レイフォン・アルセイフは猛烈な尿意を催していた。
訓練だから、と己を律していたのが祟ったらしく、
終わった途端に激流となってそれは訪れた。
旋剄もかくやという勢いでトイレに突っ込んだのが運の尽きといえるだろう。
一番手前のドアを打ち開けた彼の目に入ったものは――何故か、男だった。
「ウホッ! いい男……」
無意識に言葉が衝いて出る。
便座のあるべき場所に腰掛けたその男は開口一番こうのたまった。
「や ら な い か」
突然の誘いにマジマジと男を見つめたレイフォンは改めてその頼もしい顔立ちに感嘆した。
その感嘆を困惑と取り違えたらしい男はおもむろにツナギのホックを外し始める。
その様子を見て、「そういえばどうして作業着を着ているんだろう」などと考えていたレイフォンは
男の股間から取り出されたモノを見て、根こそぎ思考を吹き飛ばされた。
それは、つまり、有り体に言ってしまえば、天剣――そのものだった。
そのあまりの雄雄しさにレイフォンは一歩下がった。否、下がらざるを得なかった。
ぽたり、と滴が床に落ちる。レイフォンは自分が汗をかいていることに気付いた。
真っ先に頭をよぎったのは、女王アルシェイラ。グレンダン最強の武人である。
アルシェイラとこの目の前の男を結び付けてしまった自分にレイフォンは内心、慄いた。
一連のレイフォンの対応を眺めていた男はその狼狽ぶりを意にも介さず問いを投げた。
「俺のキンタマを見てくれ。こいつをどう思う?」
返す言葉など決まりきっている。レイフォンは唇を蒼褪めさせながら至極当然の言葉を返した。
「すごく……大きいです……」
この後起こったことはあえて記すまい。だが、察しの良い読者諸君ならタイトルからでも容易に想像がつくだろう。
ちなみに、次の日病院で目覚めたレイフォンは
「アイアンダイトで、後ろから刺された」
という意味深な言葉を残して力尽きたという。