下着が……あ、まだ何もしてねーのに乳首たってる」
ブラジャーもたくしあげて、言う。
「あ、やだ、つままないで……」
言われるままに、つまむのはやめた。
だが代わりに胸を揉み始める。サイズは大きくもなく小さくもない。だが触り心地は最高だった。
「うわー超柔けー」
呟く。そのあとに「パイズリとかできんのかなもしかして」と思ったがそれは口に出さないようにした。
粘土をこねるようにいろいろと触り方を変えてみる。乳首を口に含んで舌で転がしたりもした。
そのせいかは分からないが、明らかに京子が反応するようになってきた。顔が赤いのは相変わらずだが、今赤いのは羞恥以外の理由も含まれている。
山本の下半身は正直そのもので、元気に自分のことを主張している。
(笹川も濡れてんのかな)
残念ながらスカートごしでは確認できない。
ならばとおそるおそる手を足の間に突っ込む。京子は足を閉じたがもうおそい。
薄い布が一枚あるぐらいではごまかしがきかないぐらい湿っていた。
指でなぞると割れ目と思われるものも確認できた。
「…………」
「や、やだぁ……」
山本は下着ごしに指を入れ、軽く上下に動かす。それでも刺激は十分なようだ。
くちゅくちゅと水音がする。
「笹川……足開いて」
涙目になっていたが、京子は言われた通りに足を開いた。上と同じ黒い下着をずりさげ、手探りで突起を見つけつまみあげる。指先でいじると、京子が今までで一番大きいあえぎ声を出した。
「そこやだ……。やめて……」
「全然嫌じゃないじゃん」
続行し、今度は中に指を入れてみる。二本入れゆっくりかきまわす。
「やだぁ……やめて」
「んなこと言ったって……嫌がってないじゃん」
いくら嫌と言われても止める気はなかった。むしろそのまま突き進む勢いだ。
そろそろ辛抱たまらんのだ。山本のバットが。
「だって……それ…………なの……」
「え?」
よく聞こえなかった。
「だって……それ……ひとりでしてる……みたい……なの……」
一人でしてる?
ひとりでしてる?
「それって……オナ……」
意外だった。京子はこういうことはしないタイプだと思っていた。
「…………うん」
「………オカズって、何?」
京子はためらったように視線を山本から外したが、しばらくして、口を開いた。
「…………やまもとくん」
限界だった。
山本はすぐにチャックを下ろし京子の足を更に広げそこに山本のバットを―――。
「あー……」
山本はボーっとしてベッドに寝転がり、天井を見る。
ここは山本の部屋だ。ゴミ箱の中にはまるまったティッシュがいくつか入っている。使用用途はみな同じだ。
「うん……さすがに妄想がすぎるだろ俺……」
俗に言う賢者モードで冷静になった山本は、サイフをポケットに入れて部屋を出る。
(やっぱ中学生でアレは早すぎるし……避妊具も持ってなかったし……妊娠させる気か俺は)
視線を腕時計へと動かすと、ちょうど家をでる時間だ。
今日のデートは京子の家で家デート→喫茶店だ。
妄想のような出来事が起こるわけないと、考えを改めながら家を出る。
「あ、おはよう山本くん。早かったね」
「お、おはよう」
そうだ今日のデートはただのデートだ。キスはするかもしれないけど。
そう思いながら笹川家の階段を上る。一応避妊具は持ってきたが、多分今日のデートも何事もなく終わるのだ。
そして山本は部屋へと入る。
今日の京子の下着は黒だとは知らずに―――。