「ハ〜ヤ〜ト〜」
「っんだよ!って酒くせーっ!」
放課後、獄寺はいつもの通り職員室に呼ばれ、今日は生徒指導の先生の机を蹴飛ばして帰る途中だった。
胡散臭い保健室の前を通ると、これまたアルコール臭い親父に後ろからのしかかられた。
うぜー!と一蹴して逃げようとするも叶わない。
抵抗する間もなくビールビンのような先がすぼまった容器を口に突っ込まれた。
見るからに毒々しい紫色の液体が、波打ちながら自分の中に入っていくのが獄寺の目に映る。
舌が痺れ、酔ってしまったように体が熱くなり獄寺はその場にへたりこんだ。
「ハヤトよぉ、実験台になってもらいてーんだ」
「実…験…?」
「とりあえず女の子呼んどいてやったからうまくやれよ」
すっげーかわいい子だぜ、おまえにはもったいねえ、俺が先に頂きたかった。
シャマルの言葉は獄寺には聞こえていないらしく、反応はない。
シャマルは獄寺を保健室にほうり込むと、自分はデートがある、と言って部屋を後にした。
「…ちっ、あいつ何飲ませやがった…」
ドクン、ドクン、と獄寺は自分の鼓動が速まっていくのを感じた。先程よりも更に体が熱い。
静まり返った保健室で、そのまま白いシーツの中にうつぶせに倒れ込むとだんだんと意識が遠のいていった。
「失礼します。先生?」
京子が保健室の扉を開けると、そこに居るはずの軟派な保健教員の姿は無く、他に人が居る様子もない。
ただカタカタとストーブとその上の錆びたやかんが揺れている。
(どうしよう、保健調査表…)
担任に頼まれた書類を持ち、出直そうかと扉に手をかけようとすると、奥のほうからカタリ、と物音が聞こえた。
「誰かいるの?」
部屋の一番端にあるベッドへ向かい、仕切られたカーテンを恐る恐る開けて見ると、荒い息遣いを繰り返し倒れた獄寺を見つけた。
「獄…寺くん?」
聞こえていないのか反応できないのか、獄寺の反応はない。
「獄寺くん!」
非常事態だと思った京子が獄寺の肩を揺らすと、初めて彼は顔を上げた。
「…笹…川…」
「大丈夫?!今先生呼んで…」
京子が慌てて部屋を出ようと体を反転させると、腕をぐい、と引っ張られた。
ぼふんっ、と真っ白なシーツの上に倒れたと思うと、辛そうに息を荒げた獄寺が上に乗っていた。
両手は顔の横で押さえ付けられてしまい、身動きをとることができない。
「獄、寺…くん…?」
「テメーがわりーんだぜ」
「え…」
「クソッ、シャマルのやろ…」
そう呟くと、獄寺はさらに息を乱した。
状況がよくわかってない京子はただ獄寺が心配で、押さえ付けられていた力が少し緩んだすきに、右手をそっと伸ばした。
「うわ、あっつい!」
「…なっ?!何しやが…」
「冷まさないとだめだよ!」
獄寺の額にあてた掌から燃えるように熱く感じた熱。京子の心配を煽った。
冷蔵庫に氷あるよね、と起き上がろうとした京子を獄寺が再び押さえ付けた。
「冷ましたぐらいじゃなおらねえ…」
「…え…な、何の病気なの…?」
「病気じゃね…っ。シャマルに飲まされたモンのせい…っ、だ」
「シャマル先生に?」
京子は何の薬、と言いかけたがそれは叶わないで終わった。獄寺が噛み付くように京子の唇を塞いだのだ。
突然の熱さに京子は抵抗するが、両手は押さえ付けられて全く動かず、獄寺はさらに京子を大人しくさせようと強引に口をこじ開け舌を絡ませてくる。
ぴちゃ、と静かな保健室に二人の息づかいと淫らな音だけが響いた。
獄寺に慣れたように舌を掬われて弄ばれると、京子は全身の骨を抜かれてしまったような気がして抗うこともできなかった。
「んっ…」
つう、と二人の間を糸が繋ぐ。
京子は苦しそうに酸素を欲しており、獄寺はその耳に唇を寄せた。
「お前に治して貰うぜ」
その言葉の意味がわからないまま京子がぼーっとしていると、獄寺の手が制服の中へ入ってきた。
「ひゃっ…獄寺く…」
「黙ってろ」
熱い手が地肌に触れ、京子がビクンと震えるが、獄寺はお構いなしに京子の体のラインに沿ってするりと手を滑らせる。
京子が目をつむって耐えていると、いつの間に下着を取られていたのか、指先が胸の突起に触れた。
「ひゃっ、あ」
獄寺はそのまま指を止め、親指と人差し指で突起をはさみ、加減を変えてつまんだり揉んだりして弄ぶ。
「やあっ!ん…っ」
「こんなんで感じてんのかよ」
こんなんじゃ今からやる事には身が持たねえぞ、と京子に耳打ちすると、獄寺は乱れたスカートをたくしあげた。
薄い布の上から秘部を撫でてみると、そこは京子の愛液でほんのりと湿っていた。
「…んだよ…もう濡れてんじゃねーか」
「っ…!」
敵わないと先程身をもって体験していながら、京子は抵抗を止めない。
普段の彼の性格と薬で不自由な体への苛立ちが相俟って、獄寺は痺れを切らせたように京子の下着を剥ぎ取った。
「きゃっ…!」
「っ、うるせーんだよ!!」
ばふんっ、と獄寺の拳が京子の頬をかすめ、すぐ横の布団にたたき付けられた。
真上から京子を見下ろす獄寺の表情はいつもとは比べものにならないくらい恐ろしいもので、京子は一瞬のうちに恥ずかしさを消されただ恐怖を感じるばかりで、それからは獄寺にされるがままになってしまった。
