全ては唐突に始まった。  
「そういえばツナ、お前まだ童貞だろ?」  
と、何の脈絡もなくリボーンに言われ、綱吉は飲みかけのジュースを盛大に噴き出してしまった。  
この年頃の男子にとっては、誰のナニが大きいとか毛が生えてるだとか、その手の話題はなかなか  
デリケートにして重大な問題だ。  
そんなところにリボーンは何のクッションも置かずに土足で踏みいったのだった。  
「だろうな……まあどうせそんな度胸もないだろうしな。むしろ童貞じゃない方が驚きだぞ」  
噴きだしたジュースを拭くのも忘れ、絶句している綱吉の間抜けな顔に、リボーンは深々とため息をついた。  
「いいのか?初めてで京子にダセー真似しちまっても。最初のセックスは大事なんだぞ」  
「だからって、お前急になんてこと言うんだよ!」  
綱吉の憤りももっともなのだが、そんな事を意に介するリボーンではない。生徒の意向を全く無視をして、  
家庭教師はさらりととんでもない課題を与えた。  
「ボンゴレのボスが童貞っていうのも格好がつかねえからな……。  
ツナ、どっか適当なところで童貞捨ててこい」  
「ちょっとリボーン!」  
「……とはいえ、だ。仮にもボスの相手をする女は下手な奴をあてがえねえしな。  
誰か適当な女……といってもビアンキは俺の愛人だからダメだ。ツナなんかにあいつは勿体ねえ」  
「お前ちょっとは人の話を聞けよ!」  
「まあとりあえず黙って待ってろ。悪いようにはしないぞ」  
赤ん坊のくせにリボーンはにやりと腹黒い笑みを浮かべた。  
悪いようにはしないというリボーンの言葉をどこまで信じればいいのか、綱吉にはわからなかった。  
 
――とここまでが数日前の話だった。  
「……あの、ボス」  
天気も良い日曜の昼下がり。沢田家の面々は綱吉を残して皆外出をしている。  
何でも隣町のデパートで期間限定の催し物をやっており、リボーンがそれに行きたいと  
奈々にせがんだためだ。綱吉は宿題があるらしいから、と余計なひと言を吹き込んだのもリボーンである。  
何か企んでいるのは明白だった。  
その証拠に、本来ならば宿題をしているはずの綱吉は、ベッドの上で何とも悩ましいにらめっこの  
真っ最中だった。  
時ならぬにらめっこをしている相手は、白い肌に黒い髪、トレードマークの頭の房に  
ハードな眼帯を付けたクローム髑髏だった。  
「……だからってなんでクロームなんだよ……」  
何食わぬ顔で外出を楽しんでいるであろうリボーンに向け、虚しい恨みごとを口にする。  
こんな状況だからそう思うのか、黒曜の改造制服からちらりとのぞく白い柔肌がやけに悩ましい。  
一体どんな言葉を交わしたらいいのやら、わけもわからず、リボーンへの恨みごとを口にする以外には  
沈黙という選択肢しか選べなかった。  
今にもこの場から逃げ出してしまいかねない綱吉とは対照的に、クロームはベッドの上に正座をして、  
大きな瞳でじっと綱吉を見つめていた。  
気まずい沈黙を破ったのは彼女の一言だった。  
「あの、ね、ボス。練習しなきゃ、いけないんでしょ?」  
至って真面目な言葉と、その練習しなければいけない内容とのギャップが大きすぎて、  
なんだか目眩がしそうだった。  
 
「いや、練習ってさ!  
だって、クロームも良いわけないだろ?その……クロームも初めてだったらさ……」  
「うん……私も、まだ……」  
耳まで真っ赤に染め、恥ずかしそうに俯きながら告白したクロームの言葉に、綱吉の顔も同じく赤く染まる。  
なんてことを聞いてしまっているんだろうかと気まずさを覚えるが、それを振り払う勢いで声を上げた。  
「だったら!なおさら……!」  
「うん……でもね、だから私もちゃんと練習しておいた方が良い、って」  
クロームからの返答に、綱吉はリボーンめ!と呪いの言葉を声なき声で叫ぶ。  
「それに……それだったら骸様とする時に、練習しておいて少しでも喜んでもらいたいから……」  
ぽっと頬を赤く染めてクロームはそう言った。思わずこちらもときめいてしまうほど、実にいじらしい動機だ。  
 
