(どうしよう…)  
ぽつぽつとカーテン越しに部屋の明かりが見えるマンションの前で髑髏は迷っていた。  
帰りたいような、少し怖いようなそんな思いで建物を見上げる。あの部屋をでてからもう数時間経つ。  
実はすぐには帰れない気がして体と頭を冷やすために街の中をふらふらしていたのだ。  
胸に残る罪悪感が髑髏の足に重い鎖となって帰ることを躊躇させる。  
しかし帰るべき場所はここ以外どこにもない。骸が解放され日本に戻ってきてから新しく借りたマンションは  
4人で住むための家となっている。重たい足を引きずるようにしてマンションの扉の奥へと髑髏は消えた。  
 
「……ただいま」  
「…遅い」  
本当の家族がいたときには言うことのなかった言葉を今は赤の他人に向けていっている。この習慣は嫌いではない。  
寧ろ好きだとさえ思うが、誰かが待っているということが後ろめたさからか今は少し辛くも感じる。  
「…どこ行ってたの」  
「……ちょっと、友達と…」  
「ふーん、何でもいいけど…骸様なら部屋にいるから」  
くいっと顎で千種が示したのは骸の自室だった。  
「そう……」  
「夕飯もう冷めてるから、レンジで温め直しなよ」  
「うん……ありがと」  
必要最低限のことを告げると千種はすぐにリビングに引っ込んでいってしまった。その背中を少し見つめた後髑髏は  
骸の部屋の前まで足をすすめた。  
コンコン、と部屋をノックする。返事は無い。  
「失礼します」  
少し重めの扉を開けば骸は椅子に座り本を読んでいた。  
「…遅かったですね、クローム」  
本から視線を外すことなく骸は髑髏に告げた。いつもと変わらないような様子のなかに少し冷えた感じをうける。  
「…ごめんなさい」  
「どうしてこんなに遅くなったんですか?」  
「…友達とおしゃべりしてたら、気づいたら外、真っ暗になってて……」  
嘘はあまり得意ではない髑髏は顔をあげることなく小さな声で答える。パタンと本を閉じる音が聞こえた。  
「…そうですか。それと今日は"あいさつ"しないんですね?」  
それは質問ではなく命令だった。あ…、と髑髏は少し焦った。今日あったことに気を取られていつもの習慣を忘れていたのである。  
おずおずと進み出て骸の元までいくとその肩に手を置き、頬にキスをする。  
 
髑髏が身を少し屈めた時、せっけんの香りがふわりと広がった。疑いが確信へとかわって、彼女が気をとられているうちに  
自身の手を髑髏の腰元へとやるとその尻からすべるようにしてスカートの中へと侵入させる。その時髑髏の体が強張ったが  
手はとまることなく慣れた動きで薄い布の隙間から横へとするりと侵入していった。  
やわらかな肉とショーツの間を指が撫でるように動いた。襞の間をつつつ、となぞると体がビクつくが我慢するように  
骸の肩に置いた手にぎゅっと力をこめる。耐えるすがたはいじらしくて好きだったが今はそれは問題ではない。  
ショーツがすでに湿り気を帯びていることと、襞の間から隠しきれない愛液が指を濡らしていることに苛立ちを隠せなかった。  
そのまま指を折り曲げ膣口へと侵入させ、ぐりぐりと円を描くようにする  
「ふ…っ!!」  
女の細いそれとは違う、節ばった指が中の壁を刺激する。二本の指がわざと中で折り曲げられたりして水音はぐちゅぐちゅと  
卑猥な音を大きくしていった。髑髏は声を出さないように必死に片手で口を塞ぐが堪えきれない声が漏れる。  
膝がガクガクと笑うようになり足に力が思うように入らず、うまくたっていられないため骸の肩に持たれかかる様な形になっていた。  
「ぁッ…く」  
「どうしてですかね、なんでこんなにここはビショビショなんですか?  
