「ツナ兄!まずいよ、マフィアのボスでそれは…」
「何がだよ、フゥ太」
帰宅するなり、体に似合わない大きな本を抱えたフゥ太が呆れたような顔で言った。
「悪いとおもいつつ、ランキング調べちゃったんだ…」
また変なことを調べられたのかもしれない!
ツナはブレザーをかけようとしていたハンガーを振り回し、フゥ太の持っているランキングブックを閉じようとした、が
「中学生で童貞なんてまずいよツナ兄!!」
先をこされ、絶叫されてしまう。
白昼堂々、はずかしい言葉を一気に。
中学生で未経験なんて珍しくもなんともない話だが、これがマフィアになると異例なのかもしれない。
フゥ太は、今日晴れだよね?ほんとうに童貞なの?チェリー?ねえ!と繰り返すばかり。
「ちなみにディーノは11の時に喪失してるよ」
「嘘ーーー!?」
「珍しい話じゃないよ、ツナ兄。むしろ珍しいのは、女の子に囲まれて童貞のままのツナ兄だよ」
遠まわしに甲斐性なしだと言われ、落胆するツナ。
「喪失しちまえよ」
おなかがすいたなら飯食えば?そんなノリで、部屋に入ってきたリボーンが言う。
呪われた赤ん坊のいう事は一味違いすぎ、ツナは言葉につまった。
ダメツナと呼ばれ続けてきた自分にとって、セックスなど二十歳を超え、いや三十路を超えるまで関係のないことだと信じ込んでいた。
「京子もハルもいるじゃねえか」
「な、何言ってんだよリボーン!俺にはまだ早いって…」
「早い?性的なことがか?」
「そうだよ!まだ中学生なんだぞ、そんなこと…」
「じゃあ参考書のあいだに挟まったエロ本は何だ」
「!」
「最近箱ティッシュの減りが早えーよな」
「!!」
みっともないくらいに慌てだすツナに、フゥ太は絶望的な視線を投げ続ける。
その視線は、不本意な罪悪感に苛まれてしまうくらいに、じっとりと暗い。
「ツナ、セックスなんてな、いつかは経験するものなんだ」
「はぁ…」
「ママンもセックスして、お前を産んだんだぞ」
「そんなのわざわざ言わなくていいよ!」
強制的に正座させられたまま、否応なしにリボーンの講義を聞かされる。
その横でフゥ太は、呆れたような視線を送り続けている。
その視線は、無意味に絶望感を味わわせられるくらいに、ずっしりと重い。
「要するに、経験するものが早いか遅いかの差はあるが、いつかはするもんなんだ」
「はぁ……」
「マフィアのボスたるもの、早く済ませておいて損はない」
「何でだよ…」
「今のうちに慣らしておけば、マフィアのボスになったときに有利だ」
セックスは人間と切り離せられない大事なものだしな、そうリボーンは言う。
「だから!マフィアなんてならないって言ってんだろ!」
「ガツガツした男は嫌われるぞ。仮にマフィアじゃなくても」
嫌われる?
もももし、これからさき、京子ちゃんと、そう、そんな関係に、なったとして…なれたとして。
冷静に行為を進める自信は一切ない。皆無だ。
ツナは顔面蒼白になった。
<ツッツ・ツ・ツナさーん!>
一階から、底抜けに明るい声がひびき、重苦しい空気は一掃された。
あの声はハルだ!よかった、解放された!
しかし、なんだかとぎれとぎれに聞こえたが、何なんだろう?
とにかく勢いよく立ち上がり部屋から逃げ出すように階段を下りる。
『ガツガツした男は嫌われる』という言葉が、ツナの心中にわずかな陰を落としたが、
もう何も考えないようにした。
「どうしたんだよハル、急に?」
「ツツツツ、ツナさん!」
妙だ。ふだんから妙だけど、今日はまた特に。
顔を赤くしながら息を切らすハルの様子に、ツナも表情を曇らせる。
風邪なのかもしれないとそう思った。
「とりあえず上がれよ」
そういうと、ハルはうんうんと何度も頷き、しずかに後をついてきた。
ハルはリボーンとフゥ太に軽くあいさつすると、部屋のすみに腰掛ける。
いつもならお母さんがジュースなりお菓子なり運んでくれるのだが、今日は留守だ。
並盛の会とかいうやつに参加するとかなんとか…。
ツナはちょっとまっててと声をかけると台所に下りた。
オレンジジュースをグラスに注ぎ、リボーン用にとカプチーノを入れる。
お盆に何本かのグラスを立ててこぼさないよう、ゆっくりと歩む途中で、フゥ太がひょっこりと顔を出した。
「ツナ兄!」
「うわっお前か…何だよ、フゥ太」
「ちょっと出かけることにしたんだ、夜まで帰らないよ」
「なんだよ急に…?」
「鈍いなーツナ兄は…せっかく気をきかせてるのに」
にやりと笑むフゥ太に、何言ってるんだよと怒鳴る。なんでこいつはこんなにマセてるんだ、子供のくせに。
それともフゥ太は、まさか…俺より先に、大人になってしまっているのだろうか?