そのいじらしさを逆手に取ったリボーンはまさに悪魔の所業だと思わなくもなかったが、  
それを口に出して言えるほどの度胸は綱吉にはなかった。  
そんな綱吉の心境を知らずに、クロームは綱吉に向けて畳みかけた。  
「ボスだったら良いの。私、骸様もそうだけど、ボスの役にも立ちたいの。  
だからね、良いんだよ、ボス」  
ね?とクロームに純真無垢な微笑みを向けられて、いくられっきとした本命が別にいるとはいえ、  
彼女を可愛いと思わないわけがない。  
どちにせよ結果、沢田綱吉は陥落せざるをえなかった。その辺りはダメツナと言われながらも  
彼もまた男だったと言えるのかもしれない。  
すなわち、据え膳食わぬは男の恥。  
 
しばらくの沈黙の後に口を開いたのは、綱吉の方だった。  
「あのさ……本当に、いいんだよね、クローム」  
「うん……ボス。一緒に練習、しよ?」  
そこにあるのは決して恋心ではなく、行き過ぎた友情であったけれど、改めてお互いの気持ちと  
意志を確かめ、おずおずと綱吉の手がクロームへと伸ばされる。  
ベッドの上で二人正座をしたまま、ぎこちなくキスを交わした。  
ちゅ、と可愛らしい音をたてた短いキスは、とてもこれから性行為をするためのものとは思えないほど  
初々しいものだった。  
けれども初めて触れた女の子の唇の柔らかさは、それだけで綱吉を興奮させるのに十分だった。  
(うわ、こんなに柔らかいんだ……)  
一度だけのつもりだったのが、もっと触れてみたくて、短いキスをつい何度も繰り返してしまう。  
それだけでもう十分夢中になっていたが、途中ではっと我にかえる。  
与えられている課題はキスだけでは無いのだ。  
改めて向き合い、互いをじっと見つめる。  
「えっと……脱ぐ、ね」  
「え、あ、俺も脱ぐからちょっと待って」  
お互いに背を向け、それぞれの服を脱ぐ。よくある流れならば、主に綱吉がリードして  
クロームの服を脱がせていくべきなのだろうが、いかんせんお互い初めてのことだ。  
そこまで余裕を持つことはできなかった。  
 
衣擦れの音が妙に大きく響いているように思えた。  
こんな密室で女の子と二人きり、しかも揃って裸になる機会など、そう滅多にあるものではない。  
緊張でTシャツとジーパンだけの軽装を脱ぐにも必要以上に手間取ってしまう。  
どうにかこうにか脱ぎ去って下着一枚になったところで背後を振り向くと、そこには同じように  
下着姿になっているクロームの姿があった。  
(う……わ……)  
眼前の裸体に思わず目を奪われる。  
元々クロームが色白なのは知っていたが、制服の下に隠れていた素肌がここまで白くて  
滑らかなものだとまでは知らなかった。  
時折うっかり目にしてしまうビアンキの、いかにも女性らしい肌や裸体とはまた違う、  
成熟途中にある、若く青い女の子の体だった。  
クロームが身につけているのは淡い水色の下着で、可愛らしいフリルが控えめに付いた、  
割合シンプルなものだった。奈々やビアンキのものとはまた違ったそれが、妙なリアルさを醸し出していて、  
ごくりと生唾を飲み込む。  
どぎまぎしながらも家庭教師から与えられた課題をこなさなければ、という妙な使命感に背中を押されて、  
次のステップへと進んだ。  
「外すね」  
ブラジャーを外すために更にもう少し近づく。大人の女性のものに比べればささやかながらも、  
しっかりと存在している谷間が目に入る。  
正面からクロームを抱きかかえるような格好で、彼女の背中に手を伸ばした。  
(これってどうやって外すんだろう……あれ?)  
 
確か何度かビアンキが下着を付ける場面に遭遇したことはあったのだが、具体的にどうやって  
外したらいいのかがわからず、綱吉は焦った。  
その様子がわかったのだろう。悩む綱吉の前にクロームから救いの手が差し伸べられた。  
「あのね、こうするの」  
クロームの手が綱吉の手に添えられる。その手に促されるまま、内側に少し引っ張って捻じるようにすると、  
軽い抵抗感と共に背中のホックが外れた。  
なんとか外せたことにほっとする。  
「えっと……ありがとう、クローム」  
「練習、だから」  
リボーンの言葉を借りれば、これも本当の本番の時にダサい真似をしないためのものだ。  
もし、クロームに教えてもらうことが無いままならば、ブラジャーを外すという第一段階で躓いて  
気まずい雰囲気になっていたかもしれない。そう考えると、確かにこれは練習だった。  
ホックが外れ自由になったブラジャーを取り去ると、そこには何にも遮られる事のない白い乳房が  
曝け出される。  
成長途中のものとはいえ、確かな膨らみは男には無いものだ。裸のままの乳房など、初めて目にする。  
思わずごくりと生唾を呑み込む。  
「触っても、平気?」  
「……うん……」  
許しを得て白い乳房に触れてみた。ふに、と初めて体験する柔らかさが衝撃的だった。  
「うわ、すごい、やわらかい」  
感嘆の声をあげる綱吉に、恥ずかしそうにクロームは頬を染める。  
大胆にも両手で乳房を掴み、やわやわとその感触を味わうように揉む。目の前で手の動きに合わせて  
形を変える様は、男の支配欲を緩く刺激する。  
 
