「来てしまいました」  
 淡々と、どこか他人事のようにクラリーベルは言った。  
 周囲を見渡すと、グレンダンとは明らかに造りの違う建物がずらりと並んでいる。しかもそのどれにも統一感はない。外部の都市から生徒が入る学園都市では、こうした多様な文化の混在があると聞いてはいたが、こうまで違っているのかと改めて感嘆する。  
 そう、クラリーベルが立っているここは、今現在グレンダンに隣接している学園都市、ツェルニだ。  
「来てしまいました」  
 もう一度、己の行為を確かめるように呟く。  
 祖父であるティグリスには行ってみようかと考える前に止められていた。  
 だが、トロイアットからレイフォンの話を聞いた時から居ても立ってもいられなかった。  
 昼間からずっとツェルニを観察し、時には行ってしまおうかと考えている自分を窘めようとするティグリスから逃げ、暇つぶしにリンテンスが連れ去ってきた少女を見てきたが今日は起きそうもないので、またツェルニの観察に戻る。  
 そんな事を繰り返しているうちに日没を迎えてしまい、気付いた時にはツェルニに向かって跳んでいた。  
 今思えば、昼間に跳んで行くと流石にグレンダンの武芸者に知られてしまうので、自分はずっと夜を待っていたのかもしれない。  
 デルボネには当然バレているだろうがそれは仕方ない。ツェルニの学生に至っては、昼間に跳んでも感づかれるとは思えなかった。  
 とにかく、来てしまったのだ。  
 両の手のひらを胸の前でぱしんと合わせ、ここに来た目的を再確認する。もう引き返すつもりはない。  
「まずは、レイフォンですね」  
 まずはも何もそれ以外に目的は無いのだが。  
 クラリーベルは一度深呼吸をして、次の刹那には再び飛び出していた。  
 とりあえず、彼を探さなくてはいけない。  
 
 
     †  
 
 
 すごく気分が悪い。  
 だが、レイフォンは起き上がった。  
「ここは……」  
 ぼんやりとした頭で考える。ここは、シェルターの診療所だ。  
 天剣授受者達との戦闘の傷は、まだ癒えていない。主な外傷はだいたい治っているが、特にリンテンスから食らった最後の衝剄のダメージが抜けきっていない。  
 それでも起き上がり、レイフォンは錬金鋼を探した。探して、全て失った事を思い出す。錬金鋼は諦めて、体に活剄を満たすことだけに専念した。  
 剄脈の通りが悪い。だがこれが今できる戦闘体勢の限界だ。  
 
「とても勝てそうにないな……」  
 誰かに狙われている。そう気が付いてレイフォンは眠りから覚めた。  
 相手は誰か見当もつかない。研ぎ澄まされた殺剄はツェルニの武芸者では到底及ぶことの出来ない域にある。  
 だが、剄を隠しているにも関わらず、その闘志が剥き出しになってレイフォンを狙っていた。  
 闘志はツェルニの者には気づかれない程度に抑えられているが、それでもレイフォンの眠りを妨げるには充分だった。と言っても、来るのが一時間も早かったらとても起き上がれたものではなかったが。  
 天剣授受者か?  
(違う)  
 レイフォンは即座に否定した。  
 相手はほぼ間違いなくグレンダンの武芸者だろう。それもかなりの実力者。だが、少なくとも天剣ではない。  
 中途半端に闘志を表し、相手にわざわざ気づかれるような真似をする天剣をレイフォンは知らない。  
 闘志まで隠し悟られることなく近づくか、もしくはそんなもの面倒だと言って殺剄すらせずに堂々と来るかの二択だ。  
 それにこの相手は、レイフォンに直接用があるという意志が見える。今の天剣にそんな者はいない。  
(誰だ?)  
 覚えのあるような、ないような。不思議な感覚だ。だがこれだけの実力者なら、会っていてもおかしくはない。  
 ただ今の状態では、とても勝ち目はない。  
 いくら全快してても錬金鋼が無くては戦えない。そんなレベルだ。  
(近い)  
 位置が確認できるほどに迫っていた。既にシェルター内に入り込んでいるのだろう。  
 人を呼ぶか? だめだ。話にならない。邪魔になるだけだ。  
 悩んでいる間にも、相手の気配は近づいている。  
 体を流れる活剄は酷く鈍い。無力さを痛感するのはこれで何度目だろうか。  
 やがて気配は、レイフォンのいる部屋の前までやって来た。  
 来るか。そう思った瞬間、扉の向こうから意外な音が響いてきた。  
 ノックだった。  
 思わず脱力仕掛けた。レイフォンは呆気にとられて、  
「どうぞ……」  
 などとのん気な返事をしてしまう。  
 相手も相手で、闘気を露わにしながらも「失礼しまーす」と普通に入室して来た。  
 入ってきた人物は、自分と同じくらいの少女だった。  
 長い黒髪を後ろで束ね、その髪に少しだけ白い色を放つ髪がある。  
 その特徴的な風貌を持つ少女をレイフォンは知っている。だが、何故彼女がここにいるのか――  
「お久しぶりです、レイフォン様」  
 はきはきした声も、やはり聞き覚えがあった。  
 それでは、やはり、  
「クラリーベル、様……?」  
 確かめるように問うと、少女――クラリーベルはたいへん嬉しそうに微笑んだ。  
「覚えていてくれて、嬉しいですわ」  
 
