雨に濡れて腕に貼り付いた袖を指先で持ち上げてハルが言う。  
「やっぱり出るの止めれば良かったですね」  
 
隣に立っている山本もびしょぬれで、コンビニに出かけたことを後悔しているところだった。  
ハルの家にそんな二人がたどり着いたときには、  
通り雨の雨雲は晴れて細い三日月が真っ暗な空に浮かんでいるのが見えた。  
「アイス、買わなきゃ良かった」  
山本は照れたように笑って、右手に持ったコンビニの袋を少し上げてみせる。それを見たハルが苦笑した。  
ハルの家に来て、真冬なのに突然アイスを食べたいと言い出したのは山本で、  
それじゃあ散歩がてらに買いに行きましょう、と言ったのはハルだ。  
二人ともまさか雨に降られるなんて思っていなくて、何も持たずに家を出た。  
丁度コンビニを出たときに降り出した雨は走って帰れば大丈夫だろう、  
と言う二人の予想に反して意外な大降りを見せた。  
ずぶ濡れで玄関に立つ自分たちの姿を見て、ハルは一瞬呆気にとられてから、それからくすくす笑い出した。  
アイスを持っていなければ、雨が上がるまで少し待っていられたのに。  
ぼたぼた水を垂らしながら玄関先で立ち止まっている山本に、ハルは急いでタオルを持ってきた。  
それから、山本が水気をふき取る前に家の中に引っ張り込む。  
廊下が水浸しになるぞ、と山本がハルを見つめると、ハルは「かまいませんよ」と小さく呟いた。  
裸足でバスルームまで行って、お風呂場にお湯を入れた。  
「山本さん、お風呂入ってください。かぜひいちゃいます」  
まだ濡れたままタオルを掴んで突っ立っていた山本にハルはそう言った。  
「ハルはどうすんだ?寒いだろ」  
「服を着替えてきますから、大丈夫ですよ。山本さんは替えがないから」  
「…一緒に入らない?」  
顔を拭きながら、山本が嬉しそうな顔で言った。  
 
ハルはブルーのタオルに埋め居ていた顔を上げて、信じられないモノを見る目つきで山本を見上げる。  
「……はひ!?」  
思わず「やだ」と言いそうになって口を閉じる。  
山本と一瞬目を合わせたハルは、すぐに視線を逸らせてしまった。  
(はひ〜、うそ!イヤじゃない!イヤじゃない。けど。けど…、)  
思わず大声で叫びそうになって、ハルはタオルを口許にあてた。  
「だってハルもそのままじゃ風邪ひくぞ?」  
それからハルの手を取って、服を脱ぐように促す。  
ハルはこんな事ごときで顔が赤くなるなんてばかみたいなあって思う。  
手を握ったこのひとは、その事についてどう思っているのかは分からないけど。  
 
とりあえず山本が先に服を脱ぐ、と言うからハルは恥ずかしくて一度脱衣所を出る。  
「一緒に風呂に入るなら、別にいいだろー」  
と、濡れた服を乾燥機に放り込みながら山本が騒いでいる。  
買ってきたアイスを冷凍庫に入れている間に先に山本は風呂に入ってしまったらしい。  
それを確認し意を決してハルも濡れて重くなった服を脱ぎ、バスタオルをぐるぐる巻いて風呂場のドアを開ける。  
するといつものバスタブが泡でいっぱいになっていた。  
「これだったら見えないし、恥ずかしくないだろ?」  
さっきまで俯けていた顔を上げて、山本が泡だらけの湯をすくう。  
バブルバスの入浴剤は、ハルが前に買ったものだった。  
いつも入れよう入れようと思っていて今まで忘れていたものを、山本が入れたようだ。  
「ありがと、ございます…(それハルのですけどね!)」  
ばしゃん!とバスタブに飛び込むと、山本がにやにやした顔で見てくる。  
「アイス買いに行ってよかった!」  
ふたりで入るには少し狭いバスタブの中で、差し向かいに座ると膝がごつんとぶつかる。  
それでも山本はにこにこして、ハルはバスタブの中で三角座りをした。  
「あの〜…ほんとに湯船の中、見えてませんよね…」  
「見えてないよ。こんなに真っ白なのに。しかもハル、バスタオル巻いてんだろ」  
見えないことを確認して、ハルは安堵のため息をついた。  
 
