イタリア、ある古い館――。  
その屋敷は長いこと人がおらず使用されていなかったため、  
庭の植物は伸び放題だった。  
周囲は鬱蒼とした木々に囲まれ、外側からはわずかに屋敷の先端が  
見えるばかりであり、屋敷の庭や屋敷全体を窺い知ることはできない。  
その庭は花が盛りだった。  
「凪」  
呼ばれて彼女は花から目を離して振り返る。  
振り返り目を向けた先には、初めて会った10年前より背が伸び、  
少年から青年になった、そして不法な手段により自由の身となった男がいる。  
この少年が青年になる間に、少女も女になっていた。  
穏やかな表情を浮かべた男がこちらに来いという風に手を差し出した。  
彼女はその手を取った。  
そこは彼らが現在潜んでいるイタリアの古屋敷の庭だった。  
その広い庭の一角では、木々の緑のなかにピンクや白の花が咲いていた。  
この廃屋に近い木造の屋敷が、建築上は木でできているため多少脆いだろうが、  
敵対者から安全かどうかを既に彼が検討した上で現在根城にしている。  
そのためよく様子はわかっており、今更庭や周囲を見に来る必要などないのだが―。  
その日、彼は暇を持て余していた。  
ちょうどこの頃、屋敷を囲む庭の木々には、この南欧の春に似合う花が咲き乱れており、  
ここに来てまだ日の浅い凪を誘い庭に出てきた。  
花といえば、全部隊に花の名前を冠していたかつての敵を思い出さないことも  
ないが、それとこれとは別のこと。  
やはり女であるせいか、凪は庭の花に喜んでいるらしく  
―元来口数の少ない女なので花に対して何か言うわけではないが、  
爛漫と咲く花を見つめる微かな表情から、喜んでいるらしいことはわかった。  
それに、茂る若葉に混じる花を背にして、この女が振り返る様は、  
花の色が彼女の肌の白さを引き立て、その立ち姿は優美であって彼の心を満たした。  
廃屋のなかでは犬はいつもどおりやたらと物を散らかしてゲームに集中しており、  
千種もパソコンの前でなにごとかしていた。  
自分達が庭先に出ていることぐらいなら気づいているかもしれないが、  
わざわざ干渉してくることもない。  
骸は凪の手を取って体を引き寄せた。  
そのまま細い体に腕を回す。  
「骸様・・・もう黒曜には戻らないの・・・?」  
凪の頭に頬をのせ、両手の指を彼女の背の腰のあたりで結んで  
しっかりと抱きながら、彼は答えてやる。  
 
「暫くはここにいるつもりですよ」  
凪が骸の首に腕を回す。  
「日本がいいですか?」  
「・・・どちらでも」  
凪は骸の首に回していた腕を解いた。  
ふわりと離れていく体を、骸は引き止め強く抱き締めた。  
しばらくそうしていた。  
「困りましたね・・・離したくなくなってきた」  
その言葉がきっかけで、どちらともなく唇を重ねる。  
角度を変えて彼が口づけを繰り返すと、ちゅっ、ちゅっと小さな音がする。  
凪の口内に舌を挿し入れ、絡める。  
「ん・・・」  
凪が声を漏らす。  
絡み合う舌にともに快感を覚える。  
舌で彼女の歯茎をなぞっていく。  
凪は震える体を抑えるように、骸の背に腕を回し、縋りつく。  
骸が唇を離すと、凪は頬を染めて、目はとろんとしていた。  
骸は顔を凪の胸元に下ろしていく。  
背をかがめ、片方の乳房に手を添えて、その柔らかなふくらみに唇を当てる。  
彼女の着ている白いシャツは、ふっくらとした乳房に添って張っていた。  
が、そこは触れるとひどく柔らかく、また、肉の弾力を感じさせた。  
「骸様・・・」  
恥ずかしそうに細い肩を震わせ凪は彼の名を呼ぶ。  
「凪」  
花の咲く木陰で、凪は骸のの膝に抱えられるように、  
裸体の背を骸に預けている。  
彼女は膝を曲げてほっそりとした脚を投げ出されている。  
上半身を脱いだ骸は、後ろから片腕を彼女の腹に回して抱き、  
もう片方の手は乳房を弄んでいた。  
「ああ・・・」  
凪は身を捩る。  
骸は乳房を揉みながら彼女の耳元に唇をうずめた。  
腹を抱いていた手をさらに下へ動かす。  
淡い茂みをさわさわと撫でる。  
「あっ・・・」  
中に指を入れくちゅくちゅと音を立て刺激する。  
「ん・・・」  
丹念に中をいじってやる。  
「あっ、待って、骸様」  
彼の手を押さえるように、その手に彼女の細い指が添えられたが、  
彼は構うことなく彼女の体内を指で犯す。  
「あああああ」  
男の指を入れられたまま、蜜が秘部からたっぷりと溢れ出す。  
「う・・・ん」  
凪がかすかに息とともに声を漏らす。  
骸は凪の腰の左右を両手で撫でてやる。  
「ずいぶん出しましたね・・・今日は、もう少し愛し合いましょうか・・・」  
「え・・・」  
そういうと、骸は凪の脚の間に体を移動させ、彼女の脚を大きく開かせる。  
とろとろになった秘部を見ると、凪が彼の視線を感じていう。  
「骸様、見られると、恥ずかしい・・・」  
彼は少し笑っていった。  
「いまさらでしょう」  
 
