「凪ー!いつまで待たせる気ー!」  
塔の下からMMの声がする。凪は慌てて身支度を整えている最中だったが  
汚れたシーツはまだ片付けていなかった。  
「…どうしよう…」  
あまりMMを待たせるわけにはいかない。  
 
縄梯子が下ろされ、MMが登ってくる。  
「ちょっと遅かったじゃないの…って、どうしたの凪?」  
見れば、ベッドの上にこんもりと盛り上がったシーツの山があった。  
「……。……何やってんの?」  
MMがベッドの側まで近寄ると、シーツの端から凪がちょこんと顔を覗かせる。  
「ちょっと体調が悪くて…」  
こほこほと咳き込む凪の額に手を当てると、確かに少し熱かった。  
「大丈夫なの?凪…待ってて、すぐに薬と氷枕用意するから…!」  
「だ…大丈夫、…一日寝ていれば、すぐよくなると思う…」  
「そう?食欲はある?スープでも作ろうか?」  
「ううん、平気…それよりMM、側に居てうつったら大変…だから…、ね?」  
「…わかった。ちゃんと大人しく寝てるのよ?」  
凪の額をもう一度撫でると、MMはバスケットを持って帰ろうとする。  
そこを凪が引き止めた。  
「どうしたの?」  
「あ、あのね、MM…」  
覗き込むように身体を屈めたMMの首に腕を回して引き寄せると、凪はMMに口付ける。  
「ん、んんん…!」  
重ねて甘く吸い上げ、ぺろりと唇を舐めた後、すぐに離れた。  
「ちょっと凪…今日は駄目よ?アンタ体調悪いんだから」  
「うん…」  
 
─────やっぱり、何か変。  
 
MMにキスをしても何とも思わないのに、何故骸とキスをしたらあんなにも胸がドキドキしたのか。  
あれこれと凪が考えを巡らせている間に、MMは帰る支度を済ませていた。  
「じゃあ私は帰るから…ちゃんど梯子上げておくのよ?アンタ結構うっかりしてるから」  
「…う、うん…」  
「大人しく寝てるのよー!」  
「………」  
MMが帰ったのを確認すると、凪はさっさと縄梯子を上げてしまう。  
そして大きな溜息をついた。  
「…ばれて、ないよね…?」  
ベッドから起きだすと、丸めて隠してあったシーツを取り出しほっと胸を撫で下ろす。  
生まれて初めて、MMに嘘をついてしまった。  
「骸様…」  
骸と過ごした昨夜の事を思い出して、凪はぽっと頬を染めた。  
 
それから二日間、凪は日がな一日ぼうっとしたまま過ごしていた。  
骸に会うのが楽しみで、他の事など頭に入らない。  
MMは心配したが体調が何となく悪い、とだけ伝えておいた。  
MMもそれ以上は追求せず『体調管理は気をつけなさい』とだけ告げて帰っていった。  
そして約束の日、陽が落ちて月が昇る頃、凪は骸が来るのを今か今かと待ちわびていた。  
「───凪、聞こえますか、凪」  
「…骸様…!」  
骸の声を聞き、窓から身を乗り出して塔の下を見れば、暗闇の中にそれらしき人影が見える。  
凪は縄梯子を下ろして骸を部屋の中へ招き入れた。  
「こんばんは、凪」  
「…こ、こんばん、は…」  
穏やかに微笑みかける骸の顔が何故か直視できず、凪は俯いて小さな声で挨拶をした。  
 
