「沢田!やめろ!」  
 
やめてくれと懇願するラルの声を、綱吉は気にも留めない。  
いつも温厚で優しい綱吉の姿は何処にも無い。  
唯、怒りと嫉妬に身を任せて、ラルの自室の家具を破壊していく。  
必要最低限の衣服しか入っていないクローゼット。自分のリングを保管しているプラスチックのケース。  
硬くてこんなものでよく寝れる。と言いたくなるようなベッド。  
すべてを粉々に壊してはとある物を探している。  
 
「・・・あった。また・・。ここにも。」  
 
呟くように言って、掌にのったとある物を灯した大空の炎で燃やしていく。  
部屋には色褪せた青いおしゃぶり、少し変わった迷彩柄のバンダナ。『collonelo』と彫られたドッグタグのネックレス。  
 
「やめろ!それ以上コロネロの物を燃やすな!」  
 
がしっと綱吉の腰に、抱きつき、静止させようとするが、『コロネロ』という言葉を出したせいで、綱吉の怒りは更に上昇。  
自分の腰にまとわりつくラルの両の腕を自分の両手で掴んだ。  
 
「な、何をする気だ。」  
「『コロネロ』っていったよね、今。」  
 
長い沈黙。ラルは何が起こるかわからない恐怖で少し震えている。  
 
「・・・・・」  
「答えろ。ラル・ミルチ。」  
「・・・・」  
「答えろ!!!お前は今、『コロネロ』といっただろう。」  
「言った。気分を悪くしたのなら謝る!だからっ・・・・・っうぐぅあぁああ!!!」  
 
全てを言い終わらないうちに、綱吉はラルの両腕の骨を、己の怪力で粉砕しようとする。  
ゴキリ、ボキリ、ボキリ。  
痛々しい音を立てて、ラルの腕に綱吉の手の形をした痣ができていく。  
もう骨は完全に折れているのに、綱吉はラルの腕を握り続けている。  
痛い、苦しい。そういいたげな表情のラルとは打って変わって、綱吉は全くの無表情。  
 
「や・・めてくれ・・・・。もう、言わない、から・・・。」  
「・・・・そう。じゃあ、誓ってよ。“もう二度と死んじゃった元恋人の名前なんて口にしない。これからは、ずっと、俺の傍にいる。”って」  
「誓う。誓う、から腕を・・」  
 
綱吉は腕の力を抜くと、ラルの腕ではだらりと力ない様子で体から垂れ下がっている。  
綱吉はそんなこともお構い無しに、満足そうにいつもの柔らかい笑みをラルに向けた。  
 
「約束。だよ。じゃあ、今日はお休み。また明日。」  
                        続く  
 
 

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