「どうしたんですか」
「…あの、…」
扉から少しだけ顔を覗かせ遠慮がちに見つめてくる存在に
一瞥することもなく骸は手元の書類へと目を向けたまま言った
「今更、僕たちの間に遠慮なんてないでしょう」
全て知っているのにと言葉を続けると手だけで入るように促す。
「クローム?」
自分が腰掛けているベッドの近くまで来たものの
そこで止まってしまった気配にここで初めて骸は視線を向けた。
「…む、くろ様…」
ひどく頼りなさげな顔をした髑髏の顔がそこにあった
もともと下がり気味の眉はいつにも増して不安気に寄せられ
白いネグリジェから剥き出しになっている腕や足はか細く
頼りないその印象を更に強めている
このか弱い身体に、ついこの間まで間借りしていたかと思うと
胸の奥に黒いものが染み出してくるのを感じた
文字で埋められた紙をサイドテーブルに置くと少女へと向き直る
「ごめんなさい…あの、骸様疲れてるのに…」
「身体はずっと眠ってただけですからね、今は動かしたくて仕方ないですよ」
鈍ってしまったからリハビリが必要かもしれませんねと言い、軽く笑う骸に
髑髏は俯いたままで視線を合わせようとしない
「…それで、どうかしたんですか?」
小さく息をつくと髑髏を見つめたまま問う
「私、………」
細い指は彼女の腹の上で白い布に影を落とし、皺を作っていた。
小さな手に力がこめられていることがすぐにわかる
「クローム?」
名前を呼ばれてゆっくりと上げられた顔は今にも泣きだしそうだった。
そう見えるだけで泣いているわけでも
涙がこぼれそうになっているわけでもなかったが、
泣きそうだと骸は思ったのだ。
「…私、この先どうしたら、」
その言葉に彼女が言わんとしていることを理解した。
悲愴な表情でこの部屋に来た理由を
「…この身体はもう、必要ないのに、……まだここはあったかくて」
霧の守護者・クローム髑髏として次期ボンゴレ10代目のために動いてきた。
延いては骸のために。
その骸が正式に解放され身体が戻ってきた今、
クローム髑髏として生きてきた彼女には居場所も存在理由も無くなってしまったのだ
「私、骸様が戻ってきたら死ぬと思ってたの…
でもまだお腹はあったかいし、生きてる…」
何故、と大きな瞳が問うていた
「本当に君は馬鹿な娘ですね、…凪」
びくんと肩が揺れて動揺が少女の身体を駆け抜ける。
久しぶりに聞く名前だった。
今では自分をそう呼ぶのは骸しかいない
「凪、ここに来なさい。」
丁寧な口調ながら逆らうことを許さない声に
そろそろと小さな足が彼の近くへと動く。
骸の目の前まで来ると止まってしまった凪の腕を掴み
自分の腕の中へと強引に引き込む
その時掴んだ腕の細さや身体の軽さに、表情には出さなかったが骸は驚いた
「骸、様?」
「君は馬鹿です、本当にどうしようもないほどに。」
小さく弱い存在は愚かでつまらないものだと思っていた。
腕の中の少女は体を強張らせているものの
抵抗を見せることなく大人しくそこに収まっている。
小さく弱い存在そのものが自分の腕の中にある事実はどこか可笑しい。
赤子の手を捻るより簡単に彼女は自分の気まぐれで
命を落とすかもしれないというのに。
「…もっと上手にやればいいのに
君はいつも違う選択をする。
危なっかしくてついつい構ってしまう」
「…?」
「僕がそんなにいい人間に見えますか?」
腕の中の凪の体は細いながらに、その白い皮膚の下に
うっすらとある肉が女特有の柔らかさを感じさせる。
そのことにぞわり、と肌がざわついた。
「……少なくとも、私や千種や犬にとっては…。」
クフフ、と独特の笑い声をたてて骸は笑った。
「少なくとも、とつけたのは正解ですね。
僕はいい人間ではありません」
「君が思っている以上に」
凪の腹の上へと骸の手が動く。
びくりと反応する体に骸は笑みを浮かべた
「ここが、今、僕の力で在るんですね」
「……っ、は い」
ゆっくりと這うように手は動く。
胸の辺りがむず痒いような不思議な感覚に
凪の口から息が漏れて声が少し上擦った。
「温かい、ですね」
「……っ」
「考えてみればこうやって
直に触れるのは初めてなんですよね」
骸の呟きよりも這う手に気がいってしまい、
凪はその小さな体を更に縮こまらせるようにして