二人でベッドに並んで座り、他愛のない会話をする。  
骸の話は難しくて凪にはよくわからなかったが、MMがあまり教えてくれない塔の外の話は非常に興味深かった。  
 
どれくらいの間話し込んでいただろうか。  
 
部屋に来てからずっと、そわそわと落ち着かない様子の凪を骸は訝しげに見る。  
「どうかしたのですか?凪」  
「…えっと、その…」  
俯きながらワンピースの裾を掴み、何か言いたそうに横目で骸を見ては視線を膝の上に落とし、口篭る。  
骸は無理に彼女から聞きだそうとせず、凪が自分から話すまで待った。  
しばしの沈黙。  
「…骸様…」  
「なんですか?」  
やっと決意したのか、消え入りそうな小さな声でやっと凪が口を開く。  
「骸様…私おかしいんです…病気かもしれない…」  
「どこがどういう風におかしいのですか?」  
「骸様と会ってからずっと熱っぽくて、胸の奥が苦しくてドキドキしてて…いつも骸様の事ばかり考えちゃうのに  
今こうして骸様と居ると今度は恥ずかしくて…上手く言えないけれど、何だか…おかしいの…」  
ワンピースの裾を掴む彼女の手に力が篭る。  
「…MMとキスしても何とも思わないのに…その…骸様とキスした事を思い出しただけで…身体が熱くなって…  
なんだか私が私じゃないみたいで…MMには相談できないし…骸様、私は病気なんですか…?」  
目に涙を浮かべながら、真剣な眼差しで凪は骸を見つめる。  
「………………。」  
骸は真摯に見つめてくる凪から視線を逸らすと、口元を抑えて俯いた。  
「…骸、様…?」  
「………ッ……ク……ックハハハハハ!」  
「………???」  
突然骸が大声で笑い出したが、一体何が可笑しいのかわからず凪は小首をかしげ、目をきょとんとさせながら  
彼を見ていた。  
 
骸はあまりにも純粋で無知な凪の、精一杯の告白に可笑しさと嬉しさが抑えられなかった。  
 
「凪」  
一頻り笑っていた骸が落ち着き、一息つくと凪を抱き寄せて膝の上に座らせた。  
「…あ…」  
すぐ側に感じる骸の体温に、凪は頬を染めて身体を縮こませる。  
「今も胸が苦しくてドキドキしていますか?」  
「…は、はい…」  
「君のその症状が病気なら、きっと僕も同じ病気です。つい君の事を考えてしまう」  
骸の指が凪の顎を捉えて上を向かせた。  
「…そして君の側にいると自分が自分ではなくなってしまいそうになる」  
「むく…ん…っ」  
骸の唇がゆっくりと降りてきて、凪の言葉を遮って重なった。  
 
柔らかく食み、音を立てて吸い、離れ、そしてまた重なる。  
甘い甘い口付けに酔いしれ、凪はうっとりと蕩けた表情を見せる。  
(MMとキスする時と違う…キスってこんなに気持ちいいんだ…)  
凪の顎を押さえていた骸の手が彼女の後頭部に回り、優しく添えられた。  
そして骸の舌が凪の唇を舐め、開くように催促する。  
「…は…、んん……」  
少し口を開くと、凪の口腔に骸の舌が侵入し、濡れた音を立てながら口の中のあちこちを丹念に舐めていく。  
歯茎を辿り、上顎をなぞり、頬を、そして凪の舌を舐め、絡みついた。  
「んむ……、…っ…は……」  
骸の舌に合わせ、舌を動かしながらうっすらと目を開けると、至近距離に骸の目があった。  
緋と蒼の左右非対称の瞳は凪と目が合うと猫のようにすうっと細められる。  
(やだ…こんな近くで…)  
ぎゅっと強く目を瞑ったが、目どころか心の中まで骸に見透かされているようで  
恥ずかしさに凪は耳まで茹でた蛸のように真っ赤に染めていた。  
「…は…っ…ぁ…」  
やっとの事で唇が解放されると、含みきれなかった唾液がつう、と糸を引いた。  
骸は濡れた凪の唇をぬぐってやり、彼女の身体を反転させ背中から抱きしめるように膝の上へと座り直させる。  
肩を上下させながら荒い息を整える凪の胸に、骸の掌が添えられる。  
「僕が君をそこまで追い詰めて苦しめていたのなら、僕が楽にしてあげないといけませんよね?」  
「…ぁ…、骸さ、ま…っ…」  
ワンピースの上からくるりと円を描くように乳房を撫でながら、耳たぶを柔らかく食んでやると  
凪の身体がびくびくと震えた。  
 
