何をしてるんだ、俺は?  
神聖な十代目の部屋で、俺はバカ女の上に乗っかっているかたちで、いる。  
柔らかい体、甘い匂い、艶やかな黒髪  
何をしてるんだ、俺は。  
柄にもなく黙りこくり口をぽかんと開けたままでいるバカ女を、意味なく睨んだ。  
 
今日は日曜。  
イタリアと違って平和な日本は、敵襲に合う事は稀だった。  
まあ十代目の無事を思うなら平和なほうがいいに違いないが、俺はどこか退屈で。  
することもねーし、ボンゴレのこれからについて十代目と語ろうと、屋台でタイヤキを買って来たら 十代目は留守で。  
せっかく来たのにそのまま帰るのも何だと部屋の掃除でもしようとしたところに…  
バカ女が来た。  
人んちで何してるんですか怪しい人ですねとくってかかるバカ女に、どうせつまらん用事だろうが帰れと言った途端に口論は勃発する。  
帰れ・お前が出て行けと言ううちに、こいつは俺のプライドをぶち壊すよーな事を言いやがった。  
 
「意外と純、らしいですねぇ?獄寺さんは〜」  
「はァ?」  
"純"。  
その意味が分からない俺に、ハルはわざとらしく失笑してみせた。  
一体何なのか。  
こいつの考えることは全く理解できない。  
 
「『隼人はもうちったぁ女を知っといた方がいい』って、シャマルっていう先生が言ってましたよ!」  
一気に頭に血が上るのが分かった。  
(犯してやる…もう十代目に付きまとうこともできないくらいに、犯してやる。)  
そう思い立った途端に 俺はバカ女をフローリングに押し倒していた。後先も考えずに。  
ゴン!  
勢いよく押さえつけたためか、バカ女の脳天は床に打ちつけ音を立て、その音で俺は我に返った。  
どうしようか?  
うるさい女を抱くのは気が進まない…というか、  
こいつは十代目に一方的に、すごく一方的に好意を持っている。  
そんな女を抱いてしまったら…十代目はどう思うだろうか。  
あの生真面目な十代目のことだ、好きでもない女を抱く軽薄な男と思われでもしたら…  
右腕の座は山本に傾くかもしれない。  
今度は全身から血液がひいていくのを感じた。  
 
「ふ・ふ・フンッ!抱く度胸もないんですか!やややっぱり、獄寺さんは、根性無しですね!」  
ぶるぶる震えながらも吠えるバカ女。  
畜生。  
舐めやがって…  
(十代目、これは十代目に付きまとう邪魔者を削ぐ行為ですからね。  
けして俺は、軽薄な男じゃありません…!右腕の座にかけて!!)  
 
緑山中の制服に手をかけると、"ひっ"と息を呑む音が聞こえた。  
なんせこの至近距離だ、呼吸や唾を飲む音だって耳に入る。  
俺が本気になったことを悟ったのか、ハルはますます体を固くする。  
「へへへへんたい!!何するんですかっ」  
「自分から挑発しといて逃げる気か?」  
「逃げるだなんて…ハルは…つ、ツナさんのことが…す、す、す…」  
「そんな度胸じゃマフィアの妻にはなれねーな」  
「…!」  
少し卑怯な言い口だとも思ったが、途中で叫ばれてはたまらない。  
その一言でバカ女は口を詰むんだ。  
後悔させてやる。  
十代目に付きまとったこと、俺を挑発したこと。  
制服を全て脱がせた俺の手の平には、汗の筋がいくつも滲んでいた。  
 
(た、たいへんなことになってしまいました…!)  
 
