いつの頃からここに居たのか、覚えていない。  
 
物心がついた時から、凪は一人でこの高い塔の上の部屋で暮らしていた。  
塔には梯子もドアも無く、部屋に小さな窓があるだけで他に出入り口は無い。  
外界から完全に遮断されたこの部屋に入る事ができるのは、彼女の育ての親である魔女・MMだけだった。  
MMが声をかけた時だけ、凪は窓から縄梯子を下ろし彼女を部屋の中へと招き入れた。  
 
彼女にとって世界とは、塔の中の部屋とMMだけだった。  
 
 
「凪ー!来たわよー!梯子下ろしてー!」  
 
窓から見下ろせば、MMがバスケットを持って手を振っていた。  
彼女はいつも決まった時間にやってきて凪の世話をし、食事を作り、二人の時間を過ごし、帰っていく。  
塔から出た事が無い凪にとって、MMの言う事、教える事全てが唯一だった。  
 
窓から縄梯子を下ろすとMMが登ってくる。凪は手を差し伸べてMMを部屋の中に引き上げた。  
「よっと…これを持って登るのも楽じゃないわね」  
MMは重そうなバスケットをテーブルの上に置くと一息つく。  
「それ…何?」  
「ああ、これね」  
バスケットの蓋を開けると、中から取り出したのはメジャーと色とりどりの布地の山だった。  
「アンタこの前ドレスの胸がきつくなったって言ってたでしょ?新しいの作るから、採寸しようと思って。  
これとこれ、どっちの布がいい?」  
MMは鏡の前に凪を連れて行き、布地を彼女に合わせてはああでもない、こうでもないと語散るのを  
凪は黙って聞いていた。  
「ちょっと、凪も選びなさいよ。それとも気に入らなかった?」  
「…ううん、そんな事無い。…MMが作ってくれるなら、何でもいい」  
無口で表情に乏しい凪だが、精一杯の笑顔でMMに応える。  
「何でもいいってのが一番困るのよねえ…わかった、凪のために腕によりをかけて全部使って作ってあげるわ。  
古くなったドレスも新調する頃だし、丁度いいかもね。さ、サイズ測るから服脱いで頂戴」  
「…うん」  
 
MMに言われるままに、凪はドレスを脱いで裸になる。  
まだ幼さを残しながらも柔らかなラインを描く腰と、ふくよかな乳房。  
少女から女性へと変貌しつつある体は同性であるMMでさえ見惚れる程の色香を醸し出していた。  
「ほんと、胸おっきくなったわねぇ…」  
つい自分の胸と見比べてしまい、顔をひきつらせながらMMは凪の背後から手を伸ばして  
その豊満な乳房をむに、と鷲掴みにして揉む。  
柔らかいが弾力のある乳房はMMの掌には少々余る質量だ。  
「ちょっとMM…!くすぐったい…」  
「気持ちいい、の間違いじゃない?」  
下から掬いあげるようにして両手で乳房を揉みながら、時折指先で乳首を突付いてやる。  
雪のように白い肌でそこだけ淡く色づいた乳首は、刺激され硬く勃ちはじめる。  
「ほら、もうこんなになっちゃった…。ねえ、気持ちいい?凪…」  
指の爪先で乳首を軽く引っ掻くと凪が小さな悲鳴を上げて身体を震わせた。  
「…気持ち、いい…」  
「もっと気持ちよくなる事しよっか…?」  
背中から抱きしめながら耳元で囁くと、凪は俯きながら頷く。  
俯いても鏡に映った顔は期待と羞恥で耳まだ赤くなっている。そんな凪がいじらしくて、MMは頬に軽く口付け  
頬擦りをすると、凪も甘えるように身体を摺り寄せた。  
 