骸は布越しにツンと勃ち上がった乳首を摘んで捏ね、転がす。  
同時に耳元からうなじへ、肩と唇を這わせながら焦らすようにワンピースの肩ストラップをずらしていく。  
「ぁ…っ…、んん…、ぅ……」  
じわじわと身の内の熱を引き出すかのような愛撫に、凪は手で口を抑えて耐える。  
「どうしたんですか?この前はあんなにも乱れたのに…」  
「何だか…、恥ずかしくて…っ…」  
「今更隠す事も無いでしょう?」  
内腿を柔らかく撫でた後、下着越しに凪の秘部に触れるとほんのりと湿っていた。  
それまで凪の口を塞いでいた手を取って熱くなっている彼女の秘部へと導いてやる。  
「…あ、ぅ……」  
「どうなっていますか?」  
耳元にねっとりと息を吹きかけ低く囁きながら、彼女の掌越しに秘部分を揉む。  
「……濡れてる…ぁ…」  
骸が手を添えているとはいえ、まるで自慰をしているような感覚に戸惑うものの  
より強い快楽を求め無意識のうちに手が動いていた。  
「…あっ…ぁ…、や、やだっ……」  
「僕は何もしていませんよ?」  
内腿を震わせながら、手の動きをやめられない。  
「…ぅ…骸さ、まぁ…っ…」  
凪が目に涙を浮かべ、困った顔で骸の方を振り返る。  
(少し虐めすぎてしまいましたか)  
MMに教え込まれているとはいえ、性に関する知識は無いに等しい。  
骸が思っていたよりも初心のようだ。  
許しを請うように頬に柔らかく口付けると、骸は凪をベッドに寝かせワンピースを脱がしていった。  
 
白い肌にベッドのシーツに散らばる黒い髪。柔らかな曲線を描く少女から女性へと変わりつつある身体。  
一糸纏わぬ姿でベッドに横たわる凪は、儚さと艶っぽさが混ざり年齢不相応の色気を醸し出していた。  
改めて彼女の身体を観察していると、凪は腕で胸を隠し恥ずかしそうに身体を竦ませる。  
「おやおや…今更隠す事もないでしょう?」  
「……だって…」  
男女の睦事というものをよくわかっていなかったとはいえ、何の躊躇いもなく裸になり  
奉仕した時の事を骸は苦笑いしながら思い出す。  
それはそれでまた可愛いらしいのだが。  
「…あ…」  
骸の手が凪の頬に触れると彼女はぎゅっと固く目を瞑る。  
「凪、僕の方を見てください」  
彼女の緊張を解すように髪に、額に、目元にと顔の至る所に柔らかく口付けてやる。  
「…骸様…」  
羞恥心に潤んだつぶらな瞳が真っ直ぐに骸を見上げてくる。  
そして戸惑いがちに骸の背中に腕を回すと少し顎を上げ、突き出すように上唇を尖らせた。  
彼女に求められるまま、唇を重ねる。  
 
触れ合った唇から彼女の緊張が伝わってくるようだった。  
 
「…は、……んん、……」  
骸の唇が顎から喉を通り、強く吸い付いて赤い痕をつけながら下へ下へと降り胸元に辿りつく。  
白い肌に幾つも散らばる赤い所有印は、新雪に足跡をつけていくような愉悦感があった。  
「は…っ、…は…」  
凪の呼吸に合わせて上下に動く乳房を両手で包み、その谷間にも赤い痕をつけてやる。  
そしてすでに硬く尖っている乳首にたっぷりと唾液を絡ませながら舌で舐り、くちくちと卑猥な音を立てて転がすと  
凪の身体がびくりと大きく震えた。  
「…ん…、…くぅん…っ…ぁ、ん……」  
ぴくぴくと身体を戦慄かせて悦ぶ凪の身体は紅に染まり、しっとりと汗ばんでいた。  
乳房から鳩尾へ、臍から下腹へと赤い痕をつけながら骸は唇を滑らせていく。  
まるで身体の隅々まで確かめるかのような愛撫は、凪に新しい快楽の場所を教えていった。  
 
それまでMMが触っていた所に骸が触れる。  
まるで、凪の全てがMMから骸へと塗り替えられていくようだった。  
 
「ふ、ぁあ…」  
両足を割って開かせ骸の手が下肢に触れる。焦らすようにゆっくりと内腿を撫でた後、  
熱を求めて蜜を零す花弁を指で開くと甘酸っぱい雌の臭いが骸の鼻をついた。  
 
