「ベッドに上がったら、服を脱ぎたまえ」  
寝室に入るなり、氷室はいきなり命令する。  
 
「えっ、…そ、そんな……」  
「ぐずぐずするな。件の風俗店に潜入できるかどうかが、この事件の捜査の要だ。  
 君のルックスなら問題ないとは思うが…、技術面に不安があってはならん」  
「…技術面って?」  
「だから、自慰の技術だ。始めるぞ」  
「…マジですか…?!」  
くるみは呆然と氷室の顔を見た。  
 
「ここを覗き部屋の室内と考え、自由にやってみたまえ。…若干殺風景だがな」  
「や、やるって言っても……」  
「さっさとしろ!とにかく脱げ!」  
「は、はいぃっ…!」  
怒鳴り声に後押しされ、くるみはベッドによじ登って、横座りになった。  
首の後ろのホックをはずし、今さっき着たばかりの服を脱ぎ始める。  
重たそうな胸を包む布が、少しずつ下がってゆく。  
服は腰まで落ち、くるみは手で胸を隠して固まった。  
 
「ためるのはいいが、長過ぎてもどうかと思うぞ」  
「別に、ためてる訳じゃ…」  
くるみは片手で胸を押さえ、もう一方の手で服を引っぱり下ろした。  
苦労して片手だけで服から脚を抜き、とうとう下着一枚になる。  
「脱ぎ…ました……」  
氷室の顔をまともに見る事ができず、小さくつぶやいた。  
 
「よし、次は性的興奮を得る。各感覚器官が受容した性的刺激が大脳に達し…」  
「あのっ、理屈はいいから、早く指示して下さい!恥ずかしいのっ!」  
「…それも刺激のひとつだな」  
「警視のいじわる……」  
くるみは唇を噛んで氷室を睨みつけた。  
 
氷室はすました顔で続ける。  
「この状況下では、性的イメージと触覚ヘの刺激が有効だろう。彩木くん、恋人との  
 デートでも思い出してみたまえ。なるべくエロティックな記憶をな」  
「エ、エロティックって…そんなこと、してないもん…」  
「君がそう感じた記憶でいい」  
「はあ……」  
 
くるみは目を閉じて、過去を思い返す。  
「伸吾が…ホテルに泊まろうって…、あたしが先にシャワーを浴びて…、裸のまま  
 ベッドの中で伸吾を待ってました……。すごくドキドキしてた……。そしたら…、  
 携帯が鳴って、警視に呼び出されたんです!」  
「………。他にはないのか」  
「キツイ仕事でめげてた時、伸吾が一晩そばにいてくれるって…、シャワーを浴びて  
 …伸吾を待ってたら……事件の手がかりを思い出して、A別館に急いだんだった!  
 あーん、エロティックな記憶、作る暇もなかったっ!なんか腹立ってきました!」  
氷室は額を押さえた。  
「分かった、もういい…。とんだ藪蛇だ。イメージはやめにしよう」  
「じゃあ、どうするんですか」  
 
突然、氷室はくるみの手首を胸から引きはがした。  
「きゃ…っ!なに…」  
「触覚に訴えることにする。どこでもいい、快感の得られる場所に触れてみたまえ」  
「そ、そんなとこわかりません!」  
「皮膚は感覚点の集まりで、女性はほぼ全身が性感帯だ」  
「理屈ではそうかも知れませんけど…」  
くるみは手を引っ込めて、胸を隠すように前で腕を抱えた。  
「ほら、腕に触っても、胸に触っても、全然気持ち良くないですっ」  
 
「…そうか?それは君が…」  
氷室がくるみの肩に手を当てた。  
「……あ…っ…」  
くるみはその手の感触にぞく、と震える。  
 
「どうした」  
「あの…、そこは、ちょっと弱いかも……」  
「なるほど」  
氷室の手は肩を下り、肩甲骨の上を通って背骨に沿って滑っていく。  
「あ…、あ、ああ…ぁん……っ」  
自分でも理由の分からない快感に、くるみは声を上げ、背をのけぞらせた。  
「体の後側が敏感なようだな、君は」  
「し、知りませんっ…」  
「表側は自分でやるんだ。さあ…」  
 