 
服を脱いでMMも裸になると、少々大きめのベッドの上に凪を押し倒しその上に覆い被さる。  
雛鳥のようにMMに従順な凪は、彼女に言われるままに身体を差し出した。  
幼い頃からこの塔の部屋でずっと大切に育ててきた至高の宝を、自分だけの色に染め、穢す。  
決して他人に理解されないであろう、禁断の快楽。  
(魔女、とはよく言ったものよね)  
「MM?」  
「なんでもないわ」  
心配そうに顔を覗きこんでくる凪を安心させるようにぎゅっと抱きしめると、凪もMMの首に腕を回して  
しがみついていくる。  
そのままMMは凪のふっくらとした唇に自分の唇を重ねた。  
 
角度を変えて重ね、軽く音を立てながら交わる口付けは次第に濃厚なものへと変わっていく。  
「ん…、ふ…」  
MMが凪の唇を吸うと、凪もMMの唇に吸いつく。  
互いの乳房を擦り合わせるように身体を密着させながら、激しく唇を重ねる。  
首に回された凪の手が後頭部を押さえ、強請るように髪を梳くのを合図に、  
MMは凪の口腔に舌を差し入れ、彼女の舌を絡めて捉える。  
「ぅん…っぁ…、ふぅ…っ…」  
「は…っ…んふ…っ…」  
湿った音を立てて舌を絡め合いながら、身体を擦り付け合う。  
凪の足の間に膝を割り込ませ、薄く茂った秘部に太腿を押し当て小刻みに揺すると、  
彼女の身体がぴくぴくと震えた。  
「あん…っ…」  
唇を離すと、凪が可愛らしい声を上げる。  
口元から零れた唾液を舐め取り、そのまま唇を顎へ、首筋へ、鎖骨へと這わせながら  
乳首を摘まんで捏ね繰り回してやる。  
「…っ…ぁ…はぁ…ン…っ…」  
悩ましげな喘ぎ声を漏らしながらぎこちなく腰を揺らし、秘部を擦りつけて一生懸命快楽を享受しようとする凪が  
たまらなく愛しい。  
その柔肌にキスマークをつけたい所だが、折角の綺麗な肌に痕を残したくない。  
そんな事をしなくても、凪は自分だけのものだという独占欲がMMの欲望に火を付ける。  
「ねえ…凪、私もこんなになっちゃった…気持ちよくしてくれる?」  
首に回されていた凪の手を取って秘部に導いてやると、そこはすでに潤い、蜜を零していた。  
 
「ン…、ちゅ…っ…んん…っ」  
凪は足を開いて座るMMの秘部に顔を埋め、子犬が水を飲むようにぴちゃぴちゃと音を立てながら蜜を舐め取る。  
「は…っ…凪、舐めるだけじゃなくていつも私がしてあげてるみたいにやってみて?」  
「…ん、…」  
視線だけ動かして返事をすると、凪はMMの秘裂に指を一本入れた。  
ぷっくりと熟れた肉芽を舌で刺激しながら、掻き混ぜるように指を動かすと、くちゅと湿った音を立てて  
蜜が指に絡み、MMの内壁が収縮する。  
「ァ…、そう…、…ん…っ…そこ…もっと指動かして…ッ…」  
ほっそりとした凪の指が柔らかく内壁の一点を押し、摺る。同時に肉芽を口に含んで吸うと、秘部から  
さらにとろとろと蜜が溢れ、凪の指を濡らした。  
(MM…すごくいやらしい…)  
MMの秘部を愛撫しながら凪自身の秘部も熱く疼き、無意識の内にもじもじと足を擦り合わせているの見てMMがふっと笑う。  
「凪も欲しそう…一緒に気持ちよくなろう…?」  
凪の頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。  
そして、MMは仰向けに寝ると凪の身体を反転させて、秘部を自分の顔の方に向けさせる。  
 
