「……く、ぁ」  
止まらない右手に、息がどんどんあがってくる。  
 
いや、だからこれは。  
男の生理現象ってヤツで、やましいことはなんにもない。  
「…ぁ……はァ、…っ」  
誰に対してか分からない言い訳を頭で繰り返しながら、  
どことなく罪悪感に苛まれてた。  
…や、誰に対してか分からないってのは嘘だ、やっぱ。  
ちゃんと分かってるけど、認めてしまうと余計に罪悪感が生まれそうだから  
意味もなく見て見ぬ振りしてるだけ。  
 
隣の部屋に、あいつが居る。  
 
高校に入ってからずっと男子ばかりの環境で過ごしてきたってのに、  
そこに突然女子が一人やってきて、そいつを好きになってしまったらもう――  
みんなが狙う中、やっとの思いで手に入れた美咲だ。  
付き合って二ヶ月、まだ軽くキスするぐらいしかできてないそんな状態。  
健全な男子高校生なら部屋で夜ヤることなんて一つだろ。  
(しかも隣の部屋なんだよな…)  
だから余計に、コーフンするのか?  
いや、ぜってーそう。  
 
チラ、と見た壁越しに、美咲は居るんだよな…。  
声を押し殺して、ゆるゆると擦り上げる。  
今現在、俺の頭の中では美咲があんなことやこんなことをしてくれてる。  
俺の下に美咲が居て、ゆっくり出し入れする度に可愛く喘いで…  
「好き、好き、もっとして」って何度も耳元で囁いてくれる。  
その声を聞けば聞くほど止まらなくなって、ゆっくりじゃ耐えられなくなって…  
激しく腰を打ち付けると、その声がもっと切なそうに……  
――いや、ま、全部妄想なんだけど。  
 
「ハァ…美咲…っ、も…、……やべ、」  
出そう、と思った瞬間に、コンコンとドアがノックされた。  
 
 
「あ゛!?」  
 
一瞬で頭が現実に戻った。  
あわあわと起き上がり急いで支度して、深呼吸する。  
我ながら無駄のなさ過ぎる鮮やかな動きだな…ってそうじゃねぇ!  
……鍵、かけといてよかった…ほんと良かった…。バレたら死ねる。  
 
 
「亮、起きてる?」  
 
(しかも美咲かよ!)  
ドア越しに美咲の声が聞こえて、もう一度深呼吸した。  
(今美咲見て普通で居れる自信ねー!)  
さっきまで弄ってたソコはまだ熱っぽいし、  
俺の中での美咲は好き好きって言いながら――  
(って想像すんな、鎮まれ!!!)  
寝たふりしてやり過ごそうかな、と思った時。  
「寝ちゃったのかな、亮…」  
寂しそうな声が聞こえて、そっこー0.1秒でドアを開けてしまった。  
 
 
(……馬鹿か、俺)  
体が勝手に動いてた。2秒目にはもう後悔だ。  
案の定、扉を開けて美咲を見ただけで顔に熱が昇った。  
「亮! 起きてたんだ」  
「あ、ああ、まーな! で、なんだよ?」  
ちら、と掛け時計を見て時間を確認すると夜の10時だ。  
美咲が俺の部屋に訪ねてくるにしては遅い。  
「うん、数学の宿題やってたんだけど、どうしても分からなくて。  
 …一緒にやらない?」  
(『一緒にヤらない?』……)  
いや、そういう意図はないと分かってても、全然頭が切り替わらない。  
「教えて、亮」  
(ナニを!?)  
いや、数学だって分かってるんだけどな。  
ごく、と息を呑んで、ぶんぶんと首を振った。  
 
頼りにしてくれてるのは素直に嬉しいし、いつもなら  
『しょーがねぇな、俺様が見てやるよ!』  
とか言って部屋の中に入れてやるんだけど…  
 
「や…、で、でも俺、宿題全然手ぇつけてねーし」  
そっぽ向いて言うと、それは大変! と美咲が声を上げた。  
「明日提出だよ? 早くやらないと間に合わないよ!」  
「べっつにいーってちょっとぐらい遅れても」  
「ダメだよ、ただでさえ亮はよくサボってるのにっ」  
「あのな…」  
とにかく美咲には早く部屋に帰ってもらわねーと。  
気に入らねぇけど、数学なら他のヤツに聞いてもらって…。  
(いや! それはダメだなやっぱ)  
誰だろうとこんな夜遅くに男の部屋になんて行かせるかよ!  
あーなんか想像するだけでイライラしてきた…。  
 
「やろう、亮!」  
更に気合いを入れて誘われると、イライラも手伝って結局0.1秒で  
「入れよ」  
と部屋に引き入れていた。  
 
やっぱり2秒後にはもう後悔が押し寄せてきていた。  
(襲ったら嫌われるよな…)  
嫌われるのは嫌だ。嫌だけど、襲っちまいそうだし…。  
ついさっきまで一人でしてた部屋に美咲がいると思うと、  
鎮まりそうだったものも鎮まらない。  
 
