「……やっぱり、斗貴子さんは強いなァ。さすが戦士って名乗るだけある」 
ホムンクルスに寄生されてもあんなふうに気丈に振舞える斗貴子さんがかっこよく思える。 
「オレも、もっと頑張らなきゃ」 
心にそう強く誓った。 
別れてすぐ、オレははっと思い至った。 
「そうだ!武装錬金を使いこなすにはどうすればいいのか、さりげなーーくアドバイス聞いてみよう!」 
斗貴子さんはバルキリースカートを自分の手足のように完璧にコントロールしている。 
どうやってそこまでできるようになったか聞いてみれば、オレの上達の近道になるかもしれない。 
今の状態の斗貴子さんに頼るのもどうかと思ったけど、はやく自分の突撃槍をマスターいなくちゃいけない。 
オレは踵を返すと、彼女と別れた曲がり角まで駆けて行った。 
「斗―」 
曲がってすぐ呼び止めようと声を出しかけたが、それはすぐ喉の奥へ押し戻された。 
「ハァ、ハァ」 
斗貴子さんの息が荒い。絶対、普通じゃない。 

(こっからさきがまさにパロディ) 

よく見ないと気付かなかったが、斗貴子さんの太腿から数本の触手のようなものが彼女の股間へと伸びていた。 
あれは、バルキリースカートに間違いなかった。 
「うそーーん……」 
そう、彼女は武装錬金で自分を慰めていた。 
はっきり言ってショックだった。自分で慰めなければならないほど、オレは頼りない男なのか、と。 
「オレ……」 
もっと頑張らなきゃ! 
心の底からそう思った。 

 

心の中で新たな決意を抱いた時、そいつは現れた。 
「――――!!」 
一目見ただけで明らかに他の人間と違うことが分かった。 
どこかの坊ちゃんっぽくまとめた髪。素肌にオーバーオール。サンダル。格好も雰囲気も常人離れしている。 
そいつが斗貴子さんのすぐ横を通ろうとしている。彼女は息を荒げたまま気付く様子が無い。 
男の異様に長い舌が唇をなぞる。 

ドン 

胸が痛い。オレの中の核鉄が警告している。あいつは――――ホムンクルスだ。 
そいつは斗貴子さんに手を出さなかった。そのまま彼女と離れ、オレのほうへ向かってくる。 
「よくわかったね武藤クン」 
馴れ馴れしくも俺の頭に手を置いてきた。 
「けど、ちょっと邪魔しないで。ボクあの娘とやりたくて我慢出来ないんだよ」 
学校でのまひるの危機。研究所で見た多くの人の死。斗貴子さんの身体に寄生したホムンクルス。 
オレの中でこいつらに対する怒りが渦巻いた。 
「あんな美味しそうなコ放っておけなんて創造主は分かってないんだよな。それに四日間も何もやってないし。 
ホント今がやり頃!死体になったらマズいし。ホムンクルスになったら食べられすらしない」 
ベラベラベラベラとそいつの口から言葉が飛び出す。聞いているだけで不愉快だ。 
「キミの気持ちもわかるけど余計な手間はかけたくないんだ。う〜〜〜〜んどうしよう?そうだこうしよう! 
キミが邪魔をしないなら創造主のコト全部教えるよ!探してるんだろ?どう?」 
ピッと指を弾いてそいつが右手を差し出してきた。 

 

「わかった」 
オレは男の差し出してきた手を払いのけてさらに続けた。 
「邪魔をする!斗貴子さんはやらせない!オマエを倒して創造主のコトも吐かせる!!」 
斗貴子さんが犯されるのを黙って見過ごせ?そんなことができるわけがない! 
オレは、こんなことを言ってくるような奴らに従う気なんて無い! 
「キミねェ…」 
払いのけられた手を撫でながら男はオレに言ってくる。 
「このボクに勝てると思ってる?自分が強いとでも思っている?」 
オレを威圧するようにそいつの笑ったような眼が睨みを利かせる。 
こんなのにびびるくらいじゃ、斗貴子さんなんて守れるわけが無いだろ! 
「未熟は百も承知だ。でも、今は斗貴子さんを戦わせたくない!」 
びびってはいないのに汗が流れてくる。実力が伴ってないオレは一人でホムンクルスに対峙できる自信がなかった。でも、 
「斗貴子さんのほかにこの街で、オマエらと戦えるのはオレだけだ!」 
オレがやらなきゃ、やらなきゃいけないんだ! 
「わかったよ。相手をしてあげるよ。ただしここは人目につくから場所はボクが選ばせてもらうよ」 
こいつもやる気だ。 
勝てるか?オレが、たった一人で……。 
ダメだ、弱気になるな!さっき言ったじゃないか!オレしか、オレしかいないんだ!! 
「何人の邪魔も助けも入らない場所で。一対一だ」 

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