「くす…凪のお尻可愛い…♪」  
少女特有の硬さを残しているものの、ぷるんと熟れた尻肉を撫でると、後孔の周辺を指先でくすぐるように刺激しながら  
秘裂に沿って舌を這わせる。  
「ぁあん…!っ…やだMM…!そんな、とこ…汚い…!」  
「凪のだもの、汚くないわ…ここも全部私のもの…」  
「ふぁ…っ…!もう、MM…!」  
MMの方を振り返り頬を膨らませて睨んだ凪だったが、頬を染め、潤んだ瞳で睨まれてもMMの嗜虐心を煽るだけだった。  
後孔のひだを広げ、指先でほぐすように孔を弄りながら唇全体を使って凪の秘裂を吸う。  
「ゃん…っ!ん…、ちゅ、ちゅる…っ…」  
凪も負けじとMMの秘部に指を差し入れ、包皮の向けた肉芯を尖らせた舌先で転がす。  
「んむ…っ…ふ…っ…ん…、…じゅる…っ…ちゅ…」  
(ふふふ…凪ったらお尻弄られてこんなにするなんて…♪)  
「ふぁ…、…っ…あ、ふ…っ……ぁ……、ぁあ…っ…ちゅ、ちゅ……」  
洩れる喘ぎを何とか抑え、凪はMMを気持ちよくさせようと懸命に愛撫する。  
指を二本に増やし、きゅうきゅうと締め付けてくるMMの内壁に逆らうように抜き差しするうちに  
肉壁が小刻みに収縮し始めた。  
(MM…感じてくれてるんだ…♪)  
それが嬉しくて、凪はMMを追い上げるように愛撫の手を早める。  
同時に、MMも凪の秘裂に舌を挿し入れ、追い上げる動きに変える。  
 
「ぁん…、あぅ…っ……、MMぅ…、ふ…ぁ…あ、あぁ…、ぁあああ…っ…!」  
「凪…、私も…もう…!っぁ…はァ…ん…っ…!あん……っあ、…あ、…はあぁぁん…っ!」  
 
二人の身体がびくんと大きく震え、大量の蜜で互いの顔を汚しながら同時に絶頂を迎えた。  
 
快楽に脱力し、ベッドに身体を投げ出しながらお互いの顔を舐め合い、何度も口付けを交わす。  
心地よい疲労と余韻に浸りながら、どれくらいの時間が経ったのだろうか。  
部屋に差し込む陽射しは徐々に茜色に変わり初めていた。  
「…ねえ、MM…」  
「何?」  
ぽつりと呟く凪に、MMは目だけ動かして応じる。  
「男の人と恋愛するって、どんな感じなのかな…」  
「な…!何よ突然…!」  
MMの顔色が突然変わり、慌てて上体を起こす。  
「この前MMが持ってきた本にあったの…。男の人と恋愛して、女の人は幸せになるって…」  
「アンタ…!何言ってるの…!」  
滅多に怒る事の無いMMが物凄い剣幕で迫ったので、凪は驚きベッドの隅まで後退ると小動物のように  
ガタガタと身体を竦ませて怯えていた。  
「あ…ごめん、凪…」  
すっかり怯えきっている凪を安心させようと、優しく声をかけて抱きしめ、頭を撫でてやる。  
「アンタはね、男なんて知らなくていいの。私がいるんだから」  
「…うん…」  
何故MMが怒ったのか理由はわからなかったが、凪はMMの言葉を信じる。  
塔のこの部屋でMMと一緒に居られればそれでいい。  
それが凪の全てだった。  
 
 
MMが帰り、陽が落ちた塔の部屋は凪一人になった。  
夕食を済ませ、湯に浸かり、白いワンピースの寝間着に着替えるとベッドの上でお気に入りの本を開く。  
それは、先程MMに怒られた男女の恋愛物語が書かれた本。  
外の世界を知らない凪にとって、MMが持ってくる本が唯一の教養だ。  
凪は恋愛はおろか、男という生き物すら知らない。だからこそどんなものなのか、好奇心で聞いてみた  
だけだったのだが、MMに怒られてしまった。  
男と恋愛をするというのはとても恐ろしい事なのだろうか。  
男という生き物を知りたいという好奇心で、何度も読み直した本のページを開いたその時、  
風が吹いて部屋の中の蝋燭の火を消した。  
「…あっ…」  
テーブルの上の蝋燭に火を灯そうとした時、窓の外で微かな物音がした。  
月明かりを頼りに窓を見ると、普段は上げてある縄梯子が下ろしたままになっている事に気付いた。  
夕刻、MMが帰った後縄梯子を上げるのを忘れていたのだ。  
 
