「…アホ共は呼ぶなって言ったのに」  
「誰の事ですか!?」  
「おめーしかいねーだろ、バカ」  
…違う。こんな事言いたいわけじゃないのに  
つい出る憎まれ口は悪い癖だってわかってる  
10代目が呼ぶメンバーの中にコイツがいるってことはもう当たり前みたいになってるから  
だから、オレが10代目に言うわけもない  
『あの女も呼んでください』なんて  
だから、今この場にコイツがいることが  
嬉しいのに なんで素直に言えないんだ  
って言えるわけねーよ…  
 
「は、ハルはバカでもアホでもないです!!」  
むっと獄寺を睨むハルを宥めるように微笑む山本。  
「名門私立中学だもんな」  
「そうです!!さすが山本さんー」  
そんな2人の様子を見て、獄寺の眉間のシワは更に増えていく。  
 
 
「はひー!山本さんすごいです!!次はあれ、あれとって下さいー!!」  
「おし、任せろ」  
ゲーセンに着いてそうそう、クレーンゲームに向かった山本ハル。  
類稀なる上手さを発揮する山本は、さっきからどんどんハルの望むぬいぐるみを与えてやっている。  
「…………」  
「獄寺くん、どうしたの?」  
ぶすっとして座っている獄寺に、京子が話しかける。  
「別に」  
獄寺の座っている所からは、山本とハルが楽しそうにしているところが見える。  
それを見た京子はくすっと笑って、「待ってて」と獄寺に告げると2人のもとへと行った。  
「あ、オイ…!」  
「山本君、わたしもあの人形とってほしいな」  
山本がちょうどクッションのようなものを取ったところで、京子が話しかける。  
「お、いいぜ。どれ?」  
「ハルちゃん、ごめんね?」  
「いえいえ、いいですよー。ハルこんなにとってもらっちゃったし」  
「いいなー。あ、そうだ。獄寺くんが退屈してたみたいだから行ってみたら?格闘ゲームの所に座ってるから」  
と、ここから見える獄寺を顔で視線で示す京子。  
「…獄寺さんが?」  
ハルは訝るように山本の隣に行ってしまった京子を見てから、獄寺のところに向かった。  
 
 
「暇そーですね」  
「…んだよ」  
さっきの京子とハルのやり取りを見ていた獄寺は、ハルを直視できずにタバコをふかした。  
「タバコ、いけないんですよ」  
「っせーな、今更…」  
「獄寺さん」  
「んだよ」  
ハルは獄寺の向かい側のゲーム機の椅子に座ると、にっと笑った。  
 
「…なかなかやるじゃねーか、お嬢様学校のクセして」  
「そっちこそ、こんなの興味なさそうなカオしてやるじゃないですか」  
息をあがらせながら、獄寺とハルは格闘ゲームの対戦で熾烈な争いを繰り広げていた。  
2人が思った以上に相手の実力は高く、さっきから勝ったり負けたりを繰り返している。  
「よーし、次こそ…っ」  
ハルは意気込んでコインを入れるが、対戦が始まらない。  
どうやら、獄寺の方はまだコインを入れてないらしい。  
「…獄寺さん?早く入れて下さいよー?始めれないじゃないですか」  
「ハル」  
顔が見えない獄寺の、低い声がハルをどきっとさせた。  
獄寺が自分のことを名前で呼ぶのは、すごく珍しいことだったからだ。  
いや、ひょっとしたら初めて呼ばれたかもしれない。  
「…はい?」  
「今更だけど…大丈夫だったか?この前の…」  
「この前?…ああ、あの…大丈夫ですよ、イーピンちゃんとランボちゃんが助けてくれたし」  
「そーか…」  
…本当は、自分が助けたかった。  
でもまさか、ハルや京子に黒曜の手が及ぶとは思いもしなかったから  
…思いもしなかった?  
10代目の仲がいい女と言えば真っ先にこの2人が浮かぶ。相手はマフィアだ。  
10代目を貶めたいと思うなら、弱い女の2人が狙われるのは想定外じゃなかったはずだ。  
なのに、何が、「思いもしなかった」だ  
イーピンやランボ(あいつは何もしてねぇ)が行かなかったら、ハルはどうなってた…?  
10代目の命は自分の命と同じくらい大切だ。  
でも、ハルは…  
…結局、ハルを助けたのは事前に注意してたシャマルだ。  
素人のハルを戦いに連れて行く訳にはいかない。  
結果はよかったとはいえ、「守れなかった」という事実は、思った以上に重くて  
 