顔を骸の胸に埋め、白いシャツをぎゅっと握った
おやおやとわざとらしい声をだして骸はその手を止め
凪の顔を上へと向けさせた。
「どうしたんです?」
「…体が、なんか変な…っ」
「それは大変です、横になった方が良い」
凪の腰に回されていた手が斜めに腿の内側へと
撫で落ち、柔らかな薄い肉の上から刺激する
熱に浮かされたような自分の返事に
凪はざわつく胸の奇妙な感覚を覚えた。
今までに感じたことのない感覚に不安が影をちらつかせる
「わたし、部屋にもど」
「遠慮しないでください。
それに、まだ問題は解決していない」
言葉よりも先にベッドの上へと寝かせられ
逃げ出すチャンスは失われた。
凪の上に跨がり、覆いかぶさるようにして骸の体がある
「まるで檻の隅へと追い詰められたウサギのようですよ」
凪の柔らかな頬を撫でながら骸は言う。
「…骸様?」
得体の知れないものを見たときのような
胸騒ぎと不安に、凪は骸を見上げた。
少し色づいた頬と潤んだ瞳で、いつものような上目遣い
これは彼女の癖だったが、こんなときにまで、と骸は思う。
「僕が怖いですか」
「…いいえ…?」
「凪、君は本当に何も分かっていない」
つ、と胸の谷間から真っ直ぐに腹部へと男の指が滑る
凪の細い肩が揺れた。
「君はよく頑張りました。…こんな身体で」
骸の目が少し細まった。凪はただ男の名前を呟く。
「僕が必要とすれば、いつでもその身を差し出して」
「…それが私の存在理由だったから」
「今でもそうですか」
視線がぶつかった、と同時に骸の手が
凪の太腿から尻への曲線をなぞる。
「……骸様が望むなら」
自信なく下げられた眉が歪む。
凪は骸の意味することをその時知った。
先ほどまで滑らかな曲線を堪能していた手が移動する。
慣れた手つきでネグリジェのボタンを外していき、肌を露にする。
下着はショーツのみだったので形の良い胸が外気にさらされた。
「骸さま?!」
「着るのと脱がすのでは勝手が違いますね」
うっすらと浮き出て見える肋骨をなぞれば凪の唇から熱い息が漏れた。
胸の下のラインに触れるか触れないかのギリギリのところで何度も行き来する。
恥ずかしさに身体を隠そうとするも凪の両手首は頭の上でまとめられ
骸の手に収まってしまっていて叶わない。
「僕はいい人間ではありません」「む、くろ様っ」
「僕が望むなら差し出すと君は言った」
外気にさらされ硬くなった胸の頂きを指で転がす。
「…っぁ」
「凪、君が欲しがったものでしょう?」
「ちが、…ふ、ァッ」
聞き慣れない自分の声は骸の口の中に飲み込まれて、凪の手から力が抜ける。
初めて触れる他人の舌に、逃れるように奥へ退こうとするものの
後頭部は押さえられ、逃げ場はなく、絡み取られる。
口内では唾液が混ざり合い、熱い息とぐちゃぐちゃになっていく。「んぅッ」
行き場のない息が合わせられた唇と唇の隙間から漏れた。
初めてのことが多すぎて凪の頭の中は真っ白だった。何も考えられない。
直接会うのは今日が初めてなのに、自分の身体をよく知る人と互いの熱をぶつけ合っているという不思議な状況。
ただ身体が熱くなっていて、心臓が速くなっているのだけはわかる。
顔に熱が集中しているような、そんな感覚だった。
凪は無意識のうちに内股をぴったりと閉じていた。下腹部の疼きが何なのかも解していない。
男を知らない肌は骸の手によく馴染み、吸い付くようだった。
手が少し余る成長途中の乳房を優しく包み弄ぶ。
腕や足は細いのにしっかりと女の身体をしているのがいやらしい、と思った。
貪るようにも見える深い口付けから解放してやると、薄い肩は上下し
顔は上気して水分を含んだ瞳は揺れていて煽情的だった。
胸を弄っていた手が下腹部へと這い下りて行き、もう片方の手は腰を浮かせるように下に潜った。
いやいやと嘆願するように頭を振ってみるもののそれを気にかかる様子もなく
小さな布へと手をかける。と、おや、とわざとらしく反応して手を止めた。
「そんなにさっきの、良かったんですか」
クフフと笑いながら骸はそこへ指をやる。
薄い布の上からも分かる湿り気に凪の顔は真っ赤になった。
濡れたショーツが肌に触れる感覚が気持ち悪くて腰が浮く、そこへ