いやまさかと思いなおし、気を取り直してジュースを運ぶ。
いってきまーすというフゥ太の元気な声が、玄関を飛び出していった。
「オレンジジュースでよかった?」
「は、はひ!」
部屋の隅で正座しているハルに、グラスを置く。
「リボーンはカプチーノだよな」
「いらねぇぞ」
「えっ」
「仕事ができたんだ。夜まで帰らねーからな」
「な、なんでいきなり…」
「仕事だっつってんだろ」
乱暴にツナの膝を殴り、リボーンはすたすたと部屋を出て行った。
その後姿は、一歳児のくせになにか貫禄があった…。
「行っちゃった…」
「ちゃいましたね…」
会話が続かない。
なにか、重い空気が部屋に充満していた。
何でもいいから話題をふらないと…
「あっそうだ、ハル、年賀状ありがとう」
「えっいやそんな、お礼なんていいんです!みみ未来の、おっとに年賀状おくるのはとうぜんですからっ」
「…。新しいゲームやる?ハルはゲームとかすんの?」
「ハ、ハルは、ツナさんのやってるの、みてますっはひ」
しどろもどろのハル。
ロレツが回らず、言葉さえ不自由になっている。
ハルの落ち着かない空気がツナにも伝染し、部屋はそわそわとした雰囲気でいっぱいだ。
実に気まずい。
「ね、ねぇハル、今日はどうしたの?」
「…今日はですね、ハルは…」
「…」
「…び、びっくりしないでくださいね?約束ですよ!」
「びっくりしないよ、もう今更何があっても…」
ツナは今まで散々なことに巻き込まれてきたので、
ひとりの女の子に脅かされたりすることはないとタカをくくっていたのだ。
「はひー!たのもしいです!じ、じじつはですね、ハル…今日は、ツナさんに…ツナさんにっ…」
「俺に?」
「だだ、だかれひに、抱かれにきたんですっ」
「ええええええええ!」
「はひ!びっくりしないって言ったのに!」
「び、びっくりするよ、普通!」
ツナは文字通りひっくりかえり、あまりのことに顔を真っ赤にさせた。
動揺と驚きに、大粒の汗が伝う。
ハルもハルで、はひはひ言いながら顔を赤らめていた。
耳を塞ぎ、俯いたまま恥ずかしいです、恥ずかしすぎますとぽそぽそ言っているのが聞こえる…
何なんだろう、この女の子は?
今まで関わってきたこともない女の子の存在と、いきなりすぎる大胆告白に、ツナはまいった。
(本当にこれでよかったんでしょーか…?)