一方の美咲はやる気満々だ。ちゃっかり勉強道具一式を抱えていた。  
俺も同じように問題集とシャーペンを鞄から出して座る。  
「良かった、ちゃんと問題集持ち帰ってたんだね」  
そう言いながら俺の隣に座ると、早速問題集を広げた。  
その瞬間、なんかいい匂いがふんわりと漂ってくる。  
 
「お前……」  
「ん?」  
「風呂入った?」  
「うん、もうお風呂済ませたよ」  
どーりでシャンプーの匂いが強いわけだ。自然に顔が熱くなる。  
自然と髪に鼻を埋めるように近づけていた。  
…なんか、早速我慢できそうにない。  
「り、亮?」  
「んー…? お前、いい匂いさせてんじゃねーよ」  
「は、はい!?」  
「…………」  
あーヤベ、止まんねぇかも  
と思った瞬間に、目の前の問題集を突きつけられた。  
 
「亮! 勉強!!」  
「………はぁ…。分かってるよバーカ」  
罪な女だ、くそ。据え膳で拒絶されて引き下がる俺も俺だけど…。  
気を紛らわす為にぐいっと伸びをして、美咲との距離を少し空けた。  
「さーてベンキョーベンキョー、勉強しねーとな!  
 ま、俺にかかればこんな問題朝飯前だけどよ」  
「亮から10秒間に3回も勉強って単語が出るなんて、明日は嵐になるね」  
「うるせー、ちゃっかりカウントしてんじゃねぇ」  
むっとしながらも、肝心の不自然さはスルーされた。  
(はー…。よし、マジで勉強して邪念振り払うしかねぇ!)  
真っ白な問題集の眩しさが今は味方に思える。  
宿題の範囲を美咲に教えてもらって、しばらくもくもくと問題をこなした。  
 
***  
 
少しの間、平和が訪れていた。  
 
「そういえば美咲、分からないところがあるとか言ってただろ。  
 どこだよ?」  
「あ、うん。ここなんだけど」  
すると、美咲が体と顔を近づけてくる。  
せっかくの平和が呆気なく崩れてゆく予感がした。  
(ちょ――…)  
っと待て、と口に出しては言えない。肩がピト、とくっついて、足も……  
せっかく俺がさっき距離取ったのに、なんなんだこの女!  
咄嗟に姿勢を立て直した。  
「え、なんで急に正座?」  
「べ、別に!」  
わざとやってんじゃねぇのか、なんかのテストなのか!?  
 
「で!? えーと、これか!」  
「うん」  
「あー…さっき解き終わったヤツだな、これ」  
「分かったの?」  
「まーな! お前と違ってやればできるんだよ俺は」  
ふん、と笑うと、美咲は苦笑いを浮かべた。  
「はいはい。亮様教えてください」  
「良かろう! これはさ、一問前の基礎問題に使う公式あるだろ?」  
「これ?」  
「そ。これでまず解いてく。  
 で、次に――」  
と、トントンと教えていくと、すんなりと解けて美咲が目をキラキラとさせた。  
「すごーい!」  
「もっと褒めろ! んでもって敬え、ソンケーしろ!」  
「亮様すごーい、かっこいー、しびれちゃうー」  
「もっと気持ち込めろよ」  
はいはい、とそれはまた流された。  
「あ、じゃぁこっちもその方法で解けちゃう?」  
「おう」  
「ありがと! やっぱ亮に聞いて良かったぁ。  
 亮って頭柔らかいよね、意外に」  
上機嫌にすらすら問題を解いていくと、  
全て解き終えたらしくぱたんと問題集を閉じた。  
 
「終わったのか?」  
「うん、おかげさまでね!」  
(よっしゃ、生殺しタイム終わった! よく切り抜けた俺!!)  
きっとこれで美咲は大人しく部屋に戻ってくれるはず。  
盛大に自分を褒めていると、  
美咲は視線をきょろきょろさせてCDのラックに興味を持ち始めた。  
 
嫌な予感がする。  
「お前戻んねーのか?」  
「うん、ちょっとCD見せて!」  
「いーけど…」  
 
よいしょ、とすぐそこまで移動するのがめんどくさいのか、  
四つん這いのままCDラックに向かってゆく。  
短めのパンツからすらっと伸びる足に目が奪われた。  
(ってまた……)  
なんでもかんでも反応しすぎ、と元気になりそうなそこに呆れながら、  
気分を鎮める為に部屋の中に飾っている花に視線を移した。  
 
ガーベラだ。見た目も可愛いし、俺の好きな花のひとつ。  
(あー癒されるぜ)  
邪念も全て持っていったガーベラの花に感謝しながら、なにげなくもう一度  
美咲を見るとラックからCDを一枚取って興味ありげに見つめていた。  
 
「それ、貸してやろーか?」  
「ほんとに?」  
「嘘つかねーよ」  
「なんか今日は亮に借りばっかりできちゃったね」  
「そーか?」  
「そうだよ!」  
そう言って、なにか考えてるみたいで少しの時間、黙り込んだ。  
 
「…ね、なにか困ってることとかして欲しいこととかある?」  
「は?」  
「亮に借り作るの嫌なの!」  
「貸しだなんて思ってねーって」  
「私が嫌なんだもん。なにかないの?」  
(そんなの山ほどあるっつーの!)  
 
