「隼人〜♪」  
「何だよっ!って、おわーっこっち向くな!」  
悪夢なら早いこと目覚めて欲しい…。  
何だってコイツは俺の家にいるんだ!?  
慌てて実の姉ことビアンキの瞳を手で覆いながら、獄寺隼人は毒づいた。  
「つーか、酒臭ぇ!それ以上飲むのはよしとけっ!」  
「別に良いじゃない。それよりこれじゃ何も見えないわ。」  
幼き頃に植え付けられた記憶が呼び戻され、腹が痛くなる。  
思わず腹を抱えそうになったが、そんなことをしたら余計に酷くなるのが解っているため、隼人は動かずにいた。  
何故彼女はここにいるのだろう。  
 
その疑問を言葉にすれば、  
「7年間分の姉弟の絆を埋めるためよ。」  
と抱きつかれた。  
その腕は酒の影響か、かなり温かかった。  
腹に走る激痛。  
相手の顔を見ないようにしたつもりだったが、腰に抱きつかれてはどうしようもない。  
痛む腹を抱える。  
何か瞳を隠せる丁度良い物はないかと手を迷わせて、隼人が掴んだのは制服のネクタイだった。  
普段から着用しないため、皺一つないそれをビアンキの瞳を隠すように引っ掛ける。  
「隼…人…?」  
疑問に思い、首を傾げるビアンキはそのままに、頭の後ろでネクタイを縛ってやった。  
簡単に解けないようにキツく固結びにする。  
 
「何故こんなことするの?」  
ビアンキは怒ったような声をあげて、両手を後ろに回してそれを解き始めるが、酔っている彼女は頭が回らないのか中々解けないようだ。  
何故か隼人はその不格好なはずのその格好に酷くソソられた。  
何を考えているのだろう。相手はいくら腹違いとは言え、血の繋がった姉である。  
 
先程から聞こえる呂律の廻っていない口。  
酒臭いが艶やかな息が耳を擽った。  
真っ白な白い肌が酒により上気して桜色に染まっているところ。総てが扇情的で、堪らなくなる。  
「…外すな、っての…。」  
ネクタイが取られてはこちらも困るので、腹痛が起こる前に手を伸ばしてその行為を止めさせる。  
すると、ビアンキはバランスを崩したため、隼人の胸に身体を預ける形となった。  
髪が流れて隼人の鼻孔を甘い香りが掠めた。  
 
それが引き金となったかは定かではないが、隼人はビアンキに欲情させられていることに気づいた。  
馬鹿なことを考えるな。相手は姉だとか考える前に身体が動いてしまう。  
身体が求めてしまう。  
姉ではなく、女であるビアンキを。  
「アネキが悪いんだからな…。」  
「隼人…?…っん…!」  
囁かれた声に顔をあげようとするビアンキを抱き締めて耳を甘噛みする。  
驚いたのか抵抗しようと伸ばした腕を捕らえて、更に舌を入れる。  
殺しのために男慣れしている身体の割に、感じやすいのかすぐに力が抜けた。  
「…隼人…どぉし…て…?」  
吐息混じりに呟かれる。それが余計に隼人を突き動かす。  
黙らせるため、唇をそれで塞いだ。  
僅かに開いた隙間から舌を差し込んで、相手の舌を絡め取る。  
 
「…んんっ!」  
息苦しさから手足をばたつかせるビアンキだが、所詮は女。まだ15歳とは言え男である隼人にとってそんな力を押さえるのは容易いこと。  
技は鍛えられている隼人の舌使いに翻弄される。  
ある程度ビアンキの咥内を深く味わってから口を離せば、銀の糸が二人を繋いだ。  
どちらの物かも分からない唾液がビアンキの頬を伝っていく。隼人はそれを優しく舐め取った。  
「あっ…ふ…。」  
舐めるついでに舌で首筋を辿る。ビアンキからは熱い吐息が漏れる。  
 
鎖骨まで着いたところで軽く吸い上げると紅い花が咲いた。  
「馬鹿みたいだ…。」  
「…何…で…っ……?」  
隼人は呟きながら、左手で彼女の腕を拘束したまま、右手で性感帯に触れる。  
擽るように脇に触れたらその身を捩った。  
最早相手が姉だろうが…関係ない。  
形の良い双丘を服の上からゆっくりと揉み始めた。  
「んぅ…っ…!」  
声は男を興奮させる為、ビアンキは近くにあった自分の上着を噛みしめて声が漏れるのを抑えている。  
だが、隼人が目敏くそれに気付き、その上着を退けた。  
続いて、服の中に手を滑り込ませ、直接触れた。しっとりとした柔らかいその感触に酔いしれる。  
簡単に---もとより露出度の高い服を着ている為、そう苦労はしない---胸元を肌けさせると既に立っている突起が露わになった。  
「本当に感度良いのな…。」  
 