潜っていた手が入りがっちりと押さえられてしまった。
足はピッタリと閉じられているものの、骸が開けと言えば凪に選択権などない
だが、あくまで骸はそういった命令をするつもりはなかった。
「かわいい反抗をしてくれるじゃありませんか、凪」
すすす、と指が隙間へと入りこみ、布の上から筋をなぞり、刺激する。
「は、あ、ァッ…」
凪の体が震え、足から力が抜けた一瞬の隙をついて骸の足が間に割り込んだ。
「骸さま、だめっ」
声は届いていても骸はそれを笑って聞いている。
凪は羞恥心に顔が燃えているようにも感じた。
薄い布の上から下が割れ目をなぞるように這った。
「んっ、ぅ」
苦しげにくぐもった声が凪の口から漏れる。抵抗を止めた手は声を抑えるのに必死だ。
細い指の間から零れる甘い声に満足げな笑みを浮かべ骸は水音をわざとたてるように舐めたあと
熱くなっている中心へと先を尖らせた舌を差し込む。ショーツの上からなので深くはない。
もどかしいような熱が凪の体の中を這いずり回る。
「あっ、く、…ふっァ」
自分でも制御できない何かに動かされるように腰が浮いてしまい、骸を奥へと誘う。
「初めてにしては上出来すぎますよ、凪」
「や、ちが、…ぁあっ」
濡れたショーツは何の意味ももたず、うっすらとピンク色をしたそこを僅かにぼかして見せているだけだ。
これはこれでそそるものがあるが、あってはこれ以上先に進めないと骸は手をかけ下ろす。
「だめ、いやっ」
凪の意識がそこへ向かったときにはもうすでに遅く、用のなくなった布は頼りなく床に落ちている。
「ここは子供みたいなのに…君は本当にアンバランスですね」
と、濡れたそこに指を這わせ襞と襞の間を優しく刺激する。
「ひぁ、…ん、」
直接の刺激に体がのけ反る。
「すごいビショビショですよ、凪、ほら」
骸の指に絡みつきぬらぬらと光る蜜を見せつける。
「や、」
「何が嫌なんです? 君はもっと正直になるべきだ」
指のそれを舐めとると骸は真剣な瞳で言った。
「どうして欲しいんですか」
わざと息がかかるように耳元で囁く骸に凪は真っ赤な顔で困ったような視線を送るだけで
その唇は一文字に引き結ばれている。
変なところで強情ですね、と凪を抱き上げて自分の上に座らせるようにして足を開かせる。
後ろから凪の耳を甘噛みして、彼女の唇から漏れる熱い息に笑む。
やわらかな胸と恥部へとやられた手は緩慢な動きで刺激を与え続け、次第に凪の思考を緩ませていく
最初は恥ずかしさに口に当てられていた手も
押さえることを忘れてただ白いシーツに皺を作るばかりだ。
「あっ、ぁ…ん…」
他人の一部が自分の中に入ってくる異物感に凪の体が一瞬固まる。
「む、骸さまっあ」
彼女のものよりかは幾分か太く、骨張った指が一本侵入してきている。
上擦ったような声とともに凪の腰が無意識のうちに揺れた。
「だ、めぇ…」
ずっと刺激を与えられ続けるも決定打はなく、初めての体験に身体がついていかず息があがる。
それでも反応をやめられない体がそこにあった。
一本の指が凪の中を音をたてて出たり入ったり、中で指を曲げてみたりと予測不可能な動きをする。
熱で頭がぼうっとしてきて上手く思考が繋がらない、が、もどかしい何かを感じる。
もう少しで何か…。
「もう、っふぁ」
「…もう、なんですか?」
腰が動いてますよ凪と愉悦に浸るような骸の声が耳元に響く
「…っ…ゆるしてくだ、さ…っ」縋るように声を出し、凪は骸の首に抱きついた。
よく出来ましたといわんばかりに抱き返すと骸は凪の体を反転させ挿入する指を二本に増やし
中の壁を刺激して、柔らかなそこから剥いた肉芽を摘む。
「ああぁッ…!」
瞬間、一際甲高い声があがり凪の体がのけ反った。
だらりと力の抜けた腕が骸の背中に垂れている。
「…これがイくということですよ」
まだ肩で息をしている背中を撫でながら、虚ろに熱に潤む瞳をした凪に言う
「…骸さ、ま……ごめんなさ…わ、たし」
凪は体中を駆け抜けていった強い快感の余韻に震えながら少しの後ろめたさを感じる。
与えられているばかりで何も返せていない、今までと同じだ。
「…もっと求めていいんですよ。いや、君がどうしたいのか君の意思を知りたい」
「………?」
「僕はいい人間ではない、と何度もいいました。それが何を意味するか分かりますか」