二人の体感温度で一気に上昇した室温をひしひしと感じながら、ハルは思い出していた。
先日、ビアンキと話したことを…
・
・
2日前、ハルはいつものように居酒屋でビアンキと語っていた。
愛に生きるビアンキはハルにとって、よき先輩であり、尊敬する姉のような存在なので、
学校のことや、恋愛の…ツナのことをいつも相談している。
その日もいつもの恋の味(ゲソ)をかみしめ、ビアンキに聞いた。
「ビアンキさん…好きな人との距離をちぢめるには…どうしたらいいんですかね…」
「ツナとの距離、ぜんぜん縮まらないの?」
「はひ…全く、ハルのこと見てくれてなくて…」
「そう…」
「もしかしたら…」
「もしかしたら?」
「…京子ちゃんのことを好きなのかもしれません、ツナさんは」
内心、京子とツナのことを分かっているのに気丈に前向きに振舞うハルに、ビアンキは涙を浮かべた。
勉強はがんばればがんばったぶんだけ満点に近づけるのに、
恋愛はがんばればがんばるほど遠ざかることもあるんですねと、ハルは泣きそうになりながら言う。
「ハル!!」
ツナを想う恋力(こいぢから)に心打たれたビアンキが、思い切りにハルを抱きしめた。
ハルの口から、ぽろりとゲソが落ちる。
「親密になる、最終作戦があるわ…!」
「はひ!何ですか!」
「でも…失敗しても成功しても、ハルは傷つくかもしれない」
「いいです!ハル、やりますっ!」
「それはね、」
・
・
・
こうして今日の、いまの状況に至る。
ハル自身、性的なことに興味がないわけじゃなかった。
むしろクラスメイトが次々と『済ませて』いくなかで、置き去りにされたような気持ちさえ抱いていた。
何度も命を助けてもらったツナのことはほんとうに、好き。
これ以上進展することのない仲なら、いっそビアンキの言うとおり 誘ってみようと決意したのである。
「ツ、ツナさん!お願いします!!ハル、後悔したりとかしませんからっ!!」
「ちょ、ちょっと落ち着けってハル!」
言葉が詰まらないように一気にまくし立てた私を、ツナさんはなだめる。
(やっぱり嫌なんですか、ツナさん…)
やんわりとたしなめられたハルは若干傷ついたものの、諦めるわけにはいかない。
これは最後の賭けなんだ、諦めたらもう本当におしまいなのだから。
「ハル…周りの子たちがみんな、その…経験したから、焦ってるんじゃないのか?」
「!!」
ツナはハルを馬鹿にして言ったのではない。決して。
ツナもまた、経験を済ませていく男子たちのなかで肩身を狭くしていたので、もしやハルもそうじゃないのかと思い立ったのだ。
男の初体験はデメリットなしに済ませられるが、女の子の場合は違う。
リスクを負わせてしまう可能性を考えて(面倒くさいことからちょっと逃げようともして)、ツナは言った。
しかしそんな気遣いの言葉にもハルはショックを受けてしまう。
「ツナさん、ハルのこと、そんな…そんなはしたない子だと思ってたんですか…!!」
最後の手段までも却下されてしまった。
大好きなツナさんに。
そんなに、そんなに魅力ないんでしょうか?
ツナさん、好きなんですよ、ほんとうに…
はずかしくて、かっこわるくて、涙がこぼれた。
ツナの前で泣いたことは何回もあったが、今回ばかりは本気の涙だ。
ああ、泣いたらだめです、ツナさんを困らせることになる、
そう分かっていても涙は止まらない。
おまけに鼻水まで出てきてしまった。
もう帰ろう…今度ツナさんに会ったら、いつものハルにもどるんだ。
ツナさんはやさしいから、きっとまた普通に話してくれますよね、きっと。
「ずみまぜん、ヅナさん、はる、もうかえりま」
「ハ、ハル、ごめんな…」
涙でぼやけた視点には、ツナさんのアップ。
はひ、マンガみたいです…
震える腕に抱きとめられ、ハルはぼんやりと友達に借りた少女コミックを思い出した。
びっくりした。いきなり、いきなりハルがそんなこと言うなんて。
このまま帰らせることは簡単だけれど、このままじゃ、あまりにもハルがかわいそうだと思う。
同情で抱くなんて失礼なこと いいのだろうか…
いやしかしハルの涙をかわいいと思ってしまったのも確かだ。
リボーンがいつも「据え膳喰わぬはマフィアの恥だぞ」と言っていたのを思い出す。
もしも俺が、女の子を誘ったとして…断わられたら?
ショックは絶大だよな…。
そんな気持ちをハルにさせてしまうことになる。
そうしてツナはリボーンの遺言をいいわけに、ハルを抱きしめた。
「ツナさん…」
ハルのからだは思っていたよりずっと細くて、それに…いいにおい。
女の子はみんなこんな匂いなのだろうか?
自分で抱きしめておいて、ツナは心臓が破けそうなほどどきどきしている。
これからどうしたらいいんだろう、どうしたらお互いに気持ちよくなれるんだろう、
クラスメイトより若干少ない知識を脳内に張り巡らせてゆく。
「ほ、ほんとーに後悔しない?」
「だだだいじょうぶです!ハル、覚悟できてます!」
こんなときでも元気なハルに、ちょっとだけリラックスする。
そして、ゆっくりと顔を近づける。ハルはぎゅっと眼をつぶった。
目の前のちいさい唇へと口付けると、
ちゅっ
恥ずかしいくらい、音が大きく聞こえて顔がますます赤くなってしまった。
はじめての女の子の唇をそっと吸う。俺の唇よりはるかにしっとりと、あたたかい唇。
「つ、ツナさん…ハルの、ファーストキス、でした」
「う、うん…俺も」
ほんの軽いキスなのに、ふたりはこれ以上ないくらいに赤面している。
恥ずかしい。これからのことを考えるととてつもなく。
せめてお互いの顔が見れなくなると、もうすこしは落ち着けるかもしれない!