───ギシッ───ギシッ───ギシッ───ギシッ───ギシッ───  
 
ゆっくりとした足取りで誰かが縄梯子を登ってきている。  
こんな時間にMMが来る事は絶対に無い。  
焦りと恐怖心で、凪の頭は真っ白になる。  
 
縄梯子を上まで何者かが部屋に入ってくるが、そこで月に雲がかかり、部屋の中が真っ暗になった。  
誰かがそこにいる。  
「…だ、誰…?」  
ベッドの上で震えていた凪だったが、勇気を振り絞って声をかけてみる。  
「おや、この塔には恐ろしい魔女が住んでいると聞いていたのですが」  
雲が晴れ、月明かりが再び部屋に差し込む。  
そこに立っていたのは、凪と同じ年頃の少年だった。  
 
突然の出来事に凪はぽかんと口を開けたまま、少年を見ていた。  
この部屋に訪れたMM以外の人間。それも、MMより背が高くて声も低く、顔つきや雰囲気も自分やMMとはどこか違う。  
「まさか魔女がこんなに可愛らしい少女だとは思いませんでした」  
少年は穏やかな笑みを浮かべながら歩み寄る。端正な顔つきに切れ長で左右非対称の瞳、後頭部のくせ毛が特徴的だった。  
「…ひっ…!」  
ベッドの上でシーツに包まり、ガタガタと震えて怯える凪を少年は不思議そうに見ていたが、ベッドの側まで来ると  
思い切ってそのシーツを引き剥がした。  
「い、やぁ…っ!」  
少年は取り乱し、逃げようとする凪の腕を掴んで自分の側に引き寄せる。  
「魔女に取って喰われるかと覚悟していたのですが…大丈夫、僕は君を取って喰う気はありませんよ」  
少し屈んで凪と同じ目線で向き合い、なるべく刺激しないように話しかけた。  
くりくりとした大きな凪の瞳が不思議そうに少年を見つめる。  
暫しの間、沈黙が続く。  
漸く落ち着いてきた凪が、消え入りそうな声で少年に尋ねた。  
「…もしかして、あなたは『男』なの…?」  
 
 
蝋燭の灯りが風に揺れ、壁に映る影がゆらゆらと揺らめいた。  
少年は骸と名乗った。  
ベッドの隅に骸が腰をかけ、凪は骸から離れた所に小さくなって座っていた。  
「それで、君はここから出た事が無いのですか」  
骸の問いかけに対し、凪は小さくこくりと頷く。未だに骸を警戒しているものの、先程のように取り乱す事は無く  
少しだけなら会話をするようになった。  
「僕が聞いていた話ではこの塔は恐ろしい魔女が何かの研究を行っていて、近づいた者は殺されると聞いていました。  
実際、塔から縄梯子が下がっている時に近づこうとして、そのまま帰って来なくなった人間が何人もいますし。」  
「…MMは、そんな人じゃない…と思う…」  
凪の知っているMMは、凪にとても優しい。  
「…もしも危険な所だったら…どうして登ってきたの…?」  
「ただの好奇心ですよ。普段下りていない縄梯子が下りていたし、こっそり覗けば魔女に見つからないと思っていたのですが」  
「…好奇心…」  
何かを確かめるように凪は小さく呟く。  
「知らないものを知りたいという気持ちは、誰だって抑えられないものでしょう?」  
「…うん…」  
暫く何かを考え込んでいた凪だが、少しだけ骸の側に近寄った。  
「…私も、知りたい…男の人ってどんな生き物なの…?」  
二つの黒い瞳が、まっすぐに骸を見つめてくる。  
彼の癖なのか、骸はにやりと口角を上げて笑う。  
「クフフ…僕で良ければ調べてみても構いませんよ」  
 
