*エロ要素なし、ディーノがちょっと腹黒いかも
一日中ドタバタと騒ぎ立てた子供たちは遊び疲れてすぐに眠りについた。オレは居間で寝息をたてた3人を担ぐと階段をのぼり、ベッドまで連れて行く。
毛布をかけてやると、チビの手がきゅっとまるくなって端を掴んだ。こうして目を閉じてしまえば兄貴ぶっていたツナも、母親ゆずりの顔がより穏やかになった。
「ふ〜つかっれた〜」
居間に戻ったオレは絨毯の上に大の字になった。子供の体力はあなどれねーなあ。あいつらきっと眠くなんなきゃまだまだ遊べ遊べ言っていただろう。
「ディーノくんありがとね、助かったわぁ」
すると奈々さんがキッチンから顔を出してくれる。
「いや、これくらいなんとも」
面倒な来客(もちろんオレのことだ)を笑顔で受け入れてもてなす姿は確かに大人の女性だ。
ジャッポーネは小柄で色素も薄く、オレの目にはみんな年より若く見えるのだが奈々さんはとくにそうだ。
いや、幼いって言った方がしっくりくる。とても年上で人妻…、いや中学生の子持ちになんて見えない。
「奈々さん…」
「なーに?」
手招いて、すぐ横に座らせる。すばやく膝に頭を乗せた。いわゆる膝枕ってやつだ。
さすがにこの行動はちょっと驚いたようだったが、動じた様子はない。なんつーかそれを受け入れてもらえることが嬉しくもあり、寂しくもある。
「オレも眠くなっちまった…」
「ディーノくんは甘えんぼさんなのねぇ」
くすくす笑う。年上なのにかわいい。やばい。欲しいな。オレ、この人が欲しい。
そっと、警戒されないように手を伸ばす。
「奈々…」
「ん?」
髪を梳いて頬までたどりついたとき、家光さんから預かった手紙を渡したときの顔が浮かんだ。目を閉じていとしいものをそっと胸に抱く姿は、ひとりの女だった。
今の彼女は母親の顔だ。
「さん…今日は楽しかったよ」
「そう!ランボくんもイーピンちゃんもつっくんもとても喜んでいたわ」
にっこり笑ってそう言う彼女を見て思う。オレにはこの人の幸せを壊せそうにないと。だからオレも笑って見せた。
「おやすみ」
「おやすみなさい、ディーノくん」
(おわり)