そう思い、カーテンを閉め、電気を消す。
時刻はまだ六時をまわったところだが、冬場の日の暮れは早い。
室内は真っ暗とまではいかないが、互いをぼんやりと認知できるくらいになった。
薄い陰のビロードを被ったハルは、いつもよりすごく…色っぽい。
黙った顔は意外と大人っぽいんだな、ふと気付く。
「ツナさん、やさしいんですね…やっぱり。」
「え?なんで…?」
「ハルのこと、気遣って電気消してくれたんじゃないんですか…?」
「えっあ、まあ…」
かわいい。風変わりな彼女のことを、いまは素直にそう思える。
嬉しいです…ツナさんが、自分を受け入れてくれた!
これ以上ない幸福感に、ハルはほんわりと浮かれていた。
今まで自分に見向きもしてくれなかった人がいま、こうして自分を求めようとしてくれているのだ。
はじめて横になる、ツナのベッド。今まで座ったことはあったけど、横になったのははじめてだ。
今からひとつになるんだ、ひとつになれるんだ…
鼓動が次第に高まるのをしっとりと感じる。
「ハル…」
「はい…なんでしょう」
「ぬがせても、いい…?のかな」
「は、はひ、もちろんです…!」
ガーディガンを脱がせ、セーターを脱がせ…次第にハルの素肌が、薄暗い部屋のもとで晒されていく。
ブラジャーを外すのに苦労しているツナを見て、しまったフロントホックにすればよかったと後悔した。
ツナの手にそっと指を添わせ、ホックを外す。
胸より外れたブラジャーのカップから、薄いミルクティ色の乳首がちらりと漏れた。
ツナの視線を感じる。
ああ。おとうさん、おかあさん、ごめんなさい。
ハルは今日、大好きな人とエッチなことしてしまいます…
でも、おとうさんとおかあさんもそうしてハルを産んだんだから、これは悪いことじゃないですよね…!
「触っても、いい?」
「…もちろんです。ハルは将来、マフィアの妻になるんですから…ツナさんにどこを触られたって、へいきです」
将来やら妻やら、この状況下ではすこし重いような気もしたが、
ツナは精一杯のやさしい顔をしてくれた。
その表情にハルも安心し、そっと微笑みを返す。
はじめて『生』でみる胸に、ツナは内心動揺していた。
グラビアだとか"そういった本"では何度か見ていたが本物ははじめてだ。
高鳴る鼓動をひっしで制御しながら、そっと手の平で包み込む。
しっとりと汗ばんだ肌は、ツナの手の平に吸い付くようにやわらかい…
こんなにも柔らかいのだ、強く触ったら痛いのかもしれないと思い、
ゆっくりゆっくり、揉みしだいていく。
「ひゃ…っ」
「ご、ごめん、痛かった?」
「や、くすぐったくて…」
恥ずかしそうにはにかむハル。
そういえば、いつもいっしょにいるハルのことを全然見てなかったな、こんなに魅力的な女の子なのに。
今まで馬鹿なことをしてきたと 少しばかり反省する。
しかし、ツナもそんな能天気なことばかりを考えているのではない。
ゆっくりとしたペースで愛撫しているのは、それはこれからどうしてコトを進めたらいいのか分からないだけで。
ついさっきまで女子との性交などとは一切無縁だったツナのズボンは張り、チャックが壊れるんじゃないかという勢いだ。
(この流れからすると、つ、つぎは…下、だよな…でも)
そんなツナのまどろっこしい心情を解したように、ハルは好きにしてくださいねと優しく声を掛ける。
こんなときは女の子のほうが冷静なのかもしれないなと思いながら、汗の浮かんだ手を下着にかけた。
腰をそっと浮かせてくれた彼女の気遣いで、ブラジャーのときほど難せず脱がせることができたものの…
目の前の、その、女子の…恥部。
見られているハルのほうが恥ずかしいのだろうが、ツナも耳と目をふさいで走り出したいほど、はずかしい。
でも、逃げない。
逃げられない、今日こそは。
(はははずかしいです…)
みんな、本当にこんな恥ずかしいことをこなしてきたのだろうか?
