しばらくの間、俺は息が整わずにもどかしく深呼吸を繰り返していた。
解消されないもやもやが、そのままストレスに似たものへと変化していく。うぅぅ、とうなり声を一人勝手にこぼしていた。
そんな俺を見ながら、斗貴子さんは言った。
「これでおあいこだろう。お互いヒドイ事をしてされた。だからおあいこだ」
斗貴子さんは笑う。俺を許してくると、彼女はいう。
「だからもう一度初めから、しよう」
斗貴子さんが両手を重ねてきた。温かい手だ。
「俺で、いいの?」
「次そんなことを言ったら私を侮辱していると見なしてそれ相応の手段に出る。ん? 私はそんな尻軽に見えるのか?」
「い、いや!」
「君だからだ、カズキ。私は君だから体も心も、君が犯した罪も破った約束も許す。私の気持ちを、疑わないでほしい」
唇が触れ合っていた。肩を抱き合っていた。体が触れ合っていた。
泣くような声を上げる斗貴子さん。優しく俺は愛撫する。
やがて俺は斗貴子さんの大事なところへと顔を埋める。彼女は嫌がらなかった。お互いが全てを受け入れていたから。
そこは、斗貴子さんの味がした。