 
     †  
 
 
 レイフォンがこちらの名を覚えていてくれて、クラリーベルは更に高揚した。  
 しかし、やはりというか、レイフォンはクラリーベルがどうしてここにいるのかが理解できていないようだった。  
(挨拶しておいて正解でした)  
 最初はレイフォンに奇襲する手も考えた。どうせこちらの存在はバレているだろうから、扉を開いて一気に仕掛けても良いと思った。  
 しかし、こちらはレイフォンを認識しているが、レイフォンはこちらをクラリーベルとして認識してないのでは、という考えに至り、止めた。  
 自らの強さを見定めるための戦いだ。できれば対等な立場でやりたい。  
 だがもう限界だ。闘争心を抑えきれそうにない。  
 自分がいる理由を説明する必要は特に無いだろう。彼も武芸者だ。こちらが敵対的な姿勢を見せれば、余計な疑問を捨て去り行動を起こすはずだ。  
 故にクラリーベルは前に出た。腰の錬金鋼に指を掛ける。いや、意識するより先にずっと掛かっていたのかもしれない。  
 武芸者同士では何てことはない距離が、とても長いように感じられた。  
 レイフォン相手に見せる、自分の最高の一手。それが抜き打ちだ。速度以外ではレイフォンの方が全て勝っているかもしれない。  
 だが、クラリーベルは見た。レイフォンがこちらの動きを見切っている。見切られている。背筋がぞくりとした。恐怖ではなく、興奮で。  
 錬金鋼を握る手に力が籠もる。復元は一瞬。次の刹那、いや、復元の流れのままに攻撃が始まる。  
 今までにない速度が生まれた。だが、それ以上の物が出せるとも感じた。  
 速く、速く、もっと速く! レイフォンの刀よりも速――――刀?  
 クラリーベルの動きがぴたりと止まった。  
 レイフォンの表情を見るよりも先に、その手を見る。  
 錬金鋼が、無い。  
 剣帯すら無い。  
「何で、錬金鋼を持ってないんですか!?」  
 抜き打ちの構えのままという、情けない格好でクラリーベルは抗議した。  
 レイフォンは困ったように頭を掻いている。  
「いや、そんなこと言われても……」  
「もしかして錬金鋼無しでも私に勝てるおつもりですか? それはそれで結構なのですが私としては意味がないのです。あなたの手を抜かない攻撃を受けて倒れたならまだしも、それでは自分の力がどれくらいか掴める事ができません。何のための戦いですか」  
「はぁ……」  
「あら? でも、錬金鋼無しで敗北したとしたらそれが実力だと理解できるから別に良かったのかも? いえ、それだと私が勝った場合、私の強さの証明になり得ません。私はあなたを越えたいのですから、本気のあなたと戦わないといけないのでやはり却下でお願いします」  
「何か色々思い出してきた……」  
 レイフォンはこめかみの辺りを手で押さえて言う。  
 