凪は骸に寄り掛かっていた体を起こすと分からないという瞳でその顔を見上げた。
「僕は要らないものは容赦なく切り捨てるような人間です。
君が僕の身体として働く必要はもう、無い。」
「…でも、私のお腹はまだあったかいし、生きてます…」
骸は笑う。
「君はどうしたいですか、これから」
「…私、ですか?」
空白の間に思考は漂う。
言葉に詰まるも、頭に浮かんだことは一つだった。
「…私…生きたい、です。骸様の傍…千種や犬、ボスやみんなと一緒に」
すこし頼りない声だったが凪は自分の意思を表した。
彼女が無意識のうちに自制してきた、誰かに何かを望むこと、求めること。
「もっと望んでいいんですよ。求めれば与えられるところに君は今いるんです」
「…!…ありがとうございます…、私、何かお返しを…」
いつも貰ってばかりで何も返せていないからと情けない笑みを口元に浮かべる。
「君はよく頑張りましたよ、クローム・髑髏として」
「…でも、足りてないです全然…それに」
最後の方では蚊の鳴くような声になり、俯いてしまう。
辛うじて見える頬と耳が真っ赤であるのは分かるが。
「…凪?」
「…あの、…私ばっかり気持ちよくなっちゃって…」
本当に申し訳なさそうに凪が言うものだから骸は笑ってしまう
「かわいい反応してくれますね、本当に君は」
「え、」
「まあ素直なところも可愛いらしいといいますか、…気持ち良かったんですね?」
「あっ…」
骸に言われて自分がさっき口走ったことの恥ずかしさに気付き、顔に熱が集中した。
話しをそらそうと別の話題をぐるぐると考えていると凪はある感触に気付いた。
「む、骸様、あのこれって」
困ったように眉を寄せて上目遣いで見上げるのは彼女の癖だ。
「えっと、あの…」
(これって、あれだよね………保健体育の教科書で見たもの)
続けようとするも言葉が続かない。恥ずかしさからまた凪の顔は赤くなっていく。
「…まぁ僕も男ですからね、仕方ないですよ」
さもなんでもないことのないように言ってのける骸に小さくすみませんと言う凪。
「しばらく放っておけば収まりますから。…君はもう部屋に戻ったほうがいい」
「………」
「凪?」
「…私、骸様に何かお返ししたいんです…だから、その…しませんか……最後まで」
夜の静かな部屋に凪の声は張り詰めた一本の糸のように、妙に響いた。
少しだけ驚いた表情を見せた骸だったがあまりにも真剣な凪の様子に
言っている内容とのギャップにすこし笑ってしまいそうになる。
「…いいのですか?初めては痛いものなんでしょう?」
「…大丈夫、です………たぶん」
その返事を合図に凪の息が骸の口の中に飲み込まれ、
先ほどまでの行為のほとぼりがまた波となって凪の体を熱くする。
ゆっくりとベッドの上へと押し倒され、先ほどとは違った緊張が凪の体を硬くする。
「…力をぬいてください」
こくこくと頷くものの凪の体から力が抜けた気配はない。
(…言われてどうにかなるものじゃありませんしね…仕方ないか)
首筋を舐め、ゆっくりと骸の舌は白い肌を這い、胸元までおりていく。
胸の頂を口の中に含み舌で転がすようにして弄ぶ。
「…ふ…っ」
熱い息が凪の唇から漏れるのを確認すると、太ももの内側をなぞっていた手をそのまま恥部へと進める。
外はひんやりとしているものの、先ほどの行為のおかげか中はまだ熱を持っていて
柔らかく動く中は誘うようでいてやんわりと進入を拒むようだった。
二本の指で中をかき回すと音をたてて絡みつく愛液、と同時に凪の口からも堪えきれない声が零れる。
「あ、ぅ…んっ…」
硬くなっていた身体をほぐすように愛撫すると従順なほどに反応を示す凪に、胸の奥に温かな気持ちが染み出してくるのを感じる。
ズボンの中で誇張し主張する自らのものを取り出すと、蜜で濡れるようにと柔らかい肉の間を行き来させる。
「……っ」
粘膜と粘膜が触れる感覚に凪の腰は自然と逃げるように浮く、がそれは骸の手によって阻まれた。
「凪、」
「む、くろ様…」
入り口にあてがい、ゆっくりと侵入していく。指を入れたときよりももっと強い抵抗を感じる。
温かい中はぴったりと骸自身を包み込み、凪の口からはくぐもった声が漏れた。