(こんなに明るい光の下で、山本さんに体を見られたら…。)  
ハルは考えただけで、恥ずかしさに耐え切れず顔から火が出そうになる。  
大体、好きな人とお風呂に入る日がくるなんて考えてもなかった。  
ふわふわの泡が肌に当たって気持ちいい。  
「!ひゃああ!!」  
ぼーっとしていたら、ふくらはぎ辺りにぬめった手が這う感触。  
「ははっ、びっくりした?」  
「もー!何するんですか!」  
「だってハルで遊ぶの面白れーもん。これ、くすぐったい?」  
「はひー!!ちょっと、狭いから、やめてくださいっ!」  
足首を掴んで引っ張り寄せようとする山本に、浴槽の縁を掴んで抵抗しようとするが、  
泡で滑って上手く掴めない。仕方なく足をバタつかせて逃れようともがく。  
その拍子に、つま先に何か触れた。  
「わっ、危ね!おい、もうちょっと優しく触ってくれよなー」  
「へ…?」  
もしかして。もしかして、それは。…考えるのも恐ろしい。  
「……山本さん、腰にタオル、巻いてない、ってことないですよね…」  
「ん?巻いてねーよ、そんなの。なんなら確認するか?」  
と、立ち上がろうとするところを急いで押しとどめる。  
「いい、いいです、立たなくて!」  
「そう?……つーか、俺たっちゃった」  
「え?だから立たなくていいですから」  
「違う違う。ハル見てたら、勃ったの」  
一瞬理解出来ず、眉根をよせて山本の顔を見つめるハル。  
(たつ?山本さんは今座っているし。じゃあ何が立つの?)  
「分かんない?コレのこと」  
山本は頭の上に疑問符を浮かべるハルの手を取ると、自分のモノを軽く握らせる。  
「!はひーーー!?なっ、何触らせるんですか!!」  
「へへ、ハルに分からせようと思って」  
 
ハルは山本を睨みつけるが、思わず湯の浸かっている下半身に目がいってしまう。  
(泡風呂で本当に良かった…そんなの直視出来るわけ、ない…)  
これ以上からかわれないよう、山本に背を向け、一息つく。この人は油断ならない。  
「なんでそっち向くんだよー。俺ばっか裸じゃん、ハルもタオル取れよ」  
「ひ、引っ張らないでください!」  
先ほど暴れたせいで、巻きが緩くなっていたタオルを思い切り引き剥がし、浴槽から放り出す。  
「ひゃあーー!」  
「よし、これでお互い生まれたままの姿だな!」  
「あ、ありえないですよ……」  
鼻先まで湯船に浸かって身を固くしたハルを後ろから抱きしめ、髪に頬っぺたを寄せる。  
どく、どく、と山本の心臓の音が背中に伝わってくると、ハルの気持ちは少し落ち着いた。  
とは言っても胸は両腕でしっかりガードしているし、振り向くことなんて絶対出来ない。  
その上、お尻辺りに固いモノが押し付けられている。  
山本の体温高めの腕と泡のぬるぬるした感覚に、ハルの体から力が抜けてきた。  
「…ハル、俺もう、我慢できない」  
「ま、待ってください、そうだ!もうお風呂出ましょう!」  
「ごめん、待てない」  
「山本さ、あっ!」  
お湯でほんのり赤くなったうなじに唇を落とし、ちゅ、と軽い音を立てながら、  
胸を覆っていた腕の隙間にするりと手を滑り込ませ大きな手で包み込んだ。  
そしてハルの腰を少し浮かせ、山本は膝に乗せる。  
右手は胸を揉みしだき、左手でハルの腰が逃げないように押さえ込み、太腿に自分のモノを擦りつける。  
だんだんハルの中で熱が生まれ、上ずった声が漏れ出した。  
「…や、ぁんっ…!」  
「風呂場だと、声けっこう響くのな」  
剥き出しの背中に舌を走らせると、ハルの声が一段高くなる。  
 