衣類も下着も脱ぎ、裸のままで横たわる私のまえには…ツナさんがいる。
ツナさんが自分を見てくれているのは嬉しいけれど、それ以上に恥ずかしい。
暗闇のなか、幼稚なような大人びているような妙な雰囲気が流れた。
(将来の夫を、ちゃんとリ、リードしないと!ハルから誘ってしまったんですし…!)
男をその気にさせれるかどうかは女次第なのだと、ビアンキが言っていたことを思い出す。
もう既に精一杯なのだが、ハルはそっとツナの手を握りしめる。
お互い緊張と気恥ずかしさで汗に濡れていた手に、ああツナさんも緊張してる、ハルといっしょだと安心した。
「ご、ごめんねハル、緊張しちゃって…」
「だいじょうぶです…だって」
「だって?」
「ちゃんと、お、大きくなってますよ、ツナさんの、おち、ち、ち…」
「無理して言わなくていいよ!」
ちょっとだけ和んだ空気にツナの手が、両方の腿に伸びてきた。
ちょっと開いててと告げられ いわれるままに力を抜く。
すっかり熱くなってしまった秘裂に当たる、冷えた空気がつめたい。
もしかしなくとも、今…ツナさんから大事なところが丸見えなんじゃないのか?
脚を開いた自分のポーズを思うと、耐えられないほど恥ずかしくなり、顔を両手で隠した。
(だいじょうぶです、相手はツナさんですから…!なにも心配することはないですよ、ハル!)
しかし、そんなハル以上にツナは緊張しきっていた。
(うぁああ・あああああ…)
はじめて女性器を目の当たりにした沢田綱吉
将来マフィアのボスになれるほどの度胸は、みじんにも見られない動揺っぷりだ。
そんなダメツナの目前には…黒い茂りと、わずかにこぼれるピンク色の秘肉。
それは愛液に濡れ、暗闇の中でてらてらと光さえ帯びている。
鼻にわずかに香る、あまいような酸いような香りに酸欠気味になりそうだ…
誘われるように指が伸ばすと、柔らかい恥毛が指先をくすぐった。
"そこ"を押し開くと、ニチュ、と粘液が糸を引き、そして、
そして。
見たこともないような淫猥なさくら色の恥部が、露になる。
無防備だ。
いやしかし、その無防備さの中に、男を誘う慇懃さも見え隠れしている気がした。
とろとろと溢れる粘液がツナの指先を滑らせ、じゃまをするが、なおも凝視する。
次々と溢れるほどに愛液を垂らし、ひくついている恥穴
小さいながらに固く主張する、クリトリス
(い、入れるんだ…ここに)
「ツナさん、そんなに…そんなにみないでくださいっ…」
あまりに長い間見つめられたため、ハルが少しばかり眉間にしわを寄せる。
「ご、ごめん…つい!」
「そんなに、へ、変ですか、ハルの…」
恥ずかしさと緊迫した情調のためなのか、涙でうるませた目をふせるハル。
変じゃないよ、はじめて見たからついと言うと、今度はハルの番です!と後ろ向きに押し倒されてしまった。
一瞬にして体制は逆転、ツナの視界いっぱいに広がる天井…
見慣れた光景のはずなのに、動悸はこれでもかというほどに乱れていった。
(今度は、ハルの番ですよっ 覚悟です、ツナさん!)
穴のあくほど〔既にあいているが〕、恥部をじろじろ見つめられたハルに、もう無駄な羞恥心はなかった。
勢いよくツナの両肩を押し、そのままベッドに押し倒すと、二人の体重でベッド上にホコリが舞い散る。
苦しそうなまでに張り詰めたズボン…
今楽にしてあげます、そう誓い、ズボンへと手をかける。
しかし女の子に脱がされるのは年頃の男として恥ずかしかったのか、ツナ自らがジーンズをベッドの下に放った。
緊張のあまりの、どこかぎこちない脱ぎ方を『かわいい』などと思ってしまった自分の神経を疑う。
自分だって始めてなのに、男の人の事をこんなふうに思うのは変です、ハルのばか。
気を取り直したハルの目前には、元気がよすぎるほどにそそり立っている男性器。
初めて見る男性器の手前、全裸のままでついお行儀よく正座してしまっているハルは、
ツナの目にどう映っているのだろうか…?