その突起に吸い付き軽く舌先で転がすと、ビアンキの身体は異常なまでに震えた。  
「…あぁっ!」  
---そうか…怖いのか…。  
目を隠されていることにより次に何をされるか分からない恐怖を感じているのか。  
いや、次に何をされるか分かっているからこそ、その恐怖心が膨らむのだろう。  
その震えるビアンキの姿が隼人の虐待心を煽らせてゆく。  
「綺麗だよ…アネキ…。」耳元で囁かれる声にも指先がぴくりと反応して、それがたまらなく可愛らしい。  
これが、愛しいと言う感情なのだろうか…。  
柔らかな白い肌を撫で上げ刺激を加える。  
紅い印が幾つも増えていった。  
 
ある程度上半身への愛撫を加えた後、丈の短いタイトスカートに手を伸ばすと、一瞬驚きからビアンキが身を固くした。  
安心させるように耳朶を甘噛みする。その痺れるような甘い感覚により、隼人はビアンキから力が抜けるのに気が付いた。  
焦らすように太股の内側を撫でる。  
怖いにも関わらず、ビアンキの口からは、荒い息遣い。  
探るように、スカートの中に手を入れれば、びくりとした大きな反応と共に、手に感じる濡れた感触。  
下着の上から十分に分かるほどそこは湿っていた。  
「…ぁあ…ぁ…あ…っ!」  
「…怖いのに…感じてるのか…?」  
「…ぃ…言わな、いで…ぇ…。」  
 
抵抗しつつも、ビアンキ自身、隼人の指に翻弄されながら自分がひょっとしたらMなのでは、と疑問を浮かべていた。  
恐怖を感じつつもこの感覚、快感に抗う術を彼女は知らなかった。  
そんなビアンキを知ってか知らずか隼人の指はビアンキの性感帯をどんどん刺激する。  
布の上からでも感じるそれと、止まることのない上半身への愛撫に、ビアンキの体は悉く支配されていった。  
「…んぅ…はぁっ…!」  
「…アネキ……。」  
快感に身を捩らせる彼女はあまりにも隼人にとって幼く見え、それと同時に愛おしかった。  
 
その感情に堪らなくなった隼人は、下着をズラして直接彼女に触れる。  
「ぁ…っ!」  
ぴくんと反応するビアンキを愛おしそうに見つめる。  
ゆっくりと指を中に沈めた。  
途端にビアンキは抵抗の体制に入ったが、隼人の片腕がそれを許しはしない。  
十分に上半身を愛撫していたお陰か、彼女の中はすんなりと彼の指を受け入れた。  
だが、締まりが良いのか、なかなかそれ以上先に進まない。  
仕方なく隼人が親指を使ってその上の膨らみを刺激し始めた。  
「うぁ!は…っ…ぅ!」  
感度の良い方であるビアンキには強すぎたのか、唇を噛み締めている。  
その唇にはうっすらと血が滲んでいた。  
隼人がその赤を拭うように舐め取る。  
勿論、愛撫の手は休めない。  
「…や…!駄、目ぇ…イっちゃう…っ!ロメオぉおーっ!!!」  
ビアンキが体を一層強ばらせ、叫んだ瞬間に力が抜けてその場に崩れた。  
違う男の名を呼びながら果てたビアンキに隼人は心が酷く打ちのめされた気がした。  
「何だよ…結局、引き摺ってるんじゃないか…。」  
「…は…やと…。」  
呟かれた隼人の声に、目の前にいるのが彼ではないと錯覚していた彼女は、一瞬震えてから声を発した。  
 
 
死んで尚も彼女の口から出てくる彼の名前に、苛立ちを覚えた。  
その名を呼ぶビアンキ自身にも、酷く嫌悪感を抱いた。  
それでも…----  
 
 
「…悪かったよ…。」  
気付いた時にはビアンキは泣き出してしまっていた。  
泣くと言っても瞳は布で覆われている。その布が濡れているためおそらくだが…。  
何時も自分から拒否しておいて、今更求めるのも調子の良すぎる話だと分かってるから。  
ああ、違う。いざ拒否されると、嫌なんだ。  
でも、どうしよう…。  
こんな事実を知ってしまった自分は、明日も彼女のことを拒否していられるだろうか?  
「…ゴメン…アネキ……。」  
瞳を覆っている布--自分のネクタイを外してやりながら隼人がビアンキを抱える。  
泣き顔は見たくない。  
今までの経験とは違う原因で腹痛を感じた。  
「馬鹿ね…。」  
「…なっ!」  
抱き締められたビアンキはその細い腕を隼人の背中へ回した。  
「…嫌、じゃなかったから…。」  
自分が嫌いだとしか言わなかった隼人が、自分を求めたことを彼女は嬉しがった。  
彼の行動を姉弟愛だけで許してしまうと言うのか。  
そんな彼女の顔がみれなくて、隼人が顔を逸らす。直視などできるはずがない。  
 