 
「…獄寺さん?」  
気付けばハルがこっち側に回ってきて、俯く獄寺の顔を覗きこんでいた。  
「どうしたんですか?」  
「…なんでもねー。ホラ、やるぞ」  
「でも、辛そうです」  
バカじゃねーの  
女の前で  
女に心配されちゃって  
スモーキン・ボムの名が泣くぜ  
「!」  
ふわ、と甘い香りが鼻腔をかすめた。  
ハルに、抱きしめられていた。  
「…、オイ…っ!」  
「誰も見てませんから」  
確かに、山本と京子はクレーンゲームに夢中だし、ランボ達といるツナの姿は見えない。  
「そういう問題じゃ…!」  
ほっとしたのも確かだが、密着しているハルの感触と、心地よい体温が  
気持ち良くて、逆の意味でキレそうだった。  
「だから、泣いていいですよ」  
「………っはぁ!?」  
「だって獄寺さん、泣きそうだったから」  
「な、泣かねーよ!」  
その拍子に、ぱっとハルから離れる。  
「あれ?そうなんですか?」  
「当たり前だ!!ほら、やるぞ!!」  
コインを入れてやる気の獄寺を見てくす、と笑うとハルも元の席に戻る。  
…よかった、いつもの獄寺さんだ。  
「…どは、…んが…てく…ね」  
「あ?なんか言った?」  
「いーえ、何も!じゃ、行きますよー!!」  
 
帰り道の2人はライバル同士から親友に発展した関係のように、ゲームの話で楽しそうに盛り上がっていた。そんな2人を見て京子が思いついたように言う。  
「そうだ!遅くなっちゃったから、獄寺くんがハルちゃんのこと送ってあげたら?」  
「あ?なんでオレがそんな面倒くせーこと…」  
「お、いいな、それ。オレはツナと笹川送ってくから、お前はハルのこと頼んだぞ!」  
しぶしぶ文句を言う獄寺は最後には折れて、2人だけハルの家に向かって行く。  
京子と山本は顔を見合わせて微笑み、ツナは何がなんだかわからないまま2人に手を振っていた。  
 
 
「今日は楽しかったですね。ありがとうございましたー」  
ハルの家の門まで来ると、ハルは笑顔で獄寺を振り向いた。  
こうして見ると、まるで2人だけのデートだったようだ。  
「…あのさ、お前……あの時、なんて言ったんだ?」  
ゲームを再開した時、ハルは何か言っていた気がしたが聞き取れなかった。  
あの時は否定されたが、やはり気になって獄寺はもう一度聞いてみたのだ。  
「それは…」  
「なんだよ」  
「ヒミツです」  
獄寺はがく、と頭を落とした。ハルははにかんだ笑顔のままだ。  
「…じゃ、またな」  
「はい、気を付けてくださいね」  
「おう」  
獄寺を少し見送ってから、ハルは家に入った。  
「なんだハル、デートか?」  
見ていたのか、ハルの父親が茶化すように言った。  
「そんなんじゃないよー」  
足早に父親の横を通りすぎ、自分の部屋に入るハル。  
ベッドに寝転んで、山本に取ってもらったぬいぐるみを抱きしめた。  
 
『…今度は、獄寺さんが助けに来てくださいね…』  
 
 
…言わなくても、次はきっと来てくれますよね  
ね、獄寺さん  
また、ハルって呼んでください…  
 

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