くるりとハルの体を反転させ山本の正面に向かせる。  
与えられる刺激と、湯の熱さでハルの真っ白な肌は赤く染まっていた。  
浴室の息苦しさも加え、お互いに息使いが荒くなっていく  
頭から背へかけてを骨ばった手が滑り、ハルはうっとりと目を閉じた。  
膝の上で乗っているハルの体温が、じんわりと伝わって来る。  
その熱が、重さが、存在する証となり、愛しく感じた。  
山本の顔が近づいてくる。それに合わせハルは瞳をゆっくりと閉じる。  
目蓋に、柔らかな温もりが下りた。  
くちづけは、眼から頬へ、唇へ。始めは軽く、幾度目かには強く、激しく。  
交わす間にはくぐもった声が、解放されてからは、熱い吐息が漏れる。  
唇は離れ、胸もとへと移っていった。行く先々で、くちづけ、吸われる。  
山本は大抵こうだ。人目に留まるようなところには跡一つ残さないが、  
そうでないところには満偏なく紅い刻印を印す。  
腕、身体が、震える。ハルは縋りつくように山本の頭を掻き抱く。  
尻を撫でられ、僅かに声が出る。  
ちろり、と舐められるごとに身体が火照ってゆく。  
ハルはじんじんと自分の中心が熱を帯び、切なくなって。  
身が離され、涙目で山本を見つめると、腕を取られ、山本の胸へ。  
それから下腹部へ導かれる。  
 
「…触れよ」  
「…あっ…意地悪…しないで、くださいっ…!」  
そう呟くと、山本は口の端だけを上げて笑った。  
唇はハルの突起を吸い、もう片方をやわく揉む。  
いやらしい音がバスルームに響き、頬に集まった熱が身体中に拡散してゆく。  
「ああっ、や、ん…山本さんっ…」  
「は、…っ」  
反撃するかのように、ハルの小さな手が山本のモノを擦り、山本はたまらず声を漏らす。  
山本の指はハルの茂みに吸い込まれるように入り、忙しなく中を動き出入りする。  
ハルの中は、いつも以上に潤っているせいか、まるで海の中に包まれたかのような感覚がした。  
最奥を掻き分ける指は一本、二本と増え、ハルは喘ぎ声を上げる。  
「…山本さんっ、 水が入って…あっ!」  
引き抜かれた瞬間に、とろり、と太腿に温もりが零れる感じがした。  
水中だから、実際はどうなっているか分からないが。  
ハルは我慢できないように自ら舌を重ね、絡め、吸う。  
肩を抱くと、野球をしている山本の肩は、女の自分に比べると十分広く、硬い。  
背に、腕をまわす。  
「……いくぞ」  
準備が出来たのか、耳元でそう囁かれた声に、はい。とハルは頷いた。  
嬌声を上げ、涙が零れる。  
望んでいたもので隙間が埋まり、ひとつとなれたことを身体が歓ぶ。  
打ち寄せ、押し寄せる波のうねりに離されまいと、ハルは回した腕に力を込める。  
「うわ…、すげ、気持ちいー…」  
「ひゃ、あっ…ハ、ハルも…気持ちい、です…っ」  
繋がる場所から音が響き、それに合わせてハルの口から甘い声が漏れ、  
湯気の中に淫らな音と、淫らな香りが混じっていく。  
やがてうねりは大きくなり、山本の肩にきゅ、と爪を立てた。  
山本さんっ、という呼び声に応えるように、大きな波が上り詰めていく。  
ハル、と自分の名が耳に響くのを感じながら、ハルは真っ白い中に吸い込まれていった。  
 
 
「…ハール、ハル!大丈夫か?」  
「…ちょっと、のぼせたちゃったみたいです…」  
「ごめんな、無理させて」  
山本の体にしなだれかかるように、ハルは体を預け肩で息をする。  
山本はハルの額に張り付いた前髪を払いながら微笑む。それから優しく頭を撫でた。  
「ハル、頭洗ってやるよ」  
山本が手を伸ばしてハルの髪に触れると、ハルはその手を取って自分の方に引いた。  
「いい、いいです!ハルがやりますよ!」  
ぐい、っと引っ張られて山本は体勢を崩した。  
こそこそとバスタオルをきつく体に巻き直し、ハルは浴槽から出る。  
「頭、こっち向けてください」  
火照りが湯から出て落ち着いたのか、嬉しそうにハルはシャンプーのポンプを押す。  
髪の毛に絡んだハルの細い指に、山本は少し顔を俯けた。  
がしゃがしゃと頭をかき混ぜる手に「痛い、痛い」と笑いながら山本が繰り替えす。  
目の前で泡が弾けて飛んだ。  
こんなに楽しいなら、もっと早くにハルと風呂に入れば良かったなあ、と山本は思った。  
 
 

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