軋む扉に手をかけたスペードは、にんまりと唇を持ち上げた。
石畳の上を鎖がすべる硬質な音と、時々漏れ聞こえる甘い喘ぎ。
そう、内側には上質の果実が待っているのだ。
わざと勿体つけるようにゆっくりと扉を開けば、まず目に飛び込む黒服の少女。
天井から伸びるロープは少女の手首を傷つけることなく、しかし頑丈に絡める。
弱々しい抵抗にロープ同士が擦れ、喘ぎの合間に歪んだ音を立てていた。
「クローム。」
「っ、デイ……モン、さま、」
吐息交じりの甘い声に、スペードは瞳を細め、少女の輪郭を指でなぞる。
やわらかいカーブを描く頬は紅く染まり、大きな瞳にはうっすらと浮かぶ涙。
幼気な少女を快楽の淵に追いやることなど、彼にとっては造作も無いことだ。
「っお、……ね、がいです、……もうっ、」
「ヌフフ。何を、ですか。」
一歩クロームに近づいたスペードは、彼女の目の高さにあわせるように屈んで首をかしげる。
ぞっとするほどに青い瞳に浮かぶ、嗜虐的な感情。
クロームの太ももをなぞるようにして徐々に上へ、上へと辿る指先が、彼女の秘所を布ごしにそっと撫でた。
「っ!」
下着から湿った音が漏れ、体に電流が走ったようにクロームの体が跳ねる。
数日でずいぶん敏感になった、と満足げに頷きながら、スペードは下着の間に人差し指を滑り込ませる。
「んっ、あぁっ!」
「おや、まだ切れていませんでしたか。まったくもって、よくできた代物ですね。」
「や…っ、もう、あ、あ…っ、抜いて、」
空いているもう片方の手で、下着をずりさげ、中に入れたままの人差し指でコードを手繰る。
一気に秘所から引き抜いた、男性器を模した玩具を、スペードは興味深そうにしげしげと見つめた。
何時間もクロームを責め続けたそれは、彼女の愛液にまみれ、てらてらと卑猥に光った。
「さて、抜いてあげましたよ。」
「……っ、」
クロームの眼前に見せ付けるように、ぷらぷらと玩具が揺らされる。
先ほどまで自分の中で暴れまわっていたものだと思うと直視できなくて、クロームは頬を染めて瞳を逸らした。
しかし、スペードがそんなクロームをそれで許すわけもなく、小さな顎が掴まれ強制的に前を向かされる。
青い双眸がクロームを写したかと思うと、スペードはクロームの唇に吸い付いた。
冷たい舌が唇をなぞって、思わずクロームは口を開く。
待っていたかのように滑り込んできた長い舌がクロームの舌と絡む。
「ん、ふ…っ、」
ちゅ、と艶かしい音と一緒に離れた唇が、やんわりと持ち上がる。
そう、上質な果実は待てば待つだけ熟れるのだ。
「さあ、本当はどうして欲しかったのか、その口で言いなさい。」
「D……さま、……っ、」
おずおずと口を開いたクロームに、スペードは満足げに頷く。
幼気な少女が、彼の虜になった瞬間だった。