恐る恐る、といった感じで凪はベッドに仰向けに寝転がる骸の上に乗ると、彼の胸をぺたぺたと触った。  
MMや凪と比べて、首が太くて肩幅も広い。そして胸が無くて筋肉で引き締まっていたのに驚いたようだ。  
「…胸、無い…。」  
「見てみますか?」  
骸がシャツのボタンを外し、前を寛げて凪に見せてやる。  
「…硬い…」  
MMの身体はもっと柔らかいのに、と不思議そうに骸の身体を観察する。  
一頻り骸の胸を触り、撫で回していた凪だったが、彼の股間の辺りが少し硬くなっているのが気になった。  
「…こっちも見ていい…?」  
「クフフフ…どうぞご自由に」  
凪はベルトを外し、ズボンのチャックを下ろして下着ごとズボンを下げる。と、熱を持ち始めた男性器が跳ね上がった。  
「な、何これ…?」  
初めて目にする男性器を、凪は好奇心に目を輝かせながらつんつんと指でつついた。  
「…MMも私も、こんなのついてない…あれ、なんかさっきより熱くて大きくなってる…?」  
あまりにも純粋な反応を見せる凪に、骸の口角が不敵につり上がり冷笑を浮かべる。  
「男にはこういうものがついているんです。君がおかしな触り方をするから腫れてしまったんですよ」  
「…私の…せい…?痛いの…?」  
「ええ、苦しいです」  
「…どうしたら楽になるの…?」  
自分が悪い事をしたものだと思い、今にも泣きそうな顔をする凪が可笑しくてたまらない。  
「そうですね…手で擦ってもらえますか?」  
骸に言われた通り、凪は両手でそっと男性器を包むと壊れ物を扱うように擦り始める。  
愛撫と呼ぶには稚拙だが何も知らない少女に悪戯をする背徳感と、骸を楽にしてあげようと一生懸命擦る  
凪の健気さが骸を興奮させる。  
「…どんどん熱くなって…先からなんか変なのが出てる…どうしよう……」  
「ッ…そこを舐めてくれますか?」  
「うん…」  
上目遣いで骸の顔を心配そうに見ながら、凪は骸の先端に舌を這わせ、ちろちろと舌を動かし  
溢れてくる先走りの液を舐め取る。  
「…ぅっ……」  
先程のぎこちない手淫とは打って変って、口淫は随分と慣れているようだった。  
蝋燭の頼りない灯りでよくは見えないが、微かに骸の頬が紅潮し苦しそうに呻く。  
(ドクドクいってる…すごく辛そう…)  
根元から絞り出すように扱きながら先端を口に含み、吸い上げると口の中に粘液が広がる。  
 
自分のしている事の意味がわからないまま、凪は一心に奉仕を続ける。  
彼女の手の中で膨れ上がった骸自身は形を変え、今にも弾けそうになってきた。  
「は…ッ…凪…そろそろ…」  
「んむ……ちゅ…ふ…っ…?」  
骸の腹にぐう、と力が入り凪の口の中に粘液を吐き出した。  
「…ン…、んんん…っ!?」  
むせかえるような独特に味と臭いに驚いて口を離すと、びくびくと震える骸自身から白濁の粘液が勢いよく  
溢れ出し、凪の顔に飛び散った。  
「…?何、これ…」  
自分の顔にかかった白濁の液を指に掬い、珍しそうに繁々と眺めていたが  
骸自身が萎えたのを見て安堵した。  
「…楽になった…?」  
「ええ、君のお陰で…気持ちよかったですよ」  
「…??…苦しいんじゃなかったの…?」  
白濁塗れの顔できょとんと骸を見る凪に、彼の嗜虐心はますます刺激される。  
 
