「暑ちぃ……」  
 
ぽつりとγが呟いた。  
暑い暑いと不平を垂れたところで室温がどうにかなるわけがない。  
せめてもの気休めに、とグラスのアルコールを呷る。  
 
「まあ仕方ないさ。こう風もないんじゃ暑くもなるだろう」  
 
同じように酒を飲み下してからアリアが言った。  
 
「わかっちゃいるんだけどな……。こんなに暑いと思わず愚痴っちまう」  
 
そう言ってグラスの中身を全て飲み干すと、注いでくれと催促するようにアリアにグラスを手渡す。  
ベッドのふちに座っているγからではテーブルに置かれた酒瓶に手が届かないのだ。  
別に立てばいい話なのだが、アリアの手の届く範囲に酒瓶があるので、めんどくさくなってつい甘えてしまうのだ。  
アリアも慣れたのかグラスを受け取ると、酒を注いでいく。  
からん、と氷が溶けて回る音だけがこの暑さを和らげてくれる。  
 
「……なあ、γ」  
「……何だ、ボス」  
 
グラスに目を落としたままアリアがぽつりと問いかける。  
γもYシャツをつまんでぱたぱたと風を胸元に送りながら答える。  
アリアはγのグラスをテーブルに置くと、立ち上がりγに近寄る。  
おい、グラス、とγが文句を言おうとした。が、その文句の続きは突如背中にきた柔らかい衝撃に吸収されていった。  
 
「暑い中でも、熱いことをすれば相殺される、と思わないか?」  
 

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