 今日は初めて触ったはずなんですけど。そんなに淫乱な娘でしたか君は」  
「んン…ッ!!」  
違う、と真っ赤な顔で涙目になりながらふるふると首を横に振るが、視線だけこちらに向けた骸の瞳はあくまで冷たかった。  
ぐり、と奥深くまで指をいれて上壁を刺激するように指を曲げる。  
「〜〜ッ!!!」  
一際大きく体を反らせて髑髏は反応を示した。愛液で濡れたそこから指が引き抜かれる。指とそこは透明な糸でまだ繋がっていたが  
暫くすると切れてしまった。  
「はぁ、はぁ…」  
肩で息をしながら熱っぽい顔をした髑髏はそのまま床へとへたり込む。骸の膝にかろうじて手をかけもたれるのが精一杯だった。  
「これでも言えませんか、凪」  
その声に体が反応する。本当の名前を呼ぶのは今ではもう骸だけで、それも決まって2人だけの時――行為に及ぶ時がほとんどだった。  
問いかけの形をとってはいるもののそれは命令だった。言え、といっているのだ。  
「…なに、を」  
整わない息のままやっと返すと、骸は眉を顰めて面白くなさそうな顔をした。  
「今日はどこで誰と何をしてきたんですか、と聞いているんですよ」  
顔はいたって冷静な色を保っていたが、その表情からは優しさの欠片も感じられない。  
(…骸様…怒ってる……)  
時間をともにすることによって知る、よく知らない人なら気づかないであろう骸の変化を髑髏は敏感に感じ取っていた。  
「答えられないんですか、凪」  
ゾクゾクッと背筋が跳ねるように反応したが、嘆願するようにその瞳を見つめるだけで言葉を返すことは無かった。  
瞳いっぱいに溜められた涙は今にも零れ落ちそうになりながらもその位置を保っている。  
「……そうですか。じゃあ僕にも考えがあります。」  
そういうと自分の膝元にいた髑髏を抱えてベッドの方へと移動させ、足は床で膝をつきベッドにうつぶせになるようにさせると  
ベッドサイドのテーブルから何かを取り出してきた。  
「大分前なんですが珍しいものが手に入ったので。  
 僕はあまりこういうのは好きではないので使う機会もないと思ってたんですけどね。」  
髑髏の大きな瞳に映ったそれは凶悪な形をした大人の玩具だった。驚きに目を見開いたその時、涙が頬を伝って落ちた。  
「や…だ……」  
いやいやと顔を横に振るが骸は少し口元を歪めて見せただけでそのまま近づいてくる。  
「君がいけないんですよ、凪。僕に隠し事をしようとするから。  
 だからこれは罰です。いけないことをする子にはおしおきが必要ですからね」  
口調の上辺は優しいものだったが、その中は嫉妬と苛立ちで煮えくり返っていた。ショーツを膝まで下ろして腰を固定する。  
「やだっ、やめて、骸様!いや……」  
「罰は嫌なことをするから罰なんでしょう? 凪」  
耳元で甘く囁くと、薄い肩を押さえつけるようにしてそれを秘所へとあてがい愛液に濡らす。くちゅくちゅと音を立てるようにしながら  
ぐっと力を入れてできるだけ丁寧に、ゆっくりと挿入した押さえつけていた肩が反抗するような反り返りを感じたが  
凪は観念したのか声も堪えきれない息のみで、涙をこぼすだけだった。  
 
「…入りましたよ」  
肩から手を離せば涙で濡れた瞳は天井を見つめていた。  
(今日の薬、まだ抜けきってないから……)  
頭の中が真っ白になりそうになりながらも、少しでも動けば中を刺激する玩具のイボにあたらないようにじっとしている。  
と、いきなり世界が反転する。  
「あッぅ…」  
骸がその体を抱きかかえたため、バイブは奥まで入り、尚且つ中のいたる所を刺激していた。  
両手で口を塞ぐがその体はガクガクと反応を示している。  
凪を立たせるとそのショーツを元の位置に戻してそのまま扉の所まで連れて行く。  