「という訳で、錬金鋼を用意して下さい。それくらいなら、待ちますから。できれば早めに。うんと早めに」  
「いや……今、錬金鋼は無いんだけど」  
「ええ、だから取ってきて下さい」  
「そうじゃなくて、持っている錬金鋼は全部壊れてるから」  
「……………………はい?」  
「ついでに言うと、リンテンスさんから受けた攻撃で、錬金鋼があってもまともに体が動くかどうか」  
 言われて、クラリーベルはレイフォンの体を見た。上半身はシャツだけだが、その首もとや腕には真新しい傷がある。  
 落ち着いて見てみると、傷はともかく、剄の流れが酷かった。  
 ここに来る前にしたトロイアットとの会話を思い出す。サヴァリスに瀕死の傷を負わせ、そしてリンテンスと戦ったというレイフォン。  
 そんなレイフォンと戦いたくてクラリーベルはツェルニに飛び込んだ訳だが、考えてみればそれほどの戦闘をしてから半日も経ってないのだから、レイフォンが全力で戦える状態にないことは当たり前だった。  
「そ、そんな〜……」  
 ふしゅううぅぅぅ、と気力と共に剄が抜けていく。  
「ご、ごめん」  
 律儀にレイフォンが謝る。そういう性格は変わってないんだな、と感傷に浸る余裕は残念ながらない。  
「信じられません。では私はこのまま何も得られずに帰って、そしておじい様に叱られるのですね。何もしてないのに……」  
 錬金鋼を剣帯に収めつつ、愚痴をこぼす。  
 やり切れなさや無念さが一気に押し寄せた。  
 レイフォンはやはり「何だったんだろう?」と疑問の表情で、しかしこちらの敵意が無くなったと知り、どこか安堵した様子だった。  
 それは、クラリーベルが知っているレイフォンのする表情ではなかった。そもそも、これほど弱っているレイフォンも見た事がなかったが。  
 ふつふつと好奇心が湧いてきた。高揚する自分を再び感じる。  
 強さを確かめたいと思っていたクラリーベルの願いは、今のレイフォンでは叶わない。  
 では、もう一つの確かめたいことは? 今のレイフォンでなければできないかもしれない。  
「ふむ……レイフォン様、つまり、今のあなたはとても弱っていると。私にかなわないと。抵抗すらできないという訳ですね」  
「ま、まあ」  
 レイフォンが何かを悟ったように後ずさりした。なかなか鋭い。  
「私としては、せっかくここまで来たのに、何の成果も得ずに怒られに帰るのはとてもとても嫌なのです。この気持ち、分かりますか?」  
「なんとなく」  
「ですから私は、あなたに責任を取って貰おうと思います」  
「…………責任?」  
 レイフォンは隠す素振りも見せずにクラリーベルからじりじりと離れる。  
 だが逃げる方向が不味い。そちらにはベッドがあるではないか。  
 クラリーベルは舌なめずりをして、少しだけ残っていた良心でレイフォンに聞いた。  
「そういえば、レイフォン様。こちらで彼女は出来ましたか?」  
 返事を聞く前に、クラリーベルはレイフォンを押し倒した。  
 
 
     †  
 
 
「んむっ……ん…………ぷはっ」  
(な、何が……)  
 何が起きたのか、それはあまりの意外性故に理解の範囲外にあった。  
 キスをされた。最初はついばむような軽いキスを数回。その後は、吐息と舌を交換する熱いキスを。  
 それは分かった。だが何故?  
 何故と考えるよりも先に抵抗すべきだったとレイフォンは後悔する。  
「んん!?」  
 柔らかいクラリーベルの唇の感触に頭が侵され、彼女が錬金鋼を引き抜いたことに気がつかなかった。  
「レストレーションっ」  
 復元鍵語などいらないだろうに、クラリーベルはどこか楽しげに唱えた。  
 抵抗する間もなく紅玉錬金鋼が復元し、レイフォンの体に伸びる。  
 先ほどの奇双剣とは設定が違う。化練剄の使い手ならたやすいことだろう。  
 ぐねぐねと錬金鋼が体に絡みつき、腕、脚、そして全身をベッドに固定された。  
 弱りきったレイフォンにこれを解く力はない。  
 唯一の抵抗は言葉だけだ。  
「何をする!」  
「この状況でそれを聞くということは、してもいいって事ですね」  
 取り付く島もない。  
「じゃあいきますね」  
 クラリーベルはレイフォンのズボンを下着ごと一気に引き抜く。キスによって興奮状態にあったレイフォンの勃起したペニスが大気に晒された。  
「ああ、これが男性器、という物なのですね。思ってたよりずっと大きい。これはレイフォンのものだからでしょうか? そうですね、あなた程の人物なら平均的な大きさを超えていてもおかしくはありません。でも、よく見ると逞しいようでいて少し可愛らしいですね」  
 脈打つレイフォンのペニスを見て、一気に感想を喋る。  
 それだけならいいのだが、クラリーベルはレイフォンのいきり立つ剛直を凝視しながら話していて、吐息が刺激となってかかってくる。  
「うぁ……」  
 我慢出来ずに声を上げると、クラリーベルはくすりと微笑んだ。  
「あ、また少し大きくなりました。まだ限界じゃないみたいで……と、これ以上待たせるのは失礼ですよね、すいません。私もちょっと緊張しているんです――――では」  
 クラリーベルは大きく深呼吸してから、舌先でレイフォンのペニスをつついた。  
「くあっ!」  
 何でこんなことにとか、どうしてこんなことをするのかとか、そんな些細な疑問は軽く吹き飛んだ。  
 レイフォンとて、こういう行為がある事は知っている。数回だが、自分のを処理した事もある。  
 だがそんな物とは次元が違う刺激が、クラリーベルからもたらされた。  
 先端を擦られると腰が浮く。袋をつつかれると声が出る。裏筋を舐められると頭の後ろに電撃が走る。  
「んん……どうです、気持ちいいですか?」  
 クラリーベルが舌を引っ込めた。意地悪をしてやった子供のような笑みをレイフォンに向けてきた。  
「く……はあっ、はぁ……」  
「あら、そんなに良かったですか。それは嬉しいです」  
 快楽から逃れられたと感じる一方で、もっともっとと叫ぶ感情がある。そんな迷いなど関係なく、レイフォンのペニスは素直に直立しているが。  
 
