「なんだお前まだ童貞なのか?・・・・・・プ」
「なんか文句あんのかコラ!」
静かなボンゴレ邸宅に銃撃音が響く。音源はコロネロが放つライフルだ。対するリボーンは涼しい顔で弾を避けたり、物陰に隠れてやりすごしている。
「何してるんだお前たち!」
扉を開けて入ってきたのはXグローブを装備したツナだった。銃弾のなかに割って入り、ライフルの弾を全て受けとめて、そのままの勢いでリボーンを一発殴る。
「リボーン、なにか言うことは?」
「ツナ、腕をあげたな」
「違―――う!」
「ツナ、そこどけコラ。今日はそいつを本気で倒・・・・・・うわっ」
コロネロの体がいきなり宙に浮いた。
「了平、離せコラ!」
「師匠には悪いがそういうわけにもいかぬ!」
浮いた原因は了平だった。後ろから羽交い締めにされたのだが、身長の都合でコロネロの足が床につかないのだ。
「チビ」
リボーンがせせら笑う。
「はい、喧嘩やめる!」
新たな喧嘩が始まる前に、ツナが先手をうった。
「どうしたのさ一体」
「そいつが15歳なのにまだ愛人とヤってないのがおかしいとか言うからだコラ!」
「リボーン・・・・・・愛人がいる15歳なんてお前くらいだから」
「あん?でも俺はビアンキと」
「だからそれがすでに特殊というかやめてやめて聞きたくない!」
ぶんぶんと頭をふり耳を塞ぐツナ。しかしリボーンは容赦なくツナの耳に『特殊事例』を流しこんでいく。「みんなおちつけ!」
救いの神は了平だった。
「そんなことしている間に京子が来たらどうする!」一同ハッとした。今日は久しぶりに京子がボンゴレ邸宅を訪れる日なのだ(ちなみに恐ろしいことに天然な彼女にマフィアのことはまだバレていない)。
急に来ると言い出したのでせめて客間だけでもマフィアの痕跡を消さなければ、と思い立ったのも束の間、さっきの事態である。
京子が来る予定の時間まで銃弾と銃弾の痕をいくつ処理できるかみんなで相談を始めたが―――、
「京子様がいらっしゃいました」
「うそおおお!?」
開いた扉のところには、すでに京子が到着していた。
「ごめんねツナ君。急に」「い、いやいやいや!今丁度暇してたところだから!」
「ひ、久しぶりだな京子!」
「久しぶりだぞコラ!」
「チャオっす」
四人で一気に京子の視界を覆って部屋の惨状を隠す。はたから見ればかなり不自然だが、京子は全然気付いてないようだ。
ただ、天然のなせる技、というワケでもないらしい。ぼんやりとしているようだ。いつもの笑顔に陰がかかっている。
(なんかあったのかコラ)
惨状隠しに必死な三人を尻目に、コロネロだけが違和感を感じていた。
「とりあえず俺の部屋でどうだ?たしかお前の好きなワインがあったはずだ」
「本当?嬉しい」
「うん、それがいいよ!じゃあここ出よう!」
ぐいぐい、と京子を押して即、扉を閉じた。部屋の惨状がバレなくて胸をなでおろす。
「えっとその前に今日京子ちゃんが泊まる部屋は」
「了平の部屋の隣だろ?俺が案内するぜコラ!」
言うなり、コロネロは京子の腕をひっぱり部屋へと向かった。
「うわ、コロネロがあんなことしてるの初めて見た」「二人っきりになりてーんだろうよ」
リボーンはなぜか煙草を吸う仕草をして、
「あいつ京子のことが好きだからな。しかも多分初恋」
「え、マジ?あー、どうりで京子ちゃんが泊まるときは都合よくコロネロがいるわけだ」
「あいついままで色恋には疎いかったからな。初めては京子で――、とか考えてると思って小馬鹿にしつつ聞いたのが喧嘩の原因な。15歳云々はデマカセだな。恥ずかしがりやがって」
「ウブめ」とリボーンが薄笑いを浮かべて呟いた。多分色恋のことでコロネロがリボーンに勝てる日はこなち。
「了平、この事実、どう思う」
コロネロの弟子である了平なら、喜んで当然だが、何故か表情が芳しくない。
「無理、だと思うがな。いくら師匠とて、彼氏のいる身にはなあ・・・・・・」
「え。京子彼氏がいるのか?」
リボーンとツナは顔を見合わせる。初耳だ。
「五ヶ月くらい前からだと聞いた」
「ああ、そんときは忙しかったから連絡とれなかったしなあ」
「コロネロは・・・・・・」
「多分、知らん」
「哀れだな」
そういう割にはリボーンは楽しそうだった。
しかし可哀想なことには変わりなく、三人は心の中でコロネロの初恋に合掌した。
酒盛が始まって数時間が経った。
時刻はもうすぐで12時をまわる。ちょうど仕事が片付いたのと、京子がきたということで小規模な酒盛が行われた。
小規模とはいえ、全員酔い潰れるほど飲んだ。皆寝てる。
気付いた時、その中に京子の姿はなかった。
(部屋かコラ?)