「ん……っ」  
綱吉の手が動く度、クロームは顔を背け、何かを堪えるような様子で声を噛み殺している。  
それに構うことなく、綱吉は柔らかな乳房を揉みしだき続ける。  
ふと気がつくと、乳首がつんと上を向いていた。純粋な好奇心から、何気なく指先で触れてみた。  
「ひあっ……!」  
途端、明らかに今までとは違う声があがり、驚いて思わず手を止めてしまう。  
「ごめん、嫌、だった?」  
聞いてみるとクロームは違うのだと首を横に振った。  
「わかんない……。でも……いや、じゃない……」  
恐る恐る手を伸ばして、もう一度乳首に触れてみた。  
「んっ……」  
乳房の柔らかさとは違う、こりっとした芯を持ったその感触。  
触れてみる度に引き結んだクロームの唇から小さな声が漏れた。  
(おっぱいってこんな感じになるんだ……)  
ふにふにと柔らかく形を変える乳房と、つんと先端を硬くさせて上向いた乳首と、それぞれ違う感触を味わう。  
 
控えめだが確かに聞こえはじめたクロームの甘い嬌声が、その行為を更に後押しする。  
そのうちに綱吉も触れることに夢中になっていき、指先でいじるだけでは飽き足らず、  
直接そこに唇で吸いついた。  
「やぁあ……!」  
ひと際大きな悲鳴があがった。  
 
「んん……っふ」  
思わず大きな声を上げてしまった事を恥じたのか、すぐにクロームは唇を噛み、更にあがる声を  
必死で堪えるようにしていた。けれど、普段耳にするクロームの声とは全く違った  
甘い響きのその声は、一瞬で綱吉の男の本能に火を付けてしまった。  
悲鳴に近い助けを求めながらも、甘えるような響きを含んだそれは、耳の奥に残り後を引く。  
もっとその声を聞きたい、体に触れたい、その欲求ばかりが高まっていく。  
右側の乳首を口に含み、左側の乳房はゆっくりと揉んで柔らかさを堪能する。  
乳首に吸い付く様は赤ん坊がするような幼さを連想させるのに、たっぷりと唾液で濡らし  
ちゅくちゅくと音をたててみると、途端に卑猥なものへと変わる。  
時折、軽く甘噛みをしてみたり、舌先だけで乳首の先を突いてみると、その度にぴくぴく震えて  
クロームの体が反応をみせる。  
「あんっ、あ、あぁ……っあああ……」  
断続的に甘く震える声があがる。綱吉の舌と唇の動きに、いつしか声を殺すことも忘れ、  
クロームは甘い悲鳴をあげていた。  
いやいやと首を振り、クロームは刺激から逃れようとするが、それは表向きだけのことで、  
彼女の理性は初めての味わう性的な快感の前に蕩けきってしまっていた。  
明らかに艶を含んだ女の声は、綱吉の男の本能を刺激し、行為に没頭させていく。  
「はぁ……んっ!」  
たまらず、といった具合でクロームの体からかくりと力が抜ける。  
慌てて背に手を回して支え、そのままゆっくりとベッドの上に横たえさせる。  
 
「ボス……」  
「クローム……」  
潤んだ瞳が何かを訴えかけていた。  
声なき訴えに応えるように、綱吉が残っていたショーツに手をかける。クロームの体がぴくりと震えたが、  
抵抗は無い。頼りない布地をそのまま取り払ってしまうと、完全に全裸になる。  
まだ薄い陰毛に隠されたそれは、綱吉が初めて目にする女の場所だった。  
何かに誘われるように、そっと淡い茂みの奥に手を差し入れると、生温かいぬめりが指先にまとわりつく。  
クロームの震える足を広げさせ、そのぬめりの源である茂みの奥をかき分けてみると、  
自らの愛液に濡れたそこは、陰毛の合間からピンク色の初々しい肉襞をのぞかせていた。  
ともすればグロテスクとも言えるそれを目にして、ごくりと生唾を飲み込む。  
理屈ではない感覚が興奮を高まらせていた。  
「なんか、すごい、ね」  
綱吉の言葉にクロームが恥ずかしそうに視線を背けるのとは裏腹に、彼女の秘所はひくひくと蠢き、  
綱吉を誘っていた。  
初めて知る愛液のぬるりとした感触に興奮し、そのまま割れ目に愛液をなすりつけるようにして  
指を動かしていると、ぬめりの助けを借りて、指先がつるりと膣の中へと入り込んでしまった。  
「――っ!」  
今まで何者も侵入したことの無い場所への侵入に、クロームの体に力が入り、拒絶の意志を示した。  
滑り込んだ指先も、ちぎれんばかりにきつく肉壁に締めつけられる。  
 
