あたしはどうしてもヒバリさんとお話がしたくて、リボーンさんにお願いをして  
10年バズーカを撃ってもらった。ボンゴレお抱えの武器職人ジャンニーイチさんに  
改良してもらい、なんとその持続時間は1時間だそうだ。  
(これでヒバリさんと…!)  
 
 
 
「ヒバリさん!」  
肩にかけた学ランを翻し並盛中へと向かう雲雀恭弥に馴れ馴れしく話しかけるとはなんと命知らずな。  
周りの生徒が固唾をのんで見守る中、三つ編みの少女はヒバリに追いついた。  
ヒバリは歩みを止めずにちらりとその少女に視線をやる。  
「誰?」  
「あたしです、イーピンです!」  
「知らない」  
一蹴し、すたすたと去っていく。冷たくあしらわれても、大人イーピンはめげずに  
後を追って話しかける。  
「雪合戦の時に会った事、覚えてませんか!?ほら、沢田さんに抱っこされてた三つ編みの!」  
(雪合戦……)  
 
記憶を掘り起こしてみるヒバリ。あの日、折角雪が積もったからと群れる相手に一方的にぶつけて  
雪合戦をしようとして並盛中に行ったことを思い出す。  
雪玉を沢田綱吉にぶつけようとした時、なんだか小さい生き物がいたような覚えはある。だが…  
「あの子供が君だっていうの?」  
「そうです!わぁ覚えてくれてたんですね!!」  
頬を染め喜ぶイーピン。だがヒバリは  
「なんの冗談?」  
と全く相手にせずそのまま応接室へと入っていく。  
「ちょ、ちょっと待ってください!」  
とイーピンも応接室の中に入ろうとしたが、鼻先でぴしゃりとドアを閉められ施錠されてしまった。  
 
 
(季節の変わり目は変な奴が増えるな…)  
ソファに身を沈めながらヒバリは日誌に目を通し始めたその直後、  
 
ドガシャアァァァン!!!  
 
と派手な音をたてて応接室のドアが吹っ飛んだ。  
「な…!?」  
ドアのない入り口からは上段蹴りの体制のイーピンが姿を現した。とん、と右足を下ろした後  
焦ったように手を口に当て  
「またやっちゃった!」  
と言っている。  
「何の真似?僕と殺し合いしたいなら話は早いよ」  
とトンファーを構えるヒバリ。そんな臨戦態勢のヒバリを見てイーピンは焦る。  
「違います、実はヒバリさんにお願いがあって来たんです!」  
「お願い?」  
「はい!ヒバリさん、あたしとちゅーしてください!!」  
 
「―――――――――は?」  
 
人間、あまりにも想定外の事を言われると思考回路が止まるらしい。  
それは最強の風紀委員長といえど例外ではなく、ヒバリは目が点になった。  
だがイーピンはお構いなしに話を進めていった。  
「あたしもうすぐ受験なんです。で、合格できるよう願掛けしようと思って  
師匠に相談したら、初恋の人とちゅーできたら願いは成就されるって言われて」  
イーピンはがっとヒバリの両肩を掴む。その感触でヒバリは我に返った。  
「だからヒバリさんあたしとちゅーしてください!」  
ぐっと顔を近づけるイーピン。  
「!」  
ヒバリはそんなイーピンの手をはらい、脱兎のごとく応接室を飛び出し走り去る。  
「あー待ってください!」  
並盛中の廊下を全速力で走る風紀委員長。その後を追う美少女。  
この考えられない組み合わせとシチュエーションを目撃した生徒達は皆一同にぽかーんとしている。  
 
 
「あ〜ホームルーム始まっちゃうよ〜」  
と遅刻気味のツナが廊下を走っていると、前からものすごい勢いでヒバリが走ってくるのが見えた。  
「あ、ヒバリさ…」  
ダダダダダ!!!!!!一瞬でツナの横を走りぬけるヒバリ。  
「…ん、」  
タタタタタ!!!!!!すぐその後を追っかけるイーピン。  
 
「って、え!?大人イーピン!?」  
ツナは振り返り、すでに遠くまで行ってしまった2人の後姿を見送った。  
(な、何してんの――!?)  
 
(雪合戦…?願掛け…?初恋…?)  
頭をぐるぐると回るどう考えてもつながらないキーワードに、ヒバリは眉間にしわを寄せながら  
全速力で走る。だが、その後をきっちりと追ってくるイーピン。  
自慢だが、これでも自分は体力と戦闘能力は長けている、ゆえに足の速さにも自信があったのだが…  
(ただ者じゃない、か)  
とヒバリは後ろをちらりと振り返ると…  
「…な…!」  
なんと、らちがあかないと思ったイーピンはそばにあったロッカーを持ち上げ、ヒバリに向かって  
投げようとしていたのだ。  
「えいっ!」 ドガガガン!!!  
放られたロッカーはヒバリの頭上を越え、渡り廊下につながる出口をふさいだ。  
「ヒバリさーーん!」  
「ぅ、わっ!」  
イーピンが後ろからヒバリに勢いよく抱きつき、体制をくずしたヒバリはそのまま床に倒れこんだ。  
 
「っ君…  !」  
起き上がろうとしたヒバリの唇をやわらかくあったかいものが塞いだ。  
イーピンの唇がヒバリのそれに重ねられたのだ。  
突然の行為にヒバリの動きが一瞬止まる。その瞬間、ボフン!!!と煙が立ち込め2人を覆った。  
 
げほげほと咳き込むヒバリは、ようやく晴れてきた煙の中に一人の子供を発見する。子供イーピンだ。  
訳がわからず、  
「何なの一体…」  
と口元を押さえながら気持ちふらつく足取りでその場を離れた。  
 
「こっちからすごい音が…あ!いたイーピン!」  
騒ぎを聞きつけツナがその現場に走って来て、ひしゃげたロッカーを見て何事かとイーピンに話しかける。  
「イーピン、何があったんだよ!」  
抱き上げたイーピンの額には二箇が…  
「んな!?」  
   
ドオオオォォォォォォン!!!!!  
 
 
 
ツナ、入院決定。     
「何でオレだけ―――!?」  
「○△◆@;◎!(ごめんなさい!)」  
 
 
 
 
END  

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