濡らして慣らしたとはいえ、初めての体はそう容易く侵入をゆるしてくれない。
拒もうとする最後の壁をこじあけるようにぐっと腰を押し進める。
「…凪、」
「…っ…むく、ろ‥さ…っ!」
細い腕が骸の元へと伸ばされる。ぎゅう、と求めるように凪が骸の首に抱きつく形になった。
「…ッは」
にちゅ、と鈍い音が響いて、ぴったりと二つの身体がくっつき、その時初めて一つにになった気がした。
初めてを失った標しがシーツを少しだけ赤く汚す。
「っ、これでひとつになりましたよ」
「骸さま…」
凪がもう一度骸にしがみつくと、同じように中も骸を締め付ける。
「骸様、なか、熱い……」
上気した顔で凪が言う。
初めてである凪を気遣ってはいたが、腰が浮つき始める。動かしたくてたまらない。
もっともっと、快感を求めるように人はできている。
「っあ!」
ぴくんと凪が反応する。自分の中にいる自分ではないモノが動くのを、肉襞は敏感に感じ取る。
まだ気持ちいいとは言えない感覚に少しだけ顔が歪んだ。
「…動きますよ」
いつもよりは余裕のない声でいう骸に凪は頷く。
自分の中を行ったり来たりするモノと同時に、先ほどと同様に何かがせり上がってくるのを感じた。
「ふ、ぁ、っ…」
「…は」
ずずず、と離れていくと思えば、ぬちゅ、と水音をたててペニスは凪の奥へと潜り込んでくる。
何度も何度も身体の芯から揺さぶられるように繰り返す。
肩で息を繰り返す凪は声を抑えるのを忘れてしまっていた。
「あ、っ、あん、…ふ、ぁあ!」
骸の腰の動きに合わせていつもより甘い声がでる。痛みとはすこし違うものが、水音とともに凪に滲みはじめ
ぎゅうぎゅうと肉襞も骸を締め付け扱く様に動く。
「んっ―――…!」
「…く、」
それが癖らしい凪は、達する瞬間骸の首に抱きつくとぎゅっと締め付ける。
一瞬凪の中で膨らんだと思うように思えたペニスはすぐに引き抜かれ、同時に白い液体を凪の腹の上に放った。
はぁ、はぁ、と二人の乱れた呼吸が部屋に響く。
「汚れてしまいましたね」
「…骸様が、気持ちよかったならいいです」
サイドテーブルからティッシュをとり、凪の腹の上を白く汚しているそれをふき取る。
「変ですね、君の事はよく知っているのに今日僕たちは初めて触れ合った」
「…確かに」
凪はふふふと笑った。身体は少し痛むけれど、嫌じゃなかった。
そんな凪を見つめて骸も少し笑い、自分が着ていたシャツを彼女の体の上にかける。
「……骸様、私、生きたい」
「……」
「もっと、いろんなもの見たい。みんなと一緒にいたい。…我が侭言って、ごめんなさい。」
「何故でしょうね、僕は要らないものは容赦なく捨てるはずなんですよ。
…でも、君は生きている、僕の幻覚によって。…察して欲しいところです。」
「…ありがとう、骸様」
ちゅ、と頬に軽いキスをする。
「私、幸せです」
「…それはよかった」
「…ああ、それにしてもやっぱり身体がなまっているようです。これぐらいで息が乱れるなんて」
「……?」
「やはりリハビリが必要なようです。…凪、」
何かを期待するような視線が凪へと向けられる
「…?…私でお役に立てるなら…」
「じゃあ、これで」
そういって目の前に出されたのは5本の指がきっちりと広げられた手だった。
「…………骸さま?」
分からないといった言う風に首を傾げる凪の肩を抱き、夜の方でリハビリをと耳元で囁く。
「リハビリもやっぱり楽しくないといけないと僕は思うんですよ。だから週5で。」
「…!!」
クフフフ、という笑い声が夜も遅い部屋に響いた。
「凪、僕には君が必要です」
「――!」
凪が弱い言葉を骸はよく知っている。
赤くなって俯いた凪が控えめに差し出してきた手は指が2本だけ立っていた。
「‥5は、無理…」
「…分かりました譲歩しましょう、4で。…可愛い僕の凪。」
(………上手くコントロールされてる?)
「あの、シャワーを…あとシーツ洗わないと…汚しちゃったから」
「一緒に入りますか?」
「いいです…」
「洗濯は僕がやっておきますよ。千種に洗わせるのもアレですしね」
ベッドの上からおりて歩こうとするが上手く歩けない凪を骸が支えた。
股の辺りにまだ異物感を感じて先ほどまでの行為を思い出し、一人で気恥ずかしくなる凪であった。