今思えば、やっぱりあれは恋だったわけで。  
5歳の自分はやっぱりそんなことには気付かなかった。  
 
黒くて長い髪。  
ツヤツヤしてる。  
あの三つ編をほどいたらきっとやわらかくていい匂いがする。  
大きな目。  
まつ毛は決して長くはないし、多くもない。  
でも、何かをじっと見つめるその目はすごくきれいだと思う。  
白い肌。  
さわりたい。思わず手をのばしたくなる。  
薄い胸。  
大きくはないけど、さわったらきっとやわらかい。  
細長い手足。  
でも、ちゃんと無駄のない筋肉がついてると思う。  
 
薄い唇はほんのりピンクで、時々見える舌はそんなに長くはない。  
あの唇をさわったら、その短い舌をからませたら、  
はずかしがり屋の彼女は真っ赤になるかもしれない。  
細長い指を舐めたら、  
ほどよく肉付いた肩を噛んだら、  
彼女と同じくらい僕はドキドキするはずだ。  
「イーピン」  
名前を呼ぶと、彼女は隣にきて笑顔でこっちを見た。  
僕は彼女の首筋を舐めてみた。彼女の気持ちなどまるで無視して。  
首筋だけじゃたりなくなったので、  
僕は気の向くままに舌を動かしていった。  
夢中だった。時々、彼女の熱い息を感じた。  
 
今、僕は10年前の世界にいる。  
どうやらまた呼び出されたらしい。  
周りから聞いてわかったのだが、5歳の自分はとうとうイーピンを泣かせてしまったらしい。  
好きな子ほどいじめたくなる、どうして気付かないのか。  
そういえばあの時も彼女は泣いていたかもしれない。  
いくつになっても同じことの繰り返しだ。  
足元で泣きじゃくる小さな彼女に、  
僕は思わずキスをした。たぶんあの時のおわびだろう。  
彼女は急に真っ赤になった。  
ああ、この顔が見たかったんだ。この顔がすきなんだ。  
そう思ったら時間切れ。10年後に戻ってきた。  
 
急に彼女に会いたくなった。  
会ってくれるかはわからないけど、とにかく走った。  
彼女は怒ってるかもしれない。泣いてるかもしれない。  
ただ、とにかく伝えたかった。ちゃんと伝えなきゃだめだと思った。  
そして、彼女の真っ赤な顔を見たいと思った。  
 

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