水色地に白の水玉模様。
ありふれていてファンシーな模様のはずなのに、今日はものすごく…いやらしく見えてしまう
水玉模様が乱れるほどに、勃起した男性器のせいで。
正座している脚をくずしてそっと、そっと、膨らみへと手を寄せた。
(あ…アツイです…)
じっとりと熱を持ったそこは想像したよりも固く、ハルの目にはつらそうにも見えた。
(早く射精したいん、ですよね…)
ませたクラスメイト達や今時の雑誌やらに囲まれ、若干の知識は、ある。
"オナニー"するときのように手でしごけばいいはずだ。
刺激を与えればきっとツナは満足してくれる。そう思った。
「ツナさん、ハルにまかせて、ください…!」
「う、うん…」
小さく拳を握ってガッツポーズをとり、水玉トランクスを太股まで下ろす
勢いよく主張しているそれが頬をかすめた。
まともに見るとそれは…ペニスは赤く充血しており、はじめて見るハルには痛そうにも思える。
デリケートそうなそれを傷つけないよう、そっと両手の平で包んだ。
ツナの吐く熱い息
ツナの眉間に寄った皺
ツナの、匂い
触られてもいないのに濡れている自分を、はしたない子だと一喝した。
あくまで、心の中で。
ハルの手は すこし湿っていて暖かくて。
なぜだろうか、こんなに切羽詰った状況なのに、その手で握られるとちょっとだけ安心してしまう
自身が昂ぶっていることに変わりはない、が。
(どーしよ、男の俺がリードされてるよ…)
不甲斐ないなとも思ったが、そんなの今更だ。
『ダメツナ』がこうして女の子に…魅力的な女の子に、愛撫されている。
ゆっくりとツナ自身を擦り上げるハルの手はたどたどしく、
本質的に刺激という刺激はほんの微力なものであったが、今のツナには相当に堪えた。
オナニーの時に自分で扱くのとは全く違う感覚。
下から上へと扱かれるたび、肺から熱い息がこみ上げた。
「ツ、ツナさん、どーでしょー…?」
「ん…もう、いいよ、ハル…!」
「はひ!気持ちよくなかったですか…?」
これ以上の刺激に耐えうるほどの免疫はないので、逃げるように腰を引いたツナにハルが首をかしげ、
正座したまま、じっとこちらを伺い見ている…。
「も、でそう、でさ…さすがに、手でイっちゃうのはちょっと…恥ずかしい、っていうか」
「!!ツナさん!」
ハルで感じてくれたんですねと満面の笑顔で飛びつかれ、またもバランスをくずしたツナはベッドに倒れるかたちになった。
「ひ、ひ、ひとつに…なりましょう、ツナさん…」
自分なんかよりよほど肝の据わった彼女は、本当にマフィアの妻に向いているんじゃないか?
なんて本気で思ってしまった俺は、どうかしているのかもしれない。
いよいよ結ばれる!
そう思うだけでハルの恥部はとろけ、ほぐれきっていた。
太股を擦り合わせるたびにニチニチと粘りを増す愛液。
それは、ツナ自身を欲しているなによりの証拠だった。
「ひ、ひ、ひとつに…なりましょう、ツナさん…」
淫らで、破廉恥で、ふしだらな言葉。
でも本当に好きな人の前なら、これも愛の告白のうちに入ります、きっと!
ハルは本心からツナさんのことが好きだし、ツナさんもははは・ハルを、求めてくれてるんですよ?
婚前交渉は悪いことじゃないです、はひ!
そう自分に言い聞かせ、挑む。
目の前で岩石のようにカチコチになった男に。
ごくり。
ツナの唾を飲み込む音が、はっきりと聞こえた。
それはハルが発した音だったのかも知れない。が、もはや周りの事などはどうでもいい。
自分が恥ずかしがっちゃ、ツナさんも恥ずかしくなってしまうかもしれない、
この際恥は捨てよう。
(お、お願いします…!!)
ぎゅっと目を閉じ、ベッドに横たわらせた身体を開く。
ぎしっとベッドのスプリングが軋む音が鳴ると同時に、
亀頭がハルの雌穴をくすぐって、先走る女情を悶えさせた。
じらしているのだろうか?
それとも…挿れる場所が分からない、のか?