「や、や、ボス……やめて……」  
か細い声が綱吉に救いを求める。  
けれども初めての女体の誘惑に呑まれてしまっている綱吉は、己の指を咥えこんだまま離さない  
肉の誘惑の前に夢中になっていた。  
「ダメだよクローム……だって、練習、しなきゃ……」  
普段ならば嫌がる相手に無理強いなどしないはずなのに、練習の一言を言い訳にして、  
綱吉はやや強引なまでにクロームの肉襞の中へと指を押し入れた。  
「あ、あ、や、ゆび、はいっちゃ……ん」  
指の付け根までしっかりと埋め込めば、クローム本人の抵抗の言葉とは裏腹に、そこは綱吉の指を咥えこみ、  
離すまいとばかりにきつく締めつけた。  
「うわ……すご……」  
感嘆の声を上げると、羞恥なのか何なのか、クロームの体と内襞がひくひくと震えた。  
綱吉から背けられた顔は、耳まで真っ赤に染まっている。  
その様子を純粋に可愛いと思いながらも、綱吉は指先を包みこむ肉襞の熱さと柔らかさに興奮していた。  
クロームが初めてだからなのか少し動かし辛くはあったが、ゆっくり指を抜き差しさせると、  
その度にくちゅりと水音が響いた。  
初めて触れた秘所の感覚と愛液の音はあまりにも刺激的で、綱吉が履いているのが余裕のある  
トランクスとはいえ、もういい加減限界だった。  
見れば枕元にはリボーンが用意していったコンドームがあった。  
しかもご丁寧に既に外箱から出された状態のものが数個。  
家庭教師様の心遣いに腹をたてる暇もなく、綱吉は素直にそれに手を伸ばした。  
 
これはあくまで練習なのだ。だからきちんとしておかなければ。そんな事を思いながら、  
ぎこちないながらもなんとかゴムを付け終わる。  
仕切り直しに、ふう、と息をつく。  
これから先が練習の本番だ。  
「入れるね」  
一言断ってからクロームの細い脚を広げさせる。  
少し潤んだクロームの視線が、綱吉の股間に注がれた。初めて目にする勃起した雄に対する怯えとも  
嫌悪とも取れる表情が僅かに浮かぶ。だがそこには僅かなりとも、その先に待ち受ける未知の体験への  
期待も垣間見えていた。  
こくり、とクロームが頷いたと思ったのは錯覚だったのか何だったのか。  
それでもその瞳が、痛みや恐怖以外のものに基づく涙に潤んでいたのは間違いなかった。  
秘所の入り口に先端をあてがい、ゆっくりとその奥へと挿入する。  
「くっ……」  
指を入れた時以上の抵抗感が綱吉自身を襲い、思わず苦しさに息を漏らした。  
「や……ぁん……いた、い……」  
挿入と同時にクロームからも苦しそうな声が聞こえたが、それに怯えて行為を止めてしまうことは無かった。  
それよりも、先端だけとはいえ綱吉自身を包むクロームの肉襞の柔らかさが、蕩けてしまいそうなくらいに  
気持ちが良くてたまらなかった。  
もっと奥まで入ったならば、どうなるのだろうかと理性よりも本能と欲望に導かれるまま、  
綱吉は初めての痛みにきつく収縮するその奥へと無理やり押し入った。  
 
