レイフォンと性交渉する為、彼の部屋に潜入するニーナ。
だが、それはレイフォンの巧妙な罠だった。
「隊長の絶対領域は僕に視姦されるためにあるんですよね」
「ストッキングを履いていれば…こんなレイフォンなんかに…!」
「よかったじゃないですか。美しい太ももせいにできて」
「んんんんんんんっ!」
「ふふっ。ねえ、ここなんてどうです? 気持ち良くないですか?」
(耐えければ…今は耐えるしかない…っ!)
「隊長の生パンティ、ゲ〜ット」
(いかん…! クマさんパンツなのを悟られたら…っ!)
「隊長の聖域を拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「レイフォンなんかに…くやしい…! でも…感じちゃう!」
(ビクッビクッ)
結局の所、彼女は彼に優位を取られるのが嫌だったのだ。
ただでさえ放課後の小隊の訓練中は、レイフォンに格の違いを見せ付けられる。
だからこそ、夜のベッドの上では、可愛い後輩に先手を取られたくなくて………。
その、“可愛い後輩”であるレイフォンは彼女の気持ちを知ってか知らずか、「まさか隊長が男の部屋に忍び込むなんてね」そうニーナの耳元で囁くのだった。
その言葉で現状を認識したニーナは、冷静さを欠いていたとは言え自分が男の部屋に忍び込んだ事実に赤面させられた。
(あああっ! なんでわたしはレイフォンに訓練中の意趣返しをしようなどと考えたのだっ!)
後悔……。
放課後、レイフォンとの個人訓練でいつも頼りないところを見せているニーナとしては、百歩……いや、一万歩譲っても“普段は頼りになるお姉さん”という図式を崩したくなかったのだ。それはベッド上の事も例外ではない。
(まあその目論見も一週間前の初体験時に理性と共に失っているが……)
だから…、
(だからこそ、今夜はこっそり忍び込んで寝ているレイフォンを縛り上げて言葉攻めやら手コキ、足コキ…と陵辱の限りを尽くしてやろうとしたのにっ!)
「殺剄が甘かったですね」
「………っ!!」
彼女の考えていた事に答えるかようにレイフォンが口を開く。
「一つ一つの動作が甘いです。だから僕に気付かれます」
「くっ!」
もともと勝ち目のない勝負だったのだ。
片や汚染獣数匹を相手に、1人で大立ち回りを演ずる元・天剣の少年。
片や幼生体にでさえ苦戦する、熱血少女。
後者が前者の寝込みを襲ったところで結果は推して知るべし、だ。
(ああ、わたしはピエロだったのだな。今は勝てる見込みはない…か…)
目を閉じながら、負け惜しみにも似たような事を心中で呟く。すると、自然にいつもの冷静さが戻ってくる。
(今回はわたしの負けだ。…認めたくはないが。でもいずれは勝ってみせるっ!)
一度開き直ってしまえば怖いものなどない。どうせこの後はレイフォンに性的な意味で意地悪されるだけだ。
ニーナは一度だけ深呼吸をし、勢い良く目を開いた。
いつもの快活さを取り戻した彼女は、「さあ、わたしは敗者だ! 後は煮るなり焼くなり好きなようにすればいいっ!」その勢いのまままくし立てた。
レイフォンはその勢いに一瞬たじろいだが、何かを思い出したかのようにニーナにふっ、と微笑んだ。
(まずい…)
彼女の本能が告げる。
果たして、彼女の本能は当たった。
レイフォンは先ほどから右手で握り締めていた何かをニーナの眼前に突き出し――
(ああ、そういえばすっかり“こいつ”の存在を忘れていた)
左手を使って“それ”を広げ――
(今日はどうして黒のレースを穿かなかったのだろうか。いや、わたしの慢心だったのだな。計画では足コキで済ます予定だったんだ)
「隊長ってクマさんパンツなんて穿いてるんですか? 子どもっぽ過ぎませんか?」
ニーナは、泣いた。それはもう、泣いた。すこぶる泣いた。パンツを穿いていないことも忘れて泣きじゃくった。自身のアイデンティティが崩れ去る音が聞こえた。
後に彼女は述懐する。 その晩の事は思い出したくない、と。
翌日放課後の小隊訓練。
そこには、一晩中啼いたかのように声がガラガラになったニーナと、一晩中眠れなかったのか、目の下に隈を作ってきたフェリがいたとか。