「ん…あっ…あ…」
獄寺の長い指は京子の中へ入り込み、掻き回すように動いている。
固く閉ざされてきた京子の秘壷はいまやぐちゃぐちゃにこじ開けられ、収縮を繰り返していた。
もう疾うに理性など無くしてしまった獄寺の目の前にあるのはただ京子を犯すことだけであり、指を増やして休む間もなく快楽を与え続けた。
そのうちにも行為はエスカレートしていき、指だけでは飽き足らず獄寺は顔を近付け、舌で肉芽を掬う。
「っ、そんなとこ、やぁ…」
感じたことのない快感に京子はぞくりと体を震わせる。
獄寺は涙を浮かべた京子の表情をちらと見遣ると、芽への愛撫は続けながら、止まっていた指の動きを再会させた。
じゅぷ、じゅぷっ、と音をたて京子から溢れ出る蜜は、甘さを持っているように獄寺を溺れさせた。
京子の足はM字に開き、彼女もまた快感に溺れているように抵抗はしていなかった。
「ひゃあっ…んっ…ああっ」
「へー、笹川ってエロい声も出せんのな」
水音以外は静かな保健室に、この場の二人のものではない声が紛れ込んだのに先に気付いたのは獄寺だった。
ばっと獄寺が声のした方へ振り向くと、ベッドを隠すように仕切られたカーテンが少しだけ開いていて、壁に高い背を寄せて行為を見ていた男がいた。
「…山本」
山本武。
彼は二人の行為にはさして驚いてはいないようで、それよりも少し感心したように京子を見る。
当の本人の方は獄寺から与えられる快感で山本にはまったく気付いておらず、獄寺が彼の名を呼んだときに見られていたことに初めて気付いたらしい。
「や…山本く……!やだぁ…っ!」
京子は獄寺以外の、しかもクラスの男子に見られたことで、初めてこの行為を恥じた。
自分の手で胸を隠し、涙を浮かべながら否定するように目をつむっていると、山本が近付いてその手を掴んだ。
「別に恥ずかしがんなくていーって」
「山本…てめえ部活は」
「あ?今日ねーよ?帰ろうとしたら保健のオッサンに呼ばれてさー。つーか廊下まで丸聞こえだったぜ?」
そんなにヨカッタのか?
山本がくすっと笑う。
見たことのないような山本の笑い方に、京子は顔を赤らめ更に涙ぐむ。
山本はシーツの上、京子の頭のすぐ側に腰を下ろし、彼女の顔を見つめた。
ふーん。物色するように見てから、独り言のように呟く。
乱れてしまった栗色の髪を愛おしむように撫でてから、指で涙を掬った。
「…なー獄寺。俺も入れてよ」
山本の尋常だとは思えない申し出に、京子は大きな目を更に丸くして固まった。
「なっ」
いつものクラスの皆を独り占めする山本のその笑顔も、今の京子には強制的な押し付けにしか見えない。
京子が口を閉じられないままでいると、獄寺がチッ、と舌打ちをしてから止まっていた指を再び動かした。
…OKの合図、だ。
「ひゃぁっ…ん、獄寺くんっ!」
獄寺は指を先程より速く動かし再び顔を京子の秘部に埋めた。
「じゃあ俺はこっちだな」
獄寺の了承を得た山本が、京子の腕をとり後ろに回り込む。
首すじに顔を寄せ、よがる京子をなだめるように唇を落としていく。
手は胸の膨らみを早々と捕え、揉みしだきながら先のピンク色を摘んだ。
「ひゃあっ、やあんっ…」
最早京子の体のあらゆる突起と窪みは二人の男によって支配されている。
獄寺に肉芽を吸われ、穴をいじくりまわされ、山本にキスを浴びせられ、乳首を弄ばれる。
京子は上も下も、両方から与えられる快感に恥じなど考えることなどできず、ただ二人のために鳴くだけだった。
この清らかに美しい彼女の、透き通るように白い滑らかな肌の上を、無窟な男の手が這い回っているなど、誰が想像できただろう。
「ふぁっ…ん…やああ…」
「やじゃねーだろ?」
山本が京子の耳に唇を寄せ、わざと囁くように言った。
「さっきから止まんねーみたいだけど?」
山本が指差した先には、獄寺によって蜜を溢れさせている秘壷があった。
じゅぱ、と獄寺が遊ぶ液の音が先程よりひどくなる。
山本に指摘され、京子の感度は一段と増した。
「どっちに感じてんの?」
オレ?獄寺?
山本は京子が逃げられないように首を捕らえる。
「ひゃぁっ、そんな、の…」
京子は既に呂律が回っていない。
一度に快感を与えられすぎて、彼女の体は限界に近かくなっていた。
けれど彼女を犯す二人の男がそんなのを構うはずがない。
「あ、もしかして二人に感じちゃってんだ?」
いーんらん。
山本が楽しそうに言葉を紡ぐ。
――淫乱。
京子には程遠い言葉のはず、だった。
それにショックを受けたように京子は瞳に力を無くした。
…山本は言葉攻めに天性の才能を持っているらしい。
「…そっちばっか相手してんじゃねーよ」
お前の相手は俺だろ。
獄寺は二人の会話に苛立ちを感じたらしい。
指を中で折り曲げ、ぐちゅぐちゅと掻き回した。
「ひゃっ、あ…ああっ!」
下からの快感に京子は体を震わせる。
それでも物足りないらしく、獄寺は既に熱くなっていた自身を取り出し、京子の入り口に宛った。
「…いくぜ」
獄寺からの合図はそれだけだった。
次の瞬間、燃えるように熱い刺激が京子を貫いた。