 そして、クラリーベルはそれで終わらせる気は毛頭ないようだ。  
「どこが感じるか分かってきましたし……次は、口に含んでしまおうと思います」  
 積極的にクラリーベルが行為を続ける。彼女は体をレイフォンの脚に擦り付けるように身を寄せて、右手をペニスに添えて一気にしゃぶりついた。  
 温かい口内に取り込まれたレイフォン自身は更なる快楽に膨れ上がる。  
 それに満足したのか、クラリーベルは次々と、レイフォンの反応を確かめながら刺激を与えてくる。  
「くぁっ……!」  
 ぬるりとした舌で絡みつくように裏筋から全体を舐め上げられ、下半身が痺れていく。  
 亀頭に舌を押し付けられると、悦楽で溶けてしまいそうになる。  
 くわえられたままズズズッと音が出るほど吸われると、腰が浮いてクラリーベルの喉の奥へと引きずり込まれた。  
「ん……んふぅっ、はっ……はぁ、ん!」  
 クラリーベルの吐息も熱い。見ると、右手はペニスに添えて、空いた左手は短ズボンの奥、自らの秘所を弄っていた。  
 自らを慰めながら相手の性器を舐める。そんな蠱惑的な姿を見て、レイフォンは自然と腰を突き上げ、彼女に更なる刺激を求めた。  
 残った理性が射精感を必死に宥める。だが体が言うことを聞かない。  
(いけない……出したら、駄目だっ!)  
 唇を噛んで我慢するレイフォンを、クラリーベルはあざ笑うかのようににっこりと微笑み、ペニスに歯をたてる。  
 レイフォンは恐怖を感じた。汚染獣でもない、ただの少女に。身の危険に対してというよりも、自分がどうなってしまうのかという恐ろしさが身を震わせた。  
 クラリーベルの息が荒々しくなる。添えられた歯で擦られて気持ちがいい。  
 彼女も限界が近いのか。そう思った瞬間、かぷっ、とクラリーベルがペニスを甘噛みした。  
「っ…………!」  
 痛みが今まで感じたことのない快楽となってレイフォンを高みへと押し上げる。とても耐えられるものではなく、いとも簡単に限界を突破した。  
「んぐ! う、くっああぁぁぁぁああっ!!」  
「んんっ! ふ、はぁぁぁぁん……!」  
 制御不能になった男根が、びくびくと脈打ちながら大量の精液を一気に解き放った。  
 同時に絶頂へと昇りついたクラリーベルが、痙攣しながら精液を搾り取ろうと口をすぼめる。レイフォンは射精感に身を委ね、腰を揺り動かしてそれに応える。  
 どくどくと絶え間なく噴出する白濁液を、クラリーベルは喉を鳴らして飲み干していった。  
 やがて射精が止まり、レイフォンはぐったりと体を弛ませた。  
 腰の軽さと開放感の後にやって来たのは、負の感情だ。  
 それがどういう感情か、疲れきった頭が説明できないうちに、恍惚の表情を浮かべたクラリーベルが起き上がった。  
「はー……。これが、射精というものですか」  
 飲みきれなくて口元についた精液を舌で艶めかしく舐めとる。味わうようにゆっくりと咀嚼した。  
「不思議な味ですね。苦いとは聞いていましたが……そして食感も新しい」  
 じろりと睨んで、レイフォンの竿を手に取った。  
「何を!」  
「これで終わり、なんてこと考えてました? あなたらしくもない、甘い考えですね」  
 まったくもってその通りの事を考えていたのでレイフォンは歯噛みした。  
 