彼は彼女の柔らかな太ももの内側に触れ脚を広げさせた。  
秘部の蕾を舌で転がす。  
「あ、そんなとこ・・・」  
肉の芽舐め上げ、歯を突き立てる。  
「んっ」  
凪が泣きそうな声を上げた。  
痛くない程度の甘噛みではある。  
今歯を立てたところをそっと舐める。  
「う・・・」  
「もうやめますか?それとも、まだしますか」  
指で秘所の奥をかき回しながら、舌で蕾を舐めあげる。  
「ひ、う」  
「いいなさい」  
骸は執拗に刺激を続けた。  
「骸様の、を、入れてください・・・」  
「いい子ですね」  
骸は体を起し、チャックを下げて自身の怒張したペニスを取り出す。  
それは脈打って、すぐに味わうであろう快感への期待にそそり立っている。  
「あ・・・」  
凪はその様におののいて、体を引こうとする。  
「怖くありませんよ・・・愛し合いましょう、凪」  
体を開かせ、自身を挿入する。  
「あっ」  
狭く、暖かいそこに熱く猛った彼自身が包まれる。  
「骸様・・・すごい・・・」  
挿入の快感に凪は目に涙を浮かべて、自身の腹の、彼が入っているあたりに手で触れた。  
「っ・・・凪」  
熱く柔らかい肉がペニスを包み、射精を促すかのように、蠢き扱きあげる。  
「君の中、すごくいいですよ・・・」  
快感に耐えながら言い、自身を引き抜き、再度突き入れる。  
動きに合わせて凪が鳴く。  
「あっあっ」  
気持ちよくて、お互いに腰を動かし合う。  
腰を強く打ちつけながら骸を声を漏らす。  
「ふっ・・・う」  
何度も自身の膣を穿つ甘くて重い圧迫感に、凪は声も出せずに受け入れる。  
凪のほっそりとした脚が骸の腰に絡まる。  
そのまま自由にさせてやり、凪のすべすべとした柔らかいふとももとふくらはぎの  
感触を触れ合う肌で味わう。  
彼女の脚の動きが望むままに自身の腰を彼女の腰にぴったりとくっつけた。  
上体は彼女の体の脇に肘を置いて支える。  
その姿勢で強く律動し腰を打つ。  
「クフフ・・・ちゃんと全部出してあげますからね・・・」  
腰を動かしながら、彼女の乳房をぐっと掴みピンク色の突起を口に含み吸う。  
「ああっ、骸様」  
「う・・・ん」  
口に含んだそれを何度も吸い、舐める。その間も互いの腰は動いていた。  
 
両手で凪の腰を掴む。  
彼女の腰を強く揺すりながら挿入を繰り返す。  
仰向けのため萎んだ凪の乳房に顔をすり寄せながら、骸は凪の子宮に向けて射精した。  
彼女は息もできないほど強く抱きしめられ熱い液体を注ぎ込まれる。  
彼の精を受けつつ広い背に腕をそっと回し、彼女もまた抱き返した。  
 
ややあって、骸は凪から体を起した。  
けだるそうに座り、片方の膝を立てその上に自らの腕を置く。  
凪は、細く、だが彼が初めて出会った時よりも成熟した、今しがた彼と交わった体  
をつややかな緑の草の褥、花咲く木陰に横たえていた。  
その体はしっとりと汗ばみ、快楽の余韻のため瞳には恍惚を浮かべていた。  
「起きれますか、凪」  
「・・・はい・・・」  
彼女はのろのろと体を起こし、這うようにして服を取る。  
骸は手早く衣服の乱れを整えた。  
凪が衣服を整えるのを待って彼は言った。  
「戻りましょうか」  
「はい」  
二人とも立ち上がりゆっくりと屋敷に向かい歩く。  
彼は先程自身が攻めた彼女の腰に、いたわるように優しく腕を回した。  
 
 

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