「…男の人の身体って、面白いのね…他にはどうなってるの…?」  
顔を洗ってきた凪が骸の側に座る。骸に対して大分警戒心を解いたようだった。  
「クフフ…そうですね、他にもいろいろと教えてあげたいのですが。その前に僕にも女の身体を教えてくれませんか?」  
「女…私の身体…?」  
「ええそうです。女の身体…君の身体を知りたい」  
「…いいよ」  
骸の言っている言葉の本当の意味を知らず、凪は白いワンピースを脱ぎ彼の前で裸になる。  
薄暗い蝋燭の灯りに照らされた白い肌と、細いが女性らしい柔らかい曲線を描いた体の線の  
美しさに骸も思わず見惚れてしまう。  
何の躊躇も無く突然服を脱いだ事に少々驚いたが、彼女のこれまで境遇を考えれば男の前で  
裸になる事の意味を知らなくても無理は無い。  
骸も脱ぎかけの服を脱いで裸になり、凪をベッドに寝かせると彼女の頭の横に手をついて覆い被さった。  
「…どうやって調べるの…?」  
「そうですね…」  
骸の大きな掌が凪の乳房に触れ、緩急をつけながら柔らかく揉みしだいた。  
「…んっ…」  
「どうかしましたか?」  
「…そこ、気持ちいい……MMにいつも触られて、すぐに身体が熱くなるの…」  
先ほどの慣れた舌使いといい、骸は魔女と凪の関係を何となく理解した。  
 
魔女・MMにいろいろと教え込まれているらしい凪の身体は、面白い程骸の手に反応する。  
それらを確かめるように、手を、唇をあちらこちらに滑らせていく。  
「あぁ…っ…、…はっ…、ぁ…そこ……っん……っ…」  
男を知らないはずなのに、娼婦のように乱れる姿が何とも艶めかしい。  
硬くそそり勃つ乳首を摘んで刺激してやると、身体を震わせて悦ぶ。  
形をなぞるようにぺろりと舐めた後、乳輪ごと口を開いて銜えこみちゅうう、と音を立てて乳首を吸いながら  
下腹をゆっくりと辿り、淡い茂みを掻き分けて秘部に触れるとそこはすでにぐっしょりと濡れていた。  
「あ…っ、…そこ…、…きゅうってなって…、ぁ…っ…すご、く…気持ちいいの…っ……」  
「ここですか?」  
「…っそう…っ…ぁあっ…!」  
花弁を開き、秘裂を指で辿ると凪の身体がびくんと大きく跳ねた。  
指に絡む蜜を塗り広げるように秘裂を辿りながら、頃合を見計らって蜜口に指を一本侵入させる。  
「んぁああっ…っ…!」  
ベッドのシーツをぎゅっと握り締め、頬を真紅に染めながら淫らに喘ぐ凪に、  
骸の下半身は再び熱を帯び始めていた。  
湿った音を立てて指を出入りさせる度に、蜜が溢れて滴りシーツに幾つもの染みを作った。  
「あっ…、はぁん…っ…、ぁ…ぁあぅ…っ…、あ…っ…!」  
指を二本に増やし、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて内壁を擦ると、凪は淫らに腰を振って骸の指を受け入れる。  
何も知らない純粋な少女の驚くべきもう一つの顔に、骸の限界も近かった。  
「ふぁ…、あ…、ん…ッ…、また…っ…それ大きく、なってる…っ私…何も、してないのに…っ…!」  
「男はこういう生き物なんです…。君があまりにも可愛いものだから…」  
指を引き抜き、凪の蜜で濡れた指を舐める。  
「今度はこちらの口で僕を楽にしてくれますか…?」  
「…え…?…あ、…あっ…!」  
すらりとした凪の両足を抱えて開くと、ひくひくと震える蜜口に熱くなった骸自身を宛がう。  
そして、ゆっくりと先端を埋め込んだ。  
 
