君の為にお湯を沸かす。君が泊まった朝の日課だ。  
僕が先に起きるのは君の寝顔を見るため。それが正しい  
朝だと信じているから。だってあんなに可愛くて綺麗な  
ものは他にないでしょう。大切な宝物。  
その宝物がゆっくりとベッドルームの扉を開けた。大き  
くて僕の全てを映してしまう瞳はまだとろりとしていて  
細くって出会った頃を思い出す。うん、あの頃から好き  
だった。  
おはようと抱き締めた僕を押し遣る君はシャワーとだけ  
呟いた。目先の恋人よりも隣のバスルームを優先なんて。  
ランボさんちょっとがっかり。慣れてるけどさ。  
ご一緒しましょうか?今は朝よ。  
構わないけど。間に合ってるわ。  
こんなお決まりの会話も朝の挨拶がわり。夜ならたまに  
は許してくれるものを。解かれた髪を洗ってあげるのは  
エロティックで好きなんだけどな。それと可愛い子猫が  
爪を立てたこの背中を洗って欲しいんだけど。  
 
こんなに幸せな僕だけど一人前に悩みだってあるよ?小  
さな頃からしっかりものの君は今でも僕を子供扱いする。  
喧嘩して拗ねるのは僕。仕方ないなと頭を撫でてくれる  
のは君。それはもう習慣で。でも僕だって君を守ってあ  
げられるから。昔より大きくなった体は君を包むことも  
造作ない。全てを賭けて抱き締めてみせる。だから安心  
して僕に君を預けてよ。  
そんなことを考えてたら。昨夜の名残を落とした君が現  
れた。用意したお茶を渡す。このタイミングも茶葉が開  
く最適な湯温も覚えたんだよ。愛の為に。  
なんだか朝から幸せそうね。湯上りの君が問いかける。  
大きな瞳の中には間違いなく笑顔の僕がいた。  
君がいるからさ、イーピン。  
軽く抱き寄せて魅力的な額に口付けを一つ。互いの手に  
は香を振り撒く茉莉花茶と砂糖を入れた甘いラテ・マッ  
キャート。  
僕らの関係は続いてゆく。  
 

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