「――っ、あぁっ……!」  
陰茎が奥まで深く挿入されると同時に、明らかな悲鳴があがった。  
先ほどまでの快感が滲んだ声とは違うものだとは、綱吉にもわかったのだが、  
クロームを気遣う余裕は無かった。  
(う、わ、出そう……)  
薄いゴム越しとはいえ、初めて経験する膣の熱さと締めつけに、たまらず射精感を煽られる。  
それでも流石にギリギリのところでぐっと堪え、少し落ち着いたところでゆっくりと腰を動かしはじめた。  
挿入した時と同じく、やはり痛みがあるのか、綱吉が動く度に押し殺した小さな悲鳴があがる。  
だが、射精をこらえるばかりで精一杯の綱吉には、あがる悲鳴にも気を向けることはできない。  
欲望が導くまま、目の前の気持ちのいいことばかりを追いかける。  
初めてだからなのか、痛みでなのか、クロームの柔らかな肉襞は綱吉自身をきつく締めつけて離さない。  
愛液に濡れた襞は、ひたりと吸い付くように絡む。  
包み込まれる熱が気持ち良くて、もっと味わいたくて、がつがつと貪るように乱暴に腰を動かしてしまう。  
「い、あぅ」  
「……っ、はっ、は……クローム、すごい、いい……きもちいいよ」  
上ずった調子の声は、相手からの返答を期待してなどいない。綱吉自身も、自分が何をどう口走っているのか  
意識できていなかった。  
それでも夢中になって腰を動かす綱吉の姿を、とろりと熱に溶かされたような、潤んだ瞳が映し出していた。  
 
ぽってりと赤い唇は、いつものように綱吉をボス、と呼ぶこともなく短く乱れた呼吸を必死に繰り返す。  
その細い体は男が動くがままに揺さぶられる。  
クロームは辛そうに眉を寄せてはいたが、それでも止めて欲しいとは口にしない。  
ただ、堪える中にも痛みだけではなく、いくらか快感もあるらしい。  
切ない喘ぎ声には苦痛だけではない響きが僅かに混ざっていた。  
クロームの中は、このまま蜜壷の中で蕩けさせられてしまうのではないかと思うほど、  
熱くて柔らかくて気持ちが良かった。  
普段の綱吉とはうって変わって、興奮に荒々しく乱れた吐息で少女の体を貪るようにして腰を打ちつける。  
きゅん、とクロームの肉襞が綱吉の雄に絡みつき、締めつけた。  
背筋に電流のような刺激が走った。脳天まで突き抜ける快感に、ただでさえ熱くなっていた体が、  
更にかっと熱を増す。  
「……っう」  
挿入時の射精こそ堪えたものの、これが初めての経験である綱吉に、それ以上の我慢ができるはずもなかった。  
ああもう無理だと思うよりも先に、無意識に声は口をついて出ていた。  
「く、あ……出る、でる……っ!」  
「ん……ボ、す……っ!」  
びくびく、と痙攣するように震えながら綱吉はゴムの中に精液を吐き出す。  
それを絞り取ろうとするかのように、クロームの中もきゅうっと最後にきつく締まった。  
最後の一滴まで十分に吐き出してしまってから、全力疾走をした後のような疲労感に、  
ぐったりとベッドの上に倒れ込む。  
同居人らの目を盗んでこっそりとする自慰より、よっぽど気持ちが良かった。  
快感を反芻するので精一杯で、後始末のことまで十分に頭がまわらず、しばらくの間、  
荒い呼吸を繰り返すばかりだった。  
 
「クローム……大丈夫?」  
ようやっと我に返り、クロームの事を思い出せたのは、射精から随分と経ってからのことだった。  
さっきまであんなに熱かったのに、落ち着いてしませば、汗をかいた体は少し肌寒く感じてしまう。  
「ボス……気持ち良かった?」  
「うん。すごい、よかった。クロームは?」  
「ちょっと痛かったけど……でも、大丈夫。ボス、優しかったから」  
性交の名残でまだ赤い頬のまま、クロームは微笑んでみせた。  
冷静になった頭で先ほどの出来事を思い起こしてみると、好き勝手に快楽を味わった綱吉に対して、  
クロームの方は苦しい思いもしたはずだ。  
言われるほど大した気遣いも何もできていなかった我が身を省みて、申し訳なさと情けなさが  
今更こみ上げてくる。  
同時にこれがまだ練習の段階で本当によかったと、家庭教師の提案に初めて感謝をした。  
「ごめん……。でも、ありがとう」  
素直に気持ちを言葉にすると、クロームはいつもの少し恥ずかしそうな笑みを浮かべて、首を横に振った。  
それがまた申し訳なさを助長して仕方ない。  
なんとはなし、綱吉ばかりが気まずい沈黙が流れる。  
それを打ち破ったのは綱吉の一言だった。  
「あのさ……」  
「うん……」  
多分、お互いに同じ事を考えているだろうな、と、言葉に出す前からなんとなくわかっていた。  
「また時々、一緒に練習……してもいいかな」  
綱吉のその言葉に、恥ずかしげにしながらも、クロームも確かにこくりと頷いた。  
約束の指きりを交わす代わりに、二人はもう一度キスを交わした。  
 
 

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