「や…!そんなの…入らな…ぃ、ゃああぁあああっ…!」  
指とは比べ物にならない質量のモノが入る痛みに彼女の悲鳴が上げる。  
十分に濡れてはいるが、思っていた以上にソコはきつく、骸の侵入を拒んでいるようだった。  
「ぁ、や、だ……っ!…も、抜いてぇ…っ!…痛い…っ…!」  
「くぅ…っ…凪、力を抜いてください…」  
涙をぽろぽろと零し、骸を引き離そうと暴れる凪の肩を押さえてしっかりと抱きしめながら  
腰を押し進めていく。  
「痛…!ぁっ…や…っ…いや…っ……っ…」  
ぐ、と強く腰を押し、最後の壁を抉じ開け最奥まで侵入する。  
女の喜びを知っているものの、男という存在すら知らなかった身体は未開通で  
処女を失った証が結合部分から滴ってシーツを赤く染めた。  
「…ぅ…っ…」  
「大丈夫ですか、凪…?」  
すすり泣く凪が落ち着くまで、骸は彼女の顔のあちこちに何度も口付けながらあやすように髪を撫でてやる。  
苦しくて身体は痛いのに、触れ合った彼の身体が暖かくて、何故か不快ではなかった。  
 
相変わらず凪の中はきついものの、彼女が落ち着いてきたのを見て骸はゆっくりと腰を引いた。  
「ぅ…あぅ…っ…!」  
「僕に掴まってください…爪を立てても噛み付いても構いませんよ」  
「ん…っ…」  
彼女の手を首に回させしっかりと抱き合うと、慣れない凪を気遣いながら骸は腰を揺さぶり始める。  
異物の侵入を拒む内壁に逆らいながら奥へと進み、ずるずると引き抜かれる。  
骸が動く度に湿った水音を立てる凪の中は少しずつだが、彼を受け入れてきたようだ。  
「…ふあぁ…っ…、ぁあ…、中、熱いぃ…っ…」  
MMと身体を交える時とはまた違った快感。  
少しずつだが痛みとは違うものがざわざわと凪の身体を走り、うっとりと蕩けた表情を見せながら  
掠れた甘い声で喘ぐ。  
「…ん……、…ふ……っ……」  
涙で潤んだ瞳で見上げると、眉間に皺を寄せ、何かに耐えるような表情で一心に腰を揺する  
骸と目が合った。  
「…苦しい、の…?」  
「…ッ…大丈夫、ですよ…寧ろ気持ち良すぎてどうしかなってしまいそうだ」  
「気持ちいいんだ…良かった…」  
嬉しそうにふっと柔らかく微笑むと、凪は汗で張り付いた骸の前髪を梳いてやる。  
一瞬、骸は呆気に取られたが口角をつり上げて笑い、彼女に聞こえないように小さな声で語散る。  
「…参りましたね…」  
本当に、どうにかなってしまいそうだった。  
 
「ぁあ…っん、…あっ…はぁ…、はっ…ぁ…、あ、んん…っ…」  
ベッドを軋ませながら、骸は激しく腰を使い凪を追い上げていく。  
二人の体液と破瓜の血液が交じったものが結合部分から溢れ、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて滴った。  
「あ…っ…、くぅ…ん…!なんか、変…っ…なの…っ…」  
「そろそろ、ですか…?」  
骸は凪の両足を抱え直して身体を屈折させると、彼女の最奥を突くように激しく腰を揺すった。  
「や…!あ…っ!ぁ、はぁ…っん!なんか、変なのが…ぁ…っ!ぁん…っ来る…っ…!」  
得体の知れない感覚が怖くなり、骸に必死にしがみつくと彼も力強く凪を抱き返してくれた。  
互いの指を絡めて手を握り、唇を重ねる。  
「はぁ…、あぁん…!や…、ら、めぇ…来ちゃ…うぅ…ぁ、んあぁ、はぁ、あっ…ああああっ……!」  
強い快楽が脳天まで走り、頭の中が真っ白になる。  
全身の神経が麻痺するような感覚に身体がびくびくと身体が戦慄くのと同時に凪の内壁が収縮し  
骸をきつく締め付けた。  
「ぐっ……ッ…!」  
骸も絶頂を迎え、凪の最奥に白濁を放つ。  
「…ぁ、…あっ…、お腹…、熱いの、が…っ…びくびく言ってる…♪…っ…」  
残滓を全て吐き出すように軽く腰を揺すと、骸は萎えた自身を引き抜いて凪から離れると、  
少し遅れて血液の交じった白濁が凪の秘部から零れてきた。  
成り行きとはいえ、魔女が鳥かごの中で大事に育ててきた少女を手にかけたという罪悪感が  
骸の脳裏を過ぎったが、それ以上に彼女の手にいれたという優越感と多福感があった。  
 