突然、頬に手が添えられ、顔の向きを変えさせられる隼人。  
ビアンキの真っ直ぐな瞳とぶつかった。  
「…アネキ…。」  
「……馬鹿ね…。」  
何が言いたいのだろう。  
彼女の思考が読めなかった。  
彼女の瞳の端に宿っている滴を見ると、罪悪感しか生まれず、誤魔化すように唇でそれを吸うように拭った。  
「…隼人なら……隼人だから…良いのよ…。」  
だから続きして、と姉の威厳のある声で、女の笑顔で笑うビアンキに、隼人は 何も言えなくなる。  
彼女の言葉のままに、続きを。  
柔らかい唇に自分のを重ねながら隼人は自分が彼女を必要としていることに今更ながらに気づかされた。  
誘われるままに、白い体に口付ける。  
愛している、と耳元で囁くと、ぴくんとした反応と共に首に巻き付く力が一層強くなった。  
私もよ、と返して隼人の体に触れるビアンキ。  
先程よりも優しく和らいでいるその行為に互いに酔いしれる。  
程良く愛撫を加えていき、段々ビアンキの声音が変わってゆくのを隼人はぼんやりとした意識の中で聞いていた。  
 
「良い声で鳴くのな…。」  
「んはっ…!」  
囁く声にも反応する。頬は紅潮していて、肌も淡い桜色。  
そのビアンキの姿は淫らなのにも関わらず、神秘的で美しい。  
それに誘われるように、隼人はビアンキの秘所へと口付けた。  
「…あぁっ…ん、はっ…!」  
始めは抵抗に近い動きを見せたビアンキだったが、隼人の舌遣いに翻弄される。  
愛液はより一層溢れて、カーペットに染みを作った。  
舐めるように奥へと進入させてゆく。その味は酷く甘い。  
実際には味などないのだが、そう感じるのはやはり隼人もビアンキに魅せられている者の一人だから。  
毒蠍などと呼ばれている彼女だからこそ、今のこの乱れた姿でさえも危険だ。  
それでも、更に欲しくなってしまうのだから自分は相当イカレている、と隼人は思った。  
否、それ程ビアンキは魅力があるのだ。  
「アネキ…そろそろ入れるぞ…。」  
自身を取り出して、隼人が言った。  
熱により潤んだ瞳で見つめ、ビアンキが黙って頷く。  
先をゆっくり沈めるとビアンキの体が震えた。  
中は想像よりキツく、思ってた以上の締め付けが隼人の動きを急かさせる。  
 
それでもなるべく隼人は優しくしようと努めた。  
それはビアンキがあまりにも壊れそうで、幼い少女のようだったからだろう。  
「あっ…ぁあっ…隼人ぉ…!」  
ゆっくりとした優しい動きにビアンキが快楽による涙を流しながら自らも腰を振る。  
叫びは切ない嬌声に変わっていた。  
 
 
俺を見てくれた。  
私を求めてくれた。  
それぞれの想いが溶け込んでゆく。  
互いに再び、否、初めて男女として向き合った二人。  
腹違いの姉弟だとしても背徳であるその行為にさえ溺れてゆく。  
 
 
奥を付く度に、キツく締められる感覚と甘い声に快感を覚える。  
同時に上にある突起も弄れば更に声が上がった。  
(ヤバっ…イきそう…。)  
中では流石に悪いと思ったのか、引き抜こうとする隼人を止めるようにビアンキが引っ付いた。  
華奢な腕が震えている。  
「今日、は…平気…だから…っ!」  
「でも、良いのかよ…?」  
「…隼人だから…良いわ…。」  
ビアンキの言葉に従って、彼女の奥へ一気に挿し込む。  
今度は優しくする余裕などなかった。  
貪るように突かなければ、すぐに意識が飛んでしまいそうになる。  
「…隼、人ぉ…っ!…あっ…はぁっ!っも…イっ、ちゃうっ!」  
「…俺も…っ!」  
子宮の奥に当たり、一気に締め付けられる。  
その締め付けにより同時に果てた。  
 
 
ぼーっと隼人は天井を眺める。  
視線を腕の中に移せばビアンキが少女のようなあどけない顔で眠っていた。  
「何やってんだろな…。」  
馬鹿みたいだ、と呟き、近くにあったタオルケットをかけてやる。  
しかし、その表情は何かが吹っ切れたような、何処か嬉しそうな表情だった。  
上着から煙草を取り出し、火をつける。  
ビアンキを起こさないように、煙草をふかせば苦みがゆっくりと広がった。  
「甘かった…。」  
口の端をつり上げ、煙草を味わいながら、隼人はビアンキの髪を梳いた。  
姉を見る弟のように。  
女を見守る男のように。  
 
 
 
終わり  
 

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