「どういう、つもりだ」  
「どういうも何も、女がこうすることの意図くらい自分で考えてはどうでしょう。ああ、でもそれは無理でしょうね。あなたは他人の気持ちに酷く鈍感でした。……なら、まあ、あなたの優秀な血をロンスマイア家に加えるためとでも思っていて下さい」  
「ふざけるなっ!」  
 レイフォンのかすれた怒声も、クラリーベルは涼しい顔で聞き流す。  
「ふざけていませんよ。わたしは本気です。あなたも、どうせ逃げられないんですから少しは楽しんだらどうですか」  
 少しだけ寂しげにそう言って、クラリーベルは橙の上着のボタンを一つ一つ外し――やがて面倒になったのかぶちぶちっと一気に脱ぎ捨てた。  
 ノースリーブの黒い肌着が露わになり、半ば脱ぎかけの短ズボンからは彼女の愛液がこぼれ落ちている。  
 まさか、という呟きが唾となってごくりと喉を鳴らす。  
「さあ、予定とは違った形ですけど、こういう勝負もいいのではないでしょうか」  
 クラリーベルが短ズボンを下着ごと下ろし、秘所をレイフォンに見せびらかすように腰を上げる。  
 ひくひくと卑猥な動きを見せる花弁を見て、レイフォンは再び下半身がざわめくのを感じた。  
「ふふふ、こちらの方は準備がよろしいようで……」  
 馬乗りの体勢で、レイフォンの肉棒に狙いを定める。  
 あの中に包まれたら、どれだけの悦楽が待っているのか。考えただけでレイフォンは身震いした。もう、理性が持たないかもしれない。  
 必死に錬金鋼の束縛から逃れようとするが、弱った体の上に頭の中まで痺れてしまっては剄が上手く練れない。そして心のどこかで、クラリーベルを受け入れてしまっている。  
 クラリーベルは深呼吸して、いきます、と小さく呟いた後、すとんと腰を落としてきた。  
「っああぁぁぁぁああ!!」  
 レイフォンとクラリーベル。両者の嬌声が重なった。  
 ぎちぎちと締めつけるように肉壁が表皮を擦って降りてくる。言いようのない圧迫感。侵入物に抗うそれは、レイフォン自身を包み込むような愉悦を生み出した。  
「あっ……ああ! んはぁっ! こ、これ、すごっ……はあっ!」  
 処女膜は既に破れていたのか、一気に最奥まで男根を飲み込んだクラリーベルは、レイフォンの上で身悶えする。痛みと快楽を同時に受けて、歪んだ笑顔を浮かべていた。  
 腰の上ででクラリーベルが悶える度に、圧力が様々な角度から肉棒に送られ、レイフォンはたまらず苦悶の声を上げる。  
「くぅぅっ……!」  
 これは、流される。  
 先ほど出したばかりだというのに、もうペニスは射精感で先走っている。クラリーベルの中はそれを望んでいるのか、ひくつきながら奥へ奥へと引きずりこもうと刺激を与えてくる。  
「ど、どうです……」  
 目尻に涙を浮かべ、体中を痙攣させながらクラリーベルは聞いてきた。  
「気持ちいいですか?」  
 気持ちよくない訳がない。そんな思考が振り切れず、レイフォンは沈黙しかできない。  
 クラリーベルは続ける。  
「わたしは、あなたを越えたい。それが目標で、ずっと鍛えてきました。でもそんな理由は本当はどうでもよかったんでしょうね。わたしは、ただ……あなたに見て貰いたかった」  
 一息、  
「という訳で、あなたには中で出して貰います。わたしがイくよりも先に。一応わたしの中では対抗心がくすぶったままなので、それで決着をつけます」  
 言いきって、クラリーベルは無邪気に笑った。暗い診療所の中で、その表情はとても美しく輝いていた。  
 一瞬、レイフォンを支配していた快楽が抜けた。  
 駄目だ。流される。そう思った刹那、レイフォンの意識の中で何かが生まれた。  
 怒った様子のリーリンが思い浮かぶ。消えた。  
 真っ直ぐな視線のニーナが思い浮かぶ。消えた。  
 冷ややかな態度のフェリが思い浮かぶ。消えた。  
 悲しげな表情のメイシェンが思い浮かぶ。消えた。  
 残ったのは自らの肉棒が、クラリーベルの中で包まれる温もりとそこから伝わってくる快感だけだ。  
「じゃあそろそろ動きま……レイフォン?」  
 クラリーベルが怪訝な顔をするが、気に留めない。  
 レイフォンの中で理性の糸が一本、二本と切れていく。止められない。  
「クラリーベル」  
 最後の理性が途切れる瞬間、残った良心が彼女に言った。  
「ごめん」  
 