歩くのもままならず、よろよろとなりながら凪は耐えた。骸の表情は見えないままで、何を考えているのか全く分からず  
不安と羞恥心と罪悪感に心が重たくなる。  
「夕飯まだなんでしたよね。食べてきてください。折角作ってもらったものを無駄にするつもりじゃありませんよね?」  
「そ、んな…でも、」  
ぎゅうとスカートの裾を握り締める。これだけのことをしてしまったのだと思うと拒絶するにもできなかった。  
骸が怒っているのも無理はないし、自分は嘘をついている。悪いのは私だと凪は自分を責める。  
だからその要求にこたえるしかなかった。  
「ああ、そうだ。大事なことを忘れていました」  
その時骸の表情がはっきりと見えた。笑顔だったが、それは上辺だけで本当は笑っていないと凪にはすぐにわかった。  
手をスカートの中に入れてバイブのスイッチを入れる。低いモーター音が聞こえてくると同時に、螺旋状になっているそれが  
うねうねと円を描くように中を刺激する。  
「ひぁ…ッ!」  
初めての刺激に立っていられず傍の骸にしがみつくが、それも暫くするとバイブが動きを止めた。  
「不規則に運動するらしいですよ?気をつけてくださいね。  
 千種と犬には知りませんから、僕たちがこういうコトをしているというのは。  
 バレたらどう思うでしょうね」  
悪戯っぽい笑みを浮かべて骸はその小さな肩を押すと扉をあけて外に出す。  
「僕が迎えにいくまで我慢してくださいね。 これは罰なんですから、…君が悪いんですよ凪」  
扉が閉まるまでその表情を見つめていたが、彼が傷ついているのではないかと凪は思った。  
(ごめんなさい、骸様…でも私、あなたの傍にずっといたいから…)  
キッチンまでそんなに距離はないが、この時は酷く遠い場所のように感じる。  
壁を伝いながらゆっくり足を進めるがその度に中でバイブが跳ねて、いろんな角度を刺激してくる。  
「ふ、…ぅ…」  
あともう少しというところでそれはやってきた。ウィーンと低い音を立てて中のそれが運動し始めた。  
ぐりぐりと中を掻き混ぜるように動くそれに思わず声が漏れそうになるも両手で塞いで堪えるしかなかった。  
キッチンは対面式になっていてすぐそこはリビングダイニング、つまり千種と犬がいるのだ。  
こんなところで声をだしてしまってはバレてしまう。  
フーッフーッ、と息を漏らしながら下唇を噛み締めるようにしてじっとその場に固まった。  
(もうすこし、もうすこし我慢したらきっと、おさまる‥)  
今日はいつもと違って薬のせいで自分の体がおかしくなっている。そのせいもあって初めてのバイブの刺激ですら  
こんなに体が気持ちよくなってしまうのだと髑髏は思う。  
うずくまるようにしてなるべく体を動かさないように、玩具のイボイボが余計な刺激をしないようにと慎重に耐えた。  
「お前そんなところで何してるんら?」  
「〜〜〜っ!」  
声にならない声が喉を通る、ポンと肩に置かれた手の振動と中のバイブの動きが重なって髑髏を弄んだ。  
「…?お前なんか変、」  
「何やってんの」  
すぐそばのリビングから千種が顔をだす。これ以上は無理だと足の力が抜けそうになるところでバイブが運動を止めた。  
「だい、じょぶだから。…ごめ…」  
真っ赤な顔で何とか言うと姿勢を直す。その時に中のそれが跳ねて壁を刺激したがなんとか耐えるしかなかった。  
「…?」  
「……」  
「ごはん、食べるから…」  
そういうとぎこちない動きでダイニングへ入ってテーブルのほうへと足を進めた。  
 

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