色白で細くて、見るからにかよわい女の子なのに俊敏な動きで  
巨漢の男達を倒してしまった彼女。  
あの時から夢にまで見るほど気になっていた彼女が隣にいる。  
しかも赤いチャイナドレスを身に纏って。  
イーピンが動くたびにスリットから覗く太股が目に入り、  
了平は見ないようにと努めながらも、ついつい男の性で目で追ってしまう。  
「どうかしましたか?」  
了平の目線に気がついてイーピンがきょとんとする。  
「な、何でもないぞ!そうだ、オレがボクシングを始めたきっかけはだな…」  
ごまかすようにジュースで喉を潤すと了平はボクシングの話を続ける。  
(笹川の兄さんて本当ボクシングが好きなんだなぁ。  
 一つのことに夢中になれるって真っ直ぐでいいことだよね)  
イーピンのいる未来では了平はすでにボクシングで世界の頂点に立っている。  
熱くボクシングへの思いを語る了平にイーピンは自然と微笑んだ。  
雲雀とペアになれなかったのは残念だったが、考えてみれば雲雀とペアになったら  
緊張して何も話せないだろう(実際未来の雲雀とはそうだ)。  
了平と一緒に喋るのは気兼ねがなくて楽しい。  
(それにしても体育館の中って蒸すなぁ…)  
イーピンはジュースをコップに注ぎ直し、空っぽになった了平のコップにも足してやった。  
ジュースの入った瓶が空っぽになる。  
「お代わりもらってきますね」  
「すまない」  
いいえ、とイーピンが笑ってソファーから立ち上がる。  
ふわりとドレスの裾が舞い、しなやかな脚のラインがピンクの照明に照らされる。  
(うっ…!!)  
了平は思わず前のめりになった。  
反応してしまったのだ。アソコが。  
幸いイーピンは了平の異変には気づかずステージで  
一人ジュースを飲んでいるリボーンの元へ向かっていってくれた。  
が、こんな状態で戻ってきた時普通に対応できるだろうか。  
(それにしたって何でこんな時に勃つんだー!!)  
自分は彼女をそんないやらしい目で見ていたのかと了平は頭を抱えた。  
それはリボーンによってジュースに混ぜられた媚薬のせいなのだが了平は知る由もない。  
混乱した了平には他のテーブルにいる仲間達の様子を見る余裕すらなかった。  
もし見ていたら異変が自分だけではなく他の者達にも起こっていることに気付けただろう。  
気付けたとしてもどうしようもないが。  
(仕方ない、トイレで…)  
了平が立ち上がりかけた時イーピンが戻ってきた。  
 
「お代わりどーぞー」  
と了平のコップにトクトクと注ぐ。  
「……」  
トイレに行くタイミングを逃した了平は、体の熱を冷まそうと媚薬入りとも知らず一気にジュースを飲み干した。  
「もう、そんながぶ飲みしたらお腹壊しますよ」  
おかしそうに笑いながらイーピンもジュースを飲む。  
「それにしても本当暑いですね」  
「ああ…」  
テントを張り始めている股間を見られないよう体を丸めながら答える。  
(とりあえず落ち着くのを待つか…。しかし一体オレはどうしたと言うのだ)  
一方イーピンも徐々に体の異変に気づき始めていた。  
(どうしたんだろう…。さっきから体が火照って…)  
まだ幼い頃家光に酒を飲まされた時と似た感覚だ。  
体の芯から熱くなって、ふわりといい気持ちになる。  
(でもこのジュースはアルコールなんて入ってないし。おかしいな〜)  
アルコールは入っていないがそれ以上に危険なものが入っているとは  
思いもせず、イーピンは首を傾げた。  
 
(そろそろ頃合いだな…)  
リボーンはそれぞれのテーブルを見渡して心の中で呟いた。  
全員に媚薬が効きだし、それを相手に気付かれないよう必死になっている。  
骸・雲雀・髑髏は正体不明の熱を他の2人に悟られないよう内心焦っているのが  
読心術を心得ているリボーンには手に取るように分かる。  
リボーンは懐からリモコンを取り出しスイッチを押した。  
ピンク色のライトがぱっと消え、ムードたっぷりの音楽が流れる。  
「うわっ何!?」  
「ロマンチックだねー」  
突然の暗闇に驚くツナとどこかのん気な京子。  
「はひっ真っ暗で何も見えないですー」  
「しがみつくなアホ女!」  
手探りで獄寺の腕を掴むハル。  
「どこ触ってんの山本武」  
「すんません暗くて何も見えなくて」  
わざとかそうでないのかビアンキの腰に手を回す山本。  
「骸様ここですか…?」  
「大丈夫ですよ髑髏。僕がちゃんと手を繋いであげますから」  
「君達が掴んでるの僕の手なんだけど…」  
髑髏と骸両方から手を繋がれMajiでKami殺す5秒前の雲雀。  
そして――。  
「びっくりしたー。お兄さん大丈夫ですか?」  
イーピンは暗闇に目を凝らした。  
すぐ近くにいるはずの了平から返事はなく、代わりに荒い息遣いが聞こえる。  
了平は体育館内の誰よりも飲んだジュースの量が多かったのだ。  
当然媚薬も1番効いている。体の欲望は抑えきれないところまで来ていた。  
 