骸はすっかり脱力しきって動けない凪の身体を濡らした布で拭いてやり、彼女を抱いてベッドに横になる。  
眠そうな瞼に何度も口付け、彼女が眠るまでずっと髪を撫でていた。  
 
 
「…ん…っ…」  
東の空が少し白んだ頃、凪は目を覚ました。  
身体が鉛のように重く、下腹部に鈍い痛みがある。そこで、昨夜の事を思い出した。  
「…あ」  
顔を上げれば、すぐ側に骸の顔があった。凪が動く気配に気付いたのか、彼が目を覚ます。  
「あ、あの…」  
「…おはようございます、凪」  
「お…、おはよう…ございます…」  
何故か妙に気恥ずかしくて、骸の顔を正面から見る事ができなかった。  
凪の額に軽く口付けると、骸は起き出して身支度を整え始める。凪も重い体をなんとか起こして服を着た。  
 
「僕は魔女に見つかる前に帰りますが、君はまだ寝ていた方がいい」  
窓まで見送る凪の頭をぽんぽんと撫でてやると、彼女は突然俯いてしまった。  
「…どうかしたのですか」  
何かを言いたそうに、もじもじと手を揉みながら目を泳がせている。  
「…あの…骸、さま…」  
凪の読んで本の中で、女は男に『様』とつけて呼んでいたので、骸の事をそう呼んでみた。  
「やっと名前で呼んでくれましたね」  
やけに畏まって呼ばれた事が可笑しかったが、凪が名前を呼んでくれた事が嬉しかった。  
「…あの…次はいつ、会えますか…?ううん………また、会いたい……」  
「君が会える時ならいつでも」  
「…昼間は、MMがいるからダメ…夜とか…MMが帰った後なら大丈夫…外から呼べば、縄梯子を下ろすから…」  
「わかりました…そうですね、三日後の夜にまた来ます」  
「…本当に?」  
つぶらな瞳を輝かせる凪の唇に、骸は返事の代わりにキスをする。  
触れるだけの口付けだったが、触れ合った唇がやけに熱かった。  
「じゃあ僕はこれで…また会いましょう、凪」  
「骸様…」  
 
彼が縄梯子を下り、その姿が見えなくなるまで凪はずっと見送っていた。  
そして再びベッドに横になると、今彼が触れた唇を指でそっとなぞってみる。  
「…骸、様…」  
MMと身体を重ねる事はいつもの事で、別に何とも思わなかった。  
だが、骸と身体を重ねてから──まるで自分が自分ではなくなってしまったような  
不思議な感覚を覚える。  
本の中に書いてあった、男と恋愛をするというのはこういう事なんだろうか。  
MMに相談してみようか…と思ったが、男を勝手に招き入れた事を知ったら何というだろうか。  
その時ふと、ベッドのシーツに赤い染みがついている事に気付いた。  
「…どうしよう…」  
MMが来るまでまだ少し時間がある。  
その痕をどうやって隠そうか。  
 
MMに嘘をつく罪悪感より、彼がまた会いに来てくれる日が待ち遠しくて仕方がなかった。  
 
 
 

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