困ってること→襲っちゃいそうで困ってる  
して欲しいこと→妄想の中の美咲を実演してほしい  
 
(こんなんばっかかよ、俺)  
もう一度ガーベラを見て汚れた心を洗おうと思ったけど、今度は効果ゼロだ。  
そう何度も同じ手が効くわけない。というか、もう十分限界に達していた。  
 
「……つかもう、俺かなり我慢したよな?」  
ガーベラを見ながらぼそりと呟くと、美咲がきょとんと首を傾げた。  
「亮?」  
 
「して欲しいこと、ほんとにしてくれんだよな?」  
 
あともう少しで終わりそうな数学の宿題は完全に放棄した。  
美咲との距離をぐい、と近づけて顎に手を添える。  
「え、えっと…」  
視線を逸らされたけど、もう構ってられない。  
「まず、キスから」  
「キス“から”って――」  
遮るように、触れるだけのキスをした。  
 
急に大人しくなって、顔を真っ赤にした。  
キスなんてそう何回もしたことねーし、  
この前まではこんなキスだけで夜眠れなくなるぐらい嬉しかったけど。  
足りない、って思った。  
 
「美咲」  
そっと呼ぶと、ぴくりと反応した。  
嫌がってないことにほっとして、もう一度顔を近づけた。  
「…ん、……」  
美咲の吐息がすぐ近くに感じられる。  
何度も何度も唇を合わせて、じっと美咲の瞳を見つめた。  
「亮、なんか今日」  
「うるせ」  
見つめながらもう一度啄ばむように口付けて、しばらくそれを繰り返した。  
何回してもキスは飽きない。なんでだろう。  
 
(――もう勃ってきた)  
さっきイけなかったから余計だ。  
必死に鎮めようとしてたのをやめて、  
美咲の身体に押し付けるように腰を寄せた。  
「! り、りょう……」  
「借り、返してくれんだろ?」  
反論を許す余裕はない。  
とりあえずなにか言いたそうな美咲の口を塞いで、今度は深く口付けた。  
唇を割って舌を入れ、美咲の舌を絡め取る。  
「んん……、はぁ…っ」  
「ふ…、ん、りょ……」  
ちゅ、ちゅ、と舌が動く度に音が響いた。  
美咲の身体からはすっかり力が抜けていて、全体重を俺に預けてくれてる。  
キスを続けながら手に触れて、一度絡ませてからそっと胸に手を乗せた。  
ブラ越しにゆっくりと持ち上げるように触ると、美咲の肩が一瞬震える。  
けど、そのまま嫌がる様子もなくまた力を抜いた。  
 
(なんか…思ったより全然嫌がらねぇ)  
されるがまま身体を預ける美咲は、俺のことを信じきってるみたいだった。  
一方的に絡めていた舌にはいつのまにか美咲の意志も加わって、  
絡めあってる状態だ。  
(なんか…美咲、エロ……)  
当たり前だけど。  
十分大人のキスを堪能して、そっと唇を離した。  
 
名残惜しそうに俺の目を見つめた美咲は、  
一瞬ハッとして今度は目を伏せた。  
「どうした?」  
「あ、うん……。あの、初めてこんなキスしたなって」  
 
そう言ってちら、とまた俺と目線を合わせて、顔を真っ赤にさせた。  
(か、可愛い……)  
美咲の身体に押し付けたままだった硬いものを、  
もう一度強く押し付けると余計に顔を赤くさせる。  
「なぁ。…わ、分かってるのか? これ、なにか」  
「え……」  
「だーから…その、キス、だけじゃ終われねぇってこと」  
 
そのままもつれるように布団に押し倒して、美咲を見下ろす。  
さっきの妄想みたいに。  
でも、頭の中で考えてたのよりドキドキがハンパない。  
顔を真っ赤にしながら俺の顔をじっと見上げてるのは、きっと美咲なりの  
答えというか…「いいよ」って意思表示だろう、と都合良く解釈した。  
恥ずかしそうにしてるのに、潤んだ目で見つめられると…  
想像以上に、ドキドキする。  
 
「……可愛いよな、お前ほんと」  
「か、からかわないでよ…」  
「からかってねーし!」  
手を伸ばして唇をそっと撫でると、また黙り込んだ。  
「さっきのキスさ…美咲、エロかった」  
「もー、亮! それ以上恥ずかしいこと言わないで」  
「やだね。今まで我慢してきた分、美咲のこと苛めてやるよ」  
「我慢って…」  
「――さっきだって、俺ここで」  
言いながら、布団を撫でる。  
さっきまでは隠そうと思ってたけど…引かれるの覚悟で白状してやる。  
「お前とヤってんの想像しながら、一人でシてた…」  
「一人でって」  
「分かんねぇのか? ……こーやって」  
さっきから硬くなったままのそれを取り出して、  
美咲に見せるようにすっと擦り上げた。…これだけで、今は大きな刺激だ。  
美咲は真っ赤になって、また俺の瞳を見つめてくる。  
「イク前にお前が来ちゃって、今すげー不完全燃焼」  
「亮…」  
 
 

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