「お兄さん?」  
具合でも悪くなったのかとイーピンは手探りで了平に近づいた。  
手が了平の肩に触れ、長い髪が彼の鼻先を掠めた。  
「どうし――」  
その瞬間イーピンの体はがっちりと了平の腕の中に抱きすくめられた。  
突然のことに反応が遅れる。  
何か温かい物がこめかみに触れ、そのまま探るように頬の上を滑る。  
唇に重ねられて初めてそれが了平の唇だと分かる。  
キス、されたのだ。  
「んふぅ…っ」  
了平の舌が唇を割って入る。ジュースの甘い香りが口に広がった。  
舌はイーピンの口の中を傍若無人に動き回る。  
最初戸惑っていたイーピンだったがおずおずと了平の背中に腕を回した。  
その途端了平は我に返って唇を離した。  
熱に浮かされていた脳が冷静さを取り戻す。  
「す、すまん…」  
とんでもないことをしてしまったと了平は頭を下げた。  
確かに自分はこの少女に好意を抱いていたが、だからといって  
気持ちも伝えずにいきなり抱きしめてキスしてしまうなんて。  
しかしイーピンは闇の中の了平に手を伸ばし、その頬に触れた。  
「びっくりしました…。けど、私嫌じゃなかったです」  
「!?」  
了平は目を見開いた。だんだんと暗闇にも目が慣れて、至近距離のイーピンの顔なら見えてくる。  
彼女は恥ずかしそうに、しかし優しく微笑んでいた。  
「キスされたら、お兄さんにもっと触ってもらいたくなっちゃいました」  
その言葉は媚薬の効果だけではなく了平への好意があって出てきた真実のものだった。  
真っ直ぐすぎて不器用な男。そんな彼が今とても愛しい。  
「だから、このまま続けてください。了平さん…」  
「本当にいいのか?」  
「あまり言わせないでください」  
イーピンは照れたように笑う。  
「分かった。……あ」  
自分も名前で呼ぼうとして、自分が彼女の名前を未だ知らないことに気付く。  
「今頃になってすまないが名前を教えてくれないか」  
問われてイーピンは少し考えた。  
本名を名乗っても子どもの自分を「デコピン」と認識している了平には  
(子どもとはいえ女の子に失礼な話だ)差し支えない気もする。  
だがもしその「デコピン」が自分だと気付いたら混乱してしまうだろう。  
考えた末イーピンは今は黙っていることにした。  
「ヒミツです」  
「むぅ…オレには教えられんのか?」  
「今はまだ…。でも大丈夫。いつか必ず教えますから」  
「…分かった。きっといつか教えてくれ」  
そう言って了平はイーピンをソファーに押し倒した。  
 
(1番は了平とイーピンか。意外だったな)  
暗殺用に使う暗闇の中でもよく見える眼鏡を掛けながらリボーンはそれぞれのテーブルを確認していく。  
ツナと京子は互いに熱を持て余しながら相手に切り出せないでいる。  
これはなかなか時間が掛かりそうだ。  
獄寺とハルは相手を意識しながらも気を紛らわすために逆効果とは知らずジュースを飲んでばかりいる。  
体の欲が抑えきれなくなったら意地っ張りな2人も動かざるを得ないだろう。  
山本とビアンキはジュースに何か入れられていたことに薄々勘付いている。  
が、当分は互いに知らぬ振りをして駆け引きするつもりのようだ。  
こちらもツナ達とは違った意味で時間が掛かるだろう。  
問題はあの3人である。  
骸と雲雀は闇の中互いに息を潜めていた。  
真ん中の髑髏は自分の体の昂ぶりと2人の異常な空気に追い詰められてソファーで小さくなっている。  
骸も雲雀も自分の体に何が起こっているのか、どうすればこの熱が収まるのかは分かっている。  
しかし自分が先に動けば間違いなく相手に嘲りの言葉を投げつけられるだろう。  
そのため自分からは動けずにいるのだ。  
(こっちも持久戦だな。…欲求に素直なのは了平とイーピンだけか)  
リボーンは了平とイーピンのソファーに視線を戻した。  
 