今すぐにでもそこに沈みたい。  
 
流行る気持ちを抑えながら骸は凪の秘部に顔を埋め、ぴちゃぴちゃと音を立てて蜜を舐め取る。  
「…あ、ァあっ…、は…あ…っ!」  
熟れて芽を覗かせる花芯を親指の腹で優しく撫でてやりながら丹念に肉ひだを舐め蜜を啜る。  
「…やっ…そこ…、…ダメぇ……」  
凪の手が伸びてきて骸の頭を引き離そうとするが、力が入らず頼りなく頭に添えられただけだった。  
とろとろに濡れた蜜口に指を差し入れると難無くするりと入っていく。  
探るような動きで膣内を掻き回し、バラバラに指を動かすと、ある一点を掠めた瞬間に凪の身体がびくりと大きく跳ねた。  
「っあぅ……っ!」  
「…ここですか」  
逃げようとする腰をしっかり押さえ、凪が反応した場所を狙って指を動かすときゅっ、と内壁が収縮して骸の指を締め付けた。  
「ひゃっ……!あっ…ん、はぁっ…!」  
骸の指の動きが激しくなるにつれ、ざわざわとさざ波のように押し寄せてくる快楽に凪は身体をのけぞらせ、  
その反動で涙が零れて彼女の頬を濡らした。  
程なく絶頂を向かえ、体中を甘い痺れが走る。  
「ひ、ァ…、はぁ…っん、くぅ…んん───……」  
凪の身体が二、三度大きく震えて達した後、くたりと脱力した。  
「……あっ…」  
蜜口から引き抜かれた骸の指は蜜に塗れ、ぐっしょりと濡れていた。恥ずかしさに凪は顔を反らす。  
「…大丈夫ですか?凪」  
「………はい」  
骸の耳元に口を寄せて小さな声で気持ち良かったです、と付け加えて彼の頬に口付けた。  
 
暫くの間、じゃれ合うように互いに口付け合う。  
 
ふと、下腹に当たる硬い感触に気付き、凪は骸の下半身を見た。  
「……あ……」  
そこにはすっかり硬くなった骸自身が鎌首をもたげ、開放待ち先走りの汁を垂らしていた。  
この間、入れられて痛かった事を思い出して凪が身体を竦ませる。  
「怖いですか?」  
「……我慢する…」  
「君が辛いのならこれ以上無理強いはしません。今夜はもう……」  
「…私ばっかり気持ち良くなってるから、今度は骸様の番。骸様、こんなになって苦しそう…」  
凪の手が骸自信に柔らかく触れると、それはどくどくと脈打ち焼けるように熱くなっていた。  
「……がんばるから…骸様にも…気持ち良く…なって、欲しい…」  
「凪…」  
強く凪を抱き締めた後、骸は彼女の身体を俯せて四つん這いにさせる。  
凪は驚いたようだったが、今彼女の顔を見たら手加減ができそうにない。  
こんなにも心を奪われるとは。  
骸は自嘲気味に口角を吊り上げた。  
 
「…んっ…」  
指で凪の花弁を広げ、先端を押し付けると、凪の身体がびくりと強張った。  
だが中へは侵入させずに秘裂に沿って先端を擦りつける。  
蜜と先走りの汁が潤滑油の代わりになり、濡れた音を立てながらぬるぬると滑っていく。  
「ふあ、…ん、あぁ……骸様、熱い……」  
蜜口周辺を何度も行ったり来たりする骸の動きに誘われるように凪の腰が揺れたのを見計らい、  
先端を彼女の中に埋めた。  
「…っくぅ…ん……ァ…っ……」  
やはり、慣れない身体は骸の進入を硬く拒んでいるようだった。  
彼女の負担を和らげようと肉芽を刺激しながら少しずつ腰を進めていく。  
「ふ…全部入りましたよ、凪…」  
何とか根元まで埋め込むと、骸は身体を屈折させて彼女の背中に口付け、ここにも痕をつける。  
凪はMMの物ではなく、自分の物だと主張するかのように。  
「…は…っ…ん…、骸、さまぁ…っ…」  
小さな身体で必死に自分を受け入れようとする凪がたまらなく愛しい。  
逸る気持ちを抑え、骸は腰を動かし始めた。  
 
 

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