コロネロは唯一飲んでいなかった。暇だ。
(今いけば二人っきりだなコラ。・・・・・・二人・・・・・・)
押さえきれなかった淡い思いを心に乗せて、コロネロは部屋を飛び出した。
「京子ー。いるかコラ」
「どうしたの?」
部屋から出てきた京子の服装を見たコロネロは思わず扉に頭をぶつけてしまった。
「大丈夫?」
「なんつー格好してんだコラ!」
京子は下着にシャツをはおっただけというあられもない姿だった。
「男の前でそんな格好・・・・・・」「やだなコロネロ君。小さいとき一緒にお風呂はいったじゃない」
「何年前の話だコラ・・・・・・」
前が開いたシャツから見えるのは水色の下着と白い肌だ。シャワーを浴びたばかりなのか、肌の上に少しばかり残っている水滴が光を反射して艶やかに光っている。
「ね、お話しよ」
ぐいぐいと京子は半ば無理矢理コロネロを部屋へと招く。コロネロは言われるまま部屋へと入った。京子はベッドに、コロネロは向かいの椅子に座る。
部屋には意外なことにワインの瓶が転がっていた。全部で四本。全部空だ。
「ヤケ酒でもしたのかコラ」
「うん」
冗談で言ったのだが、当たりのようだ。
「愚痴なら聞くぞコラ」
「・・・・・・彼氏に二股かけられてたの。結婚したいと思うくらい好きだったのにね。もっとお金持ちで綺麗な彼女ができたからもういい、って」
はあ、と前屈みになって溜め息をつく。正面からは胸の谷間がよく見えた。慌てて視線を外して言う。
「了平に言えばいいじゃねえか」
「それはさすがに。死んじゃうし」
兄の力量は理解しているようだ。
「忘れるためにイタリアに来たんだけどね」
「俺にできることならなんでもするぞ」
「本当?」
「おう」
「じゃあ、さ。・・・・・・えっち、しよ」
「・・・・・・へ?」
返事をする暇なく、ぐいっと腕を引き寄せられ、京子の体と密着する。想像以上に柔らかい胸に頭が当たる。
「ダメ、かな?」
「ちょ、いやダメというか、えと、やり方なんて知らないぞコラ!」
そのテの知識は本当に無い。
「大丈夫」
そう言って京子はコロネロの右手を手にとった。そして自身の隠部へと引き寄せる。湿った下着の中を探り突起を摘む。京子の手は誘導しているだけで、摘んでいるのはコロネロの指だ。「んっ・・・・・・」
さすがに自分の体だけであって好む箇所は知っていた。
「私が、するから」
体温が上がる。体がほてってくる。
未体験の領域に来ている。コロネロの反応はまた顕著だった。
「それ」
「み、見んじゃねえコラ!」
少し盛り上がっているブツを手でかくそうとするが、京子はそれを遮った。
そして京子はコロネロを押してベッドに寝かせる。そしてズボンのファスナーを下ろした。
まさか、と思った。
でてきた半分固くなったソレを、躊躇なくくわえこんだ。
歯は決してたてずに舌でねぶる。体感したことのない快感がコロネロに伝わる。理性はもたずに、すぐに京子の口の中に白濁とした粘液が溢れた。
他人にしてもらうのは初めてだった。
「・・・・・・京子」
「なあに?」
コロネロは返事をせずに京子を押し倒した。
「・・・・・・こんどは俺がやるぞコラ」
そう言って京子におおいかぶさるような体勢になる。
この後やることとしたら頭の中にはひとつしかなかった。
実行すべく体を動かすが、「きゃー。コロネロきゅんどーてーそーしつー」
「んなあああ!?」
近くから聞こえた棒読みな声に全て冴えぎられた。
「り、リボーン!」
「んあ?公開のモン見て何が悪ぃ?」
そこにいたのは間違いなくリボーンだった。
「こ、公開じゃねえぞコラ!」
「扉全開は公開って言うだろ?」
全開?
京子とコロネロは扉を見た。
そこはたしかに全開で、廊下には何か嫌なものを見てしまったような表情のツナと了平がいた。
「あの、さ」
ツナが何かを喋ろうとしたが、それよりも先にコロネロがどこからかとりだした機関銃を放った。
「・・・・・・っみんな死ねコラ―――!」
「なんで―――!?」
イタリアの夜に、二人の叫びと機関銃の音が響いた。
翌日、京子は綺麗さっぱり忘れいた。
おそらく昨晩のことは酒の勢いだろう。酔っぱらって行ったことは忘れるタイプらしい。
「美味しいお酒飲むと嫌なこと全部忘れちゃうの」とは本人の談だ。本当のことらしくいつもどおりの笑顔で帰るまでを過ごしていた。
「また来いよコラ」
「うん!」
次までにはもう少し知識をもっておく、と小さく小さく呟いた。