ペニスの先端がくにくにと雌穴をつつくたび、脳の裏をひっかかれるようなむず痒い刺激が走る。
(も、もうげんかいです、ハルは…っ)
肉体的に限界なんじゃない。
精神的に、ツナさんが欲しいのだ。
はしたない自分を制し、いよいよ自らが動いてしまおうかと思ったときである
ずぷぷ…
「んひ…っ!」
「ぅああ……!!」
ゆっくりと身体に沈んでくる、男性器。
若干鈍い痛みはあるが堪えられないほどではない。
むしろ、痛みの裏側にひそむ快感をハルは見逃さなかった。
ペニスが奥へ奥へと入り込んでくるたび、ツナと自分の距離が縮まる。
愛しい満腹感に、ずっと浸されていたいくらいだ。
全身がとろけそうなくらいの甘い渦。
強烈な快感。セックスに溺れてしまう人等の気持ちが分からなくもないと思うほどに。
ハルのそこは熱く熟していて、微力の力を腰に込めるだけで、吸い込まれるようにツナのペニスを飲み込んでくれた。
柔らかく濡れた恥肉が、きゅうきゅうと己を締め付ける…
だめだ
気を抜くといますぐにでも射精してしまいそうだ。
思春期真っ只中の精液庫は、着々とこみ上げる準備をしている。
ずぷ、ずぷぷ…
「んんん…!」
「んふ…ぁっ…ツナさ、ん…ん」
もう既に追い込まれているツナに対し、
ハルのほうはこの状況・この快楽を楽しんでさえいるように見える。
目に毒だ、甘美な声を上げて息を漏らすその姿は。
ぐちっ・くちっ・ぐぷっ
特定の感覚で腰を打ち付ける。
射精してしまうか、
堪えられるか。
その瀬戸際を行ったり来たりのツナに、ハルも身体を合わせる。
「あ、あっ、あっ…いい…かもっしれませ、んっ!」
いやらしい。いやらしすぎる、ハル。
リボーンが『セックスでは誰しも本性が出るんだぞ』と言っていたがまさにこのことだな…
家庭教師の顔を思い出し、ほんのすこしだけ冷静になれたツナが言う。
「…ハル…!」
「な、なんですかぁ、?っ」
「…エロすぎる…、ハル…っ」
「!!…っツナさんの、ムッツリスケベ!」
ぐぷんっ
「はひ・ァ…ッ!!」
「ん…!」
不意打ちにおもいきり抱きつかれ、
急速に密着したその衝撃で ペニスが根元まで、ハルの子宮近くまで刺さる。
ゴリッと、亀頭が最奥を突いた途端、膣内で精が飛び散るのを感じた。
ドプ…トク、トクッ
「んぁぁあ…あ、つい…、」
「う゛…ーーーっ」
暖かいハルのなかへ、溜まっていた精が流れていく。
両手両脚で抱きつかれた格好のまま、ツナの精液は、ほぼすべて膣内に吐き出してしまった。
ペニスを引き抜いた途端、白濁液が次から次からこぼれ出た。
ドロドロだ。
ハルも、俺も、ベッドも。
ティッシュきれてたんだっけ…この場合、ハルのこと拭いてあげなきゃなー…
「ティッシュならここだぞ」
つかの間の余韻を、呪われた赤ん坊の一言がぶち壊す。跡形もなく。
リボーンが箱ティッシュ片手に堂々と部屋へ介入してきたのだ。
余裕の表情が憎たらしい。
「はひ、リボーンちゃん!」
「おおおおお前、仕事だったんじゃないのかよ!!」
「貧相なもの見せるな。隠せ」
素っ裸のまま立ち上がるツナから目をそむけるリボーンは、いつもどおりクールだ。
まるで、こんな情景珍しくもなんともないというような素振りである。
「おめでとーっ今日は赤飯だね、ツナ兄!」
「ででででで出てけよお前らー!!」
生まれたままの姿で半泣きになるツナをよそに、リボーンとフゥ太とハルはご機嫌であった。
「ハル、赤ちゃんできたかもしれません…ツナさん、責任とって下さいね!」
がっくりと肩を落とすツナに、ハルの満面の笑顔が向けられた。
この歳でパパなんてどーしよー…
…もしそうなったら学校を辞めて 本当にマフィアになるしかないかもな、
ディーノに貰った鞭を、未だちいさな拳に握り締めた。
ごく普通の中学生の、
少し普通じゃない出来事。
----終---