次々と剥かれていく衣類。後戻りするなら今しかない…。  
最中、何度も獄寺を突き飛ばそうとするものの、それは未遂に終わった。  
『そんな度胸じゃマフィアの妻にはなれねーな』  
獄寺の一言が、胸を痛く突いたからである。  
つまらない意地だと思うがハル自身・必死だった。  
精一杯、体に力を入れて虚勢を張る。  
 
マフィアっていうのは、てっぽうでばんばん撃ち合ったりする物騒なお仕事で。  
そんな夫を支える妻は相当な度量が必要なんだ、きっと。  
だから私はちょっとのことで根を上げないように努力してきたつもりであった。  
しかしだ。この状況は一体どうすれば?  
挑発しなければよかった、  
どこへも持って行きようのない後悔の念ががぐるぐると巡る。  
そうこうしているうちに、露出の少ない冬場・真っ白な素肌は、あっという間に蛍光灯の下に照らされることとなった。  
白昼堂々…ツナさんの部屋で。  
 
「…ガチガチじゃねーか」  
獄寺も戸惑っているのだろうか?若干声が上擦っているような気がした。  
「ハルはこのくらいじゃ…び、びびりません、よ!」  
そうだ。こんな事ぐらいで動じるものか。  
「んん゛!!」  
口を尖らせ、ぷいとそっぽを向くなり唇が塞がれる。  
獄寺の舌が、黙っていろと言わんばかりに入り込んできた。  
嗅覚を痺れさせるほどのたばこのにおいにむせ返りそうになるも、必死で堪えて睨み返す。  
ハルの動向などおかまいなしに濡れた舌が口内を犯しては、わずかに開いた口元から零れる、粘ついた水音。  
 
できるだけ獄寺の舌と舌がくっつかないよう、口の隅によけた舌横をちろちろと舐められる。  
舌同士舐めあうのは、不思議な感覚だった。  
歯がゆいような きもちわるいような ああでもきもちいいのかもしれない?  
これがツナさんだったならと、想い人なら吸うことのない煙草のにおいを感じながら思う。  
 
口を離すと、互いの息が荒く跳ねた。  
はあはあ息を切らしながらも、二人してじろりとにらみ合う。  
ようやく解放され、空気を存分に吸うハルに対し、獄寺はせせら笑ってみせる。  
「経験ねーのはどっちだよ…処 女 ハル」  
勝ち誇ったような言い草にかちんときてしまい、やけくそで体を大の字に広げた。  
「かかかかってきなさひ!」  
「…噛んでるじゃねーか」  
 
顔がますます赤くなった。  
 
十代目の部屋を汚さないようにしねーとな。  
クッションや散らばった雑誌、ゲームのコントローラーを腕で寄せ、カーペットの上にハルを寝かせた。  
ぎゅっと目をつぶったまま、がちがちになったハルを抱き寄せる。かたい。  
「力、抜けよバカ女」  
「ぬ・ぬ・ヌいてますっ」  
ため息まじりに、ハルの下着に指を添わせた。  
水玉模様のどこかチープなそれは、全くといっていいほど色気感じさせない。  
柔らかく膨らんだ胸の先端を下着ごしにつつくと、ハルはくぐもった声を漏らした。  
"獄寺さんの、へんたい"  
おまえな、セックスってどんなものか知ってんのか?  
半ば呆れながら、下着をゆっくりと剥いだ。  
とっとと脱がせてしまいたかったが、こいつのことだ、暴れだすかもしれないと思った。  
「ご、ごくでらさん」  
「…何だよ」  
童貞でもあるまいし、いまさら処女を前に緊張などするはずもないのに、俺まで気恥ずかしくなってきて頭を掻く。  
電気けしてください、と囁くように言われ、照明からぶらさがった紐を乱暴にブチブチと引っ張った。  
引っ張った拍子に、紐先についていたドラエモナのマスコットがちぎれてしまった…どうしようか。  
とりあえずマスコットをポケットに突っ込み、俺は床に腰を下ろした。  
春先の夕刻は、まるで夏の夜ほど暗かった。  
蛍光灯の下、さっきまで見ていたハルの身体は色気のカケラもないと思ったはずなのに、薄がりのなかでちらつく白い肌は…  
悔しいけれど、色っぽいかもしれない。  
ごくり。  
生唾を飲み込む音に、自分で驚く。  
(畜生…バカ女のくせに…)  
 
 
 
 

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