ふと目を覚ますと、カーテンが半分開いていた。
そして、オレのベッドの隣で裸で寝ていた斗貴子さんが、
差し込む月明かりの下で、体を横にしたまま本を読んでいた。
どんな本を読んでいるかと覗き込むと──
『Hでキレイなお姉さん』!?
「すまない、起こしてしまったようだな」
斗貴子さんがこちらを向いてそう言った。
「…その雑誌、どうしたの?」
内心、焦りまくりながら尋ねてみる。
「ああ、ベッドの下にあったからな。
キミくらいの年齢の男子がこういう本を見るのは当然だと思うが、ほどほどにな」
そう言って、パラパラと読み進める斗貴子さん。
隠しておいた本が見つかってびっくりしたけど、怒ってないのでほっとした。
「キミとこういう付き合いになったが、私はこの手のことに疎いのでな。
勉強のために読んでいるんだ」
そんな言葉を続ける斗貴子さんが開いているページを見ると、
写真が少なめのHOWTO系のページのようだ。
変にマジメな斗貴子さんに感心した。
でも、男性向け雑誌のこういうページが女の子の参考になるのかな?
変に鵜呑みにされても困るかも。
「しかし、このへんを見ると、体型の違いに愕然とするな─
私がキミの趣味に合っていないようで、なんだか申し訳ない」
巻頭のグラビアにページを移した斗貴子さんが、胸のあたりを隠しながら、
そんなことを言う。
「体型でこの雑誌を買っているわけじゃないよ!
『Hでキレイな斗貴子さん』が売っていれば買うんだけど─」
「あたり前だ!私はキミ以外の異性に裸を見せるつもりはないぞ!」
「あ、ごめん、そうじゃなくて…
『Hでキレイな斗貴子さん系のお姉さん』みたいのが売っていれば…ってこと」
「すまない、そういうことか─で、そういうのは、ないのか?」
「うん、探してはいるんだけど─」
実は六枡が『Hでキレイなお姉さん』の出版社の公式WEBサイトで
『Hでキレイで小柄で貧乳でクールでうっかりで時々狂気なお姉さん』という
ピンポイント過ぎる本の通信販売の案内を見つけているのだが、
『貧乳』の2文字を見た斗貴子さんにブチ撒けられそうで買えないでいたりする。
ちなみに、この出版社は他にも『Hでキレイでスパルタンな先輩』や
『Hでキレイでスベスベでププッピドゥなお姉さん』や
『Hでキレイで同じ年で血がつながっているお姉さん』とかいう
対象読者の存在すら怪しいシリーズを出しているらしい。
「売ってないものはしょうがないな…ところで─」
斗貴子さんはそう言ってからカーテンを閉め、
さっきまで読んでいた雑誌をベッドの下にしまった。
そして、自分の枕をどけて、頭の下にオレの手を引っ張った。腕枕?
「こうすると女の子はうれしいらしい。試してみるとしよう」
笑顔でそういって、目を閉じた。
こういう雑誌で勉強してくれる斗貴子さんも悪くないと思った。