 
     †  
 
 
 いきなりレイフォンが謝った。どういう事かと理解する前に、彼の体から剄が溢れ出した。  
 さっきまでの淀みのある剄ではない。クラリーベルが憧れ、追い求めた、光り輝く青い剄。  
 その剄に見とれていて、反応が遅れる。両腕ががっしりと掴まれた。レイフォンの腕だ。  
「なん――――っはぁあっ!」  
 疑問の言葉を口にする前に、レイフォンの剛直がクラリーベルを貫いた。  
(奥まで入れていたはずなのに!)  
 まだ大きくなるのか。  
 子宮の入り口にごつん、と先端が衝突すると、クラリーベルの頭の中で何かが弾けた。  
「ひあぁぁぁあっっ!」  
 強烈な刺激で軽く意識が飛ぶ。視界が復活した時には、既にレイフォンは腰を引いて、再び突入の姿勢をとっていた。  
 錬金鋼の枷は外されている。驚く間もなく快楽がやってきた。  
 ずん、と腰に響くその一撃は、こちらの中を押し潰すように突き込まれ、抉るように子宮口を貫く。  
「あぁぁあん! れ、レイ、フォ……待っ、っあぁ、ひぁっ!」  
 レイフォンはこちらの都合お構いなしに容赦なく責め立ててくる。  
 表情はよくわからない。何かを視界に捉えるほどの余裕がない。  
(こ、これが、レイフォン……?)  
 挿入しながら、レイフォンがクラリーベルの肌着を強引に引き裂く。  
 剥き出しとなった乳房に、レイフォンはしゃぶりついた。  
 とても普段の彼からは想像もできない行為だ。  
 胸と秘部の上下からの刺激に襲われながら、クラリーベルは妖艶な笑みを浮かべた。  
「ふっ……それでこそ、くぁっ……レイフォン、です……ふわぁぁぁっ!」  
 腹部が押し上げられるほどの衝撃と、一瞬の浮遊感。断続的かつ暴力的に与えられる快楽。  
 更にさっきの逆襲か、乳首を甘噛みされるという余りの悦楽に脳が溶けそうになる。  
 限界は近い。だが、もっと昇り詰めたい。レイフォンと共に。  
 クラリーベルは掴まれた腕を振り払い、背中に両腕を回してレイフォンの頭を胸から離す。そのまま唇を重ねる。  
 すぐにレイフォンの舌は胸から口へと蹂躙する対象を変更した。  
 レイフォンの舌が好き勝手に暴れ回り口内を犯す。媚薬のように唾液が味覚に染み込んでいき、五感全てがレイフォンに支配される。  
 
