「う……」  
肌寒さを感じイーピンは目を覚ました。  
カーテンの隙間から光が差し込んでいる。もう朝だ。  
「ランボ…?」  
布団の片側。隣にいたはずの温もりがなくなっている。  
昨日一晩抱き合った恋人兼幼なじみは、かなり前に布団から出て行ったようだ。  
 
「……」  
身震いする。冷えたのは心。  
ランボはイタリアでマフィアとしての仕事があり頻繁に会うことはできない。  
日本に来てもまたすぐにイタリアに帰ってしまう。  
夜どんなに激しく愛し合っても、  
朝起きたら部屋に1人残されていたことは一度や二度ではない。  
今日もきっと台所のテーブルに急に帰らなくてはいけなくなったという  
弁解と謝罪の置手紙があるのだろう。  
仕方ないと分かっている。  
恋人同士とはいえども普通の女の子として暮らすイーピンと  
マフィアであるランボは住む世界が違うのだから。  
それでも1人残された朝に慣れることは未だにできない。  
どうせ今日は日曜日でバイトもない。このまま二度寝をしてしまおう。  
少しでも寂しい朝を先送りにしてしまいたかった。  
そう思ってイーピンが毛布を被って目を閉じた時。  
 
ガチャ。  
「ただいまー」  
「!?ランボ…?」  
「何だイーピンまだ寝てたの」  
昨日激しくしすぎたかなというランボの言葉に赤面しつつイーピンは叫ぶ。  
「そういうこと言わないの!ランボこそこんな朝からどこ行ってたの?」  
「コンビニだよ。牛乳飲みたいのに冷蔵庫見たらないからさ。ついでに朝食も買ってきた」  
そう言ってコンビニの袋からおにぎりやパンを取り出す。  
「…起きたらいないからイタリアに帰ったのかと思った」  
「ああ…。ごめん、一言言っておけばよかった。でも起こすのも悪いと思って」  
ランボはイーピンの隣に座ると肩を抱いた。  
「最近重大な仕事任されるようになって、なかなか時間が作れないんだ。  
 …いつも寂しい思いさせて悪いと思ってる」  
「ううん。忙しい合間を縫って私に会いに来てくれてるんだもの。わがままは言わない。けど…」  
イーピンはランボの胸に顔を埋めた。  
「こうして2人でいられる時は、片時も離れたくないの…」  
「イーピン…」  
2人は自然に唇を合わせた。何度も角度を変え舌を絡める。  
ランボは手をイーピンのパジャマの中に滑りこませた。  
「冷たっ」  
「ごめん。外寒かったから」  
「…もう朝なのにこのままするの?」  
恥ずかしそうなイーピンに微笑み、耳元で囁く。  
「寒い朝って嫌いなんだ。一緒に暖かくなろうよ」  
「…もう、しゃーないなぁ」  
私も寒い朝嫌いだし…そう付け足してイーピンはランボに身を預けた。  
 
寒さも寂しさも溶けていく、2人で過ごす朝。  
 
END  
 

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