「なんだか君は、食べてしまいたくなる」  
私と雲雀さんしかいない応接室で、雲雀さんの声が響く。  
くい、と上がった唇の端に、私は得体の知れない恐怖を覚えた。  
 
友達づてに呼び出されたのだ、いきなり。  
私はなんだか校則違反でもしちゃったのかな、とあたふたとした。  
校則にはとても厳しい人と聞いていたから。  
それと、ものすごく怖い人ということも。  
まあ、普通に過ごしていたなら全く話す機会ないとおもっていたのだ。  
 
声から、目つきから、雰囲気からなにもかもが私を怯えさせる。  
トンファーを隠し持ってるって話だ。この人ならもしかしたら年下の女子にでも殴りかねない。  
 
「・・・あのっ、私なんか悪いことしてたならちゃんと直すんで・・、  
その・・・あんまり暴力とかは・・」  
「暴力?しないよそんなこと」  
 
「ただ」  
 
いきなりぐいっと腕を引っ張られた。力強い、顔に似合わずごつごつとした手の感触が腕の皮膚から感じる。  
雲雀さんの顔はすぐ近くにあって、わたしは思わず目を見開く。  
かすかな吐息さえも耳にはいる。  
 
「君はどんな味がするのかとおもって」  
 
え、と言葉に出す前に勢いよく肩をつかまれ壁に押し付けられた。  
背中全体に鈍い痛みが一気に走る。電気でも流されたみたいだ。  
全くなにがおこっているのかわからなかった。ものすごい混乱状態に陥っていた。  
雲雀さんの目はもう、獲物を捕らえた肉食動物みたいな、そんな目にしか見えなかった。  
 
「あっ・・ひあ・・・」  
 
耳たぶを噛まれて、舌を差し込まれる。  
くちゅ、という音がものすごくリアルに、鼓膜に響いてくる。  
本当に、食べられてしまうみたいだ、とおもった。  
覆いかぶさっている雲雀さんをぐいぐいと押し返してみても、全くびくともしない。  
自分の非力さを呪った。  
 
首すじをなめられて、思わず声をあげそうになるのをこらえる。  
必死で声をだすのを我慢している様をみて、雲雀さんはまた、意地の悪い笑みを浮かべる。  
そして私の目に浮かんだ涙を舌ですくいとって、私の唇をなめて、強引に私の口内に雲雀さんの舌が入ってきた。  
私はかすかにいや、といったのだけれど、それは声にはならずただ淫らなあえぎ声とともに空気のなかへ消えていった。  
 
 
足ががくがくと震えて、思わずぺたりと座り込んでしまった。  
キスが長すぎて息ができなかった。  
まだ私には、到底理解のできないようなキスだった。  
どんどん、と強く雲雀さんの胸を叩く。  
すると雲雀さんは唇を離して即座に私の両手首をつかみあげた。  
突然の痛さに、悲鳴をあげそうになる。  
 
「まだ抵抗するの?」  
 
雲雀さんは自分のネクタイに手をかけ、器用にはずして、  
私の両手首をしっかりと縛り上げる。  
力をいれても、まったくはずれる気がしない。  
 
「なんにもできないね」  
 
ニヤリと笑った顔が卑怯だと思った。  
リボンをはずして、ブラウスのボタンをひとつひとつはずしていく。  
どんどん、下着と自分の肌が雲雀の前で露になっていく。  
 
ブラウスの下から現れた、薄い桃色のブラジャーのホックをはずされると、  
即座に下から手が忍び込んできた。  
まったく血がながれていないような冷たい手で、思わずびくりとしてしまう。  
すこし大きさを確認するように揉んでから、突起物の周りをするすると冷たい指先でいじられる。  
 
「あ・・いやあ・・ん・・・」  
 
もっと真ん中をさわってほしい、なんていう思いがふと頭によぎってしまって、おもわず頭を振った。  
それを雲雀さんは即座に察知したかのように、ぎゅうと左の突起物をつまんだ。  
左手でそれをいじくり、右のほうに顔を近づけたかとおもうとそれを口に含んだ。  
舌でねっとりと転がされて、軽く噛まれる。  
 
「ひゃあぁんっ・・!やっ・・・やめて・・」  
 
空いている右手が、スカートのなかに入ってきて、ふとももをさわさわと触ったかとおもうと、  
下着の上からその冷たい指先で、秘所をぐりぐりと触られる。  
きっと、濡れて湿っているだろう。  
 
「すごい濡れようだね・・誰かに同じようなことをされたことあるんじゃない?もしくは一人で?」  
 
問いただしながらも手の執拗な動きは止めてくれなかった。  
 
「やあぁあん・・・そんなっ・・あん・・ないです・・」  
「嘘はつかなくていいよ」  
 
雲雀さんの目の色がキッ、と強くなる。  
 
 
こんなことをされたのは本当に初めてだった。  
ただ、自分ですこし、こういうことをしたことはあった。  
中学に入ると、周りの友達は妙に大人びて、こんな話題もチラホラでることがあった。  
そんな話題を私は嫌っていたけれど、好奇心には勝てなかったのである。  
最初は触ってもへんな感じ、という感覚しかなかったけれど、  
だんだん気持ちよくなってきてしまって、家族のいないときとか、時々やってしまうことがあった。  
その度になんともいえない罪悪感を感じたのだけれど。  
でも、そんなにしょっちゅうはやってないはずなのに、なんでこんなに感じてしまうのだろう?  
 