チャイナドレスの裾から差し込まれた了平の節くれだった指が、イーピンの滑らかな太股を撫で上げる。  
空いている手でドレス越しに強く胸を揉まれ、イーピンは両手で口を押さえ必死に声を我慢した。  
多少の声は流れている音楽でかき消されるとはいえ、体育館内には他に何人も人がいるのだ。  
こんな淫らなことをしていると悟られたらと思うと恐ろしい。  
しかし了平の荒々しい愛撫が敏感になったイーピンの体を翻弄して、  
周りを気にする余裕もなくなりつつあった。  
了平の手が下着に触れ、一気に下ろされる。  
すでに濡れていたそこは外気に触れひんやりとした。  
暗くて了平にもよく見えないだろうとは思うがやはり恥ずかしい。  
了平の指が確かめるように入り口をなぞり、大きくなったクリトリスを摘む。  
くりくりと指の間で転がされて、イーピンは手の甲を噛むことで必死に声を殺した。  
くちゅっと音を立てながらそのまま入り口に差し込まれる。  
媚薬のせいか大した痛みもなく指を受け入れることができた。  
指が出入りする度内壁が擦られて、イーピンはたまらず達した。  
「イッたのか?」  
びしょびしょになった手を不思議そうに見つめながら了平は彼女に問うた。  
イーピンは羞恥に頬を染めながらコクリと頷く。  
「そうかオレは初めてなので勝手が分からなかったので不安だったが、  
 気持ちよかったなら何よりだな!」  
(この人は…)  
晴れた空のように眩しく笑う了平にイーピンも恥ずかしさを忘れて笑顔になってしまう。  
 
「ところでだ」  
「はい?」  
「そろそろオレも限界で正直入れてしまいたいのだが、いいだろうか?」  
いよいよか、とイーピンは覚悟を決めた。  
彼女にとってもセックスは初めてだったが了平が相手なら  
安心して身を任せられる気がした。  
イーピンは了平の鍛えられた拳にキスをし、ゆっくりと脚を開いた。  
「来てください。了平さん…」  
了平もイーピンの額にキスを返すと服を脱いだ。  
闇の中鍛え上げられた肉体が目に入りイーピンはほぅっと熱いため息を漏らす。  
了平は下着の中で痛いほどに張り詰めていたペニスを  
秘部に当てると先端部分を中に押し進めた。  
「あんっ…」  
思わず大きな声が出てしまったイーピンの唇を了平の唇が塞ぐ。  
「んん…」  
そのままゆっくりと入れていくと結合部から愛液と血が混じり合って垂れた。  
痛みに瞳を潤ませて耐えるイーピンの背を了平の大きな手が宥めるように撫でる。  
最奥まで辿り着くと了平は一旦唇を離して大きな息を吐き、  
再び口付けて今まで堪えた分を取り返すかのように激しく腰を振った。  
「んぅ、うぅ…」  
男の激しい欲望を細い体で受け止めながらイーピンは彼に必死でしがみついた。  
筋肉のついた背に爪が食い込んでいく。  
もはや2人には互いを求め合うことしか頭になかった。  
イーピンも了平に合わせるように腰を振り、了平はさらに突き上げを激しくしていく。  
とうとうイーピンは二度目の絶頂を迎え、了平を強く締め付けた。  
「くっ…」  
了平は喉の奥で低く呻き、イーピンの中からペニスを引き抜くと彼女の白い太股に精を吐き出した。  
 
 
イーピンの太股をタオルで拭き取ってやり、ぐったりとした彼女の頭を自分の肩にもたれさせる。  
他の者達が何をしているのかは闇と音楽で分からない。  
「無理をさせてしまったのではないか?」  
「大丈夫です…」  
そう言いながらも甘えるように頬を肩にすり寄せるイーピンが愛しくてたまらず、  
了平はイーピンを抱き寄せた。  
「お前は一体どこに住んでいるんだ?またこうして会いたいのだが…。  
 ボクシング観戦したりジョギングしたり」  
「……」  
イーピンは目を伏せた。未来の人間である自分が了平と付き合うことはできない。  
「私はいつもとても遠い所に住んでるんです。だから了平さんとはなかなか会えないと思います」  
その言葉に了平の表情が沈む。  
「そうなのか…。ではこの祝いが終わったら当分会えないんだな」  
「でも」  
イーピンは了平の手に自分の手を重ねた。  
「いつか――いつかまた会えたらその時は私の名前教えます。  
 そしたら一緒にボクシングの試合見に行きましょうね。  
 ジョギングも何キロだって付き合いますから」  
「……!おう!!その時を楽しみにしているぞ!!」  
了平はイーピンの手を力強く握り返した。  
子どもの姿に戻るまであと何時間あるだろう――せめてそれまでは  
こうして束の間の恋人気分を味わっていたいと願うイーピンだった。  
 
 
了ピン編END  
 
 

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