「ん……ふぁ……ぁ、ぁぁ……ふむぅ……ん、ふ……」  
 意識が飛びそうになる。だがまだだ。レイフォンの最高の一撃。それを受けるまで、自分は耐えなければならない。そうでないと満足できない。  
 クラリーベルの腹の中で、レイフォンの肉棒が膨らんだ。  
 来る――  
 一瞬の空白の後、レイフォンはクラリーベルの奥深くに抉るように肉棒を突き上げた。同時に体を貫いた異物が脈動する。  
 理性を失ったレイフォンの射精は強烈だった。子宮の中に直線熱いスペルマが注ぎ込まれる。  
 挿入と射精。何かが爆発したような衝撃が激感となってクラリーベルを襲う。  
「ひぁ、いくぅぅぅ、っあふ……! はぁぁぁん!」  
 身体が跳ねた。とうに限界に達しているというのに、腰は前後に揺れ、愛液を噴射しながら快感を求め続ける。  
 その間にもレイフォンの射精は続き、脱力した肢体に容赦なく白濁液を叩きつけている。  
 責めが止まず、クラリーベルは絶頂の中にありながら絶えず昇らされてしまう。クラリーベルはレイフォンにしがみつきながら絶叫を繰り返した。  
「ああぁぁっ……、っふあぁぁぁぁぁっっ!」  
 全身の力が解放され、尿道口が開いてしまった。プシャアッと勢いよく小水が愛液と共に流れ出る。  
 レイフォンの前で漏らしてしまった。そんな羞恥心で気が遠くなるが、どこかでそれを喜んでいる自分がいる。  
 クラリーベルは、自分がレイフォンに性的に屈服されたという事実に破顔した。  
 
 
 やがて射精が止まり、再び静かな思考が蘇ってきた。  
 弛緩した体はレイフォンにぐったりと倒れ込み、伝わってくる体温が心地よい。  
 自分の強さも、グレンダンも、狼面衆も、全てがどうでもよいことのように思えた。  
 望んでいた形ではないにしろ、付け入る形になったにせよ、三年前、届かなかった彼が目の前にいる。それだけでクラリーベルには満足だった。  
 ずっとこのまま――  
 そんな甘美な誘惑が頭をよぎる。  
「クラリーベル……」  
 耳元で囁かれる。この呼ばれ方も、案外いいかもしれないと思う。  
「レイフォン?」  
 伺うように名前を呼ぶと、レイフォンがクラリーベルの体を支えて身を起こした。  
 繋がったままの腹の中で、再び何かが膨れ上がるのを感じる。今にも暴れ出したいと叫んでいるようだった。  
 クラリーベルはくすりと微笑み、レイフォンに口づけして言った。  
「やっぱり、あなたは最高です」  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ところで、いまのわたしの投下、どうでした?」  
「え?」  
「もう、聞いてなかったんですか? 投下ですよ。時間的な設定くらいしか考えてない中途半端さはともかくとして、速度ですよ。速かったと思いませんか?」  
「あ、ああ。そうだな」  
「他の職人よりも、速かったですか?」  
「そ、それはどうだろう」  
「文章の質そのものは2chは皆トップレベルでしたので、そこで敵うとは思えないのですが、速度でならばわたしの方が上だと思うのですよね。  
 しかし問題はこのスレに職人が投下しないというところなのですよね。2chの技は侮れませんから。これでも色々と巡回したのですけど、しかしそれを知るためとはいえ長々とエロパロ板を観察するのはなんだか負けた気もしますし、他のサイトだと実力差がありすぎますし。  
 ……あ、2chにはエロパロ板を含めた多くの創作発表を構える板がありますけど、こと文章における技の深さという点ではウェブ上でも屈指に入る方なのですよ、実は」  
「はぁ……」  
「全盛期時代を知らないのでなんとも言えないのですけど、それを知ってるおじい様の言葉だと『陵辱、SM、いくらでも受け入れる寛容な場』ということらしいのです。プロになるほどではなかったとはいえ、なかなかの技量の持ち主がいたということですね。  
 いえ、そもそも富士見ファンタジアの最低条件が『十代の読者を対象とした広義のエンタテイメント作品』というものがあるので、もしかしたら技量だけならプロ級なのかもしれません。そう考えると、たまにプロがいるという話があるのも納得できるというものです。  
 あ、いえいえ、ちょっと待ってください。そろそろ続けるのが難しくなったので終わりにします。いいですか? ありがとうございます。  
 ……さて、今のところニーナとフェリの二人についてはネタがあるので、どちらかは来月中に暇な時間を見つけて書きたいと思います。リーリンについてはシチュエーションが全然思い浮かばないので後回しの方向で。  
 あら? この話し方を続けるのならいまのはなしでなくても良かったのかも? いえ、どちらでもいいですね。とにかく、わたしが言いたいのは、感謝の気持ちを強く主張したいということです。ありがとうと言いつけてやるのです。  
 え? 誰にかって? それはもちろん、読んで下さった方に」  
 
 

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