「はあっ・・はあん・・すこしならっ・・自分で・・・」  
「最初からそういえばいいんだよ」  
 
厳しい目つきのまま雲雀さんは私の下着に手をかけて、邪魔なものを取り払うように乱暴にずらした。  
私は反射的に足を閉じてしまったけれど、雲雀さんの手がぐいと再び私の足を開いた。  
雲雀さんは食い入るように私の秘所を見つめている。  
今まで熱かった顔が、もっと熱くなったような気がした。  
 
「舐めてあげる」  
 
そういうと、雲雀さんはおもむろに私の秘所に顔を近づけ、  
舌先でクリトリスをつん、と触って刺激した。  
 
「はああぁあっ!やっ・・だめえっ!いやぁ・・っん!」  
 
ふと、頭にツナくんの顔がよぎった。  
こんなところ見られたくはないけれど、助けてほしいと思った。  
なんだかものすごく、都合のいいことだけれど。  
 
「・・ぁん・・ツナく・・・っ」  
 
名前を言ってしまってからはっと後悔した。  
私はツナくんのことを思い浮かべて、勝手に今目の前にいる人をツナくんに置き換えてしまったのかもしれない。  
けれど、それはツナくんではなく雲雀さんだ。  
手の冷たさとは反対に、熱い舌の動きがピタリと止まった。  
 
「こんな状況でよくもまあ他の男の名前が吐けるね」  
「や・・・ごめんなさ・・っ・・」  
「それで僕の犯されてこんなに感じてるなんて、ほんと淫乱だね君」  
「ちがっ・・ああぁあんっ!だめだめっ・・!!」  
 
舌の動きがさっきよりも早くなった。  
思わず身をよじらせ、その舌から逃げようとするけれど、  
足を手でがっしりと掴まれて身動きができない。  
そしてどこか、雲雀さんのさっきまでの余裕がなくなってきているように思えた。  
 
 
はじめは嫌悪感しかなかったのに。  
今ではこの目の前にいる人がとても哀しく思えてしまって、  
そして、とてもいとおしく思えてしまった。  
こんなことをされているのに、こんなことを思ってしまうなんて、  
私はすこしどこかおかしいのかな、と思った。  
 
「ヒバリさっ・・・」  
 
「ごめんなさ・・ああん・・」  
「・・・何で」  
「やっ・・あの・・なんとなく・・ひゃ・・」  
 
ヒバリさんはすこし驚いたみたいに動きを止めた。  
自分でも訳が分からなかったけれど、ともかく謝りたかったのだ。  
ヒバリさんは体制を変えて私の手首に手を伸ばして、  
拘束していたネクタイをほどいた。  
一気に血が巡ったみたいで、手がすこしぼうっとして、変な感覚だった。  
そして、腕が背中にまわってきて、ぎゅ、と軽く抱きしめられた。  
 
「あ・・あのっ・・」  
「なんでもないよ」  
 
すぐにぱっと離された。なんだか物足りない気がした。  
顔だって、いつもの顔に戻っていたけれど、手つきだけは変わっていて、  
とても優しかった。  
その指が、私の乱れた服を直そうとしていくけれど、  
私は何故だかその腕をぎゅっとにぎりしめて阻止しようとしていた。  
ヒバリさんは目を丸くした。  
 
「・・い・・いやじゃないから・・続けてください、最後まで」  
 
そういった自分の唇は震えていて、上手く伝わってないかも、とおもったけれど、  
ちゃんと伝わっていたみたいで、衣服を直そうとした手を止めていた。  
 
 
手がまたするすると下のほうへ伸びていって、私の秘所を触った。  
ぐしゅぐしゅ、というような音がする気がする。  
だけど、私はその音がなぜか嫌じゃなかった。  
指が、ものすごくゆっくりと私の中に入ってきた。  
 
「はああんっ・・あぁあ・・っ」  
 
思わず甘い声が漏れてしまう。けれど、ヒバリさんはそれについてはもう何も言わなかった。  
人差し指が第二間接ぐらいのところまではいってるであろう、  
その指がゆっくりと動いて、中をかき乱し、かすかに私の核のようなところに触れた。  
 
「あああん・・!!い・・いっ・・」  
 
快感が大きな波みたいに襲ってくる。  
異物を中に入れられたのは初めてで、最初は変な感触しかしなかったけれど、  
だんだん気持ちよくなってきてしまった。  
ふと、その指がすっと抜かれた。  
満たされていたものがなくなってしまって、なんとなく物足りなさを感じた。  
かちゃかちゃ、とかすかな金属音が聞こえて、これから始まることをなんとなく察した。  
すこし怖くて、目をつむる。  
 
「それじゃあ・・・行くよ」  
 
「ああぁああん!!やっ・・はああん・・っ!いたっ・・い・・」  
 
先ほど入れられていた指とはあまりにも違った大きさで、思わず涙がこぼれそうになる。  
今すぐにでも抜いてほしいとおもったけれど、この痛みのどこかに快感がある気がして。  
 
「・・・大丈夫・・?」  
「はっ・・はん・・だ・・だいじょうぶです・・っ」  
「じゃあ・・・動くよ」  
 
その大きなものが中で動いたときに、ようやく快感の波が私に襲ってきて。  
 
「はああぁあ・・あっあっあっ・・だ・・だめえ・・っ・・おかしくなっちゃいそう・・!!」  
 
その瞬間に、頭が真っ白になって、私は気を失ってしまった。  
 
 
私が意識を取り戻して目を覚ましたとき、ヒバリさんはイスに静かに座っていた。  
私は向かいのソファに寝かされていた。衣服はちゃんと戻されている。  
 
「わ・・私・・」  
 
すこし動いた瞬間に、ものすごい痛みが下のほうからジーンと走ってきた。  
突然の痛みだったのですこし縮こまってしまう。  
その様をみてヒバリさんは私に近寄り、優しく髪を撫でた。  
 
「・・もう少し眠ったほうがいい」  
 
そう促されて、コクリと素直に頷き、ゆっくりと眠りの世界へと落ちていった。  
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