くるみは顔を赤らめ、胸に置いた手を体に沿わせて下ろす。  
「………」  
下着に包まれた恥骨の上まで来て、手が止まる。  
「止めるな。さらに下に移動しろ」  
「え…、って……」  
迷いながら、太腿の間に手を入れる。  
「こう…ですか?」  
「それでは触れんだろう…。脚を開け」  
氷室はあきれ顔で、くるみの片方の膝を立てた。  
 
「や…あん…!」  
「いいから触れ。大陰唇でも小陰唇でも陰核でも」  
「はあ…?!な…何を……?」  
「ぐだぐだ言ってないで、指示に従え!」  
「だってぇ…、よくわかんないんですもん……」  
くるみは泣き出しそうな声を出し、湿った窪みに指を当てた。  
「これで…いい…ですか……」  
「いいも何も…快感は得られているのか?」  
「そんなの…、…わかり…ませ…ん」  
 
「仕方ないな…」  
氷室はため息をついて、くるみの隣に腰を下ろした。  
 
「目を閉じていろ」  
「え……、はい…」  
くるみは目をつぶった。間近に氷室を感じ、鼓動が速く、大きくなる。  
 
氷室の指が顎を下から持ち上げ、親指の腹がくるみの下唇に当たった。  
小さく開いた唇の隙間に、人差し指と中指が順に入り込んで、舌の先を撫でていく。  
「……ん」  
その濡れた指が乳首の先に触れ、くるみはぴくん、と小さく動いた。  
「あ」  
冷たい、と思った次の瞬間、乳首が指に挟まれる。  
指の間でこりこりと弄られ、くるみは眉を寄せて呻いた。  
「…あ…ぅう!」  
上体をのけぞらせて倒れそうになり、慌てて手をついて荒い息をする。  
 
氷室の指が、今度は二本一緒に唇に触れた。  
「ん……っ」  
くるみはその指先を唇で包み、自分から舐める。  
指は、しばらくの間舌が唾液を絡めるにまかせ、やがて出ていったかと思うと、  
くるみの下着の中に滑り込んだ。  
 
「…や…、そん…なぁっ!」  
くるみはシャツの袖を押さえたが、氷室は意に介さない。  
「憶えておけ。外側から、…大陰唇…」  
二本の指が、下から上に向かって湿った部分をなぞった。  
「い…や…ぁ」  
「その内側が、小陰唇…」  
同じようにぬるぬるとその部分をなぞられる。  
「あ…っ…」  
「中央が膣だ」  
指がとろりと沈む。  
「は…、ぁ…」  
くるみの体がふらふらと揺れた。  
 
「そして……陰核」  
二本の指はそこを軽く挟み、くっ、と引き上げる。  
「あ、ぁん…っ…!」  
鋭い快感に体の力が抜け、くるみは後ろに倒れ込んだ。  
氷室は片腕でその肩を抱きとめ、唇を震わせて喘ぐくるみの耳に顔を寄せた。  
「少しはわかったか。今度は自分でやってみたまえ」  
そう言うと、くるみの下着を片手で取り去る。  
 
「は…い」  
くるみは膝を立て、ぎこちないながらも氷室のしたように指を使った。  
「あ…っ…、んん……、あ…ん、…は、ぁあ…」  
喘ぎ声が部屋にが響く。  
「…警…視…、…苦しい……」  
しばらく行為を続けていたが、助けを求めるように氷室を見た。  
「…補助しよう。君は続けていろ」  
氷室はくるみの手の前に自分の手を置き、中指を膣に差し込む。  
「あ、ぅ…!」  
小さな動きで膣前壁を擦りあげると、突然くるみが震え始めた。  
「んっ…、…あ…っ、あ、ぁ、け…いし…ぃっ……!」  
震えながら氷室の胸にすがりつき、半ば泣き叫ぶ。  
 
くるみは氷室に背を抱かれたまま、しばらく荒い息をしていた。  
「…彩木くん……、大丈夫か…」  
「は…い…」  
頬を染め、潤んだ瞳で氷室の顔を見上げる。  
 
「…そうか。では復習だ。次は手を貸さんぞ」  
「……へ…?」  
「まだまだなってない。もう一度初めからだ、さっさと脚を開け!」  
「……お…、鬼っ……」  
 
                                〈完〉  
 

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