設定は十年後。
骸が脱獄し、犬、千種とともに凪はいまはある邸宅を住居としてに落ち着いている。
凪にとってはどういう経緯かわからなかったが、骸の指示なのか千種がその家を手配したようだった。
フランはウ゛ァリアーの欠員補充ができないとのことで今だイタリアにいる。が、実際は骸と連絡をとっているのだった。
凪は夕食の支度をしていた。
今は骸も食してくれる料理を作ることが嬉しくてしかたない。味見をしてみる。
ちょうどいい具合だ。
料理の出来に満足していると、不意に両の肩に男の手が置かれた。
どきどきして振り返ると、凪の予想通り、骸だった。
「味はどうですか?」
耳に吐息がかかるほど近くで話し掛けられ、凪はどぎまぎする。
骸と共に過ごすようになったのは昨日今日ではないが、凪は骸の近くにいると緊張してしまう。
「えっ、はい、ちょうどいいです。」
「そう」
「あの、骸様も味見しますか?」
骸が凪の耳元に顔を寄せる。
「今はいいですよ、君の料理はおいしいから僕が味見しなくても大丈夫でしょう」
骸は凪の髪を梳きながら返した。
凪は骸の行動に緊張して体を強張らせる。
骸は声を落として、内緒話をするように言う。
「今日もまた、一緒に寝ましょうね」
骸は凪の髪を梳く手をスッと引き、台所から出て行った。
凪は夕食の片付けを済ませ、シャワーを浴びた。先程の骸の言葉を思い出すとどきどきと心臓が高鳴る。
シャワーを終え、薄手の寝巻を着て、骸の部屋に向かっていく。
先程の骸の言葉が意味する通りに―
一番大きな部屋の前でノックをすると「どうぞ」と返ってきた。
そろ、とドアを開けて入る。
部屋に明かりはついていなかった。
月の光が明るい日だったので暗くても骸の表情はわかった。
少しだけ開いた窓から風が入ってカーテンを軽く波打たせる。
骸はベッドに足を交差させて伸ばし、柔らかいいくつかの枕に背中を預けていた。携帯電話でメールをしていたようだった。メールの相手はフランかもしれないし、仕事を頼む相手かもしれないが、凪にはわからないことだった。
「遅くなりました…」
「そんなことありませんよ」
骸は携帯電話を閉じ、無造作に脇の卓に置いた。
部屋の入口の方に目を向けるとネグリジェ姿の凪が細い肩を縮こまらせ、手を胸の前で握って不安げな顔をしている。
骸は、ゆったりとした動きで凪の方に手を差し延べる。
「おいで。」
それは、優しい、優しい声だった。
凪はその声に抗うことができない。引き寄せられるように骸の側まで来て、おずおずと差し出された手をとる。
途端に、凪の弱い力とは対照的な力強さでぐいと細い腕が引かれた。
細い体がベッドに押し倒され、肩まで伸びた黒髪が白いシーツに流れる。
骸は凪の背に腕を回し胸に顔を埋めた。
風呂上がりなのでブラは付けておらず、薄いネグリジェ越しに柔らかな乳房の感触を味わう。
凪は鼓動が速くなるものの、されるがままになっている。
―骸とこういう事をするのは初めてではない。もう何度目かになる。
命の恩人、力を与えてくれた、ずっと憧れていた人に触れてもらえるだけで、気を失いそうなほどうれしいのだが、この行為にはなかなか慣れない。
骸が胸から顔を離し、凪の心臓のあたりに掌を置く。
「鼓動が速いですね。緊張しているのですか?」
少しからかうように言うと、凪は消え入りそうな声で答えた。
「大丈夫…です…」
骸は、凪のネグリジェのボタンを外し、細い体のわりに豊かな乳房を露にする。
左側は揉みしだき、右の先端を口に含んで、ねっとりと舌を絡めたり吸ったりする。
「んっ…」
凪の口から息が漏れる。
いくらか胸を弄んだ後、骸は凪の首筋に口づける。
口づけながら、左手で鎖骨をゆるゆると撫でた。
ネグリジェを全て剥ぎ凪を生まれたままの姿にする。
「あ…」
凪は恥ずかしそうに手を体の前にやろうとするが、構うことなく骸は凪の胸に、
腹に口づけていき、両手と唇を下に降ろしていく。
両手をさらに滑るように降ろし、凪の体の後ろに回して、小さなヒップの肉を掴むようにして抱える。
凪の子宮のあたりに口づけた。少しずつ場所を変え何度も口づける。
凪はくすぐったくて身じろぎする。
「骸様…」
「凪…」
骸は体を起こして凪の柔らかな唇に己の唇を重ねた。重ねた所からちゅっと音がした。
骸の手が凪の大事なところに向かって下りていく。
「骸様…」
手が凪の秘所に触れる。
淡い茂みを撫でつけ、茂みをかき分けて指を挿入した。
「あっ」
内壁を強く、時に優しく刺激し、指を奥へ奥へと入れていく。奥を掻き回すと凪の腰がびくんと動いた。そのまま奥を強く刺激する。
秘所から蜜が溢れ出してくる。後で痛くならないように、念入りにほぐしてやる。
「あんっ、あっ」
こらえきれずに凪が声を出す。秘所が蜜で濡れそぼってきた。骸は指を引き抜くと、纏わり付いた愛液を舐めとる。
凪は夢現のとろんとした目で舐め取られる己の体液を見ていた。
骸はその目に腹の底から這い上がってくる情欲を一層増幅される思いがした。
早くこの可愛い女の、熱い肉の中に、己を突き入れたい。
「入れますよ」
両手で凪の腰を掴み、そう言うがはやいか男根を秘所に挿入する。
「あっ、骸様…!」
ずるんっと先端が入り込む感触に凪が声を上げる。
奥まで一気に貫く。
指よりも重くて大きな質量で最奥に熱い肉の棒が穿たれる。
「ああああっ」
凪の目尻に快感で涙が浮かぶ。骸の一物に肉が絡みつき、締め付ける。
腰を動かしながら、骸が再び凪の唇に己のそれを重ねるとちゅぷっと音がする。柔らかくて気持ちいい。
「凪、君は本当に可愛いですね」
そう言い、相手の舌に己の舌を絡める。互いに舌を絡め合う。凪は二人の唾液をこくんと飲み下した。
「ふう」
骸は唇を離して、凪の腰をゆすりながら、腹に入れたままだった男根を引き抜き、また突き入れる。
角度を変えて何度も挿入が繰り返される。
骸の腰の動きに凪が声を上げる。
「あっあっ、あっ、はあ」
愛蜜が溢れ出し骸の股間までも濡らした。
骸の動きが速くなった。強く、速く、子宮に打ち付ける。
「骸さまぁ」
「凪…僕の凪」
最奥で子宮にぶつかるところで、精を放った。
ずる、と下腹部から固さを失った骸のものが体の外に出される。
骸は凪の上にのしかかり、体を重ねて抱きしめた。
凪はぐったりとしていたがまどろむ意識の中でその背に腕を回した。
長身で、戦いのために引き締まった筋肉のついた骸の肉体は重かったが、凪にとってはその重みすら愛おしかった。
骸は腕の中にある柔らかい体と滑らかな肌の感触を味わう。
「んー。師匠にメール無視されましたー。」
「しししっ。使えなくて破門かよ?」
「野暮用みたいですねー。師匠ってばクローム姐さんを手篭めにしてたりしてー」
「あいつらそーゆーことすんの?」
「憶測ですー。クローム姐さんはミーにとっても謎なんですよ」